バダン帝国 悪の組織横の繋がり

 旧ナチスの流れをくみ、ショッカー以来のやり方で第三帝国の確立=世界征服を企む秘密結社で、親玉は首領ではなく総統と呼ばれている。
 「仮面ライーダーZX」はそれ自体の番組がなく、雑誌掲載用に誕生したライダーで、映像で観るには仮面ライダー特集の特番がビデオ化されているのを観るしかない。それゆえバダンには不明な点(つまりシルバータイタンが把握していない点)も多い(日本以外の支部の有無や縦横の関係など)が、様々な資料からどうもこの組織は時空を操ることができたようで、過去の悪の組織であるデストロン・ゲドン・ネオショッカー・ドグマの改造人間達も配下にしていた。更に幹部である暗闇大使は彼のショッカーの大幹部・地獄大使の従兄弟である。
 組織としてはバダンには総統→幹部→改造人間→コンバットロイドの形がうかがえるが、改造人間の中にあってZX(彼は脳改造の手術も施されており、自己で自意識を取り戻すまでは完全なバダンだった)とタイガーロイドはそれぞれ村雨良(菅田俊)・御影英介(中屋敷鉄也)の名前が残され、暗闇大使の彼らに対する接し方からもランクの格差があるものと思われる。
 他の改造人間達のプライベートが出ないだけのことかもしれないが。また科学者は拉致してきた人材でまかなわれ、用が済めば抹殺であることからほぼ完全な軍事組織といえる。そんな組織は当然実力―戦闘力が物を言う。
 暗闇大使が村雨と御影の二人には親しげだったのはそのためだろう。血の気の多い組織を率いるには二つの手段がある。徹底した膂力で配下に自分には敵わないという意識を植え込むか、組織に絶対必要でかつ配下にはない能力を示すことである。
 勿論バカ強いだけのキャラは番組として面白くない、その意味ではこの組織の幹部のリーダーシップは現実の組織でもとても参考になる筈なのだが、如何せん特番しかないからなぁ……(嘆息)。

暗闇大使(潮健児)

 バダンの大幹部にて実質総帥でもある。ショッカーの地獄大使の従兄弟だが、そっくりなその容姿(同一人物が演じているから当たり前だが)・コスチューム 名前とは裏腹に性格的にクールで激昂しやすい地獄大使とは犬猿の仲である。
 しかし、「おのれ、地獄大使!!」と敵意を露にする1号ライダーに「あんな奴と一緒にするな!!」と怒っていた。ウーム、本当にクールなのか?
 クールな性格に関連してか彼は実力主義者の非情な人間(?)と見える。有能と見れば親しく接し、度々声をかけるが、用なし・邪魔者と見ると死あるのみで、オーソドックスな悪者とも言える。
 また用心深い性格で時空破断システムを動かすのに必要なエネルギーであるバダンニウム84を2tトラックのコンテナ1台分輸送するのに7つのルートを用意していた。7つのうち6つを9人ライダーに襲撃され、警備をしていた改造人間達は仮面ライダー達の前に情けないほどの敗走を重ねていたが、結果として1台が仮面ライダーに見つかることなく、輸送の任務を達成したわけだから暗闇大使の作戦の目の付け所は間違っていなかったわけだ。
 またクールな一方で改造人間達の前で、ショッカーからジンドグマまでの歴代組織の名を語って戦意を高揚させたり、阿修羅谷のアジト近くに新旧改造人間を左右に分けて並べ、背後にコンバットロイド達を従えて10人ライダーを迎え撃つなど、なかなかパフォーマンスも好きなようである。
 更に悪役お馴染みの人質作戦も敢行、三年ぶりの悪の組織として、地獄大使の影を引き摺る立場として悪のお約束の演出を僅か1時間の時間枠内に要求された暗闇大使の立場は大変である(笑)。
 ライダー達との決戦で形勢不利と見た暗闇大使は人質をたてにライダー達に抵抗の中止を要求するが、仮面ライダースーパー1にあっさり人質を奪還される。さすがに10人もいると目が回らない様である(笑)。進退極った暗闇大使は体内に埋めこんだ時空破断システムのコントローラーを起動させてライダー達を亜空間のようなところに落としこめて苦しめるが、10人ライダーはエネルギーを結集させたライダーシンドロームを放ち、突出したZXがZXキックを決めた。
 致命傷を追った暗闇大使は「暗闇死すともバダンは滅びず…万歳!!これまたどこかで聞いたような台詞を残して爆死した(ちなみに元ネタとなった台詞は板垣退助が暴漢に刺された時に発したものだが、この時彼は死を免れた上に、刺した本人が後に面と向かって謝罪していることを付け加えておく)。
 尚、雑誌掲載によると暗闇大使意はサザンクロスというサザエの改造人間の正体があるのだが、映像では未登場。
 暗闇大使を演じるのは地獄大使同様、潮健児氏。氏についてはショッカーの地獄大使の項を参照していただきたい。



 さて、上記までは特番及びその前後に世に出た書籍を参考にしたものであるが、2001年直前にマガジンZ誌上にて村枝賢一氏による仮面ライダーZXのリメイクとも言える『仮面ライダーSpirits』が登場し、これまで謎の多かったZXの世界に光を当ててくれている。
 同誌によると暗闇大使の本名は「ガモン」、従兄である地獄大使の本名は「ダモン」で、3ヶ月しか違わない年齢差とそっくりな容姿から二人で一人を演ずる奸智を駆使し、「ガモン共和国」に独裁者として君臨していた過去が描かれている。
 バダンに関しても「神に愛されし者達」の意味を持ち、改造人間達も拳法家(アメンボロイド)、墓荒らし(タカロイド)、ICPOの刑事(タイガーロイド)、無から生まれたもの(ジゴクロイド・カマキロイド・カニロイド)と多彩で決して一枚岩の組織でない事や、総統がショッカーからジンドグマまでの全ての組織と何らかの関わりがあったことがほのめかされている。
 ほとんどゾンビみたいな中途半端な蘇生を施された地獄大使と総統のやり取りは総統=ショッカーの首領としか思えない。
 同作品は2004年8月現在も連載中ゆえにこれ以上の論述は控えるが、今後の展開次第で更なる追記・更新が行われる可能性は極めて高く、シルバータイタンとしても楽しみが多いことは疑いない所である。
戻る