仮面ライダーV3の必殺技

指定必殺技:V3フル回転キック(V3回転フルキック)


仮面ライダーV3とV3フル回転キック
 仮面ライダーV3の技は実に多彩である。
 キック技だけでも12もあり、頻発したキック技に絞り込んでも、V3フル回転キック(「V3回転フルキック」と呼称することもあるが、この作品ではすべて「V3フル回転キック」で統一)、V3きりもみキック(「 V3スクリューキック」と称することもある)、V3反転キックが挙げられる。
 一方で、仮面ライダーV3の基本的蹴り技であるV3キックは殆どデストロン怪人を倒した例は劇場版を含めても4例しかない(しかも劇場版にてV3キックで倒されたタイホウバッファローは直前に1号&2号のライダーダブルキックを食らっており、実質的にトリプルライダーキックで倒されたと言っていい)。
 多くのデストロン怪人はV3キックにキックの威力を増大させるきりもみや回転が、或いは連打を駆使することで装甲の固いヨロイ軍団をも絶命させている。

 この傾向が生まれたのには2つの背景がある。
 1つは仮面ライダーV3が敵対したデストロンが、ショッカー・ゲルショッカーの首領と同一人物(?)によって、ダブルライダーに敗れた両組織よりも強勢な集団として組織されたことにある。
 当然、機械合成改造人間や結託部族改造人間は過去の組織の怪人よりも精強な存在として設定されたことにある。

 もう1つはV3が1号の技と、2号の力を受け継いだオールラウンダーであることにある。
 それゆえにV3の技には多様性と力強さが与えられた。必然、数々の多彩な蹴り技の中で只の飛び蹴りであるV3キックの存在感はくすみ、技によって威力が増されたV3フル回転キック、V3きりもみキック、V3反転キックをメインとした数々の蹴り技がデストロン怪人を屠り、その中で戦績最多の原則に基づいて、V3フル回転キックが代表的必殺技に選出された。

 とはいうものの、番組の中にあって、V3フル回転キックは然程目立つ技ではなく、飛び抜けて多くの必殺頻度を誇る技が見られないために第一位となった(詳細後述)。
 必然、V3フル回転キックもまた他の技との並存が興味深い必殺技となる。
考察1 きりもみ&反転&フル回転
 実の所、V3フル回転キックはデストロン怪人を7体しか倒していない(ちなみに犠牲者はミサイルヤモリ・ウォーターガントド、カマキリメラン・ヒーターゼミ・オニビセイウチ・ガルマジロン・吸血カメレオン)。最終回にてヨロイ元帥(中村文弥)の正体であるザリガーナに放たれた際には、ザリガーナ=ヨロイ元帥に戦闘不能となる重症に追い込んだものの、直接死に至らしめていない(直接止めを刺したのは首領)ので決め技としてのカウントに入れていないが、それを入れても飛び抜けた数字とはならない。
 そこで例によって下表から戦跡を見て欲しい。

登場怪人死因
ハサミジャガーV3回転ダブルキック
カメバズーカ自爆
テレビバエV3遠心キック
イカファイアV3遠心キック
マシンガンスネークV3反転キック
ハンマークラゲV3スクリューキック
ナイフアルマジロV3ドリルアタック
ノコギリトカゲV3ダブルアタック
レンズアリV3きりもみキック
カミソリヒトデV3きりもみキック
ピッケルシャークV3反転キック
ドリルモグラV3反転キック
ジシャクイノシシ自爆
ガマボイラー自爆
バーナーコウモリ逆ダブルタイフーン
ミサイルヤモリV3フル回転キック
スプレーネズミV3キック
クサリガマテントウV3キック
ハリフグアパッチV3きりもみキック
ギロチンザウルスV3回転キック
ドクバリグモV3反転キック
ウォーターガントドV3フル回転キック
プロペラカブトV3反転キック
ゴキブリスパイクV3反転キック
カマキリメランV3フル回転キック
ヒーターゼミV3フル回転キック
ワナゲクワガタV3キック
カメラモスキートV3ボディアタック
カニレーザーV3きりもみ反転キック
ドクロイノシシV3フライングキック
オニビセイウチV3フル回転キック
ユキオオカミV3きりもみチョップ
原始タイガーライダートリプルパワー
吸血マンモスV3回転三段キック
火炎コンドルビッグスカイキック
木霊ムササビV3トリプルパンチ
殺人ドクガーラハリケーンラストダッシュ
バショウガンV3スカイキック
死人コウモリV3マッハキック
ガルマジロンV3フル回転キック
カタツブラーV3キック
カマクビガメV3脱出パンチ
サイタンクV3きりもみキック
シーラカンスキッドV3きりもみキック
オニヒトデV3三段キック
吸血カメレオンV3フル回転キック
ザリガーナ首領による爆殺
デストロン首領チョップ
ライダーV3との戦闘率97.92%
決着率100.00%
V3フル回転キックによる必殺率14.89%

