約束

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 岡本真夜&西垣哲二

解説 岡本真夜さんの11thアルバム『Tomorrow』の4曲目に収録。同アルバム収録曲の中には東日本大震災の発生を受けて生まれたものが多いが、この曲程関連の強い曲は無い。実際に震災の為に父を亡くした少女の話を真夜さんがテレビで見たことが発端になっている。

 歌詞は大切な「君」を亡くした主人公が、辛い悲しみの日々に整理をつけ、人生のリスタートを誓うものである。冒頭で「ずっと伏せてた写真立て」とあるように、死別当初は相手の「笑顔」を見るのも辛かったのだろう。
 気持ちに整理をつけたとはいえ、「どんな風に明日は訪れる? 今も君に会いたい わかってる 叶わぬ夢」の歌詞からは相当な未練が、「今も胸は痛むけれど」の歌詞からは悲しみが癒え切ってはいないことも窺える。
 だが、月並みな表現だが、いつまでも死を悲しんでばかりいることを故人も望んではいない筈で、主人公も「いつも笑顔 忘れないよ いつも 君が教えてくれた 今も胸は痛むけれど 人はまた変われるって また 笑えるって そう信じて 強くなる」と思い出して、念じて、誓っている。

 故人を想って唄う真夜ソングと言えば「この星空の彼方」が筆頭だが、想いの重さで言えばこの「約束」の方が上かもしれない。恐らく「君」は生まれたときから一緒にいた家族と推測される故に。
 それ故に同時に「忘れない」という「約束」にも注目したい。「いつも笑顔 忘れないように いつも 君と笑ってたように どんな日々も どんな別れも 受け止めて行ける私になりたい」とあるが、未曾有の大震災ならずとも人間は生きている限り死別というものを避けられない。
 実際、道場主はアラフォーとなる現在に至るまで、親族、幼馴染、職務上の知人、ご近所さん及びその身内との死別に接してきたが、誰一人死に目には会っていない。葬式に参列することも少なく、訃報のみであることも少なくない。一方でブラウン管の向こうでは好きな俳優が次々世を去っているので自分の中の死生観が実感を伴わないものになりつつある。だがどんな死もいつまでも悲嘆に暮れている訳にはいかない。それ故に前述の歌詞には深く考えさせられるのである。

 「強くなる」ことは大切であるが、強くならざるを得ないことには悲しみを覚える。それが人生において幾度か避けられないことを理解してはいるのだが。もっとも別の見方をするなら「人はまた変われるって また 笑えるって そう信じて 強くなる」の歌詞からは、人間の強さが不滅であることも信じられるのも重視したい。


真夜の間へ戻る

平成二四(2012)年一一月二〇日 最終更新