ウルトラマンタロウの必殺技

指定必殺技:ストリウム光線


ウルトラマンタロウとストリウム光線
 「ストリウム光線!」とウルトラマンタロウが叫び、開いた右手を高く上げると同時に左手を腰にあて、そこから左手を上げて右手に重ねるとスパークを起こし、両手を腰に添えてエネルギーを貯めるとその体は赤と緑のラメの入ったシルエットに彩られ、両腕を横L字型にして両腕を突き出した刹那、光線が発射され、「怪獣より強い超獣より強い怪獣」を爆破・粉砕する…これがウルトラマンタロウの代表的必殺技・ストリウム光線の流れである。

 多くの怪獣を死に至らしめたその力は、文献によるとウルトラマンA メタリウム光線の倍以上、ウルトラマンメビウスメビュームシュートを大幅に超える破壊力を持つ、とされている。
 またその効用も、通常は爆発光線だが、エネルギーの使い方によっては対象を消滅させたり、爆発させずに倒したり、といった作用もある。
 元より、ウルトラの父ウルトラの母の実子にして、能力的にはウルトラ兄弟最強とされるウルトラマンタロウ故に、上記のような設定があり、対極悪宇宙人テンペラ―星人戦でこそ、ストーリーの構成上、末っ子の甘えん坊呼ばわりされたが、火山怪鳥バードン悪質宇宙人メフィラス星人月光怪獣再生エレキング暴君怪獣タイラントといった、ウルトラ兄弟を破ったり、ウルトラ兄弟を苦戦させた怪獣や宇宙人(或いはその同族)を撃破したりしている。
 ところが、そんな最強の素養と戦歴を持つウルトラマンタロウでありながら、ストリウム光線が凄い必殺技であることは納得されるのだが、凄いというイメージはあまりない。技も、技の使い手が持つ強さも有名でありながら何故に最強戦士の必殺技に相応しいインパクトを持ち得ない原因を検証したい。
考察1 ストリウム光線の戦績
 例によって、実戦結果を持ってストリウム光線の戦績をまずは見てみたい。
登場した怪獣・宇宙人死因
宇宙大怪獣アストロモンスストリウム光線
オイル超獣オイルドリンカーアストロモンスに倒される
液体大怪獣コスモリキッドZATに倒される
再生怪獣ライブキングストリウム光線&マザー光線
大亀怪獣クイントータスストリウム光線(後に蘇生)
大亀怪獣キングトータス宇宙へ送還
大亀怪獣ミニトータス宇宙へ送還
なめくじ怪獣ジレンマストリウム光線
大ガニ怪獣ガンザ腹部引っぺがし
大ダコ怪獣タガールガンザの為に敗退
大蛙怪獣トンダイル ストリウム光線
大羽蟻怪獣アリンドウファイヤーダッシュ
海象怪獣デッパラス奪われた牙で刺される
蔦怪獣バサラストリウム光線
噴煙怪獣ボルケラー宇宙へ送還
虫歯怪獣シェルターZATに倒される
えんま怪獣エンマーゴストリウム光線
狐火怪獣ミエゴン自分の炎で焼死
笛吹き怪獣オカリヤンハンドビーム
食葉怪獣ケムジラバードンに倒される
火山怪鳥バードン大熊山に激突死
鳥怪獣フライングライドロン宇宙へ送還
蝉怪獣キングゼミラ宇宙へ送還
カンガルー怪獣パンドラ地底へ送還
カンガルー怪獣チンペ地底へ送還
しんきろう怪獣ロードラウルトラスバウト
宇宙大怪獣ムルロア ZATに倒される
百足怪獣ムカデンダーアトミックパンチ
悪質宇宙人メフィラス星人(二代目)ストリウム光線
月光怪獣 再生エレキングノックアウト後、宇宙へ送還
異次元超人 改造巨大ヤプールストリウム光線
宇宙怪獣 改造ベムスター ZATに倒される
サボテン超獣 改造サボテンダーストリウム光線
ミサイル超獣 改造ベロクロン二世 ZATに倒される
きのこ怪獣マシュラドライヤー光線
木枯らし怪獣グロン暴発による自爆
極悪宇宙人テンペラー星人ウルトラマンボールからの奇襲
めつぶし星人カタン星人ウルトラダイナマイト
ねこ舌星人グロストシューティングビーム
逃亡怪獣ヘルツ宇宙へ送還
醜悪星人メドウーサ星人ストリウム光線
緑色宇宙人テロリスト星人シューティングビーム
うす怪獣モチロン ウルトラの父と南夕子により月へ送還
暴君怪獣タイラントウルトラランス
らくがき怪獣ゴンゴロスストリウム光線
おうむ怪獣エレジアストリウム光線
食いしん坊怪獣モットクレロン宇宙へ送還
きさらぎ星人オニバンバ逃亡
うろこ怪獣メモール宇宙へ送還
凶悪宇宙人ドルズ星人詳細不明
わんぱく宇宙人ピッコロタロウの説得を受け、彗星へ帰還
冬眠怪獣ゲラン凍結
宇宙怪獣ゴルゴザウルスII世詳細不明
酔っぱらい怪獣ベロン宇宙へ送還
宇宙少年 ファイル星人宇宙へ帰還
歌好き怪獣オルフィ撤退
宇宙怪人カーン星人地上への叩きつけ
球好き怪獣ガラキング空の彼方へ投擲
不死身怪獣リンドンウルトラの父に倒される
泥棒怪獣ドロボン ZATに倒される
海獣サメクジラストリウム光線
宇宙海人バルキー星人 ZATに倒される
タロウとの戦闘率85.71%
決着率59.26%
ストリウム光線による必殺率43.75%