 表によると V3フル回転キックの必殺率は14.89%に留まり、はっきり言って、代表的必殺技に指定するのはかなり無理がある。また、フィーリング的にはV3きりもみキックやV3反転キックの方がV3が頻繁に放った技としてのイメージが強い。

 何故か?
 まずは初期の出番が挙げられる。各キックの初登場はV3反転キックが第5話、V3きりもみキックが第10話なのに対して、V3フル回転キックはドクトルG (仙波丈太郎)初登場に遅れること3話目の第16話で初登場を果たしている。またV3フル回転キックは第25話・第26話を除けば連続で放たれたことが無く、明らかに対合成改造人間時期ではV3反転キック・V3きりもみキックより使用頻度が低く、それを象徴するように、最後の合成改造人間にしてドクトルG の正体であるカニレーザーは二つの蹴り技の複合技とも言えるV3きりもみ反転キックで倒された。

 だが、対結託部族編に入ると様相は変わる。
 まず、V3反転キックが相手を倒すことが無くなったが、他の蹴り技にしても、対キバ一族戦ではダブルライダーの帰国もあって、V3フライングキック・V3きりもみチョップと言った一発技、トリプルライダーによる唯一にして最強の大技・ライダートリプルパワー、個人アクションとしては最も激しい動きを伴ってキバ男爵(郷�F�)の正体である吸血マンモスを倒したV3回転三段キックに決まり技としての立場を奪われた(唯一、オニビセイウチだけが以前から存在したV3フル回転キックによって倒されている)。

 続く対ツバサ一族戦では、飛翔能力でV3に二度も苦杯を舐めさせたツバサ軍団に対して特訓よって生まれたビッグスカイキック (某ライダーの類似技に注意)・V3マッハキック(ツバサ大僧正(富士乃幸夫)の正体である死人コウモリを倒した)や、V3トリプルパンチ(何故か最後に鐘の音を立てた)・ハリケーンラストダッシュ・V3スカイキック(やはり某ライダーの類似技に注意)といった一発技が決まり技の地位を占め、それまでの技は見事に出番を奪われた。

 最後の対ヨロイ一族戦では、ライダーマン・結城丈二(山口暁)の誕生が番組の見せ場を占める中、V3きりもみキック・V3フル回転キックが決まり技としての再登場を果たし、V3フル回転キックは番組最後に放たれた技となって、ヨロイ一族壊滅を決めた。
 中でもハリケーンダッシュやV3マッハキックも破り、ヨロイ一族はおろか、デストロン最強かもしれないサイタンクを倒したV3きりもみキックはかなり面目を躍如しているが、硬い殻を持つヨロイ一族の一人・カタツブラーがただのV3キックに敗れたり、V3を飲み込もうとしたカマクビガメが V3脱出パンチ(←そのまんまな技名やんけ)によって内部から破壊されたり、と要った珍しいケースも見られた。

 そしてヨロイ一族最初の刺客であるガルマジロンを倒し、最後の刺客であるザリガーナを戦闘不能に追い込んだことでV3フル回転キックは番組晩期を盛り上げた必殺技として俄然、輝きを増していることが見て取れる。

 仮面ライダーV3の蹴り技の中で最も多く体を縦回転させ、その力を両足に託してデストロン怪人を屠るV3フル回転キックは、全力一点集中のアクションがシンプルでも魅力的な技だが、技と力の後継者が数多くの蹴り技バリエーションを持つことと無縁でないことにも注目したい。


