ゴルゴム 3人の世紀王候補

世界どころか全宇宙の支配を企み、怪人と選ばれた人間のみの世界創造を目指し、その先駆けに人類を滅ぼさんとする暗黒組織である。全宇宙の支配者たらんとする五万年の命を持つ創世王を筆頭に彼が後継者として残す世紀王、その下に大神官達、そのまた下に怪人達を従え、奢り高ぶった人類を滅ぼし、ゴルゴムの理想郷を築こうとするのだが、人類以上に奢り高ぶっている創世王は一方的に自分の要求を押しつける人物(?)で底には理由の説明もなく、万能とも言える力で好き放題するだけで、それがために要らざる対立(組織の内外を問わず)を生み、組織は小さな作戦に従事することになり、シャドームーンの覚醒まで矮小化していた。また戦闘員のいないこの組織は人海戦術を取れず、主に大神官と怪人の連携で全てが運んでいた。とかく幹部達を見るに当たっては創世王や三人の世紀王候補との絡みに注目すべきである。

1.

大神官ダロム(声:飯塚昭三)

大神官の筆頭にして「智」の大神官。創世王より天の石を与えられており、創世王の命令で日食の日に生まれた二人の若者・南光太郎(倉田てつを)と秋月信彦を攫い、自らの手で光太郎をブラックサンに、信彦をシャドームーンに改造する。立場としては一応リーダー格だが三神官達には厳密には優劣はない様で、必ずしも彼の意見が尊重されるわけではなく、三人の合議でことが運んでいた。
念動力を武器とし、何度も光太郎達をふっ飛ばした。性格は陰険で配下の犠牲を省みることはなく、強者におもねる(ビルゲニアのは配下だけは嫌がっていたが)。二人の神官も半ば見下しており、上品だが冷血である。上におもねる性格のためか長年仕えた創世王の考えが一番わかっているようで、剣聖ビルゲニアにサタンサーベルを与えながら、三神官に命の源である石を捨ててでもシャドームーンを甦らせよと命令し、その他には何も言わず、その意図を計り兼ねるバラオム・ビシュムに「恐らく両天秤に掛けているんだ。」とその見せない意図を推察していた。
シャドームーン覚醒の為に命の源である天の石を差し出せ、さもなくばビルゲニあを次期創世王とするといわれたダロムは他の神官たちと共に「ビルゲニアの天下になっては全ては終わりだ。」と決心して天の石を捨てる。大神官の証しを失ったダロム達は大怪人に変貌した。ダロムは三葉虫の化身・大怪人ダロムとなった。そして覚醒したシャドームーンの忠実な僕となってシャドームーンの命令通りに怪人達を指揮した。最期はコウモリ怪人と共にゴルゴムを裏切ったクジラ怪人を捕えてそれをたてにライダーを倒そうとしたが、クジラ怪人の土壇場での奮闘とブチ切れたライダーの前に最後の念動力もキングストーンフラッシュに弾かれ、ライダーキックとライダーパンチを食らい、為す術もなく爆死した。
ダロムは大神官のときは庄司和浩氏が、大怪人時は山本貴浩氏が演じ、声は声優の飯塚昭三氏が当てた。山本貴浩氏が演じ、声は声優の飯塚昭三氏が当てた。
庄司氏の詳細は不明。山本氏はジャパン・アクション・クラブの一員で大怪人ダロムの役以前から同番組に参加していた。飯塚氏は悪役声優として数え切れないほどの活躍をしており、特撮界の有名所では「宇宙刑事シャイダー」の大帝王クビライ、「秘密戦隊ゴレンジャー」のゴールデン仮面将軍の声を、アニメでも「魁!男塾」の雷電の声などを担当していたのをシルバータイタンは確認している。また後番組「仮面ライダーBlackRX」では海兵隊長ボスガンの声も担当しているが、普段低めの重々しい声を発する氏がこのボスガンでは甲高い上品な声を当てており、一流声優の証しを見せてくれている。聞き分ける力が弱いとダロムとボスガンの声を違う人物の声と勘違いしそうなほどである。

2.

