GODのヒエラルキー

 日本転覆を狙う諸外国が密かに手を組み、組織させた悪の秘密結社で、正式名称はGovernment Of Darknessである。
 GODもショッカー、デストロン同様、初めは常駐の幹部がいなかったが、この番組に登場する二人の幹部はそれまでの組織の幹部とは役割がかなり異なるし、同一組織に関わらず、二人の幹部の在り様もまたかなり趣が異なって非常に興味深い。
 そこで疑問になるのがどうもGODの組織内での地位関係、いわゆるヒエラルキーがはっきりしないと言うことである。GODは前半と後半で幹部のみならず、活躍した改造人間の構成に改造人間と幹部との関係も異なるのである。
 しかも前半ではGOD総司令なる人物(?)が首領の役割を果たしていたが、後半になると姿を消し、結局、GODは大巨人幹部・キングダークの頭脳部に潜んでいた呪博士を倒して滅んでいるが、GOD総司令と呪博士が同一人物かどうかもはっきりとしない。
 前述の通り、GODは日本転覆を狙う諸外国が密かに手を組み、組織させた悪の秘密結社なので、はっきりさせられない、はっきりした設定を作るわけにはいかない面もあると思われるが、そういった多面性も他の悪の組織にないGODの個性だと思われ、ヒエラルキーや幹部の在り様を考える興味は尽きない。

1.アポロガイスト(打田康比古)


 GOD秘密警察第一室長。これが彼の肩書きである。つまり、ショッカーに始まるこれまでの組織の幹部とは在り様がかなり異なる。
 と言うのも、改造人間達にとってアポロがイストは上司ではないのである。作戦の指揮を執るわけではなく、彼の仕事は「処罰」である。
 作戦遂行中の神話怪人の動向を観察し、不備を指摘し、誤導を阻止し、甚だしい失敗をした者や反逆行為をとる者は処刑の名の元に抹殺するのである。GODの怪人達はこの秘密警察の存在を非常に恐れていた。
 また、時には秘密警察は総司令の指示で作戦遂行に協力したり、陽動作戦を取ったりしてもいたが、通常は怪人の協力を行なうわけではなかった。
 立場的には怪人達を取り締まるも、指揮系統に同存しないアポロガイストに対して、怪人達は恐れてはいたが、敬意を払ってはおらず、むしろ嫌っていた。敬称も付けずに呼び捨てにし、タメ口を聞いていた。まあ、我々一般人と警察との関係を連想すればわかりやすいだろう。
 ましてアポロガイストは任務に忠実で総司令の信任が厚いのはいいのだが、誉めるということを知らない。好かれないのは当然だろう。
 秘密警察第一室長として怪人や戦闘工作員達に恐れられているアポロガイストだが、総司令の信任はすこぶる厚い。死神クロノスの言によれば、総司令の姿を見たことあるのはアポロガイト以外になく、一度Xライダーに敗れた際も、総司令の厳命により再生・強化手術が行なわれたのだから、ヨロイ元帥、魔人提督のそれなどその足元にも及ばないだろう。
 再生許可だけでなく、総司令はアポロガイストの行動にも信頼の全幅を寄せており、彼の行動に疑問を挟んだことはあっても、反対したり、取り消しや中止の命令をしたことは一度もないのである。そう言った意味においては地獄大使、ブラック将軍、ドクトルG、キバ男爵も信頼度において彼には敵わない。
 番組を見る限りにおいてアポロガイストの権限は無限なのだ。その一つの例として獣人キマイラとの絡みがある。監禁した超能力少女に逃げられようとしたのを阻止したアポロガイストはキマイラの見張りの不備を責め、「総司令の名の下」にキマイラを処刑しようとしたが、「GOD最大の敵・仮面ライダーXを倒した俺を処刑するのか。」というキマイラに対し、「それが本当ならな。」と言って銃を収めた。
