テラスにすわって
解説 椎名恵さんの6thアルバム『C'est la vie』のトップバッターに収録。過去−学生時代とその時の恋の想い出を懐かしむ歌である。
「テラスにすわり空をあおぐと 見渡す限り永遠で はしゃいだ学生達の 声に時が戻る」とは随分ゆとりある優雅な生活である(笑)。根拠なき憶測に過ぎないが、主人公のゆとりある姿には一つの人生の転換(恐らくは転職)が想定される。なにがしかの多忙な生活にピリオドを打ったから過去を振りかえる余裕ができたような雰囲気を曲や歌詞から感じる。
主人公と「あなた」との関係はいささか不明確だが、どうも想い続けながらも告白できず、卒業と供にその距離は遠く隔たってしまった様である。それにしても「あなたが好きな彼女に手紙 渡す役目」等という「あなた」の知らぬ事とはいえむごい役目をよく引き受けたものである。その事を「幼すぎる素直さに 今は苦笑いね」と言って入るが、当時は「苦笑い」では済まなかっただろう。
その一方で「私は振り向いて欲しくて 他の男子と出かけてみた」などという小細工を練るところは変な意味で興味深かったりする。当時の主人公にストレートさがあれば案外うまく言ったのではないかという気さえする。せっかく「彼女には恋人がいて あなたは苦しんでた」のだから付け入る隙はいくらでもあっただろうに(笑)。横恋慕の罪悪感に苦しんでいた道場主が同じ立場なら即座に告白に走るだろうな(笑)。
好意的に見るとあくまで「あなた」の心を尊重したい主人公が心悩ます事を潔しとしなかったとも見れるが、我ながら説として弱いと思う。うがった物の見方だとは思うが、主人公は人生の転換点に際して過去の恋に決着をつけたがっているのではないだろうか?そしてそこに古き記憶の中にいる「あなた」を求めるから「あの日のあなた」や「昔話」が想像の中に浮かぶような気がする。
想い出を振りかえる椎名ソングは珍しくないが、歌詞上、想い出の振りかえりのみで終るのは珍しいケースである。それこそ「テラスにすわって」のんびりと空想するような事なのだろうか?
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