地球の双子星であり、運命を共にする怪魔界を統治する帝国。クライシス皇帝を頂点とする絶対帝政を敷いている。怪魔界は地球の環境破壊のあおりを食って崩壊に向かっており、クライシス皇帝は地球への移住を決断。勿論そのためには先住民であるノンマルト…もとい、地球人を屈服させる必要がある(←わかる人だけ笑って下さい)。
そこで地球後略の為に選抜されたのが、最高司令官のジャーク将軍と、怪魔獣人・怪魔妖族・怪魔ロボット・怪魔異星獣をそれぞれ率いる、海兵隊長ボスガン・諜報参謀マリバロン・機甲隊長ガテゾーン・牙隊長ゲドリアンである。彼等は地球環境に耐え得る強化細胞を移植しており、それぞれの軍閥の能力を活かして、地球侵略・避難民受入工事・RX抹殺に邁進するのである。
勿論、大幹部というものを見た時に、この四つの軍属同士の絡みと、それを統括するジャーク将軍の関係は見物だ。四幹部には多少のいがみ合いがあるものの、クライシス帝国の位置する怪魔界が崩壊の危機を抱えているので地球攻略の為の仲間との意識は充分にあり、ジャークもまた四人の幹部を同士と思い、時には皇帝の意に反することもある。
その一方で四人の幹部の中には人種の違う者もいれば、野心家もいる。憂国と野望が共存する組織としてもこのクライシス帝国の地球攻略兵団には興味深いものがある。
また、番組後半には査察官としてダスマダー大佐が地球にやってきて皇帝陛下の代理人、という立場を利用して様々な横槍を入れたことも幹部達の在り様を興味深いものにしていた。
1.最高司令官ジャーク将軍(高橋利道)
クライシス皇帝から地球攻略の総指揮を命じられた将軍。黄金の鎧に身を固め、錫杖を手になかなかの威厳である。大まかな作戦立案を担当し、四人の配下にRXの暗殺や移民団受入施設の施工を命じる。
命じるだけでなく、部下の提案もよく受け入れていた。また本国よりの勅令は全てジャーク将軍を通じて行われる(ボスガンにも盗み聞きはできたが)。
基地から出ることは少なかったが、大掛かりな作戦の際にはクライス要塞の外に出ることもあった。総司令官として彼は信賞必罰に公正で、有能と見れば純粋なクライシス人でなくても重用し、逆に抜け駆けや任務の失敗に対しては純粋なクライシス人であっても厳罰を与えた。
その罰は軽いものでは進行中プロジェクトからの解任、中ぐらいでは二十四時間痺れに苦しめるもの、重いものでは指揮下からの追放が執行された。また隊長より格が下の物には直接処刑を命ずることもあった。が、基本的には仲間を大切に思っており、RXとの最終対決では先に倒されたボスガン・ガテゾーンの敵討ちを宣し、査察官のダスマダーが独断でマリバロンを処罰しようとしたときはダスマダーを闇討ちし、同士であるマリバロンを査察官如きに殺させはせん、と断言した。
圧巻なのはクライシス皇帝の娘・ガロニア姫が謎の消滅をした時で、養育責任者のマリバロンが替え玉工作をしていると、養育係のムーロン博士(井上三千夫)から報告を受けたときにマリバロンを許して、替え玉工作に全面協力し、作戦が失敗したときには「姫はRXに暗殺された。」と偽りの報告をしてマリバロンを助けた(よく助かったよなあ…二人とも…)。
そんなジャーク将軍だったため四人の幹部も多少の抜け駆けや独断専行があったものの、彼の命令によく従った。ボスガンは一時は次期将軍の地位を狙ったものの、野望成らずと悟ると徹底してジャークの懐刀に務めた。
マリバロンはクライシス皇帝がジャークを処刑しようとしたときは普段犬猿の仲のダスマダーに必死に将軍の助命を願っていたし、ガテゾーンは最後にはジャークと袂を分ったが、権利も利益も無視して次々と怪魔ロボットを開発した。
