戸惑いながら

         作詞 大黒摩季 作曲 栗林誠一郎 編曲 葉山たけし
解説 アルバム『永遠の夢に向かって』の3番目に収録されている。更にこの曲は摩季ソングの中でも摩季が作曲していない数少ない曲の一つで、作曲は栗林誠一郎氏によるものである。
 この曲の大筋となっているストーリーは摩季ソングの中にあってなかなか珍しいものである。付き合っている彼氏の元彼女のよりが戻ることを恐れることがストーリーの発端となっている。「彼女の胸に帰らないで」という歌詞は痛ましくすらある。ダンエモンは横恋慕の失敗を続けた男である。この歌の主人公が横恋慕の末に彼氏をものにしたのかどうかは明らかではないが、彼氏の意が向く可能性の存在は確かに脅威だろう。「もう少しそばにいて もっと近付いて」の言葉も不安の表れだろうか?
 この曲は切なさが好きなのだが、反面、少々主人公は弱気過ぎると言いたくなる。1番で、元彼女の影に怯え、2番では破局を恐れて本気でないなら早目に撤退しようと言う気持ちすらちらつかせている。まさしくそんな気持ちがタイトル通りの「戸惑いながら」に通じていることがわかるのだが、せめて自分の気持ち自体には戸惑うな、と声をかけたくなる。摩季ソングにはそういう意味でも珍しい傾向である。
 別の見方をすると主人公を戸惑わせているのは、先の見えなさ=「見えない未来」であろう。弱気に見える歌詞の中にはその「見えない」を楽しんでいる節も見られる。「踏み込めないこの距離が どこか楽しそうで」の歌詞がそうである。どこか静かなスリルを感じさせる内容である。
 人間はどんなペテンの天才でも自分自身を欺くことは出来ない。リスクに恐れるのも夢と現実のギャップがあればこそである。今側にいる彼氏との未来に対する夢と、見えない未来に潜む彼氏の心変わりに対する不安に揺れ動く気持ちが、この「戸惑いながら」の骨子であり、魅力であることを締めくくりたい。

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