 意外にストリウム光線によって倒された割合は多くないのだが、それでも半分以上の敵を倒している。ストリウム光線以外の死因を持つ怪獣・宇宙人を見てみると、ファイヤーダッシュハンドビームウルトラスバウトアトミックパンチドライヤー光線ウルトラダイナマイトシューティングビームウルトラランスと言った他の技で倒されたものもいるが、ZATや他の怪獣によって倒されたものもいる。
 そして意外に多いのが、宇宙や地底と言った故郷に帰されたり、逃亡したりしたものである(大亀怪獣キングトータス家族・噴煙怪獣ボルケラー鳥怪獣フライングライドロン蝉怪獣キングゼミラカンガルー怪獣パンドラカンガルー怪獣チンペ逃亡怪獣ヘルツうす怪獣モチロン食いしん坊怪獣モットクレロンきさらぎ星人オニバンバうろこ怪獣メモールわんぱく宇宙人ピッコロ酔っぱらい怪獣ベロン宇宙少年ファイル星人歌好き怪獣オルフィ)。

 そう、検証してみて気付いたのだが、『ウルトラマンタロウ』自体に激戦・激闘のイメージが薄く、それらの背景や作風が数々の勝負を決めた名必殺技のインパクトを奪っているのである。
 実際、ストリウム光線は登場怪獣の中でも、ウルトラシリーズにおいても強敵としての知名度の高いバードンテンペラー星人べムスタータイラント不死身怪獣リンドン等を倒していないのである。
 誤解ないように触れておくが、シルバータイタンはその方針には全くもって賛成である。放映史上に高名を残すような強敵・好敵がいつもと同じ技に倒れては面白くない
 技とウルトラマンタロウの設定上、ウルトラ兄弟の必殺技の中でも随一の威力を誇りながらストリウム光線がその実力に相応しいインパクトをもって受け入れられていないのは作風の優秀さと背中合わせとは些か皮肉である。


考察2 番組の重心と必殺技
 『ウルトラマンタロウ』という番組を考察する時、同番組の第一印象とは何だろうか?見ている方が恥ずかしくなる派手派手しいユニフォーム(笑)、朝比奈勇太郎隊長(名古屋章)と荒垣修平副隊長(東野孝彦)が織り成すコミカルな作戦の数々、次々と地球を訪れるウルトラの父ウルトラの母ゾフィー以下のウルトラ兄弟、『帰ってきたウルトラマン』以来の家族ぐるみ交流を持つ白鳥一家、etc………いずれにしても隊員達との確執が目立った前番組の『ウルトラマンA』、陰惨な展開の多い後番組の『ウルトラマンレオ』と好対照である。
 そう、前述したように同番組の重心はコミカルさにあると言っても過言ではない(←勿論ただ面白いだけの番組と言っているのではない)。