そして怪魔界で最も暗く寒いゲドラー域から隊長に取り立てられたことに恩を感じるゲドリアンはジャーク将軍から見放されることを最も恐れ、責任逃れの人身御供にされたと見たときは将軍を含め全幹部を皇帝に直訴して処刑してもらおうとまでした。離反した者もあったとはいえ、如何に将軍として大きな物を背負っていたかがうかがえる。
作戦を次々と仮面ライダーBlackRXとその仲間達に打ち破られ、移民団用空港建設すらできず、その過程の中で、ゲドリアン・ガテゾーン・ボスガンの三人の隊長を失い、皇帝から送られた最終兵器・最強怪人グランザイラスも撃破され、マリバロンも十人ライダー抹殺に失敗して顔に傷を受け、終にジャーク将軍も皇帝に裁かれる身となった。度重なる地球攻略の失敗から処刑されるかに見られたが、皇帝はジャーク将軍にかなりの激痛を与えたものの、最強怪人ジャークミドラに変身させ、仮面ライダー打倒を命じた。
RXを倒すため、南光太郎の勤めている佐原航空の社長の二人の子・佐原茂(井上豪)・ひとみ(井村翔子)を人質に取ろうとし、それを守らんと体を張った俊吉(赤塚真人)・唄子(鶴間エリ)夫妻を惨殺した。
茂とひとみを人質に取るのは佐原夫妻の決死の妨害と、駆け付けたV3、ライダーマン、X、アマゾンによって未遂に終わるが、V3とライダーマンのタッグはジャークミドラを倒せず、RXとの一騎打ちになった。ロボライダーのボルティックシューターにも平然とする頑丈なボディーに大刀を振るって奮戦したが、バイオライダーのバイオブレードを目に受け、劣勢に立たされ、皇帝も彼を見放した。RXのとどめのリボルケインを受けたジャークミドラはジャーク将軍の姿に戻り、最後の力を振り絞ってRXの咽喉を締め上げると、「RX、よくぞ私を倒した…しかし、いかなお前でもクライシス皇帝には敵うまい…。」と警告して大笑いしながら爆破炎上した。
ジャーク将軍を演じたのはジャパン・アクション・クラブの高橋利道氏、声を当てたのは加藤精三氏、但し最後の二回は柴田秀勝氏が当てた。高橋氏はこの番組ではキューブリカンやバルンボルン、シュライジンといったクライシス怪人の人間体も演じるとともにガテゾーンの声も担当、その他についてはゴルゴムの大神官バラオムの項を参照していただきたい。加藤氏は「巨人の星」の星一徹を初め数多くのアニメで活躍。柴田氏は「仮面ライダーストロンガー」のジェネラル・シャドゥに続く出番で、詳細はデルザー軍団の項を参照していただきたい。
2.海兵隊長ボスガン(藤木義勝)
クライシス帝国怪魔獣人大隊隊長にして、海兵隊長。純粋なクライシス人として立場的にはジャーク将軍に次ぐものがあり、ナイトの位も授かっている。そしてその気位いから次期将軍の地位を狙ったこともあり、クライシス人ではないガゾーンやゲドリアンをどこか見下していた。
彼の率いる怪魔獣人達は全て頭に「ガイナ」とついていた(意味は不明)。彼らを率いてジャーク将軍の命令を遂行するボスガンはそのプライドの高さから色々と気が多い。RXを倒すのは自分だ、との気負いもあり、得意の剣術でもって何度もRXとも干戈を交えた。作戦の成功よりもRXを自らの手で倒すことにこだわっている節があり、他の幹部との共闘もジャークの命令がない限り拒否していた。
