ガランダ−帝国 王者の在り方

 古代パルチア王朝の流れをくみ、ゲドンなどの悪の組織を背後から操っていた暗黒組織である。。「帝国」の名を冠してはいるが、その規模は暗黒結社の域を出ない。
 その目的は世界征服なので、世界を征服すればそれは立派な国家だから、自ら。「帝国」と称するのはある意味気合の表れでシルバータイタンは好きである。
 政党や宗教団体を名乗りながらその実テロリストと変わらない現実の悪の組織(←敢えて断言する)が現国家体制の正当ユニット面をして悪事を行っていることを考えれば、前漢の初め、功臣粛清の嵐に晒された淮南王英布が、劉邦に向かって謀反の理由を「君側の奸を除く。」とも言わず、自らの潔白や釈明を一切行なわず、「皇帝になりたいからだ。」と言って戦場に散った潔さをこのガランダーが堂々と帝国と名乗っていることに感じる。ま、やってることはショッカーなどの組織と変わらないんだけどね。
 ゲドンが最後の最後までアマゾンライダーのギギの腕輪に執着したのに対し、ガランダー帝国は世界征服を第一の目標に、仮面ライダーアマゾンの抹殺とギギの腕輪の強奪を第2としたため、ゲドンよりはかなりスケールが大きくなったと言える。
 ヒエラルキーも従来の組織に近くなった。首領の役割を果たす全能の支配者(真のゼロ大帝)、その下に事実上の総司令官にして王者として組織に君臨する(影武者としての)ゼロ大帝、その下に獣人、そして最下層の黒ジューシャ達、と縦のラインが引かれている。
 ガランダーがゲドンを裏で糸引いていたのは最終回で明らかになった。帝国初登場時に元ゲドン獣人にしてアマゾンライダーの仲間になっていたモグラ獣人がその名前や黒ジューシャにさえ怯えていたことを考えると頷ける。
 (真の)ゼロ大帝がその事実を明らかにした時、「ゲドンなどのありとあらゆる悪の組織を操り…」と言っていたことから、ゲドンのみならず、ショッカーからGOD等の組織をも率いていたのでは?と推測するマニアも多い。
 が、「仮面ライダーストロンガー」の最終回で、デルザーの大首領とアマゾンライダーの台詞から、大首領がゲドンにも関わっていた事がはっきりしたのだが、ガランダーとの接点がはっきりしない。
 となるとゲドンはガランダーと歴代組織の大首領が共同で糸引いていたのか、ゼロ大帝と大首領が同一人物か、と言うことになり、これまた興味が尽きないが、はっきりしているのは哀れなのがこんなわけのわからん連中の為に命を落した、幹部達、改造人間達、戦闘員達と言えるだろう。

ゼロ大帝(中田博久)