 勿論実際にはXライダーは生きていたのだが、一度総司令の名で出した死刑宣告を自己の裁量で取り消したのだからこれは凄い権限である。逆にXライダーを過失から逃がした川上博士(三上耕)を「御前を甦らせたのは私なんだぞ。」と言って暗に恩を着せて処刑を逃れようとするのを問答無用で射殺した。
 総司令の指示で自分を蘇生させた博士をである。以下に独断専行が許されているかを示していると言えよう。勿論この行動は「恩知らず」というマイナス面として映る危険性も充分に孕んでいるので、組織の上司としてはよくよく注意しなければならない面でもある。
 仮面ライダーXの前半はネプチューンに始まり、サラマンドラまで、ギリシャ神話に登場する神(パニック、クロノス)や怪物(ミノタウロス、メドゥさ、ケルベロス)や英雄(ヘラクレス、アキレス、ユリシーズ)をモチーフにしたいわゆる神話怪人が登場し、それを監督する幹部も太陽神アポロンをモデルにしたアポロガイストであった。
 ちなみにガイスト(Geist)とはドイツ語で幽霊や精霊を意味する言葉で、英語で言うところのゴースト(ghoust)と同義語である。アポロンはギリシャ神話のオリンポスの神々の中でも主神ゼウス(ジュピター)の息子としてかなりの地位にいた(ネプチューン=ポセイドンの方が地位が高い、なんて突っ込まないで下さい)。なかなかこった設定であると言える。
 通常は人間体でいるとき、アポロガイストは白のスーツに黒ネクタイで宮内洋と渡り合えるほどキザに振舞っている。時にノーヘルでバイクに乗って(←真似しない様に)は神敬介と渡り合ったり、立花藤兵衛が神敬介の知人と勘違いしたとはいえ、堂々とCOLで藤兵衛特製のコーヒーを喫して、、「ま、こんなもんかな。」等とのたまったりしている。とにかく出で立ちは悪の大幹部には見えないが、その眼光の鋭さはかっこ良さでもあり、すぐに悪者として警戒されかねない弱点でもある。
 「アポロ・チェーンジ!!」の掛け声で変身した姿は側頭部に太陽の紅炎を象った赤の仮面をかぶり、白のマントを羽織り、人間体とは逆に黒の全身タイツの細部に太陽に因む装飾をつけている。
 右手には「アポロショット」、左手には日輪型の盾・「ガイストカッター」(円盤投げで敵を攻撃可能)を装備している。再生強化手術後は右腕がマグナム砲とエストックで一体化した「アポロマグナム」、左手の盾と左の上腕部を武器とした「ガイストダブルカッター」に強化され、体の細部の装飾にも金色の縁取りが入った。
 勿論破壊力も強化されている。本人曰く、「アポロガイストは秘密警察第一室長であると同時にGODの殺人マシーンでもあるのだ。」とのことである。成る程、コテコテの軍人・ゾル大佐、コテコテの戦士・ドクトルGと比べても遜色ない戦士振りである。
 第8話で姿のみ現したアポロガイストは第9話より神話怪人達とXライダーの前に姿を現した。第14話で自ら作戦を展開してXライダーの前に敗れ、第16話で再生改造手術が施された。
 その後、第21話にて体に変調が起き、再生改造手術による寿命が一ヶ月でしかなかったことを知った彼は、延命措置に必要なXライダーのパーフェクター(変身アイテムの一つ)を求めてXライダーと再戦し、今度こそ落命した。
 軍監としてのアポロがイストは誉めることを知らない嫌な奴である。が、しかし、組織とした見たとき、上司並びに軍監は必ずしも好かれる奴であるべきだろうか?答えは否だろう。勿論人当たりの良さで部下を引っ張ることも大切だが、時には恐れられること、場合によっては嫌われることも大切である。
 嫌われることを恐れて感情に溺れた判断で集団の進退を誤る様では最悪だし、自ら嫌われることによって部下の発奮材料とするのは立派な手段である。嫌われる事と認められる事は別なのである。勿論嫌われる事で部下のやる気を殺いだり、恨みを買って氾濫を誘発するようではお話にはならないのだが。
