仮面ライダー1号の必殺技

指定必殺技:ライダーキック


仮面ライダー1号とライダーキック
 ライダーキックこそは仮面ライダー1号のみならず、全仮面ライダーを代表する技であり、多くのライダーはキック技を基本とした必殺技を持ち、仮面ライダーアマゾンや、仮面ライダーBlackRX の様にキック技をメインの必殺技としないライダーでも独自のキック技は持っているのが常だ。

 所謂飛び蹴りであるライダーキック『仮面ライダー』の第1話にて蜘蛛男に対して放たれ、仮面ライダー1号初戦の勝利を飾る決め技となった(但し、この時は技の名前として呼称されていはいない)。
 後に「技の1号」と呼ばれた仮面ライダー1号故に決してキック技だけに依存した訳ではなく、ライダーチョップライダーパンチ、といった手技や、ライダー返しに代表される投げ技や、サイクロンアタックの様にバイクで相手を撥ね飛ばす荒技も繰り出されている。
 だが、設定上48存在する技(実際にはもっと登場した)には電光ライダーキックライダー月面キックライダー反転キック等の様に、ライダーキックを基調としたアレンジ技が多く、まさしく仮面ライダー1号はライダーとしての元祖なだけでなく、キック技を仮面ライダーのシンボルとした元祖ともなっている。
 以上のことを踏まえた上で、以下にその戦績と共に仮面ライダー1号ライダーキックを考察したい。
考察1 ライダーキックの戦績
 まずは以下の表を参照し、番組における仮面ライダー1号の戦績と、ライダーキックの貢献度に注目して欲しい。

登場怪人死因
蜘蛛男ライダーキック
蝙蝠男ライダー投げ
さそり男ライダーシザース
サラセニアンライダーキック
かまきり男ライダーキック
死神カメレオンライダーチョップ
蜂女ライダーキック
コブラ男ライダー返し
ゲバコンドルサイクロンアタック
ヤモゲラスデンジャーライトにより消滅
トカゲロン電光ライダーキック
ジャガーマンライダーヘッドクラッシャー
海蛇男ライダーキック
ゴキブリ男ライダー反転キック
ギリーラライダーキック
ドクモンドライダーキック
毒トカゲ男ライダーヘッドクラッシャー
ミミズ男ライダーキック
フクロウ男ライダーキック
ナマズギラーライダー反転キック
ハリネズラスライダー稲妻キック
サイギャングライダーきりもみシュート
セミミンガライダーキック
カブトロングライダーキック
カミキリキッドライダーきりもみシュート
ギリザメスライダーきりもみシュート
イカデビルライダーきりもみシュート
ギラーコオロギライダーキック
エレキボタルライダー返し
アブゴメスライダーニーブロック
モスキラスダブルライダーキック
シオマネキングダブルライダーキック
シラキュラスライダードロップキック
バラランガスクリューブロック
シードラゴンライダーパンチ
イモリゲスライダースクリューキック
ウニドグマライダーきりもみシュート
ガラガランダライダーキック
ガニコウモル体当たり
サソリトカゲスライダー反転キック
クラゲウルフライダーきりもみシュート
イノカブトンサイクロンアタック
イソギンジャガーライダーポイントキック
ウツボガメスライダーキック
ワシカマギリ鎌返し
クモライオンライダーフライングチョップ
ネコヤモリライダーキック
カナリコブラライダー月面キック
ネズコンドルライダー月面キック
ムカデタイガー道連れ地獄
ハエトリバチ足払い
ショッカーライダーNO.1ライダー車輪
ショッカーライダーNO.2ライダー車輪
ショッカーライダーNO.3ライダー車輪
ショッカーライダーNO.4ライダー車輪
ショッカーライダーNO.5ライダー車輪
ショッカーライダーNO.6ライダー車輪
エイドクガー2号ライダーに倒される
ナメクジキノコダブルライダーキック
ガラオックス ライダー月面キック
サボテンバットライダーキック
ヒルカメレオンライダーダブルチョップ
ゲルショッカー首領自爆
ライダー1号との戦闘率100.00%
決着率96.83%
ライダーキックによる必殺率26.23%