 それゆえに作戦も、登場怪獣も、ストーリー展開も重厚感よりもコミカルさに溢れた物が多く、ウルトラマンタロウ東光太郎(篠田三郎)こそZATの任務とボクサーとしての生き様に命を掛ける熱血漢で、心臓さえ無事なら再生可能な、ピッコロ大魔王もびっくりの生命力を利して、時にはウルトラ念力で首を刎ね飛ばさせた状態でえんま怪獣エンマーゴを油断させて逆にその首を刎ね飛ばしたり、究極の自爆技・ウルトラダイナマイト目つぶし星人カタン星人を木端微塵にしたりしているが、一方で、塩漬け作戦食いしん坊怪獣モットクレロンを漬物にして縮こまらせたり、ウルトラシャワーらくがき怪獣ゴンゴロスの体を水で濡らしてから手で拭き消したり、豆まき作戦きさらぎ星人オニバンバに枡に入った豆をぶつけてダメージを与えるという節分そのまんまの展開をしたり、キングブレスレットをバケツに変形させて酔っ払い怪獣べロンに水をぶっかけて酔いを覚まさせたり、と「漫才やっているのか?」と疑いたくなる決着が数多く見られた。

 子供向け番組の『ウルトラマンタロウ』が番組のエッセンスとしてコミカルな側面を持つことは決して非難しないし、適度に取り入れることは怪獣・宇宙人との死闘で殺伐としかねない世界に対する一服の清涼剤としてむしろ必要なことと思う。しかしながら、作風を考慮に入れても少々度は過ぎたように想う。
 僅か七年前の『ウルトラマン』ではヒーローであるハヤタ(黒部進)がウルトラマンに変身しようとしてベータカプセルとカレーのスプーンを間違えたことさえ、当時のスタッフは「ヒーローにあるまじき行為」として演出担当の更迭が論じられたのである。特撮マニアでなくても有名過ぎるこのシーンの挿入は結果として大成功だったのだが、ヒーローにパーフェクトを求めた当時の制作陣の気持ちも尊重すべきは尊重したいと思う。

 まあ、後出しジャンケンで番組を好き勝手あげつらうのは卑怯だと思うので、作風の極端な変化も、飽和状態までに様々な要素を取り入れたのも、一見無計画に見えるテコ入れの嵐も当時のスタッフが乱立し出したヒーロー番組や石油ショックによる厳しい制限予算の中、何とかいい番組を作ろうともがき続けた結果、とシルバータイタンは好意的に解釈しているので、『ウルトラマンタロウ』だけが持ち得た世界観はシリーズ内で同番組だけが持ち得た重要な個性と受け止めているゆえに、今後同番組を観る際には重厚感あふれる強力必殺技は貴重な存在として、コミカルな技は単発で終わる宿命を持ちつつも制作陣が絞りに絞った果てのアイデアの象徴として見守りたく思うものである。


考察3 意外な技に奪われたステータス
 押しも押されもせぬウルトラマンタロウの代表的必殺技・ストリウム光線。さすがに後発番組の悲しさでウルトラマンスペシウム光線ウルトラセブンアイ・スラッガー程の人気は望むべくもないが、それでも知名度や技としての強力さが劣っている訳ではない。
 先の考察ではストリウム光線が強敵を倒していないことを指したが、頻発技が強敵を倒す方がどうかとシルバータイタンは考えているので、強敵を倒していないのはストリウム光線が非力なのではなく、制作陣が技という物を上手く考えているからだと思っている。
 ところが、そんな不動の必殺技・ストリウム光線が、『ウルトラマンタロウ』の放映から三十数年の時を経て突如、強力な必殺技としてのステータスを意外な技に奪われるという現象が起きた。

 その技の名はウルトラダイナマイトである。

 前述したように、心臓さえ無事なら再生できるウルトラマンタロウの生命力を利した自爆技で、タロウが技名を呼称してガッツポーズに似た構えを取るとその全身が炎に包まれ、そのまま相手にしがみつくと大爆発とともに自身の体と相手の体を木端微塵に吹き飛ばし、自らはその直後にウルトラ念力でもって肉体を再生させる、というタイミングを一歩間違えれば本当に自爆死しかねず、例え成功しても確実に寿命を(約20年程)縮める技で、決して多用・頻出出来る技ではない。