そんな彼が一度だけ自ら将軍になる野心を燃やした。怪魔通信で皇帝からジャークに半年以内に地球攻略を遂行しないと処刑する、と宣したのを聴いたボスガンはジャークから命ぜられた皇帝陛下への生贄・さそり座生まれの花嫁5人を拉致してくる任務を遂行しつつ、ジャーク処刑後を見越して、皇帝への覚えを目出度くする為に独断でRXを打倒しようとした。剣でもってRXを倒そうとしてロボライダーの体を斬り裂けずに剣が折れると、今度は怪魔稲妻剣を作ってロボライダーに備えると一世一代の姦計に出る。南光太郎の周辺の人間を襲っては光太郎に関わるとひどい目に遭うと恫喝し、光太郎を孤立させようとするが、佐原兄妹も霞のジョー(小山力也)も光太郎から離れず、ジョーに重傷を負わせたボスガンはRXの怒りを買い、共に作戦遂行に当たったガイナギンガムはRXに倒され、ボスガン自身も敗走した。抜け駆けもジャーク将軍に見抜かれており、ジャークは怪魔稲妻剣を砕いて笑っただけでボスガンには何の罪も問わなかったが、ボスガンは失敗を悟り、その後はジャークの懐刀に徹した。
再びジャークに忠誠を誓ったボスガンは査察官ダスマダーが来るに及んで時にはダスマダーの真意を探るためにダスマダーに偽ってへつらったこともあったが、最後の配下ガイナジャグラムを失い、ゲドリアン、ガテゾーンが死すに及んで自ら打倒RXに出陣し、皇帝から送られて最強怪人グランザイラスとの共闘も拒否し、1号からZXまでの10人ライダーや霞のジョー、白鳥玲子(高野槇じゅん)、的場響子(上野恵)達が見守る中で電磁波剣を振るって最後の一騎打ちを敢行、RXのリボルケインを受け、最後の力で左肩に装備した短剣をRXの左肩に突き立てるが、奮闘もここまで、「おのれRX、私は負けん…貴様などには…負け…。」とうめいて爆発すると洋上の妖気となって消滅した。
ボスガンを演じたのはジャパン・アクション・クラブの藤木義勝氏。声を当てたのは飯塚昭三氏。藤木氏の詳細は不明。飯塚氏についてはゴルゴムの大神官ダロムの項を参照して欲しい。
3.機甲隊長ガテゾーン(北村隆幸)
正体不明の怪魔ロボットで、自らが造る怪魔ロボット大隊を率いる機甲隊長である。拳銃とスーパーバイク・ストームダガーを武器に怪魔ロボットの援護もよく行っていた。また首と体は着脱可能で、平将門よろしく首だけで飛んでいって敵を牽制することもあった。ジャーク将軍の指令に対して承知の意を示すとき、右拳を左肩に当てて「ははっ!」と返事するのが通例であるのに対して、ガテゾーンだけが「アイアイサー」で統一していた。
怪魔ロボットである以上彼も誰かに作られたと思われるが、製造者は不明である。また如何なるプログラミングか、彼は地位や権力には全く無頓着で純粋なクライシス人でないもの同士、ゲドリアンとコンビを組むことも多かった。彼にとって最大の関心は自らの製造するロボットや立案する作戦が功を奏するか否かが全てで、RX打倒の為に自らの命令に従わず,皇帝の怒りを買って解体されたスクライドを復元したり、過失からRXを怪魔界に連れてきてしまったデスガロンの処刑命令に対して弁護したりもしていた(通らなかったが)。ここに彼の自らのロボット制作力に対するプライドと隊長としての姿がうかがえる。そして彼の製造する怪魔ロボット達はデスガロン、クロイゼル、エレギトン、ガンガディン、キューブリカン、スピングレー、スクライド、etcと他の軍属よりもRXを苦しめたものが多くいた。
権力や名誉よりも、作戦実行や自らに行動の場を与えてくれることにこだわったガテゾーンはそれが短所でもあった。二度に渡ってジャーク将軍の許可も得ずにダスマダーの作戦に参画した。一度は不問にしたジャークも二度目はダスマダーに従うなら指揮下から追放する、として最後の選択を迫った。ガテゾーンは自らの信念を通し、ジャークから隊長の座を奪われ、指揮下からも追放された。何もかも失ったガテゾーンは最後にして最強のスーパー怪魔ロボットヘルガデムをダスマダーの作戦に提供することを条件にダスマダーからクライシスチャージャーを譲り受けて、それをストームダガーに取りつけて4倍にパワーアップしたニューストームダガーに改造して搭乗し、ヘルガデムと共にRXを追い詰めたが、仲間たちの助力を得たRXの前にネオストームダガーは破壊され、ヘルガデムも致命傷を追った。ヘルガデムが最後の力を振り絞ってRXを押さえこむとガテゾーンも自分のボディにもRXを押さえこませ、首を離してRXをボディの爆弾で爆殺しようとしたが、RXはバイオライダーに変身して逃れ、残された頭部もRXキックを食らった。死を悟ったガテゾーンは顔面から最後の光線を発したがかわされ、「地獄で待ってるぜ、RX!!」と叫んで爆死した。
