ゲドン 十の頭脳はなんの為?

 南米はアマゾンの長老バゴーに率いられる部族の一人、ゴルゴスが反旗を翻し、古代インカの超化学の至宝・ギギの腕輪を求めて、バゴーより腕輪を託された野生青年・アマゾンの捕殺に邁進する悪の組織である。
 ギギの腕輪と一体化することで超エネルギーを生むガガの腕輪を既に我が物とし、左腕に移植済みのゴルゴスは世界征服の前にアマゾンを倒すことを目指すのだが、一向にアマゾンを倒せなかった為、只の殺し屋集団で終わってしまった。ゴルゴスもれっきとした首領なのだが、如何せんスケールが小さい。
 「仮面ライダーアマゾン」は多くの人々が言うように原点回帰を目指した異色の作品である。ゲドンもこれまでの悪の組織とは趣が大きく異なる。十面鬼に関しては後述するが、ゲドンは組織としても首領―改造人間―戦闘員の序列だったのが、改造人間であるところの獣人は戦闘員であるところの赤ジュ―シャより低い地位にある様である。
 獣人達に下される命はアマゾン抹殺、ギギの腕輪強奪、食料(人肉)の確保が大半で、赤ジュ―シャ達はその監督、間諜、獣人処刑及び要人暗殺である。共闘することすら稀なのである。
 組織としてのゲドンが歴代組織と大きく異なれば、上司としての在り様も異なるのが当然と言える。でもなぁ…、本書の意義からするとこの組織と十面鬼から学ぶことはなぁ…(嘆息)。

 

十面鬼ゴルゴス(声:沢りつお)


