優しい時間

作詞 岡本真夜 作曲 岡本真夜 編曲 十川ともじ

解説 岡本真夜さんの5htミニアルバム『Love Story』の2曲目に収録。ラブラブな時間の中の穏やかさの中に強い執着と、それを永遠ならしめたいとの意志が溢れた一曲である。

 『Love Story』収録曲は曲調だけを見れば力強さや激しさに溢れた曲は見られない。どちらかと云えば静かな感じの曲が多いのだが、だからと云って強さが無い訳ではない。それどころか(適切な表現かどうか迷うが)執着心でいればかなりの強さを持つ。
 この「優しい時間」では、主人公と「あなた」と充分に愛し合っており、現在進行形で恋仲にある訳だが、冒頭の「また会えるサヨナラに 泣いてしまいそうなくらい」の歌詞からしてかなりの惚れ様で、同時に「銀色の週末」を彷彿とさせる。

 歌詞の状況から、両者は結婚や同棲までには至っておらず、恐らくは互いが帰宅するという形で離れる時間があるのだろうけれど、冒頭以外にも「抱きしめ合うこの時間 時を止められたらいいのに 夢のようなこの時間に また会いたい」「泣いたとき 笑ったとき 振り向けばそばにいてほしい」「いつも隣で笑っているのが あなたであってほしい」といった歌詞にも、寸時も離れたくないとの想いが充満している。
 同時に主人公が重んじている「時間」が極めて穏やかで、プラトニックで、何気ない日常と喜怒哀楽を共に出来る大切さであることも注目される。「抱きしめ合う」「あなたにもたれ」と云った歌詞から肉体的な接触の時間も大切なのだろうけれど、「そっと差し出された手のひら」「伝えたい言葉はひとつ」「なにげない言葉がまたひとつ 私には勇気になる」といった歌詞から日常的な接触、ささやかな接触が大きな喜びであることが見て取れるのである。

 そして多くの真夜ファンが自然に注目する歌詞は「来年の春 九段下で あなたと桜を見ていたい」であろう。
 この歌詞を見て「ANIVERSARRY」を思い出さない者は真夜ファンではないと云っても過言ではなかろう(笑)。過去にも「seasons」でも用いられた地名と季節がこの曲で再々登場した訳だが、改めて巡る季節、つまりは時間の流れにも失われることなく愛が永続することを願う、真夜ソングに有り勝ちで且つ穏やかな強さに溢れた骨子がここにも見られる訳である。

 「どんな小さなため息さえ あなたは見つけてくれる」といった、常に一緒にいる中のささやかな変化に気付き合える大切さは、よく「妻が髪型を変えたのに気付かない、それを口にしない夫は嫌がられる。」的な静的な日常にあっても同じ時の連続ではないことを教えられる様に、それ等を重んじれてこその「優しい時間」なのだろう。
 そして最後に注目したい歌詞はサビのささやかな相違である。

 「そっと差し出された手のひら そっと私も重ねる」が、次に出て来た時には「そっと差し出された手のひら 今日もそっと重ねる」に若干変わっている訳だが、かかるささやかな日常の中の僅かな変化と、それに気付き得ることが、恋愛をマンネリに陥らせず、刺激はなくとも喜びを継続させるのだろう。
 そんな時間の流れがラストの「恋が愛へと変わってゆく 時を重ね 少しずつ」「大好きから 愛してる 「愛してる?」って聞きたくなる」と表現され、閉められている様が秀逸である。


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令和五(2023)年一月九日 最終更新