 それゆえに作中でもカタン星人に使われたのが最初で最後だったが、当時からインパクトある技だったのが、『ウルトラマンメビウス』にて無双鉄神インぺライザーに用いられたことで懐かしさと、相手の手強さも手伝って、強烈なインパクトと共にフラッシュバックした。
 念の為に付け加えておくが、タロウウルトラマンメビウスをエネルギー切れに追い込んだインぺライザーを救援に駆け付けた直後にストリウム光線でもってその上半身を吹き飛ばしている。ゆえにストリウム光線が効かなかった訳ではない。
 しかしながらインぺライザーは自己修復機能の優れたロボット(?)で、すぐに復活し、それゆえに徹底的に打ち砕かないと駄目と見てタロウウルトラダイナマイトの発動を決意したのだが、実はこの技をもってしてもインぺライザーのとどめには至らなかったのだが、この戦いがメビウスのM78星雲への帰還命令に絡んだものでもあったためか、メビウスバーニングブレイブへの変身と共にウルトラダイナマイトをも学び、後にはメビウス版のウルトラダイナマイトであるメビュームダイナマイトなる技を発動し、異次元超人メビウスキラーインぺライザーを葬っている。
 恐らく同番組でウルトラマンタロウを知った若年層・幼年層にはストリウム光線よりもウルトラダイナマイトの方がタロウの技としての印象が強いのではないだろうか?
 もっとも、ウルトラダイナマイトが意外な頻出をしたのは、かつてない強敵の連続出現との背景があればこそで、発動後の体力消耗が尋常じゃないことからもこの技が強力さで群を抜きはしても、代表的必殺技の座を奪うことはなく、『ウルトラマンメビウス』の最終回でウルトラマン80とともに太陽の黒点除去に駆け付けたタロウが放ったのはやはりストリウム光線だった。


総論 必殺技に限らず、『ウルトラマンタロウ』という番組を考察する時にいつも思うのは後発番組ゆえに課せられる重い命題の数々である。
 人気シリーズとは当然ながら偉大なる初代がいて、それに勝るとも劣らぬ次代がいて、連綿と続く。次代が偉大な初代に丸で追い付けず、そこで終わるの例は特撮シリーズに限った話ではない。そこに行くと『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマン』から見ても5作目で、歴代作の長所は長所として受け継ぎつつ、短所を排し、且つ個性を持たなくてはならない。ゾフィー以下五人の兄貴の顔を立てつつ、五人に勝る能力を発揮しなくてはならないのである。

 同様の事は怪獣達にも言える。『ウルトラマン』に登場したどくろ怪獣レッドキング宇宙忍者バルタン星人汐吹き怪獣ガマクジラ棲星怪獣ジャミラ宇宙恐竜ゼットン等の有名所は言うに及ばず、脳波怪獣ギャンゴミイラ怪獣ドドンゴ深海怪獣グビラ黄金怪獣ゴルドン、といった一度限り登場しただけのマイナー怪獣でさえかなりの知名度を誇るのに対し、『ウルトラマンタロウ』に登場した怪獣達は、バードンテンペラー星人タイラント宇宙海人バルキー星人、でさえ、下手したら地底怪獣テレスドンよりマイナーで、本作に一度登場したきりの怪獣・宇宙人等は特撮マニアや放映当時の熱心な視聴者を除けば、その知名度はかなり苦しいものがあり、百足怪獣ムカデンダーに至っては、『ウルトラマンメビウス』に再登場できた事を涙流して喜んでいるのではないだろうか?(んな阿呆な……)
 
 簡単に一言で片付ければ、「先代が偉大だと後が大変。」の一言で終わるのだが、それでも前後する二作に比べて明るい作風を個性としたこの番組に救いは多い。
 コミカルと言われようと、おちょけていると言われようと、話題に事は欠かない。ストリウム光線にはやや不本意な作風かもしれないが。


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平成二二(2010)年二月一八日 最終更新