仮面ライダーストロンガーの必殺技

指定必殺技:ストロンガー電キック


仮面ライダーストロンガーとストロンガー電キック
 ジャンプしながらカブテクターの前で双腕を交差させた仮面ライダーストロンガーが、技の名前を叫びながら空中で長目に滞空してトンボを切り、上空では揃えていた両脚を急降下時に右足を伸ばして突き出す(その間、ストロンガーの体にシルエットが差す)。
 突き出された右足が敵の体に命中するや、敵の体に10万ワットのエネルギーを注ぎ込んでその肉体を破壊するのがストロンガー電キックである。

 狭義では「電キック」と言えばこの「ストロンガー電キック」を指すが、厳密には仮面ライダーストロンガーがジャンプもせずに戦闘員や、格闘中に繰り出す蹴りが「電キック」である。
 そしてこのストロンガー電キックは、改造電気人間である仮面ライダーストロンガーの技である故に、従来の悪の組織の改造人間に比して機械部分の占めるウェイトが高いブラックサタンの奇械人には極めて有効で、体質や性能上、ストロンガー電キックが効かない特殊能力でも持たない限り、直撃を受けた奇械人の多くは一撃死し、頭部を飛ばされても生きていたクラゲ奇械人や、一撃目は武器を飛ばされただけにとどまった奇械人ハサミガニにしても、その一撃で殆ど戦意喪失していた。

 ライダーキック系の技を食らった敵が、蹴飛ばされ、地面に激突(状況によっては空中や水中にて)して木っ端微塵に消し飛ぶシーンは定番だが、このストロンガー電キックでは命中した瞬間に奇械人の体内メカがショートしたこと示す演出として、他のライダーキック以上に火花を散らしていた。

 前述したように、仮面ライダーストロンガーは改造電気人間である。それゆえに彼の持つ技は肉弾攻撃を介して電気エネルギーの流入で相手の体を破壊したり、電気と密接な関係を持つ発火・雷撃・磁力を利したもので、かなり化学に裏打ちされた技を敢行する。
 その改造人間としてのスペック故に多彩な技を持つ仮面ライダーストロンガーだが、それでも決着の多くはストロンガー電キックによって着けられた。
 詳細は後述するが、特に対ブラックサタン戦期には高い決着占有率を持つ。多彩な技を持ちながら余りに一つの技が勝負を決めまくった原因に注目したい。
考察1 ストロンガー電キックの戦績
 『仮面ライダーストロンガー』は5作品目の「仮面ライダー」である。前作の『仮面ライダーアマゾン』が大切断というそれまでのキック系の技とは明らかに様相を異にする技をフェイバリット・ホールドとした為、その個性は群を抜き、後発である仮面ライダーストロンガーはフェイバリット・ホールドを蹴り技に戻すに当たって、一目瞭然な個性が求められた。
 既に多彩さでは仮面ライダーV3が、奇抜なアクションでは仮面ライダーX が披露している為、必然、ストロンガー電キックの個性は名前の通り、電気技であることに求められた。
 それを念頭に置いた上で、例によって下表にストロンガー電キックの戦績を参照して頂きたい。

