鉄板ガール feat.ミトカツユキ

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 ミトカツユキ

解説 摩季ネェの14thアルバム『MUSIC MUCSLE』Disc2「RESTING MUSCLE」の4番目に収録されている。
 憎からず想っている「君」に対して、微妙な距離感に立たされつつも、「必要とされる」存在であることに一抹の幸せと側に居ることに出来る依り代してその維持に努める内容だが、想い人に頼りにされながら微妙な距離を埋められない背景が同アルバムにて一つ前に収録されている「マリンタワーに着くまでに」とどこか被る。

 興味深いのは、主人公が自分に自信が持てずにいる一方で、「君」から頼りにされていることにそれこそ「鉄板」とも云える確信を持っている点である。
 「どうして?!カールが決まんない <あらやだ(-。-;)> 君に会える日なのに(T_T)/~~~ <エェェ〜〜っ>」とか、「スタイルまで手にが回らない」とか、「綺麗になれるような素材じゃないけど」とか、「君が振り向くようなSexy girlにはなれないけれど」等と自分の容姿を初めとする魅力には丸で自信が持てずにいるのに、「頼まれたFileも レアなCofeeも 完璧なのにまた」「便利な奴でもいいじゃん 必要とされようよ」「好きな人に向かってガンバルShiny girl★にはなれる」「便利な奴なら“手放せない人”にはなれるでしょう?」という風に、「君」の為に出来る行動や、役に立つ存在であることへの自負はそれこそ「鉄板」である。

 同時に興味深いのは、「君」の感情がどうあれ、主人公は「君」の為に役立っている、役立つ存在であることに幸せを感じていることである。
 普通、頼られていても、便利屋扱いされても、女として接してもらえないとなると不満の方が勝りそうなものである。実際、「恋に傷つく 君を勇気づけたくない でもそばにいるには それしか出来なくて 切ないけど」とあるから、今の立場に満足してはいないのだろう。
 だが、それでも愛する人の為に何かが出来ると云うことは幸せの一端に違いはない。この「鉄板ガール」はその点への感じ入りが同様のシチュエーションを持つ「IT’S ALL RIGHT」「マリンタワーに着くまでに」に勝っている。

 最後に注目したいのは「Follow me☆彡 こっそり見せる 君の弱さは宝物 目指せ♪鉄板ガール YES!! オンリーワン?」の歌詞である。
 主人公が「君」を我が物としたがっているのは明らかである。そしてその願望に則するなら、頼られてはいても恋人同士になれないというもどかしい状態は普通耐えられない。そんな主人公に一つの強みがあるとすれば、「こっそり見せる 君の弱さは宝物」の部分であろう。
 この部分は「IT’S ALL RIGHT」「マリンタワーに着くまでに」とも共通する。確かに男には彼女や妻だからこそ弱味を見せられないことがある。同時に弱味を見せられる相手とはそれこそ「鉄板」である。本音を見せられる相手は必要な存在で、手放せない存在である。
 この曲の主人公も、対比している二曲の主人公も、想い人が恋人に見せられない弱さを自分には見せてくれていることを、いつかは想いを遂げる一つの艫綱としているのであろう。

 普通は弱さなんて人には見せたくない。しかし誰にも見せられない自己の一面を曝け出すことの出来る相手は対人関係・性別に関係なく貴重である。
 この曲を聞き、似たタイプの曲とも比較し、改めて本音を見せ合える間柄の大切さを実感した次第である。


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令和五(2023)年九月二一日 最終更新