忘れてしまいたいのに

忘れてしまいたいのに

         作詞 大黒摩季 作曲 大黒摩季 編曲 葉山たけし
v 解説 アルバム『MOTHER EARTH』の5番目に収録されている曲である。このアルバム初めてを聴いたとき、同じアルバムの収録曲である「この闇を突き抜ける」「スキ・スキ・スキ」の印象が強くて、この「忘れてしまいたいのに」は印象が薄かったが、何度も聴く内にじわじわと胃袋に効いて来るボディーブロウの如く脳裏と心底に染みてきたものである。
 この曲の歌詞は摩季ソングの中でも異彩を放っている。摩季ソングの中には恋人の浮気に苦しんだり、浮気を何とか許そうとする内容のものが幾つかあるが、この歌は主人公側が浮気をしたもので、許されて以前と変わらぬ愛を受けながら、自らの過ちから自らの幸せへの信頼まで揺らぎ苦しむ内容になっている。
 ある意味この歌もエロい。「たった 一度の 小さな 過ちが」「ぬくもりを信じればいい 新しい喜びで満たせばいい」は男女間のある行為を連想させてくれる(笑)。殊に「新しい喜び」という歌詞には、「変なプレーでも取り入れたのか?」と下品な想像をしてしまった。
 とまれ、「ぬくもり」には精神的なもののみならず物理的な「ぬくもり」にも言及しているのは他の歌には余り見られない表現である。
 さてタイトルの「忘れてしまいたいのに」であるが、これは罪悪感や自らの行動が呼んだ不信の基への気持ちだろう。「傷ついた憶い 見せつけては自分を かばってた」のも「泣くことしか出来ない」のも自分を責めているからそう考えしまう様子が痛々しくすらある。
 そんな自分を責める気持ちから逃れる為にも自らの過ちを「忘れてしまいたい」のだろう。
 最後に一つ主人公を弁護したい。彼女が苦しんでいるのはつまるところ、「あなた」を愛しているから、失いたくないからである。そして何者にも恥じることなく付き合っていた頃への執着が今の自分を責める、つかり自分で自分を責めずにいられない地獄から逃れたいと思うから、心底に清らかな気持ちがあることを最後に断言したい。

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