 単純な決め技としてのライダーキックショッカー並びにゲルショッカーの怪人を倒した4体に1体の割合に及ぶ。これは後発のライダー達の技と比較すると、ライダーキックによって怪人が倒された割合としては決して高いものではない。
 とはいえ、2号ライダーとのライダーダブルキックを含めた、いわゆるキック技が怪人を倒した割合となると、49.18%、と全決着の約半数に及ぶ。特に番組前半は他の技を交えつつもライダーキックによる決着率が高く、初期の強敵出現時や、第53話からの復帰直後や、ゲルショッカー登場直後、といった番組の節目節目にはライダーキックを上回る技がお呼びとなったが、それでもライダーキックが番組から姿を消すことはなかった所にライダーキックの偉大な存在感が伺える。

 シルバータイタンが注目しているのは、ライダーキックショッカー編の始まりと終わりを占めている所にある。
 第1話ではショッカーの改造人間同士の最初の戦いとなる対蜘蛛男戦を制し、第79話ではショッカーの改造人間同士の最後の戦いとなる対ガラガランダ戦に決着をつけ、この技が仮面ライダー1号の戦績を語る上で重要な節目となる戦いを制する技であることを決定付けた。
 地獄大使(潮健児)の正体であるガラガランダが、他にも多くの技があろうに、通常のライダーキックの前に敗れ去ったことに対して批判する声も聞かれるが、直前にガラガランダライダー返しに耐え、その上でこの技を食らっていることもあるので、対ショッカー戦を締め括る技として、ライダーキックが決められた事は納得のいく結末だと思っている。


考察2 強敵VSライダーキック
 番組を盛り上げる要素として強敵の存在は欠かせない。番組前半ではゲバコンドルトカゲロンが、復帰後はカミキリキッドギリザメスイカデビルが、ゲルショッカー編開始後はガニコウモルクモライオンムカデタイガーショッカーライダーといった強敵達がライダー1号を苦しめると共に番組をスリリングなものとして盛り上げた。

 そして上記の表を参照して頂ければ分かるが、これらの怪人の中にライダーキックの前に倒れた者はいない。
 「キック殺し」なる返し技を会得していたイカデビルや、そのイカデビルを倒したライダーきりもみシュートさえ効かなかったガニコウモルや、自らがライダーキックを繰り出してきたショッカーライダーのように、一筋縄では行かない難敵揃いである。

 では如何にしてこれらの怪人達は倒されたのか?
 ゲバコンドルサイクロンアタックという荒技にて、カミキリキッドギリザメスイカデビル仮面ライダー1号もう一つの代表的必殺技ライダーきりもみシュートで、ガニコウモルムカデタイガーは捨て身攻撃にて何とか倒された。
 また、トカゲロンショッカーライダーは必死の猛特訓の末に編み出された電光ライダーキックライダー車輪にて倒された。

 これらの経緯を見てみると、
 「代表的必殺技であるライダーキックでは倒せない」
 ↓
 「通常の技では倒せない強敵であることが位置付けられる」
 ↓
 「ライダーキック以上の技or猛特訓で生み出された技が強敵を倒す」
 の図式が成立し、これは仮面ライダー1号に限らないライダーシリーズ千古の鉄則とも言える必殺技と強敵の関係とも言え、言い換えれば、この図式を早目に確立したことが仮面ライダーシリーズを長寿シリーズたらしめたと一因と言えるだろう。


考察3 ライダーキックに代わる技
 いつもいつも同じ技ばかりが勝負を決めてはワンパターンで面白くない。
 それゆえに強敵達がライダーキックを破ったり、ライダーキック以上の技が繰り出されたりして番組の多様化、局所での盛り上げが図られた。
 では、ライダーキックでは倒せなかった強敵、倒せそうにない強敵を倒す技としてはどんな技があるのだろうか?

