Who is in love?

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 建部聡志
解説 岡本真夜さんの9thアルバム『再会〜君に綴る〜』の9曲目に収録。同アルバム収録曲中最も重い一曲かも知れない。
 まず注目した員は主人公と「あなた」の複雑な関係だ。主人公にとって「あなた」は最愛の人なのだが、「あなた」にとって主人公は仲のいい「友達」以上でありながら少なくとも最愛の人ではない。
 「こうしてお茶したり ふざけて笑ったり・・・」「はずむ会話」と言った歌詞から主人公と「あなた」がそれなりに仲がいいのは明白で、恐らくそれは「彼女」も既知の事なのだろう。
 だが「あなた」はどうも主人公の本音さえも認識しているかどうか疑わしい(それに対して「あなた」に責任があるわけではないが)。そうでなければ主人公に「「もう 会わない」といったら どう答える? そんな勇気ないけど 知りたい」という疑問は浮かばないだろうから。
 となると「番号見て 席をはずす この瞬間が 一番つらい 電源 切ってくれるほど ここに あなたはいない」のようなシチュエーションは拷問だ。「お願い 今だけ彼女のこと忘れてほしいよ」という台詞も口に出す事は出来ないのだろう。
 男女の仲は友情に付け、愛情に付け、難しい。そこに性別の相違があるだけで。主人公が胸の内を明らかにする事でそれなりに親しい関係さえもが崩壊するかもしれないリスクを恐れるのはこの曲に限らず「友達」の立場に留め置かれた主人公が本当は愛情を抱いている事に苦悩する全ての曲に共通する事で、現実でも同じ苦悩を抱く人間は少なくないだろう。
 告白すればそれまで同じ関係には決して戻れない。ALL or NOTHINGを強いられる事も少なくない。まして主人公は「あなた」に対して「1日会えない それだけで こんなに こんなに胸が苦しいなんて・・・」と考えるのである。NOTHINGだけは絶対に避けたいだろう。ALLにならないならNOTHINGの方がマシ、と考える人もいるだろうが、「友達のまま いられればよかった」からも、最低でも「あなた」との交流を持ち続けたがっているのは明らかだ。
 ここまで見ると「Tell me Please tell me 教えて・・・ 教えて・・・ Who is in love?」の疑問形に、タイトルにも使われている「Who is in love?」(=誰と恋しているの?)の疑問に、自分への気持ちを確かめたい、一縷の望みを拓したい、との気持ちが感じ取れて切ない。
 身も蓋もない言い方をすれば歌詞的には現状に何ら好転の兆しも見せず、疑問形に尻切れとんぼ的に終ってしまっているのだが、独占欲でなく、相手を本気で想うからこそ敢えて疑問形から踏み込みたい気持ちを押さえている心情を察してあげたい。詳細は明かせないが、経験上、決して理解できない話ではない故に。


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