 「幹部」という観点から言うとこの十面鬼ゴルゴスを幹部の一人に数えることには躊躇いがある。十面鬼はれっきとした「首領」であり、ゲドンには幹部が存在しないのである。だが、十面鬼とゲドン獣人、赤ジュ―シャとの関係は幹部と改造人間、戦闘員達とのそれに近い。
 また、最終回によるとゲドンはガランダー帝国に裏から糸引かれていて様であり、「仮面ライダーストロンガー」の最終回によるとゲドンもまたショッカー以来の首領と同一の人物(?)に率いられていたことになっていた。先のGOD同様どうもすっきりしないが、どちらにしても十面鬼の上に彼(等)を率いる存在があったことは確定的である。
 となると、十面鬼も「首領」というより「幹部」ということになるだろう。この書の意義には反しないと言える、良かった、良かった(苦笑)。
 十面鬼の外見は一度見ると忘れられない。バゴーの部族の一員だったゴルゴスは自らの左腕にガガの腕輪を埋め込み、腰から下を人面を持つ巨岩に埋めている(設定では岩から出ることはできるのだが、作中では岩から出ることはなかった)。そしてその巨岩には九人の悪人の頭が埋め込まれており、それぞれの意志を持ち、発言を行なっている。
 特撮界において、最も大人数で構成されていることでも有名である全身は真っ赤で、九の顔も初めは地肌だったが、第五話以降ゴルゴス同様赤くなった。十面鬼と呼ばれるゴルゴスは角こそはやしていないものの、牙を生やし、人肉や生き血を食すなど、「鬼」なのだが、性格はそれに輪をかけて「鬼」である。
 十面鬼ゴルゴスは腰下の巨岩から火を吹いたり、獣人を産んだりすることが可能である。また巨岩は飛行移動可能で、敵を圧殺する武器ともなる。謎の超能力で周囲を暗闇にすることも出来、アマゾンライダーのギギの腕輪が「何でもあり」だったことを考えると「ガガの腕輪」を駆使してできる能力が想像されるのだが、作中、ガガの腕輪が単体で超化学力を発揮することはなかった。
 ゴルゴスの性格は「残忍」の一言に尽き、第1話、第2話としょっぱなから連続でクモ獣人、獣人吸血コウモリをアマゾンライダーに敗れた廉で処刑している。
 クモ獣人は巨岩から火を吹いて焼殺したが、獣人吸血コウモリに対しては配下の吸血コウモリに彼を体液しか残さないまでに食らわせた(←普通体液からなくならないか?)。モグラ獣人に至っては日干しにして殺そうとしたのだから念が入っている。
 十面鬼はその残忍性ゆえに部下には恐れられる以上に嫌われていた。モグラ獣人はアマゾンライダーに、獣人ヘビトンボはガランダー帝国についたが、ここまで裏切られた奴は後にも先にもない(個人的に反逆されたり背かれた奴はいたが、部下が組織まで裏切ったわけではなかった)。残忍な悪の組織の幹部は多いが、明らかに彼(等)は行き過ぎた。
 それでも顔の一つは獣人のために助命したりした事もあったが、その合議も初めだけで、終盤に向かうほど、九つの首はゴルゴスの台詞の復唱が多くなり、奇抜な設定だけに少し残念だった。また、ゴルゴスの人となりを語るのに、かなり「阿呆」であることを外すわけには行かない。総合して僅か十三人の獣人、明らかに小さな組織のスケールでこれと言った作戦もなく単発的にアマゾンに獣人達を挑ませては敗れ、帰ってきた獣人をバンバン処刑し、裏切り者まで出したのである。本書の趣旨に沿うなら、十面鬼ゴルゴスは明らかに「反面教師」である。
 最後の獣人、ヘビトンボが行方を暗まし、十面鬼はそれまでの強気を完全に失っていた。幼虫体から成虫体になって帰還した獣人ヘビトンボから仮面ライダーアマゾンを捕えたとの報告を受け、ヘビトンボの先導で岬にやってくるが、ヘビトンボは既にゲドンを裏切り、ガランダー帝国についており、岬に十面鬼を案内したのもアマゾンライダーと共謀してとのことだった。
 当然、十面鬼はアマゾンライダーと獣人ヘビトンボとのツープラトン攻撃に晒された。しばし奮闘するもグロッキー状態となったところで、ヘビトンボは攻撃目標をアマゾンライダーに切り替えた。アマゾンライダーはヘビトンボを大切断で斬首し、既に戦闘能力を失っていた十面鬼の左腕もまた大切断で切断した。切り落とされた左腕は黒ジューシャが拾い上げ、ゼロ大帝の元に運ばれた。
 命の素を失った十面鬼は全身から白煙を上げ、「アマゾンライダー、これが俺の最後だーっ!!」と叫ぶと空高く上昇して大爆発を起こして果てた。後には濛々と立ち昇るキノコ雲が残された。
 十面鬼の内、リーダーであるゴルゴスの声を当てたのは沢りつお氏。沢氏は「仮面ライダー」以降、多くの怪人の声を担当してきた。「仮面ライダーV3」、「仮面ライダーX」、「仮面ライダー(スカイライダー)」の三作品で第1話に登場した怪人(順にハサミジャガー、ネプチューン、ガメレオジン)の声を担当し、カニレーザー、ザリガーナといった重要怪人の声を担当したこともあり。ライダーファンにはかなり馴染みが深い。「帰ってきたウルトラマン」のナックル星人も彼の声である。
 その声色は低くて重厚感は薄いものの不気味さ抜群である。善玉や高貴な配役には向かないが、悪役ややられ役にはぴったりである(なんか誉めてないような気が…)。
 数年前放映されていた「横山光輝三国志」で蒋幹の役をしていたし、専門書にもコメントをしていたので、今も元気に声優として活躍していると思われる。
 尚、十面鬼の残りの九つの首は大野剣友会の中屋敷哲也氏や中村文弥氏の他、三人ほどの常任の顔があったが、俳優名は調査不足によりはっきりしない。己の無知を恥じるばかりだが、他の番組で見た記憶がないことから中屋敷氏、中村氏同様、大野剣友会の方々と思われる。

戻る