 認められる事となると総司令の信頼は今更言うに及ばずであり、秘密警察の面々はよく働き、気も効く。独断専行性の強い神話怪人軍団が、彼を認めているかどうかは判断し難いところもあるが、総司令の命令で全面協力を約束したアポロガイストに対してユリシーズは諸手を挙げて喜んでいた.また、Xライダーが彼を「敵にするには惜しかった。」と正面向かって言っていたのは特筆に価する。
 今でこそライダーと悪の幹部の好敵手関係は珍しくなく、1号ライダーもショッカー、ゲルショッカーの歴代幹部を「勇敢だった。」評していたし、地獄大使を「好敵手」と言ってはいたが、ここまで誉めたのはXライダーとアポロガイストの関係が最初である。何より仮面ライダーファン達の中で5本の指に入る人気がその事実を雄弁に物語っているだろう。シルバータイタンの友人のM氏(某大学院生)もアポロガイストを認めている。
 アポロガイストの二度の最期は良く言えば凄まじいまでの使命感、悪く言えば往生際の悪さに裏打ちされている。第14話でX必殺キックを食らったアポロガイストは人間体に戻るとハンカチを出して埃を払い(←キザやなあ)、Xライダーの勝利を称え、「君は私の良きライバルであり、好敵手だった…、最後の握手を…。」と言って歩み寄った。これが不自然じゃないのだから凄いものだ。同じことをブラックサタンの一つ目タイタンがやったときには怪しさ爆発だったもんだ。Xライダーも快く応じたが、手を握った瞬間アポロガイストの目つきが変わった。「アーム爆弾で一緒に死ねぇ!!」の台詞と同時に彼の右腕が肘から離れ、Xライダーの右手には爆弾付きの義手が残された。それが外れないことにうろたえるXライダーに尚も取り押さえにかかった。大爆発を前に道連れにされたXライダーの身を案じた藤兵衛だったが、重傷のアポロガイストの隙を突いてライダーは無事脱出していた。
 二度目。前述の通り、再改造手術の寿命を迎え、最後の勝負に出たアポロガイストは百発百中が自慢のアポロマグナムさえ不具となった。死が避けられないと知った彼はその事実をXライダーに告げ、道連れにすることを宣言した。「死ねぇっ、Xライダー!!GODよ、さらばぁっ!!」と叫び、全身火の玉になって断崖の上から突進したが、それもかわされXキックを食らい、断末魔の叫びの中で砕け散った。
 GOD秘密警察第一室長アポロガイストを演じたのは打田康比古氏。鋭い眼光が魅力の俳優である。代表作としては「超神ビビューン」で三人の主役の一人ズシーンをビビューン役の荒木茂(仮面ライダーストロンガー・城茂と同一人物)氏と好演していた。また、「仮面ライダーV3」で城南大学ワンダーフォーゲル部のキャプテン・西岡保役として出演したときにはピッケルを武器にザリガーナに勇敢に立ち向かっていた。「秘密戦隊ゴレジャー」で黒十字軍の科学者として登場したときもチョイ役だったにもかかわらず怪人を食ってしまうほどの渋さを醸し出していた。

2.キングダーク(声:和田文夫)


 シリーズ初の大巨人幹部である。アポロガイストを討ち取ったXライダーに「そのうち姿を見せる。」と言って声をかけたのが始まりである。身の丈をXライダーとの比較から推定して約十二メートル、鋼鉄性のボディからその体重は途方もないものだと思われる。
 その正体は仮面ライダーX・神敬介の父、神敬太郎の親友で「悪魔の天才」と言われた人物・呪博士だった。当然彼がキングダークの体内に頭脳として潜んでいたのである。彼がキングダークの頭脳であるのを象徴するかのように肥大した彼の頭からはいくつものコードがコンピューターらしきものに伸び、死の際にはそれらを外すことでキングダークは爆発した。
