Tears

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 Tetsuji Nishigaki&岡本真夜
解説 岡本真夜にとって結婚・出産後初にして6thアルバム『Dear…』の4曲目に収録。二人になれず、未練を強引に断ち切って別れを決意しているという意味では「愛しい人よ〜remember me〜」に似ている。
 背景が似ているため、「愛しい人よ〜remember me〜」とどうしても比較してしまうが、この曲は一縷の望みを残している。それを表す歌詞が「今すぐ追いかけてきて 無理矢理 抱きしめてほしいのに」である。口では「「彼女のそばにいてあげてよ」」と言いながら、「こんなに愛してても 一緒にいられない恋だから」と現実を直視していながら、人間自分自身は欺けないのである。それは「いくつも電車見送っても あなたは来てくれない 時だけ過ぎてく」という行動にも現れている。
 心にぐっと来る歌詞を挙げろ、と言われれば大半の人間が同じ所を選ぶのではあるまいか?当然ダンエモンも「もう好きじゃない もう会わない 会いたくない 最初で最後の嘘」を選ぶ。この世に生を受けて一切嘘つかずに天寿を全うする人間はまずいないだろう。勿論嘘をつく、と言っても程度と内容がある。望みながら望んでいない、と嘘をつく状態は「やせ我慢」と呼ばれるが、この主人公の未練の断ち切り方は「やせ我慢」では済まされない。そしてそれが「最初で最後の嘘」と来ているのだから、側にこんな人がいたとしてもかける言葉を失ってしまう。正に涙−「Tears」−無しには語れない。
 真夜ソングには「サヨナラなんて言えないから」という曲がある。この曲はこの「Tears」と同じ境遇にある事を疑った主人公が「安心」を求めて想い人が自分の元に駆けつけてくれることを願っていて、そういう意味では自己の望みが第一に立っていてこの曲とは対称的である。愛する人をなんとしても放したくない気持ちと、愛する人を思って中途半端な関係を続けるより自ら身を退く事のどちらが尊いかは一概には言えないが、両曲を比較していると男としてそんな境遇を作ってはいけないな、と立った一人にさえ愛されない分際で考えてしまった(苦笑)。
 詳細は話せないが、過去の苦い経験から俺は女の涙を見たくない。本来泣き顔なんて醜いもので、泣き顔が美しいのは余程の嬉し泣きかドラマの世界だけである。恋人同士に別れが来るときがあるのは仕方のないことだが、そこにどんな重みがあるか?それを無視することをこの歌を聞けば出来はしないだろう。


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