ガキの頃のように

作詞 荒木とよひさ 作曲 堀内孝雄 編曲 川村栄二

解説 べーやんの20thシングルにして、昭和63(1988)年に始まった『はぐれ刑事純情派』Part1の主題歌。実にこの後18年に及ぶロングランの先駆け曲だけあって、ドラマに在っても歌入り、メロオケの両方が遺憾なく流されていた。

 歌詞のコアは究極なまでの素直な心ではあるまいか?冒頭の「もう少し時が 過ぎるまで お前の胸で 眠っていたい」という甘えん坊な態度を見せつつ、「本当はもっと 淋しくなるから」「想い出なんか じゃまになるだけさ」というように過去に拘り続けても仕方のない現実を嫌になるほど主人公は理解している。

 故に「泣くんなら 泣いちまえ」との半ば自棄糞な叫びも、意地を張っても戻れない「ガキの頃」に、せめて心の叫びだけでも戻って泣いてみたい、そんな心境に聞こえてくるのが何とも云えない。

 だがもっと深層で注目したい歌詞は「俺らしく そうさ俺らしく ここまで生きて 来たじゃないか」である。
 結局の所、過去は未来への糧とする為にあり、戻れぬ事を嘆く為にあるわけではないのである。「俺らしく」生きて来た過去があって、それを貫いてくれば当然その過程で様々な衝突がある。だからこそ「泣くんなら 泣いちま」うことが、「涙がかれてしまうまで」できるのだろう。

 人間は、本気で挑んでこなかったことの為にしか、本気で泣く事はないことを常々心に留めたいものである。



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令和五(2023)年九月一五日 最終更新