 シリーズ初の皇帝である。我々日本人の感覚から言えば、大和朝廷以来続いてきた皇室を如何なる権力者も形式の上でその上に立とうとしたことがなかったことを考えるとかなり大それた奴である(笑)。
 その容姿はガランダー帝国の紋章(炎を象っている)を前立てにした兜をかぶり、SMプレイまがいのマスクで目を覆い、銀色の甲冑の上から赤い服(英国の騎兵隊の隊服のような物)で右半身を覆い、手には騎兵槍を持っている。この騎兵槍はビームも発射可能で、部下の処刑はこのランスビームで行われる。またアマゾンライダーの変身を阻害する力も持つ。俳優のガタイも手伝って、派手ながらもなかなかの威厳である。
 何度か前述しているが、ゼロ大帝は二人いる。真のゼロ大帝と、影武者としてのゼロ大帝である。前者は普段は「全能の支配者」として影武者にすら姿を見せず、幕越しに助言を行っており、前述した姿の上にK○K団のような白装束で身を覆っている。獣人達や黒ジューシャ達との接点は全くない。
 後者は影武者でありながらその姿は本物と全く同じで(当然同じ俳優が演じている)、獣人達や黒ジュー者達には正しく帝王で、影武者と言えど、絶対的な君主である。この書で扱っているのは影武者としてのゼロ大帝が主体である。真のゼロ大帝に影武者以外に接する存在がない以上、リーダーとしての資質を問われるのは影武者のゼロ大帝の方である。
 また、本来首領的な役割を果たしている上に「大帝」を名乗っている影武者だが、上の立場の存在がある以上、彼は「幹部」ともいえる。正と影、本書の趣旨に沿う存在は影武者の方と言えよう。
 (影武者)ゼロ大帝はアジトの外には一回も出なかった。幹部として彼がやっていたことは、作戦の採用(立案は作戦本部や獣人が行う)、実行命令、失敗した物や獣人を脅すことを目的にした処刑が主である。
 ゼロ大帝の長所はどうやって調べているのか不明だが、獣人から黒ジューシャに至るまで、業績もミスもほぼ完全に把握していることである。少なくとも黒ジューシャがゼロ大帝の目を誤魔化す事は不可能だった。
 監視能力を初めとして管理力は抜群で、それゆえに獣人も黒ジューシャも彼に逆らったものは皆無だった。十面鬼とは大違いである(笑)。そこは流石に影武者といえ、「大帝」と呼ばれるだけのことはある。
 短所は処刑の理由が余りに短絡的だということが挙げられる。任務に失敗した者が処刑されるのはやむを得ないにしても、作戦前に獣人を脅す為だけに殺された黒ジューシャ達は決して浮かばれまい。
 もっとも獣人達はある程度、処刑される場合と言うものを納得していたようで、第23話でアマゾンライダーに敗れ、アジトに帰ってきたサンショウウオ獣人は「おめおめ帰ってきたと言うわけか?」と冷やかに言うゼロ大帝に対して、「処刑されることは覚悟の上です。只御報告をと・・。」と言っていた(なかなか潔い奴である)。通常通り、処刑を行なったゼロ大帝だったが、獣人に「ようし、御前の敵は必ずとってやる。安心して死ね。」という言葉をかけていた。残忍ではあるものの部下の覚悟を理解してやるだけの度量はあったようである。
 その次の週の最終回でアマゾンライダーと対峙した際に、「よくも儂の可愛い獣人達を殺してくれおったな。」の台詞には笑わされたが(笑)
 最終回においてゼロ大帝はランスの力でアマゾンを生け捕ることに成功するが、この後致命的なミスをする。アマゾンを捕え、新宿でヘリウム爆弾もセットし、リモートコントロールのスイッチをいれる「ゼロ・アウワー」を待つ状態で悦に入った彼はアマゾンのギギの腕輪を奪うことを宣言する。
 ギギの腕輪を奪えばアマゾンは命を落すし、既に十面鬼から横取りしたガガの腕輪と合体させれば、古代インカ化学の超エネルギーが手に入るのだが、ここでゼロ大帝はギギの腕輪を奪う前にガガの腕輪を持ってこさせたものだから、ガガの腕輪は当然の様にアマゾンのギギの腕輪と合体して、超エネルギーはあっさりアマゾンライダーの物になってしまったのである。
 超エネルギーを手に入れたアマゾンにはランスビームも全く通じず、アマゾンは仮面ライダーアマゾンに変身し、黒ジューシャに化けていた立花藤兵衛はライダーの口からヘリウム爆弾の在り処を聞くと、「この基地にあるリモート・コントロールのスイッチを切る」と言い放つアマゾンに対して、起爆装置解除を引き受けて、爆弾のある新宿に向かった。
 ビームが通じない以上、長過ぎるランスは接近戦の役に立たず、ゼロ大帝はアジト内を逃げながら地の利を活かして長剣や両の拳で奇襲を繰り返したが、何と自分のアジトの中の落とし穴に落ちてしまい、仕掛けられた剣山で串刺しになって絶命した。………しばし開いた口が塞がらなかったが、番組は進み、アマゾンライダーはアジト内のヘリウム爆弾リモート・コントロールのスイッチを切ることに成功し、そこへ全能の支配者が現れた。
 周知の通り、ヴェールを剥ぐとその下からは真のゼロ大帝が出てきたわけだが、影武者の唖然呆然の死に様を考えるとこれは必然的な出来事だったのかもしれない。その真のゼロ大帝もたいして膂力に優れず、投擲槍を放ってアマゾンライダーに攻撃したが、逆に投擲槍を手にしたアマゾンに腹を刺され、大切断で両腕を斬られ、苦悶の声を上げているところをスーパー大切断で斬首され戦死した。
 ゼロ大帝を演じる中田博久氏は悪役の中の悪役である。主演は「キャプテンウルトラ」の本郷武彦以来殆ど無いが、客演となると長期放映を行なわれている番組の殆どに出演していると断言できるだろう。「特捜最前線」、「さすらい刑事旅情編」、「はぐれ刑事純情派」、「水戸黄門」、「大岡越前」、といったシルバータイタンの好きな番組の全部に最低二、三度は出ている。
 マスカーワールドとの関わりも有名である。。「仮面ライダー」では一文字隼人の友人医師・小池役でキノコモルグの解毒剤を調合していたし、「仮面ライダーV3」ではバーナーコウモリの人間体として木からぶら下がり、「仮面ライダーX」ではキクロプスの人間体として、藤兵衛のコーヒー店の前で眼帯をして靴磨きをしていた。「仮面ライダー(スカイライダー)」では主人公・筑波洋の空手の師、という非常に貴重な役をこなしていた(一回限りの登場だったのが惜しまれるが)。
 タイタン役の浜田晃氏や悪魔元帥役の加地健太郎氏、アポロガイストの打田康比古氏、ゼネラルモンスター役の堀田真三氏等も客演をしたことはあるが、四回も出た人は他にはいない。凄いことである。
 ヨロイ元帥役の中村文弥氏やツバサ大僧正役の富士乃幸夫氏、大神官バラオム役の高橋利通氏等は中田氏以上に出ているが、彼等は大野剣友会やJAC(ジャパン・アクション・クラブ)のメンバーであることを考えれば、回数で中田氏と比べるのは適当とは言えない。
 悪役が主流の中田博久氏だが、善玉をやらせてもなかなかのものがある(悪役の方が善役よりも潰しが効き易いという事もあるのだろうけれど)。事実、、「仮面ライダー」と「仮面ライダー(スカイライダー)」では善玉であり、ファン達の話題としても人気がある。
 「水戸黄門」でも一度、敵討ちの旅を続ける実直な侍を演じていた(勿論普段はゴロツキ役が多い)。かつてシルバータイタンは妹と「仮面ライダー」で客演をした中田氏を見た際に「あいつ絶対隼人を裏切るぞ。」と外見で予想したが、物の見事に裏切られた。見た目はそれほど悪役なのに、時には善玉も見事にこなす中田氏は俳優として一流と言えるだろう。
 また夫人の女史も悪役でならした人である。魅力的な中年俳優の客演や組織としての悪役が比較的乏しい平成仮面ライダーシリーズにも客演して欲しいと思うのライダーファンは私だけではあるまい。
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