大神官バラオム(高橋利道)

ゴルゴム三神官の一人で「力」の大神官。三神官の中にあって最も直情的な性格をしている。命の源として海の石を持っている。その石をシャドームーン復活に捧げた後はサーベルタイガーの化身・大怪人バラオムとなった。
大神官の時は手から発する怪光線を、大怪人への変貌後はそれに加えてサーベルタイガーの牙(伸長させて手槍にすることも可能)を武器に奮闘した。感情をストレートに出す分物言いは辛辣で、ビルゲニアの挑発にも乗りやすい。が、かなり仲間思いでもある。ビシュムが戦死したときには打倒ライダーのために特訓を重ねていたし、人類を滅ぼしたあとにその文明の残骸を海に捨てる、とダロムが言ったときには海を故郷に持つ怪人達の心情を少しは考慮していた。また、三人の大神官の中で最も行動的でもあり、大怪人になってからはライダーのマルチアイを持ってしても看破不能な変身能力を駆使して暗躍していた。最期は故郷である海を汚す、としてゴルゴムを裏切ろうとしたクジラ怪人を言葉巧みに操ってライダーを押さえこんだところを二人まとめて串刺しにしようとしたが、クジラ怪人の粘液に体の自由を奪われたところをライダーパンチとライダーキックを浴び、「俺が死んでもシャドームーン様がおられる、貴様など問題ではない、シャドームーン様っ!!」と絶叫して両手から崖の上のライダーに最後の怪光線を放ち、壮絶に爆死した。
大怪人バラオム及び大神官バラオムは共にジャパン・アクション・クラブの高橋利道氏。氏は後番組の「仮面ライダーBlanckRX」でもジャーク将軍(声は加藤精三氏)のスーツアクトと、ガテゾーンの声を担当している。

3.

大神官ビシュム(好井ひとみ)

ゴルゴム大神官の紅一点。「占い」の大神官で、創世王より地の石を授けられている。ダロム、バラオム同様にシャドームーン復活の為に地の石を捧げた後は翼竜の化身・大怪人ビシュムとしてシャドームーンの指揮下に入った。
幹部としてのビシュムは大神官時代の眼から放つ怪光線や大怪人時代の突風を起こす力に加えて人の心の弱さに突け込む作戦を展開する。また怪人達を「愛しい怪人達」と称しており、時にはその犠牲を悼む姿が見られた(ビルゲニアや黒松教授(黒部進)を詰る時に見せていたので、単なる非難材料としてのパフォーマンスの可能性もあるが)。ゴルゴムの幹部及び怪人達は長命なため、長い視野に立った作戦を展開することが多く、人間達を遠からず自滅する存在と見ており(現実世界を考えると一笑に付すことはできない…)、自滅を促す作戦を展開するのにビシュムがよく携わっていた。取りも直さず、三人の中で一番人類を見下していたからだとも言える。
大怪人になったビシュムに変化が見られるとすればシャドームーンへの接近がある。ダロムなどは次期創世王候補のシャドームーンにビシュムが取り入って妃の座を目指している、と勘繰っていた。実際のところはその勘繰りには疑問の余地もあるが、ビシュム自身がシャドームーンに対して命を捨てることも辞さない覚悟を持っていたのは確かで、それはビシュムの最期に表れている。
シャドームーンの正体である秋月信彦の実妹・杏子(井上明美)を人質に仮面ライダーBlackを倒すことを画策したビシュムはライダーに短剣を投げつけて、杏子の命が惜しくば自らの腹を掻っ捌いてキングストーン(創世王の証し)を渡すことを要求するが、南光太郎は一瞬の隙を突いて杏子を救出し、ビシュムはライダーに組み付くや、シャドームーン、ダロム、バラオムに自分もろともライダーを抹殺することを要請した。固唾を飲んで動向を見守るダロム・バラオムを前にシャドームーンは手から怪光線を放った。怪光線は時空を超えてビシュムの体を貫いてライダーの体を撃った。ところがそこへ杏子がライダーにすがりついた。シャドームーンはそのままでは妹を殺すことになったのに躊躇ったのか、光線を発するのを止めた。それが為に怪光線はライダーを仕留めるに至らず、ビシュムだけに致命傷を負わせた。シャドームーンの攻撃中止を信じられないビシュムは驚愕しながら、全身から煙を発し、「何故です!?何故とどめを?!シャドームーン様っ…!」と叫びながら爆死した。さすがにこのシャドームーンの甘さには創世王の怒りが落ちた。
妖花にも例えられた大神官ビシュム・大怪人ビシュムを演じたのは好井ひとみ女史。妖艶な表情で甘美な悪を演じる一方でどこか寂しさ漂う女性である。シルバータイタンは何度か「特捜最前線」で不幸な女性を演じる女史を見たことがあるが、そんなに女史には不幸な演技が似合うのだろうか?一度は幸せを掴んで終わる彼女を見たいものである。