考察2 頻発と単発
 蹴り技だけでも複数回の出番を持つV3反転キック、V3きりもみキック、V3フル回転キックがあり、一度限りの出番だけでも多彩な技を仮面ライダーV3は持つ。
また、パンチやチョップ、バイクを駆使した技もあれば、必殺技にも特殊アイテムにもなるダブルタイフーン・レッドランプ等とともに様々な能力の集大成である26の秘密まである。

 考察を重ねてシルバータイタンが感心するのはそれらの中に頻発技と単発技が併存することである。
 見るからに硬そうなボディを持つ合成改造人間やヨロイ一族を撃破したV3反転キック、V3きりもみキック、V3フル回転キックが度々登場する一方で、大幹部の正体である強敵改造人間を倒したV3きりもみ反転キック・V3回転三段キック・V3マッハキックと言った単発でも強烈なインパクトを持つ技も存在する(V3マッハキックだけは、第45話で再登場している。あっさりサイタンクに破られたが)訳だが、「いつもいつも同じ技で決着がつくのは面白くない。」、との不満を視聴者に抱かせず、ここぞというタイミングで一発大技が繰り出されることの難しさを乗り越えて、必殺技を見る時の楽しみに見事に応えているのである。

 贅沢を言えば、そこに押しも押されもしない代表的な必殺技が不在であることが珠に瑕である。基本となるV3キックは戦績的にとても代表的必殺技とは言えず、最も多くのデストロン怪人を倒したV3フル回転キックにしたところで挙げたる敵の首が全52話中、7体(ヨロイ元帥を含めたとしても8体)では「代表的」というには些か無理がある故に。


考察3 バランスの難しさ
シルバータイタンとしては、力と技の仮面ライダーV3が多彩な技を持ち、V3反転キック・V3きりもみキック・V3フル回転キックをそこそこ頻発する技としつつ、手技・ライディングテクニック・ダブルライダーとの合体技・26の秘密がピンポイント的に現れ、同時にキック技の中にもここぞという場面でのピンポイント的な出番をになった大技があった『仮面ライダーV3』の必殺技役割分担構成は概ね正解であり、成功であったと見ている。後発のライダーシリーズの中にも、前半はたった1つの技(主に単純なキック技)に決着を依存しつつも、終盤には様々なバリエーションを持たせた作品は多く、その中には『仮面ライダーV3』同様、キック技に多様性を持たせたものが少なくない。
勿論、「仮面ライダー=ライダーキック」のイメージが激強だからに他ならない訳だが、当然のことながら、その盤石化に『仮面ライダーV3』が貢献した度合いはとても大きい。

 ただ、極めて贅沢を言えば、今少しのバランスと意外性が欲しかった。
 単発技・頻発技に役割があったのは見事なのだが、誤解を恐れず表現すれば「気真面目過ぎる。」のである。
 つまりは大技が大幹部の正体・ダブルライダーとの共演でお決まりのように登場し、キック技以外の単発技が仮面ライダーV3が何がしかの成長を遂げたり、行動パターンを変えた節目だけに登場したり、V3反転キック・V3きりもみキック・V3フル回転キックにも出番にシリーズや時期的な偏りが見られる(勿論例外もある)。

 勿論、この意見が大変贅沢なものであることは自覚している。
 初っ端から「力と技の風車が回る」ことを戦力して戦う仮面ライダーV3が同じ技ばかり使う訳にはいかない中に、強敵・難敵・重大局面で戦う相手には更なる技を選ばざるを得ないし、その上、シルバータイタンはその法則性に依存してばかりいてはいけない、と求めているのだから……。
 それゆえにここで注目したいのは通常のV3キックである。

 番組の背景を考えれば、この基本技に必殺技としての役割を担わせるには無理があったのは容易に推察できるが、それでもシルバータイタンはこの基本技がスプレーネズミ・クサリガマテントウ・ワナゲクワガタ・カタツブラーを倒した例は良いものとしているし、ここにも番組構成における技の存在意義の難しさがあると思っている。