ガテゾーンを演じたのはジャパン・アクション・クラブの北村隆幸氏で、声は高橋利道氏が担当。北村氏は前番組である「仮面ライダーBlack」にも参加していたことが分っているが詳細は不明。高橋氏についてはゴルゴムの大神官バラオムの項を参照していただきたい。
4.牙隊長ゲドリアン(渡辺実)
怪魔異星獣大隊を率いる牙隊長。彼は特撮界の悪役の中ではゴルゴムの剣聖ビルゲニア、ドグマ王国のメガール将軍に次いで屈指の不幸な存在かもしれない。その生まれも、その最後も。まずボスガン・マリバロンが純粋なクライシス人なのに対して、ゲドリアンは死の砂漠と化した怪魔界にあっても最も寒く暗いゲドラー域の出身である。ゲドラー域に関してはそれ以上の詳細は不明だが、彼の地を出身とするゲドリアンが隊長に取り立てられたことを物凄く感謝していることや、その地位に並々ならぬ執着を見せていることからも、異例の出世であり、怪魔界の中にあっても被差別の地ではないかと思われる(余り使いたくない表現だが…)。そのためか、純粋なクライシス人でないもの同士のガテゾーンとの共闘が多く、共によく前線にも出ていた。更に査察官ダスマダーの皇帝代理人の名を笠に着た専横や外来の協力者だったシャドームーンに最も敵意を燃やしていたのも彼だった。見ようによってはみっともないほど自分の地位を脅かされることに神経過敏になっていた(それが全くの邪推でも)。だが結局彼の死は孤独だった(詳細後述)。
ゲドリアンは部下にも恵まれていなかった。怪魔異星獣達は怪魔ロボットや怪魔妖族に比べてもRXを苦しめたことは少なく、マッドポットに至っては脅されてシャドームーンの手先になり、捕えられて懲罰を受けるや卑屈なまでに平謝りして許されていた。それゆえか、ゲドリアンは幹部達の中で最も感情の起伏を露にし、前線にも立ち、時に四つん這いになって素早く跳びはね、動き回る姿はアマゾンライダーばりのアクションで、まさに獣であった。その割にはRXとの直接の戦闘が全くなかったり、シャドームーンやダスマダーに念動力による攻撃を受けたりでそのアクションの影の薄さが惜しまれる。
ゲドリアンの最期はクライシス皇帝から地球攻略軍に送られた「最終時計」に始まる。最終時計こそは皇帝からの最後通告で、ピラミッド型の水時計の中の赤い液体が満杯になる前に皇帝の怒りが解けないと時計が爆発し、どこに逃げようともその爆発による処刑から逃れられないという代物で、勿論ジャーク将軍以下四大幹部、ダスマダーは大慌てとなった。衆議は早急にRXの首を挙げることと決し、ゲドリアンはこの日の為に自らの細胞から育て上げた最強最後の怪魔異星獣ゲドルリドルと共に出陣することを進言してジャーク将軍に許可され,普段は共闘することも多いガテゾーンの協力さえ拒否した。
弱い連中が多かった怪魔異星獣の中で、ゲドリアンが心血を注いだだけあって、ゲドルリドルは強く、RXのキングストーンのエネルギーさえも吸収してRXを追い詰めた。ここから悲劇は始まる。いざRXに止めを刺そうとすると、ダスマダーが現れ、「RXの首は私がとる!」と言って手柄を横取りしようとし、ゲドルリドルをいきなり斬った!ゲドルリドルは手のひらサイズになり、怒るゲドリアンとダスマダーがもめている間にRXの逃走を許した。