登場怪人死因
奇械人ガンガルストロンガー電キック
奇械人オオカミーンストロンガー電キック
サソリ奇械人ストロンガー電キック
奇械人ゴロンガメ電気ストリーム
奇械人トラフグンストロンガー電キック
クラゲ奇械人電気ストリーム
奇械人ワニーダストロンガー電キック
奇械人モーセンゴケストロンガー電キック
カマキリ奇械人ストロンガー電キック
奇械人ハゲタカンストロンガー電キック
奇械人カメレオーンストロンガー電キック
クモ奇械人ストロンガー電キック
奇械人エレキイカバズーカ砲撃
一つ目タイタン海中への投擲
奇械人メカゴリラストロンガー電キック
クワガタ奇械人ストロンガー電キック
奇械人ブブンガーストロンガー電キック
コウモリ奇械人ストロンガー電キック
奇械人電気エイストロンガー電キック
奇械人毒ガマストロンガー電キック
奇械人アリジゴクストロンガー電キック
サメ奇械人ストロンガー電キック
奇械人ドクガランストロンガー電キック
百目タイタン噴火口への転落
奇械人ハサミガニストロンガー電キック
奇械人アルマジロストロンガー電キック
デッドライオン逃亡
ブラックサタン大首領ストロンガー電キック
鋼鉄参謀ストロンガー電キック
荒ワシ師団長水中エレクトロファイヤー
ドクター・ケイトタックルに倒される
ドクロ少佐超電子ドリルキック
岩石男爵超電三段キック
オオカミ長官超電稲妻キック
隊長ブランク超電急降下パンチ
ヘビ女超電大車輪キック
ジェネラル・シャドゥ超電稲妻キック
磁石団長詳細不明
ヨロイ騎士詳細不明
マシーン大元帥自爆
岩石大首領自爆
ライダーストロンガーとの戦闘率100.00%
決着率90.00%
ストロンガー電キックによる必殺率58.33%

 全体での戦績を見ればデルザー軍団の多くが超電子技を使わなければ倒せなかったこともあって、ストロンガー電キックによる決着率は58.33%に留まるが、対ブラックサタン戦に限れば、決着率は76.92%に跳ね上がる。
 前述したようにストロンガーは多彩な電気技を持つ故に、中には電気ストリーム(奇械人ゴロンガメクラゲ奇械人を倒した)、エレクトロウォーターフォール(カマキリ奇械人を倒した)、エレクトロサンダー(奇械人ハゲタカンを倒した)等の技も勝負を決めたが、それも対ブラックサタン戦中の一つ目タイタン(浜田晃)戦死前までで、それ以降はデルザー軍団編に入るまで、「ストロンガー電キック以外の決め技は無いのか?」と言いたくなるほど、ストロンガー電キックばかりが勝負を決めた。

 対ブラックサタン戦でストロンガー電キックが端から通じなかったのは一つ目タイタン百目タイタンのみである、ふふん♪(←タイタンの名を冠する身としてチョットだけ誇らしい)。ストロンガー電キックが放たれなかったジェネラル・シャドゥ(声:柴田秀勝)、デッドライオン(声:辻村真人)を除けば、ストロンガー電キックで致命傷を負ったり、戦闘不能に陥らなかったものは無く、ブラックサタン大首領(声:納谷悟朗)さえストロンガー電キックの前に姿を落とし、ブラックサタンは壊滅に追いやられた。

 だが、対ブラックサタン戦においてこれほど猛威を振るったストロンガー電キックが、デルザー軍団の改造魔人に対しては散々だった。
 結果から言えば、ストロンガー電キックの前に命を落としたのは鋼鉄参謀のみで、それとでドクター・ケイトのケイトガスで半身不随状態に追い込んでいたからこそで、重傷を負う前の鋼鉄参謀には全く通じなかった。
 別の作品でも書いたが、デルザー軍団ではストロンガー電キックは研究され尽くしていたようで、当初、仮面ライダーストロンガーストロンガー電キックをはなって、それが改造魔人に命中すると、火花は散らした直後に電気エネルギーは改造魔人の体表面で弾かれてストロンガー本人に逆流し、ストロンガーは技の動きを逆送りするように(ついでを言うと色と左右まで逆に)弾き飛ばされてダメージを追っていた。

 もっとも、超電子ダイナモ内蔵手術を受けた後も岩石男爵オオカミ長官に放たれたストロンガー電キックが再改造前と同様の結果でしかなかったのが、後から来日した磁石団長には常人が常人に飛び蹴りを食らわせたぐらいのダメージは与えていたので、ストロンガー電キックに対する返しは、改造魔人の肉体的能力というよりは、特別な対電装備と見た方がいいかも知れない。