4.

剣聖ビルゲニア(吉田淳)

ある意味、最も可哀相な悪の大幹部かもしれない。彼は三万年前の日食の日に生まれた世紀王で、当然時期創世王を目指していたが余りにも早く生まれたために次期創世王の証しであるキングストーンを授けられなかった。そのため剣の腕に頼った彼は「剣聖」の名に恥じないその力で三神官をひれ伏させたが、それを粗暴とされ、創世王によって棺に閉じ込められた、三万年間も。その後二人の世紀王の内、ブラックサンは仮面ライダーBlackとしてゴルゴムに対抗し、シャドームーンは覚醒し損ねる事態に陥り、創世王の命により、三神官からライダー抹殺の手段として棺からの開放される。そんな経緯で再び世に出たものだから彼の性格はかなり破綻しており、大神官達に慇懃に接するが、言っている内容は無礼千万である。
三神官にこいねがって怪人を借り受けてはライダーも恐れる剣技で妖剣ビルセイバーを振るい、赤い鎧兜と大盾ビルテクターで守りを固めてライダーに挑みかかる。我こそは次期創世王である、との気負いと、かつては実力で三神官をひれ伏させていた記憶から自分と同じ世紀王であるライダーやシャドームーンに対して並々ならぬ憎しみを燃やす。そのためには三神官への敬意も借り受ける怪人も利用すべき手段でしかなく、クロネコ怪人は何の咎もなく切り殺され、ライダーの戦意をなくす為に少年の心を踏み躙り、ゴルゴムが役立たずとして処刑しようとした黒松教授を助けたかと思いきや変装の為顔を盗むのに利用しただけで、顔を奪われた黒松は変死した。ライダーを倒す為には世紀王としての力を利用しライダーマシーンであるバトルホッパーを操ったり、同属のハチ怪人を倒されて復讐に燃えるツルギバチ怪人を焚き付けたり、と手段を選ばない。とまあ、幹部というよりはゴルゴムという組織を根城に一人陰鬱な戦いを繰り広げるのが剣聖ビルゲニアと言う男である。
ビルゲニアの最期は壮絶にして悲惨だ。シャドームーン復活の為、彼の妹である杏子の生体エネルギー奪取を図って杏子を誘拐した三神官はビルゲニアに戦力外通告を叩きつけた。焦るビルゲニアに創世王は創世王専用武器であるサタンサーベルを入手するように命じ、サタンサーベルへと続く亡者の呪と業火が襲う地獄道を開放した。重傷を負いながらサタンサーベルを入手したビルゲニアはシャドームーン復活の儀式を妨害し、杏子を攫って、サタンサーベルとビリセイバーの両刀を振るってライダーを襲った。ところがその一方で創世王は三神官に命の源である天・怪・地の石をシャドームーン復活の為に捧げること、それが失敗すればビルゲニアを次期創世王とする、と宣告した。ダロム曰く、「両天秤に掛けている」らしかった。ビルゲニアの下にだけは就きたくない三神官は死を覚悟で三つの石を捧げてシャドームーンを復活させた。そんなことを知る由もなくライダーと戦うビルゲニアに復活したシャドームーンが念動力を発するや、ビルゲニアの手からサタンサーベルが離れ、シャドームーンの元に飛んでいってしまった。愕然としたビルゲニアはライダーパンチとライダーキックの連打を食らい、失ったサタンサーベルを求めてアジトに帰還し、シャドームーンと鉢合わせる。サタンサーベルの返還を要求するビルゲニアにシャドームーンは腕ずくで奪えという。必然一騎打ちとなったが、ビルゲニアの一撃はシャドームーンにビルセイバーもろとも弾かれ、サタンサーベルの一閃を盾で防ごうとするも、盾ごと切り裂かれた。最期に「俺は利用されたに過ぎなかったのか?創世王様っ!!」と呟いて仰向けに倒れると炎に包まれて消滅した。三万年の長きに渡って使えるときだけ利用し、見捨てた創世王への恨みを込めつつも、次期創世王の座への執着から敬称付けで呼んでしまうところに彼の翻弄されっぱなしだった運命がうかがえ、同情を禁じえない。創世王の彼に対する扱いを考えれば性格が破綻しない方がおかしいと言える。
悲劇の剣聖・ビルゲニアを演じたのは吉田淳氏。シルバータイタン同様の昭和40年代後半生まれの世代には「宇宙刑事シャイダー」の神官ポー役が記憶に残るところだろうか?他の出番は記憶にないが、破れる運命にある悪役の中でもとりわけ悲惨な立場にあった彼に他の番組でサクセスストーリーを望みたい気がするものである。

