WATER CITYが眠る頃

         作詞 佐藤純子 作曲 林哲司 編曲 戸塚修
解説 椎名恵さんのフィフス・アルバム『Dolce〜ドルチェ〜』の6曲目に収録。同アルバム収録局の中では一番激しいリズムを持っている。
 簡単に言えばなくした恋を振り返り、惜しむ曲である。そしてその場が思い出の街−「Water city 水によこたわる街」なのである。
 流れをざっと追うと、何の気もなしに車にて思い出の地「Water city」にやって来た主人公は「不意にあなたの声 聞いたよう」な気配に車を止め、過去の痛みを「胸のうち」に感じ、過去にとらわれた。
 主人公の抱いていた「あの日の哀しみ」とは「わかりあえるときを信じていた」のが裏切られたことだろう。裏切られたと思えばこそ耐え忍んだ「ひとりの夜」も辛くなるのだろう。
 だが主人公はいつまでも過去の痛みにウジウジしている弱い人間ではない。「Water city」と思い出の地を呼びつつ、「強い風」の中で「変わってゆくなにもかも」「終わってしまうもの」「叫んでも消えてゆく」ものを見据え、「よろこびも哀しみも眠りにつく」という表現で思い出の整理を宣言している。
 もの悲しいのは主人公が「許すたびに どこまでも はなれてた心」「あの日 忘れてたあの勇気」という風に過去の自分に不足していたものを今はガッチリつかんでいるにもかかわらず、過去の恋を求めず、「いつの日か幸せにする 誰かを」と宣言している様に、過去の「あなた」とは一緒になれない現実が隠されている点である。
 今現在の「あなた」がどういう状態にあるのかは歌詞からは伺えない。はっきりしているのは主人公によりを戻す気がないことである。だがそれはそれ、曲の持つ力強さと「いつの日か幸せにする 誰かを」の強い決意を尊重したい。
 この曲のタイトルは「WATER CITYが眠る頃」だが、「よろこびも哀しみも眠りにつく」とあるように眠るのは主人公の思い出の中にある、様々の思いを内包した「Wate rcity」のことなのだろう。もちろんそれは主人公の心の中の話である。


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