忘れないで…

         作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 十川知司
解説 ファーストアルバム『SUN&MOON』の7番目に収録されている。自己顕示欲の塊であるダンエモンは人から忘れられることを極端に恐れる為、このタイトルは色々な意味で引っかかるものを感じる。
 背景から解説すると本気で愛し合った時を取り戻せないことを嘆き、それよりは恋人に新たなスタートを切ることを勧めつつ、たのしかった思い出や自分自身を忘れて欲しくない気持ちを歌ったものになっている。
 この歌にも他の曲によく見られるように揺れ動く心が描かれている。「もう限界だね できた隔たりは 傷つくことしかできないの もう 帰れないね 時は過ぎて行く 遠く離されて行く」「もう戻れないの? あこがれだけしか知らなかった あの頃には もう 笑えないの? すれ違ったまま 季節 流されて行く」といった歌詞にはどうにもならない諦観が見られる一方で、「あなたの背中は正直だから 胸が ちぎれそうになる 無理して笑顔を 作らなくていいよ よけい 辛くなるから」「忘れないでね 初めて出会った瞬間 出会った場所も あなたのことを ずっと見つめてた女の子のことも」といった歌詞からどこまでも「あなた」及び何が「あなた」の為になるかを考える様がいじらしく、そこに「ほんの少しだけ夢を見ていた 受話器片手のMIDNIGHT CALL どんなに小さな言葉さえも やさしく握りしめた」「あなたの声も あなたの笑顔も この胸に 刻んで」といった忘れ得ぬ想いがブレンドされている様が何とも言えない。
 本当に切り捨てなければならない過去もあればどこまでも抱きつづけるべきメモリーも確かにこの世には存在する。だが過去をどう扱うかは結局は未来のためである。変えられぬものと変えるられるものとの差と言えばそれまでだが。ただ、過去があって現在があることを考えれば忘れてしまいたい過去は本来あって欲しくないものであることをこの歌を聞く際には噛み締めたいものである。


真夜の間へ戻る