夜毎、ハイウェイを飛ばす女

         作詞 麻生圭子 作曲 大内義昭 編曲 戸塚修
解説 椎名さんのサードアルバム『W CONCERTO』の8曲目と15thアルバム『S』の7曲目に収録。椎名ソングには珍しくタイトルと同じ歌詞がいきなり冒頭で出てくる(若干記述が異なるが)。タイトルと同じ歌詞は大抵サビか締めに使用される事が椎名ソングでは多いので(例外「昨日、霧雨のギャラリーで」)、これは珍しい。
 歌詞の要旨は誤解を恐れずに書けばむしゃくしゃした気持ちを、車を疾走させる事で晴らしたい気持ちである。それも「夜毎」であるところに注目したい。
 タイトルの「夜毎、ハイウェイを飛ばす女」「女」とは主人公の事であろう。走りに憂さを晴らす暴走族の如く「ハイウェイを飛ばし」ている主人公は「夜」と言う時間と、車内と言う密室の中に自己の自由な時間と空間を得ている。
。  夜の車内にいない時の主人公の自由を奪っている物−それは「哀しむ」という行為へ走る余地を持つ時間的「余裕」とついついかけてしまう「電話」である。そしてそれらを生むのは「夢を一つずつカタチにしていく度 愛から遠ざかる 寂し」さであある。
。  「女」=主人公は運転に集中せざるを得ない「ハイウェイ」での疾走の中に、「あなた」「人」も眠る「夜」と言う時間に「人は人」と言い切って自由な世界に居住する………そういう姿が果たして美しいかどうかは個々人の判断に任せる。
 ダンエモンはバイク乗りなので、疾走で憂さを晴らす気持ちはある程度は理解できる(徒党を組んで騒音を撒き散らしてデカイ面して悦に入る気持ちは理解できんが)。だが端的に言ってダンエモンは主人公にとって「ハイウェイを飛ば」す行為は不要の物なって欲しい。
 最後に注目しておきたいのは「苗字が変わったとクラスメイトたち 自由でいいねと口では言うけど」だが、「自由でいいね」とは皮肉とも取れるし、本音とも取れる。結局のところ人間はない物ねだりする生き物である。
 独身者は愛に飢え、所帯持ちは自由に飢え、互いに自己にない境遇を羨ましがる。そしてただダンエモンは選択の余地なく独り者である事に歯痒い思いをするのであった(苦笑)。


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