5.

世紀王シャドームーン(堀内孝人)

ゴルゴムの世紀王にして次期創世王候補者。日食の日に生まれた秋月信彦が同じ日に生まれて兄弟同様に育った親友・南光太郎と共に十九歳の誕生日にゴルゴムに拉致され改造されて誕生する。ゴルゴムの協力者にして実父・秋月総一郎(菅貫太郎)の手術妨害で光太郎は脳改造を前にして虎口を脱するが、信彦は脱出できず、未完成のシャドームーンとして長い眠りに入る。結局大神官の天・海・地の石の生命エネルギーを得て覚醒したときには人間の心を失っており、信彦の時に恋人だった紀田克美(田口あゆみ)、妹の杏子は仲間に引き入れようとするものの南光太郎には同じ時期創世王候補としてのライバル心からか、一切の説得に耳を貸さず、信彦としての自己を否定し、親友との戦いを苦悩する光太郎に容赦ない攻撃を加えた。
仮面ライダーBlackとなったブラックサンと同じ創世王として生まれたシャドームーンはいわゆる悪の仮面ライダーである。同じ運命で同じ執刀者(ダロム)の手で生まれたのだから。光と闇のライダー対決としてライダーとの戦いは長い仮面ライダーの歴史にあって、兄弟同様の親友が争う悲劇もあいまって強烈に異彩を放っている。
大神官の命の石のエネルギーで覚醒したシャドームーンは創世王の武器であるサタンサーベルを手にするや剣聖ビルゲニアを一刀の下に斬り殺し、ゴルゴムの全権を掌握し、大神官が大怪人として甦るや日本政府に宣戦を布告するなど、南光太郎が懸念したように信彦の聡明さで奇想天外な作戦を展開する。
次期創世王を自認し、ときに創世王に対しても不遜な態度をとるシャドームーンは大怪人達に作戦を授けては実行する怪人を自ら選び、大怪人に指揮させた。
次期創世王候補として、日食の日に生まれたために一方的に選ばれ,改造手術を施された世紀王シャドームーン。覚醒するやその運命に従うように世紀王としてゴルゴムの全権を掌握して日本征服、仮面ライダーのキングストーン奪取に努めるべくリーダーシップを発揮したたわけだが、手術途中で脱走したブラックサンに対し、彼はどこまでシャドームーンにされてしまったのだろうか?彼とゴルゴムの最期を追いながら考察したい。克美と杏子に声は掛けたものの光太郎との話し合いには一切応じず、ひたすら「私と戦え」と言い続けた彼はビシュム、バラオムが倒されるに及んで終に自ら出陣する。サタンサーベルを振るい、シャドーキック、シャドーパンチを駆使して戦うが、戦いなれていないせいか、互角の能力でありながらシャドームーンは不利になる。しかし創世王が横槍を入れシャドームーンを一瞬信彦の姿に戻した為、ただでさえ低下気味だったライダーの戦意は急激に低下し、その途端にシャドームーンの姿に戻った彼はライダーに致命傷を負わせた。ところがいざライダーの体からキングストーンを取り出そうとするや、今度はライダーの体が南光太郎の姿に戻り、シャドームーンは「光太郎…」と初めて彼の名を呟いた(それまでは「ブラックサン」としか呼ばなかった)。