怒り心頭のゲドリアンに散々に要らざる横槍の為にRXを逃したことを散々詰られたダスマダーはしばしうなだれていたが、一転逆ギレして「RX打倒失敗の責任者ゲドリアンを皇帝陛下の名の元に処刑する!」と言ってゲドリアンに斬りかかった(き、汚すぎる…)。ただでさえ任務を邪魔された上に濡れ衣まで着せられたゲドリアンはますます怒り、ダスマダーとの同士討ちとなった。サーベルを振るうダスマダーに徒手空拳ながら身軽な体術で若干勝負を有利に運ぶゲドリアンのもとにボスガンとガテゾーンをジャーク将軍が放ったが、これは意外なことにダスマダーに加勢する為だった。どう見ても非はダスマダーにあり、普段ならゲドリアンに味方する筈だったジャーク、ボスガン、マリバロン、ガテゾーンだったが、最終時計への恐怖から誰かが犠牲にならないと皇帝の怒りを解けないと判断し、戦友を切り捨てることを決断した。盟友ボスガンやガテゾーンにまで攻撃されたゲドリアンは口を極めて彼らを罵った。さすがにボスガン達も気まずそうだったが、ダスマダーの指令でバズーカ部隊がゲドリアンを砲撃し、ゲドリアンは縮小体となったゲドルリドルを懐中に収めるや悲鳴と共に姿を消した。
しかしそんなせこい意図が知られていたのか最終時計は消えなかった。焦る幹部達はゲドルリドルとの戦いで負傷した南光太郎を躍起になって捜索した。ところが突然クライス要塞に異変が起きた。エンジンルームのエネルギーが基地外に放出され出したのである。ジャーク将軍達が基地内に戻るとエンジンルーム警備のチャップ達が叩きのめされており、そこにはエンジンのエネルギーを自分の体に注入させて基地の外へ放出するゲドリアンがいた。ゲドリアンは要塞のエネルギーを自らの体を媒体として外にいるゲドルリドルに送り、RXを倒させ、その手柄をもとに皇帝に直訴してジャーク以下の他の幹部達を処刑してもらおうとしていたのだ。ダスマダーが止めようとするとげドリアンは近付けは基地内のエネルギーを逆流させて要塞を爆破する、と脅した。ガテゾーンが自らの体を媒体にするゲドリアンに「体がバラバラになるぞ!」と諭して止めようとしたが、「俺の体がバラバラになるのが先か、ゲドルリドルがRXを倒すのが先か、どうせ一度は消された命だ!!」と怒鳴り返して死人と化した者の覚悟と気迫を見せつけた。ジャーク達は為す術なく成り行きを見守るしかなかった。
ゲドリアンの決死のエネルギー補給にRXも苦戦を強いられたが、エネルギー充填の0.01秒の隙を突かれてゲドルリドルはリボルケインを受けて爆死し、送るエネルギーと行き場を失って逆流するエネルギーを同時にもろに受けたゲドリアンは大絶叫を残してその体は一塊の砂となった。しばし呆然とする一同の中でガテゾーンは変わり果てたゲドリアンの体である砂を握りその名を呟いていた。しばらくして我に返った一同が最終時計のもとに駆けつけると一堂の目の前で最終時計は消滅した。一同が安堵の溜息をつく中初めてクライシス皇帝の声が基地内に響いた。大慌てで膝を折る五人に皇帝はゲドリアンの忠誠に免じて最終時計による処刑を取り消したことを宣言した。ここにRX打倒に失敗したものの、最終時計を消してもらうことと、裏切者の汚名を雪ぐというゲドリアンの二つの目的が達成された。その命と引き換えに……。
