ウルトラマン80の必殺技

指定必殺技:サクシウム光線


ウルトラマン80とサクシウム光線
 1980年に放映され、「80年代のウルトラマン」の意で『ウルトラマン80』との表題と名がついたウルトラマン80は作品・ヒーロー共にその完成度の割には正当な評価を得ていない、とシルバータイタンは見ている(不当に低く見られてもいないが)。
 だが、ウルトラマン80こそは長くウルトラ兄弟の一員であるか否かがはっきりしなかったとはいえ、『ウルトラマンタロウ』以来のM78星雲人が主役を張った作品で、初代ウルトラマンスペシウム光線以来の伝統である「○○○ウム」系の物質を放つ光線技を6年振りに披露した(注:前年にアニメで放映された『ザ・ウルトラマン』は除いています)。

 光線の名はサクシウム光線で、初代ウルトラマンが火星に存在し、地球には存在しないスペシウムという物質を武器としたように、ウルトラマン80はサクシウムエネルギーを武器とし、両腕をL字型に広げ、それを入れ替えるように眼前でL字型に組み、赤と青の入り混じった光線を放つ。
 エネルギーの調節により、攻撃対象を爆発させるタイプもあれば、燃え上がらせるタイプもある。また、赤外線を苦手とした紫外線怪獣グロブスクに放たれて、元のグローブに戻した赤一色のサクシウム光線Bタイプとも、ガッツパワー光線とも呼ばれるタイプもある。

 初代ウルトラマンによってスペシウムが光線だけではなく、八つ裂き光輪にも利用さえた如く、80もサクシウムエネルギーをサクシウム光線だけではなく、エネルギーを凝縮して固体化したウルトラスラッシュウルトラレイランスと言った技にも利用している。
 両腕の組み合わせから放つ光線だけではなく、他のウルトラ兄弟同様、眼・カラータイマー・手先からも光線を発し、中には腹部から発するバックルビームなる光線もあり、放射によって拡散する筈のエネルギーを一点集中させるこの技はサクシウム光線で倒せなかった敵をも倒している。

 かように『ウルトラマン80』に登場するウルトラマン80の技は技同士の関係も秀逸に構成されている。その中でメイン必殺技となったサクシウム光線を戦績・役割と共に注目し、名作度に比して注目度がいまいちな『ウルトラマン80』シルバータイタンなりのスポットを当ててみたい。
考察1 サクシウム光線の戦績
 第1話にて5年振りに地球に現れた怪獣である月の輪怪獣クレッセントを倒したのを皮切りに、続く第2話でも羽怪獣ギコギラーを倒したが、次の第3話では早くも硫酸怪獣ホーに通じず、絶対の必殺技ではなくなっていた。

 しかし通常必殺技としてのステータスは失われず、テレポート怪獣ザルドン古代怪獣ゴモラII 侵略星人ガルタン大王どくろ怪獣レッドキング(3代目)といった強敵も倒している。
 そこで例によって下表を参考にして欲しい。

