とりあえず Drive My Car

作詞 大黒摩季 作曲 織田哲郎
解説 大黒摩季さんが作詞を担当して、作曲を担当した織田哲郎氏とともにデュエットしたシングル「憂鬱は眠らない」のC/W曲。誤解を恐れずに表現するなら孤独を望む曲である。
 ダンエモンは織田哲郎氏の楽曲な全く詳しくないのだが、有名な数曲や摩季さんの曲に比しても随分まったり、のんびりとした曲である。それは取りも直さず喧騒や世知辛さから一時なりとも逃れたい一心で、それは「こうでもしないと独りになれない」の歌詞からも明らかだろう。都会に限らず人間は様々な意味において完全な孤独にはなりにくいものである。
 一方で摩季さんが担当する歌詞では「悲しい男は Big Money 夢見る男はいつもいつも Cheep 因縁なテーマだから 王子様以外妥協しないとLonely Night」と金銭的な価値では片付けられない人間観察の中で「王子様」を求める摩季さんらしさが歌われるが双方の歌詞の並立に如何なる意味があるだろうか?
 答はラストの「とりあえず Drive My Car どこまでも Drive My Car」にあるとダンエモンは見る「とりあえず」「どこまでも」とした点である。
 「昔おやじに殴られた 嘘つきは地獄に落ちる」とあるように正直である事は美徳されながら、「だけど本当を叫ぶと 世間ではなぜか煙たがられる」もまた事実で、真実でも伏せた方がいい、偽った方がいい事も多い(仏教では「正語」・「不妄言」という言葉で嘘を戒めつつ、「方便」という語で必要悪としての嘘を認めてもいる)。そんな世の中で多くの人が選ぶのは沈黙及び、当たり障りのない言葉に留める会話である。
 故に主人公の歌う「俺はそんなおかしな奴なのか 教えておくれよ 聞かせてよ Father」という主人公のうめきは本音で生きた故に社会から浮いた目に遭った事のある人間が一度は抱く思いではあるまいか?そして主人公はそんな世間からの孤独を求めて「My Car」「とりあえず」乗り込み、自らが求める場への直行を志して、「どこまでも」とした、との解釈である。
 「とりあえず」という言葉をダンエモンは一時しのぎ・その場逃れ的で余り好きな語ではないのだが、「とりあえず」から「どこまでも」が生まれるならそんな「とりあえず」を日常に一コマに持つ事も重要であろう、と述べてこの解説を締めたい。


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