 キングダーク編に入ってGODは別組織かの如く様変わりをする。まず総司令が姿を消す(もっとも文字通り姿を現したことは最後までなかったが)。更に暗躍する怪人達も神話怪人から悪人軍団に変わった。GOD悪人軍団とは、歴史や伝説上の悪人達の子孫に動物の能力を植え付けた改造人間で、征服者として名高いジンギスカンやナポレオンの残忍性とコンドルの獰猛性や蜘蛛の能力を植え付けたジンギスカンコンドル、クモナポレオンと言った凝った奴から、ヒトデヒットラーやアリカポネと言った駄洒落のような奴まで様々だが、神話怪人は再生怪人しか出てこない。
 また、キングダークはその巨体ゆえか、アジト内で頬杖を突いてうつ伏せになったままなかなか動き出さなかった。当然現場指揮など一切無しである。やることも口頭上で指示を出したり、信賞必罰を行なったりするわけだが、当然その巨体は怪人達にとって何もしなくても充分脅威であり、威圧感に関しては言うことはない。誉めもすれば叱りもする。性格的にはこれと言って個性を感じない、体が全てと言ったところだろうか。
 組織内での役割としてはアポロガイストよりは怪人達との縦のラインがはっきりしていて、歴代組織の幹部達と改造人間達との関係に近い。
 第32話で初めて立ちあがったキングダークはXライダーに姿を見せるが、それだけ。第33話で念動力らしきもので落石を呼び、神敬介、一文字隼人、風見志郎を圧殺せんとした(勿論失敗)。その後、2号ライダーとV3がアジトに乗りこんでくるが、キングダークは毒ガスを撒いて文字通り煙に巻いた。第34話ではRS装置の破壊とタイガーネロの打倒に成功した3人ライダーの前に現れ、改めて対決の決意を表明したが、このときもそれだけ。最終回での奮闘がなければ「臆病なんとちゃうか?」と言いたくなる。
 最終回で世界の壊滅を目指して動き出したキングダーク。当然その前には仮面ライダーXが立ちはだかる。圧倒的な巨体を誇るキングダークはXライダーの肉弾攻撃を易々と弾き返し(当たり前か…)、指からは機銃掃射、口からは冷凍ガス、目からは破壊光線を発射し、Xライダーを苦しめた。
 Xライダーはクルーザーで突進して、口から体内に飛びこみ、中に潜んでいた呪博士をサソリジェロニモJr.共々ライドルホイップで刺殺し、GODを滅ぼした。
 結局のところ、GODの頂点にいる存在の正体ははっきりしない。呪博士は「儂がGODだ。」と言っていたことから、GOD総司令と呪博士が同一人物かのように思われるが、「仮面ライダーストロンガー」の最終回によるとGODもまたショッカー以来の同じ首領に率いられていたことになる。ややこしい事に、総司令、博士、大首領の3人ともCVは異なるのである(前から順に阪脩、和田文夫、納谷悟朗)。
 ここからはシルバータイタンの推測だが、ショッカー、ゲルショッカー、デストロンと次々に組織しては仮面ライダー達の為に潰されてきた首領(声:納谷悟朗)は日本転覆を企む各国首脳と語らって何者か(声:阪脩)を総司令に祭り上げてGODを組織した。しかし、新たな仮面ライダーのためにその組織も先行きが危うくなり、国家を敵に回すことを危惧した首領が首脳の手を引かせ、、「悪魔」として学会を追われた(と思われる)呪博士に指揮権を委ねたのではないだろうか。
 勿論これで全ての謎が解ける訳ではなく、証拠も何もないのだが、一応の筋は通っていると自負している。
 キングダーク及び呪博士の声を当てた和田文夫氏に関して私は他には全く知らない。それゆえ氏に関するコメントは控えさせて頂きたい。

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