 大雑把に分けて3パターンに分けられる。
 一つ目のパターンは、ライダーキックから派生したアレンジ技で、電光ライダーキックライダー月面キックライダー反転キック、更にはライダーシザースライダーヘッドクラッシャーライダーニーブロックといった足技もその範疇に含まれるだろう。
 中でも、猛特訓から生まれて再生怪人軍団のリーダー・トカゲロンを倒した電光ライダーキックや、ゲルショッカー怪人を一撃で葬り続けたライダー月面キックの存在感は偉大である。

 二つ目のパターンはキック技を上回る投げ技・バイク技などの荒技で、その代表とも筆頭とも言えるのは文句なしにライダーきりもみシュートだろう。
 死神博士(天本英世)の正体であり、「キック殺し」をも備えたイカデビルを倒した戦績だけでも凄いが、特に海棲生物型改造人間に絶大な力を発揮し、ゲルショッカー編に入ってからもガニコウモルを例外として一撃必殺の大技として、数々の勝負を制し、2号ライダーまでがエイドクガーに放つことで「ライダー第2の必殺技」と言ってもおかしくない存在感を示した。
 これを読んでいるいる方々もライダーきりもみシュートを知らない者をライダーマニアとは認めないことだろう(笑)。
 余談だが、ライダーきりもみシュートは敵の怪人を頭上に逆さの体勢で持ち上げ、そのまま相手の体を回転させる際に敵の体の周囲に真空状態を作り出す、という凄まじさで、見た目のカッコ良さに恥じない恐るべき力を秘めた技であることも触れておきたい。

 3つ目のパターンは仮面ライダー2号との複合技である。
 ショッカーからゲルショッカーに改造人間の質が向上しても、1号2号が同時にライダーキックを放つライダーダブルキックに耐えられた怪人が皆無だったように、番組中最強の必殺技と言っても過言ではない。
 そしてその最強の必殺技にしてからライダーキックが分り易いぐらい基本となっている点を見逃してはならない。
 ダブルライダーが放った技には他にショッカーライダーを一網打尽にしたライダー車輪と、ブラック将軍(丹羽又三郎)の正体であるヒルカメレオンを倒したライダーダブルチョップ (技名の呼称は無し)があり、両方とも雅に一撃必殺だったが、何故かライダーダブルキックに比して凄さが伝わって来ない。
 決して弱い技ではなく、瞬殺過ぎたのが却って技のインパクトを弱めてしまったとも取れるが、やはりキック技こそが仮面ライダー1号の必殺技の基本であることがこのような所にも見て取れるのが興味深い。

 ライダーキックをもってしても倒せなかった、倒せそうにない難敵に対する技の中には一見キック技と無縁のものもあるが、それでも考察を重ねれば重ねる程ライダーキックの存在感が増すのが不思議であると共に、そのライダーキックと一線を画した存在感を持つライダーきりもみシュートもまた如何に偉大であるかがうかがい知れるというものである。


総論 今にして思えば蹴り技が、初期では相手の体を跡形もなく溶かし、後期では木っ端微塵に爆発せしめたのが面白くもあり、おかしくもある(苦笑)。
 勿論怪人達が解けたり爆発したりするのは改造人間としての体質によるもので、現実に蹴り殺された人間が溶けたり爆発したりはしない(というか、蹴り殺される様って相当怖いけど……)。
 それどもこのライダーキック仮面ライダーという一大ヒーローをして、キック技をもって後々の世まで悪を倒すステータスを確立したのは偉大だと思うし、その重要な決め技にキック技が選ばれた主因は不明(原作ではもっとむごい殺し方をしている)だが、はっきり言えることはライダーキック仮面ライダーの存在感と、必殺技としての体系と、強敵との関係を確立した功績には文句のつけようがない、ということである。
 その証拠に、後番組において仮面ライダー1号が放つ技はやはりライダーキックである。

 同じ事はウルトラマンシリーズの光線技にも言えるが、現実に人間が光線技を発することが出来ないのに対して、蹴り技は真似をすることが出来るだけ、親近感が強い(もっとも、その分真似されることによる現実的な危険も伴うのだが)。
 平成ライダーシリーズに入って、「ライダーキック!!」と叫ばれることが少ないのは些か寂しいが、それでも華麗に空中を舞って繰り出されるこの技は今後も我々を魅了し続けることだろう。
 それだけ先達者達が確立したものは大きいということである。


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平成二一(2009)年一〇月一二日 最終更新