突然の名誉回復のからくりを明かすとそれはダスマダーの正体にある。査察官ダスマダーの正体はクライシス皇帝その人で、さすがに彼はばつが悪かったのだろう。自らRXの首を欲する余りゲドリアンの作戦を台無しにし、成り行きから自らの非を認められず、こともあろうにゲドリアンを罪人呼ばわりしてジャーク達と共に彼を人身御供にしようとしたのだから…。そんなダスマダーを皇帝と知らず、散々な目にあいながら最後まで皇帝を信じ、打倒RXに邁進した彼に皇帝自身も少しは罪悪感があったと見える。それゆえに既に死んでしまったゲドリアンの忠節に触れ、彼の名誉を回復させたのだろう。
ゲドリアンの身軽なアクションを演じたのはジャパン・アクション・クラブのスタントマン渡辺実氏。声を当てた声優は新井一典氏である。渡辺氏は前作『仮面ライダーBLACK』においても高橋氏・北村氏とともにJACのメンバーとして参加している。また新井氏は第37話において怪魔獣人ガイナニンポー率いるチャップ悪魔分隊に襲われた風神村小学校の先生役で登場している(←BBSに書き込まれた方の協力で知りました)。
5.諜報参謀マリバロン(高畑淳子)
怪魔妖族大隊隊長にして諜報参謀。純粋なクライシス人であり地球攻略兵団の紅一点でもある。
彼女を初めとする怪魔妖族はマリバロンの大伯母にして二千年の命を持つ百目婆ぁを頭領に毒を食らっての平気な体や妖しげな妖術を武器にRXを苦しめていた。それを率いるマリバロンは諜報参謀といる立場からか間諜作業も多く、本国に戻ったり、情報収集に勤しんだり、度々変装しては南光太郎の前にも姿を現していた。それゆえ時には口から吐く火の玉や手から出すビーム型の鞭を振るってRXと戦うこともあった。そしてまた彼女はクライシス皇帝の息女ガロニア姫の教育係でもあった。
彼女は絶妙のバランスで悪の組織の女性幹部を演じている。純粋なクライシス人であり、プライドの高い彼女は正体不明のガテゾーンやゲドリアンに対して多少見下したような態度が目立つ一方でジャーク将軍を深く尊敬し、彼を詰るクライシス皇帝やダスマダーにもはっきりと怒りを示した。そしてジャークの為には下げたくない頭を下げ、彼に敬意を示さない者には外来者にも黙ってはいなかった。そして諜報参謀という立場上時には非情になることも多いが、決して感情のない人間(?)ではなかった。更に大伯母百目婆ぁや仲間達の死に対して彼女が見せた表情やバイオライダーに顔を着られて傷を受けたことに対する凄まじいまでの怒りは女性ならではの好演だった。念の為に論述しておくが、これは女性を差別しているのではない。女性であることを踏まえた上で見事に演じている、と誉めているのである。
マリバロンには大きな動きが四つばかりある。第一はガロニア姫消滅事件で、皇帝陛下のご息女の謎の消失に呆然としたマリバロンは過失したチャップを金の羽で刺殺し、替え玉を見つけてきてこの事実を隠し通す事を決める。事が皇帝の耳に入れば自身の命は勿論ジャーク将軍以下全員が処刑されることになりかねない。彼女は勿論将軍にも隠して独断で事を運ぼうとするが、養育係ムーロン博士はジャークに報告する。ジャークは自らの死を願い出るマリバロンに替え玉作戦の実行を命ずる。感極まったマリバロンは佐原ひとみを攫い、ガロニア姫としての記憶と能力を身に付けさす為に怪魔界へと飛ぶ。結局事はRXの妨害の前に失敗するが、ジャーク将軍は「姫はRXに暗殺された。」と皇帝に報告することにして彼女を許した。この後誰も処刑されなかったのは納得のいかない奇跡だが、ジャーク将軍とマリバロンの絆の強さも見逃せない。ちなみのこの一連の事件の最中にRXを怪魔界に連れ込む失策のためにジャーク将軍から処刑の命が下り、仲間の怪魔ロボットからも襲撃されて孤立した怪魔ロボット・デスガロンはマリバロンのもとに走って、RX打倒を条件の助命を願いで、彼女も「成功した暁には私がジャーク将軍にとりなそう。」と言っていた。このマリバロンの台詞は嘘だが、クライシス帝国の組織上の人間関係がうかがえて興味深い。