 上記のことから、ストロンガー電キックは番組として、改造電気人間仮面ライダーストロンガーの個性を発揮することと、改造魔人集団デルザー軍団の脅威を示す、という2つの役割を担ったと言える。
 言葉悪く言えば、噛ませ犬の役割を果たしたともいえるが、デルザー軍団が、歴代組織の中でも屈指の強さを今でも色褪せず誇っていることを思えばストロンガー電キックが弱気技とのイメージをもたれることはない。V3キックの立場の方が悲惨だと思う(苦笑)。


考察2 改造電気人間と改造超電子人間
 必殺技には、それが放たれて多くの敵が倒されることで使い手のアイデンティティを高める役割があると共に、それが破れることで敵の強さを際立たせるという噛ませ犬的な役割がある。
 ストロンガー電キックはまさにその双方の役割を振られたと言える。

 一つ目タイタン戦死後からブラックサタン壊滅まですべての奇械人とブラックサタン大首領ストロンガー電キックによって倒され、この時期だけを見れば、例によって、「他に技は無いのか?」と言いたくなる(苦笑)。
 しかしながら、 数多くの奇械人だけでなく、ブラックサタン大首領さえ一撃で葬ったストロンガー電キックだったが、前述したようにデルザー軍団相手には無力に等しかった。  皮肉にもこれによって、ストロンガー電キックはワンパターンな決着技とは一線を画すこととなった。

 荒ワシ師団長の台詞によると、鋼鉄参謀から隊長ブランクまでの改造魔人8人はストロンガーの電気技に対して研究済みで、改造魔人達の前に前述したようにストロンガー電キックはあっさり弾き返された。
 改造超電子人間になる為の超電子ダイナモ内蔵手術の施術後も、通常のストロンガー電キック岩石男爵オオカミ長官に効かず、後から来日した磁石団長には多少のダメージを与えていたことを見れば、先発の改造魔人達は威力の大小に関係なくストロンガー電キックを初めとする電気技への体勢が施されていたと見るべきだろう。

 その証左として、ドクロ少佐以前の改造魔人の死に様が挙げられる。彼が超電子ドリルキックで倒されたのを皮切りに、以後の改造魔人達は超電子技で倒されたが、ストロンガーが超電子ダイナモを内蔵する前は、三人の改造魔人達はストロンガーがそれ以前からマスターしていた技で戦わざるを得なかった。
 結果として、鋼鉄参謀ストロンガー電キックで、荒ワシ師団長水中エレクトロファイアで、ドクター・ケイトは電波人間タックルウルトラサイクロンで倒された訳だが、究極の自爆技であるウルトラサイクロンを別格とするなら、鋼鉄参謀荒ワシ師団長は従来の電気技で倒されている。
 だが、これは2人の改造魔人が電気技に弱かったからではなく、2人ともストロンガー電キックを正面から跳ね返した実績を持っている。本来なら通じない筈の電気技が通じたのは鋼鉄参謀はケイトガスで半身不随に追い込まれていたからで、荒ワシ師団長は滝壺に引き摺りこまれて帯電可能状態に曝されてからで、言わば、必敗状態に追い込まれてのことで、これは改造魔人といえども事前の装備なくしては電気技に耐えられない所がうかがえて興味深い。

 ともあれ、正面切っての戦いでは電気技に耐性をもって戦いに臨まれたストロンガーは何度もストロンガー電キックを弾かれ、超電子技が改造魔人達を屠り続けた為、ストロンガー電キックには噛ませ犬の任が振られてしまったが、それでも時には牽制技や繋ぎ技としての役割や、様子見や囮技としての役割も見られ、超電子技との比較の中にも単純なワンパタ決着技で終わらなかった点が注目されるものである。
 もっとも、岩石大首領に放たれたストロンガー電キックに意味はなかったな(苦笑)。せめてチャージアップしてからにしなきゃ……。