 『仮面ライダーV3』にはストーリーが2話に跨っているものがとても多く、スプレーネズミとクサリガマテントウはともに第17話・第18話に登場し、第18話では(偽りではあったが) V3に降伏して、水先案内を務めている。
 後番組で実際に『仮面ライダーアマゾン』でモグラ獣人が、『仮面ライダーBlack』でクジラ怪人が仮面ライダーに味方した例を見れば、所詮偽降に過ぎなかったクサリガマテントウの存在感は大きな物ではないかも知れないが、勿論偽降であることが終盤まで隠されたことを考えれば、当時の視聴者は「V3に協力するデストロン怪人」の図式に驚愕したのではないだろうか?
 必然、作品の見所は謀略戦に委ねられ、大技や華麗過ぎる技は見どころを損ねるものとされ、単純なV3キックが2体の怪人を立て続けに倒す、という例外的な展開が為されたように思われる。

 同様の事がワナゲクワガタの出番だった第27話・第28話にも言える。
 何せ、第27話・第28話はショッカーのゾル大佐(宮口二郎)、死神博士(天本英世)、地獄大使(潮健児)、ゲルショッカーのブラック将軍(丹羽又三郎)が生き返って日本国同時多発テロを画策するのである。
 実際、ワナゲクワガタは知名度は高くなったが、存在感は高くならなかっただろう(苦笑)。
また、大幹部が幅を利かせる場合、平の怪人にドジ役がふられることが多いのだが、ワナゲクワガタはそのドジ役さえ地獄大使に取られてしまったのである(笑)。
ワナゲクワガタの死がインパクトの薄いものにされてしまったのも無理もない話である。

 こうして見ると、必殺技はただ強ければいい、ただ怪人を倒せればいい、というものではなく、スートリーを盛り上げる為には出にならなければならない時と、ストーリーの核を別の要素に譲って地味にならざるを得ない時の両方があることが良く分かるし、そのバランスは本当に難しいものがある。
 くどいが、シルバータイタンは『仮面ライダーV3』における必殺技の役割に今一歩の改善の余地があれば良かったと思ってはいるが、批判するつもりは更々無いことを重ねて明言しておく。


総論 話が横道に逸れるが、TV番組でも、漫画でも、企業も、国家でも、様々な分野における一流家系でも、2代目のあり様でその後の運命が決まると言っても過言ではない。
 勿論初代がなければ始まらないのだが、初代は「創業」を成し遂げた時点で成功者で、失敗者であればそもそも注目されない。だが、偉大な初代を持てば2代目は「守成」の代表として成功者であろうと、失敗者であろうと注目される。
 それゆえに何事も2代目は辛く、国家元首でも企業でも2代目は名君と暗君の評価が極端な場合が少なくない。

 話を戻すと、『仮面ライダー』の後番組にして、仮面ライダーシリーズが人気シリーズとなるか、一発番組にしてしまうか、の運命の分かれ道を担った『仮面ライダーV3』制作陣の苦心苦労は並々ならぬものがあっただろう。
 26の秘密も、機械合成改造人から結託部族への転換も、試行錯誤とテコ入れの連続だったことだろう。

 野暮なツッコミを入れると、本来仮面ライダーV3が多彩な技と秘密を持つのにはストーリー展開上無理がある。
 第1話でのダブルライダーによるV3改造手術は自分達を庇って改造人間分解光線を浴びて瀕死の重体に陥った風見志郎(宮内洋)を蘇生させる為のもので、手術に用いた部品や用具は敵が既に放棄したアジト内に残された(恐らくはそれほど重要とは見做されなかった)物で、失われゆく命の蘇生の為には時間に余裕があった訳でもなく、最後の最後にはカメバズーカによる砲撃にまで晒される環境下にあったのである(それでなくても悪の組織が放棄したアジトを自爆させた例は当時既に珍しくなかった)。

 そんな劣悪な手術環境で大急ぎで改造されたV3に26のもの秘密を持たせたダブルライダーはどれだけ執刀医として優れていたのだ?とツッコミたくなる(苦笑)。
 通常は「26の秘密と4つの弱点」ではなく、「4つの秘密と26の弱点」になってもおかしくない筈である。

 ともあれ、ストーリー的にも、歴史的にもそんな様々な背景を背負って、数々のデストロン怪人を倒し、最も多くの戦果を挙げたV3フル回転キック。せめてシルバータイタンだけでももっとその知名度を上げる為の尽力をしたいものである。


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平成二二(2010)年六月一二日 最終更新