二つ目はクライシス帝国の貯水場襲撃計画で、ゲドリアンは貯水場襲撃、ボスガンは強奪した水を怪魔界に送り、ガテゾーンがその中間施設の警備を担当する中でマリバロンは水を断たれた都民に水が欲しくばクライシス帝国に服従せよ、と給水装置を運んできて強要した。引き上げるところを南光太郎がつけてきて水の在り処を探ろうとするが、配下の道化師の足音がいつもと異なるのに気付いて光太郎の尾行を看破する(光太郎はこっそり道化師のチャップを倒して自分が成り済ましていたのだ)。伊達に諜報参謀をやっていないとシルバータイタンは妙に感心した。この時マリバロンは「光太郎、お前は強い。私は強い男が好きだ…。」と男の好みを言及していた(笑)が、これは冗談だろう。「お前がクライシス皇帝を倒せたら(地球侵略の断念を)考えないでもない。」というのも光太郎に皇帝を倒せまい、と信頼するからこそ言えるのだろう。
三つ目は地下帝国計画である。RXの妨害の前にクライシス帝国は移民団受け入れ施設の建設もままならず、移民団第一陣500名は地球環境に拒絶反応を起こして苦しみのた打ち回りながら全滅した(敵とはいえ、侵略者とはいえ悲惨だった…)。この大失態を前にマリバロンは地下都市の建設を進言する。地下なら閉ざされた空間なので怪魔界と同じ環境を作るのも容易であり、ジャーク将軍は名案として許可した。マリバロンは発言者として工事担当者となり、地球人を攫ってきては工事にこき使ったが、当然これはRXの疑惑を招く。それ自体はマリバロンは百も承知で、二十三重に罠をはるが、ここに彼女の仇敵が登場する。それは水の妖精・的場響子(上野恵)、先の浄水場破壊計画で殺された所長の娘で、水をたてに人々に服従を強いる帝国への怒りから水を操る超能力を身につけ、マリバロンの服従強要計画をぶち壊した少女だった。マリバロンにしてみれば「ひどい!あんまりよ!そんなのありぃ!?」という気持ちだったろう。だから怪魔妖族天空がスパイとして潜入していた響子を捕えるや嬲り殺しにする為にその場での処刑を止める(これが作戦の崩壊に繋がるお約束であることは言うまでもない)。響子への怨念と先に全滅した移民団への悔やみを露にする彼女はRXの前でうっかりと、彼女達が地球で行動できるのは地球環境に耐え得る強化細胞を身に着けているからである、というクライシス帝国の極秘中の極秘事項を漏らしてしまう。地下都市も壊され、うなだれるマリバロンにダスマダーが任務失敗と秘密漏洩の咎でマリバロンを処刑しようとする。金の羽を構えて迎え撃とうとするマリバロンの目の前で突然ダスマダーが倒れた。背中には刀が刺さっており、その背後にジャーク将軍がいて、曰く「マリバロン、そちは余の同士だ。ダスマダーごときに殺させはせん。」と宣言した。再び感動する彼女、ここにも二人の絆の強さがうかがえる。
四つ目はクライシスとライダー達の最終決戦である。ゲドリアン、ガテゾーン、ボスガンといった盟友達が次々と命を落とす中でマリバロンはダスマダーが皇帝から送られた最終兵器である最強怪人グランザイラスをジャーク将軍とは別系統で動かし、仲間を救援させないことに怒りを露にしていた。そしてそのグランザイラスがRXと共に爆破四散するとマリバロンも残された十人ライダー抹殺の為に究極の妖術を発動する。それは過去にRXに倒された獣人、ロボット、異星獣、妖族達を霊界怪人として甦らせるもので、霊界怪人達は不死身で妖術の元である金の羽を張らない限り未来永劫に渡って暴れつづける、というもので、さしもの十人ライダーや霞のジョー達も為す術がなかったが、ついマリバロンがからくりを披露した為に彼女の足下に水滴となって潜んでいたバイオライダーに金の羽を奪われ、彼女は左目の下に刀傷を受けてバイオライダーへの呪詛を残して姿を消した。そしてこれが彼女の最後の作戦となった。
