別れましょう私から 消えましょうあなたから

作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし


解説 4枚目のシングル曲にして、アルバムでも『U.Be Love』の4番目、『BACK BEATs#1 』の5番目、『BEST OF BEST 』の4曲目に収録されている。
 この曲はライブでもよく歌われる、摩季ソングを代表する曲の一つであるが、実はダンエモン個人はそれほど好きではない(嫌いでもないぞ!!)。

 歌詞の内容は別れを直前にしたカップルの、女性である主人公は燃えつつも、そんな彼女とは反対に冷め切ってしまって進退さえはっきりさせようとしない彼氏に対する辛い決別の決意を歌った曲である。歌詞からも曲からも悔しさと悲しみがない交ぜになった感情が伝わってくる。

 何と云っても主人公は相手をいまだ愛しているのだ。だが、相手には愛はない。中身の伴わない愛の辛さは「SLOW DOWN」にも歌われているが、一人でいるほうがまだマシらしい。
 確かに大切な事ほど、中身の伴わない上辺だけのものになると辛いものがある。些か抽象的ではあるが、イメージはわかる。

 しかし身を切るような決断である。
 相手が別れを切り出さないのに甘えて、冷めた相手に気付きつつも別れる決断を下せない人は多いと思うし、できないからと云って責める事は出来ない。
 希望が多少なりとも残っていれば粘れるだけ粘りたいのも人情である。片想いの相手に告白して振られ、諦められない人間だって世の中にはごまんといるのだから。

 逆の視点から、この歌の主人公に対して「弱虫」と見る人もいるだろう。彼氏は別れを切り出してはいない。決定的な破局を告げられてもいないのに、冷め切った心で接せられる辛さに耐えかねて逃げ出しているに過ぎない、との見方も充分成立する。

 終わらせようとする主人公に対して、ダンエモンの脳裏には「あぁ」「あれは身を引いたのか それとも逃げ出したのか」の歌詞がリフレインする。
 明確な答えが出ないことぐらい理屈の上では百も承知である。否、自分自身に対してなら、YesかNoぐらい決断できないわけではないが、どちらの意見でも万人に同じ理解を求めるのは不可能である。

 さて、この歌を初めて聴いたときに驚かされた歌詞は、皆さん予測済みだと思が(苦笑)、何と云っても「SEX」の台詞である(笑)。
 ヒット曲にここまではっきりした台詞として聴くとは思わなかった、しかも女性歌手の口から…。ある意味「流石俺が惚れた歌手だ…。」という気がしないでもなかったが、とにかく第一印象は驚きである。
 1999年8月に千葉マリンスタジアムにて初めて摩季ライブに参加した際にこの曲が始まったときは即座に先程の個所を思い出して「えっ!?この歌をライブで歌うか?!」と真剣に思った。

 冷静になって何度か聴くと、本来「SEX」という男女の愛の営みが最も具体的な形で現れるものとして行われる行為が、「同情」で行われることを「冗談じゃない」と断罪しているわけで、考えてみれば「なるほど」と来る台詞である。
 愛しい相手に抱かれるのは嬉しいことでも、そこに愛情がなければ、その相手は愛しい人でありながら愛しい人ではなくなるのだろう。野郎はそれでもそのまま楽しめる奴も多いだろうが(苦笑)、女性はそうはいかないのだろう(この文章を書いた当初、すべてを憶測でしか語れない自分が情けなかったが、現在も女性の立場には立ち切れない。当たり前だが)。

 歌詞の構成は上手く出来ているが、内容が内容なのでハッピーエンドが望めないのが残念。せめて主人公が「マイナスだらけの未来」を捨てようとしている姿勢が「プラス」を生むことを信じたい。良きにつけ、悪しきにつけ、過去も現在も未来の為にあるのだから…。

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令和四(2022)年六月一日現在 最終更新