考察3 極端な役割頻度と牽制技
 前述したように、ストロンガー電キック一つ目タイタン戦死からブラックサタン壊滅までの間、ほぼ決まり技としての地位を独占した。正直、この間は「またストロンガー電キックかよぉ……。」、「たまには他の技出せよ……。」と言いたくなるのだが、その以前では様々な電気技が、デルザー軍団登場後は数々の超電子技が、ストロンガー電キックの必殺技としてのステータスを脅かした。

 はっきり言って、極端過ぎる。

 だが、それでも不思議とシリーズ全体を観た時、ストロンガー電キックの存在感が色褪せたことは無く、逆にストロンガー電キックしかない、とのイメージもまた無い。
 それはストロンガー電キックが勝負を決めなかった時期でもこの技は頻繁に放たれ、ストロンガー電キックばかりが決着をつけ続けた時期でも、エレクトロファイアや、電ショック、といった副次的な小技が時に戦闘員を蹴散らしたり、時にとどめ技を放つまでの繋ぎを務めたり、その他局面に応じて電気技の派手さを見せつけたりして、戦闘に多様性を見せて来たからではないか、と思われる。
 そして、それゆえにサブ的な役割を地味ながらも長きに渡って勤めて来たエレクトロファイア電ショックの重要性を重視すればこそ、後番組で、エレクトロファイア電ショックが呼称の上でごちゃまぜになっていることが許せないのである

 仮面ライダーストロンガーは改造電気人間であり、改造超電子人間でもあるから、従来のライダーアクションに電気特有の要素を加えた技のバリエーションが魅力的なライダーである。妙な偏りが気になりはしたものの、今一歩、ストロンガー電キックと他の技との登場バランスが考慮され、ストロンガー電キックの役割が時期による偏りを見せなければ、ストロンガー電キック仮面ライダーストロンガーの代表的必殺技としてその名を輝かせることと、ワンパタに陥らずに他の技をも輝かせることとの両方を卒なくこなしていたであろうことが容易に考えられるゆえに、時期的な偏りが惜しまれるのであった。


総論 第一期ライダーシリーズのトリを務め、改造魔人という最強の敵に対して、初の二段変身を駆使し、全ライダーとの終結を見せた『仮面ライダーストロンガー』という番組を考察する時、第3クールのラストである第39話で最終回を迎えた同番組に対して、もう少し継続し、電気技・超電子技とのバランス、歴代ライダーの活躍がもっと上手く展開されていたであろうことを思うと、駆け足のように第39話で終わったことが惜しまれる。

 第一期ライダーシリーズ後半の妙な話数で終わり方は本筋ではないのでここでは触れない。シルバータイタンより遙かに詳しい方々もいらっしゃることでしょうし。
 しかしながらその話数の中でストロンガー電キックとその他の電気技・超電子技、そしてエレクトロファイア電ショック等のサブ的な技(←でありながら主題歌や挿入歌にその名が出るのは立派!)がそれぞれの役割を得て概ね良いバランスで登場したことに対しては制作陣はいい仕事をしてくれたと考えている。

 例を挙げるなら、ストロンガー電キックが完全な独占とならず、多くが一度切りの出番で終わった電気技・超電子の中でも水中エレクトロファイア電気ストリームエレクトロウォーターフォール超電子ドリルキック超電稲妻キックのように二度以上の出番を得たものがあることもよく出来た配分である。
 加えて嬉しいのは、超電子ドリルキックの様に番組を超えて出た技(←チャージアップを行っていない状態で放たれたことは多くのマニアの顰蹙を買っているが)もあることで、このような技は村枝賢一氏が『仮面ライダーSPIRITS』にて登場させない筈がない(笑)。
 2009年12月8日現在、同作連載が続く中において、超電子技の中では超電大車輪キック超電逆落としのみが未登場だが、それも時間の問題だろう(笑)。
 いずれにしてもジャンルを問わず、仮面ライダーストロンガーの数々の技が登場することに期待が持てる一方で、ストロンガー電キックにも然るべきステータスを持ち続けることを期待したいものである。


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平成二一(2009)年一二月八日 最終更新