事ここに至ってジャーク将軍は自らの出陣を宣言、一方クライシス皇帝はジャーク将軍を処刑しようとする。マリバロンは必死になって普段仲の悪いダスマダーに皇帝へのとりなしを懇願した。結局皇帝はジャーク将軍を最強怪人ジャークミドラに変身させて出撃を命じた。そしてそのジャークミドラの危機に再び彼女はダスマダーに救援を要請したが拒絶された。完全に気落ちした彼女は殆ど感情も顔に出すことがなくなり、ダスマダーの指示するままに南光太郎を皇帝との階段に呼ぶ使者に発った。その会談で皇帝は光太郎をジャーク将軍の後継者とするので家来になるようにと光太郎を懐柔しようとする。
その瞬間彼女に感情が甦った。いかに皇帝の命とはいえ、自らの顔に傷をつけ、多くの盟友の命を奪った南光太郎が仲間に、しかも自分の上司に迎え入れることは彼女には到底受け入れることができず、皇帝の命でも従えないことを宣言して、単身光太郎に襲いかかった。しかし皇帝は自らの命に従わないマリバロンを反逆者と断じ、光線を出して彼女の金の羽を叩き落し、マリバロンの腹に槍状の光線を命中させた。致命傷を負い、立つこともままならなくなった彼女は最後の金の羽を両手で持ち、頭上に掲げて、一言「光太郎!!」と絶叫して全身を炎に包んで消滅した。ここに地球攻略兵団の幹部は全員が命を落としたこととなった。
マリバロンを演じたのは高畑淳子女史。悪女や烈女の演技に優れた女優で、「3年B組金八先生」や大河ドラマ「毛利元就」で彼女の好演を確認している。解くに大河ドラマで尼子国久の未亡人として、父や祖父を超えようと躍起になって家臣を省みない息子勝久の頬を叩いて、夫の遺志を諭した好演は忘れ難い。更にこれは個人的意見だが、高畑さんは歴代悪の組織の女性幹部の中でシルバータイタンの一番の好みのタイプである(ぽっ)。
6.査察官ダスマダ−大佐(松井哲也)
実のところこいつを「幹部」にカウントするには躊躇いがある。というのも査察官とは真っ赤な偽りで彼こそはクライシス皇帝その人(?)だからである。
地球攻略が進まないことに業を煮やした皇帝の命で査察官としてやってきた,という触れこみでやってきた彼は皇帝陛下の威をかさに着た査察官を演じて、作戦に口出しをしたり、自らがジャークを差し置いて作戦を立案・指揮したり、作戦失敗を報告する、と言って彼等を恫喝しては作戦遂行に活を入れていた。その為時々サーベルをちらつかせてはかなり他の幹部達の怒りを買っていた。「私の声は皇帝の声。」という態度を取るわけである。そしてときにはRXとも刃を交えた。
こいつの行動には疑問が残る。ダスマダーがどう?と言うよりは設定の不備とも言える。先のゲドリアンの最期や彼自身が壊した作戦を他の幹部の責任にして詰ることなど本末転倒も甚だしく、また彼が虎の威を借る狐と目されて、彼の指示が無視されたり、時には闇討ちされたことも考えると、皇帝が査察官に化けて地球にやってきたのはマイナスにこそなれプラスにならなかった、とシルバータイタンは考える。よって幹部としての彼にはこれ以上触れない。参考になるところは少なく、「余計なちょっかいを出す奴」というのが、彼の役所と見るからである。ただ彼の存在が他の幹部達の結束や対人関係を際立たせた面は無視できないので紹介はさせてもらった。
査察官ダスマダー大佐を演じたのは松井哲也氏。他番組での活躍は未確認。甘いマスクに中性的な雰囲気を湛えた青年然としていて、お坊ちゃまや鼻持ちならないエリートやキザな二枚目の役に秀でた俳優と見た。
平成二三(2011)年九月一八日 最終更新