シャドームーンは天を仰ぐや、「私はブラックサンのキングストーンなどなくても立派に次期創世王になって見せる!」と宣言し、怒る創世王を尻目にアジトに引き上げた。しかし放置したライダーの体は地震に飲まれて海に流れ、クジラ怪人の介抱を受けて蘇生し、創世王もまた二つのキングストーンなくして王位継承はありえない。と述べて、シャドームーンも大怪人ダロムとコウモリ怪人にライダー死体の捜索を命じるが、ダロムは復活し、パワーアップしたライダーの返り討ちに遭い、彼の死を報告したコウモリ怪人もライダーとクジラ怪人に負わされた致命傷の為に息絶えた。
再び対決となったシャドームーンは信彦に戻ってくれと言うライダーの最後の懇願を無視し、創世王のパワーを得て暴れまくった。怒り心頭のライダーに、ライダーのマシーンであるバトルホッパーを操って苦戦に落とし入れる(バトルホッパーは元々創世王専用マシーンで世紀王なら誰でも操れる)が、ライダーの呼びかけにバトルホッパーはシャドームーンに反逆、彼を巻き込んだ大爆発を起こし、爆風に曝されたシャドームーンはサタンサーベルも残し、侍女怪人マーラとかーラに抱えられてほうほうの態でアジトに逃げ帰った(この時シャドームーンを庇ってライダーに挑んだトゲウオ怪人はライダーに触れることさえできずにキックとパンチを食らって炎上した)。
アジトに追って来たライダーとの戦いでシャドーキックを放って雌雄を決しようとしたシャドームーンだったが、既に戦う力を失っており、逆にキングストーンにサタンサーベルを受けて倒れた。シャドームーンはライダーに地獄への道連れにサタンサーベルを持っていくことを願い、一瞬に隙をついてサタンサーベルをライダーの咽喉元に突きつけたが、突き刺すことはできなかった。「駄目だ…もう力が入らない…だが、勝った等と思うな!お前は親友である信彦をその手にかけたのだ…一生苦しむがいい…俺こそ次期創世王だっ!!」と叫んで起こしかけた体も倒した。事ここに至って非情の創世王はシャドームーンを見限り、今度はライダーにシャドームーンの腹を捌いてキングストーンを取り出し、次期創世王となれ、と地球の崩壊をたてに強要したが、兄弟同様の親友と戦わせた人類の敵にライダーが従うはずがなく、ライダーはサタンサーベルで持って創世王を倒し、ゴルゴムは滅亡した。
番組中、とうとう秋月信彦に戻ることなく、崩壊する神殿に埋もれたとも、救出されて南光太郎に葬られたとも見られたシャドームーンだったが、後番組「仮面ライダーBlackRX」で意外な復活を果たす。過去の栄光と記憶の全てを失い、打倒仮面ライダーの念だけを胸にシャドームーンは復活した。RXと戦っていたクライシス帝国のジャーク将軍(高橋利道)はシャドームーンの執念を利用してライダーを倒そうとする。シャドームーンはもはや世紀王でも幹部でもなく、一個人としてRXに挑んだ。彼が生きていたことに驚愕し、再び親友と戦う苦悩の襲来に困惑した光太郎だったが、終に光太郎も吹っ切れ、シャドームーンをクライシス同様に倒すべき敵とみなしていた。その後ライダーとシャドームーンの一騎打ちが行われたが、ジャーク将軍の意図を読みかねていたクライシスの幹部達は隊長の地位をシャドームーンに奪われるのを危惧して怪魔異星獣アントロントに二人とも抹殺させようとするが失敗に終わり、シャドームーンは傷を癒してライダー・クライシスの双方を妥当することを誓う。
傷の癒えたシャドームーンは怪魔異星獣マットポットを脅してクライシスの作戦を崩壊させようとする。同時にその作戦崩壊による異常を察したRXも駆けつける。自分に逆らったマットポットを懲罰したクライシスはマットポットに牧場の二人の子供を攫わせ、火山地帯に縛り付けた。子供を助けようとしてRXが向かうが、シャドームーンはこれを自分とRXを倒す罠と見て、「RXの首は誰にも渡さん!」として後を追う。果たしてこれは罠であり、二人は火山地帯の罠の中に二人の子供と共に閉じ込められた。子供の救出を優先しようとするライダーにシャドームーンは挑みかかったが、ライダーはブチ切れた。「己の目的の為なら、泣き叫ぶ子供達も見殺しにする。そこまで堕ちてしまったのかシャドームーン! 俺は、お前を許さん!!」と言って今度こそ最後の決戦が行われた。RXのリボルケインをキングストーンに受け、自らの敗北を認めたシャドームーンはクライシスの作戦を告げ、二人の子供は自分が助けて家に送り届けるので、マットポットを倒すよう要請する。最後の最後に人間らしい言葉を発する彼にRXは信彦の姿を見て、彼の名を呼ぶが、シャドームーンは「我が名はシャドームーン!いずれ地獄の底から甦り再びお前の前に立つ。それまで首を洗って待っていろ仮面ライダーBlackRX!!」とあくまでシャドームーンとしての自己にこだわり、炎の中に泣き叫ぶ子供の元に向かうべく、RXに背を向けた。
RXがマットポットを倒して牧場に駆けつけると、二人の子供を送り届けたシャドームーンは既に息絶えていた。動かない彼を心配する二人の子供に「眠っているだけだよ。」と光太郎は偽って、二人の子供を父の元に返した。光太郎はシャドームーンの遺体を抱え上げ、彼が最後に見せた姿に信彦の姿を夢想した。「あれは幻だったのだろうか?いや、最後の最後にシャドームーンは信彦に戻ったのだ」というナレーションが流れる中で草原を歩む光太郎の腕の中でいつしかシャドームーンは秋月信彦の姿に戻っていた。
シャドームーンの正体である秋月信彦を演じたのは堀内孝人氏、声を当てたのは寺杣昌紀氏である。堀内氏はこの番組以外の活躍は未確認。道場主の化身であるダンエモンに言わせると彼の好きな演歌歌手に名前が似ているのがどうしても気になるそうだが、関係はないらしい(笑)。寺杣氏はバリトンに効いた声が魅力で、好青年然とした演技は多方面において活躍中。代表的なところでは「大岡越前」の同心・夏目甚八役、「葵―徳川三代」の板倉重昌役、仮面ライダーでは「仮面ライダーアギト」の司竜二捜査官役を演じていた。

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