登場した怪獣・宇宙人死因
月の輪怪獣クレッセントサクシウム光線
羽怪獣ギコギラーサクシウム光線
硫酸怪獣ホーバックルビーム
だだっ子怪獣ザンドリアス宇宙へ帰還
四次元ロボ獣メカギラスサクシウム光線
UFO怪獣アブドラールスバックルビーム
騒音怪獣ノイズラー宇宙へ送還
復活怪獣タブラサクシウム光線
オイル怪獣ガビシェールサクシウム光線
変形怪獣ズルズラー宇宙生物ジャッキーに戻される
毒ガス怪獣メダンサクシウム光線
マグマ怪獣ゴラサクシウム光線
ドクロ怪人ゴルゴン星人ウルトラアイスポット
再生怪獣サラマンドラウルトラアイスポット
テレポート怪獣ザルドンサクシウム光線
実験怪獣ミュー宇宙へ送還
テレパシー怪獣デビロンサクシウム光線
タコ怪獣ダロンウルトラレイランス
人間怪獣ラブラスイトウチーフに戻る
吸血怪獣ギマイラムーンサルトキック
惑星怪獣ガウス宇宙へ送還
コブ怪獣オコリンボールウルトラアイスポット
残酷怪獣ガモスバックルビーム
古代怪獣ゴモラII サクシウム光線
アメーバ怪獣アメーザサクシウム光線
戦闘円盤ロボフォーバックルビーム
変身怪獣アルゴンハンドアップ光線
異次元人アクゾーンウルトラショット
巨大化怪獣ゲラフラフープ光線
泡星人アルゴ星人サクシウム光線
スペースジョーズ ザキラサクシウム光線
渓谷怪獣キャシー何処かへ送還
侵略怪獣ザタンシルバータイマーショット
変身宇宙人ザタン星人 UGMに倒される
植物もどき怪獣ゾラサクシウム光線
スクラップ幽霊船バラックシップサクシウム光線
工作怪獣ガゼラウルトラショット
巨大怪魚アンゴーラス深海へ帰還
三つ首怪獣ファイヤードラコサクシウム光線
昆虫怪獣グワガンダ元のクワガタに戻る
宇宙忍者バルタン星人(5代目)ハンマー投げ
心霊怪獣ゴースドンウルトラオーラ
怪獣少年テツオン少年に戻る
宇宙植物サクシウム光線
すもう怪獣ジヒビキラン足柄山へ帰還
ゼロ戦怪鳥バレバドン宇宙へ逃亡
ムチ腕怪獣ズラスイマー観音様に封印される
侵略星人ガルタン大王サクシウム光線
遊牧星人ガラガラ星人 UGMに倒される
妄想ウルトラセブン元の人形に戻る
宇宙忍者バルタン星人(6代目)ウルトラスラッシュ
どくろ怪獣レッドキング(3代目)サクシウム光線
紫外線怪獣グロブスク元のグローブに戻る
マラソン怪獣イダテンラン元の小僧に戻る
合体怪獣プラズマダブルパワー
合体怪獣マイナズマダブルパワー
冷凍怪獣マーゴドン UGMに倒される
80との戦闘率94.64%
決着率73.58%
サクシウム光線による必殺率53.85%

 必殺率53.85%は高くも低くもないが、『ウルトラマン80』の見事な所は、メイン必殺技となるサクシウム光線と、これで倒せない強敵をも倒すバックルビームムーンサルトキック等のより強力な技の存在がはっきりしている所にある。
 またサクシウム光線が敵を倒した翌週は別の技で決着をつけるか、翌週もサクシウム光線で決着を着けた場合にはしばらくの間、サクシウム光線は使用されない。この展開を見れば、サクシウム光線ウルトラマン80の代表的必殺技としてのステータスを与えながらも、ワンパタの匂いを感じさせない見事さに感じ入らされる。
 まあ、その為にサクシウム光線が、スペシウム光線アイ・スラッガーウルトラブレスレットほどのインパクトと知名度を持ち得ていないのは些か残念だが、これは贅沢というものであり、後世の見事さを褒める方が優先されるだろう。


考察2 四部構成と戦いの在り様
 作品としての『ウルトラマン80』は大きく4つに分けられる。第1話〜第12話までの「中学校教師・UGM隊員兼業編」、第13話〜第30話での「UGM隊員専業編」、第31話〜第42話までの「少年ゲスト頻出編」、第43話〜最終回までの「ユリアン共闘編」に分けられる。
 通常、このようにストーリー方針が変われば戦い様が変わることも多い。
 例えば『ウルトラマンレオ』では第1話から第16話までの「初期MACシリーズ」では主に話ごとに登場する空手技が、第17話から第21話までの「見よ! ウルトラ怪奇シリーズ」では主に空手技が、第18話から第25話までの「中期MAC編」、第26話から第32話までの「日本名作民話シリーズ」では特殊技が多く、場合によっては説得や和解による帰還も多く見られた。
 第33話から第39話までの「レオ兄弟・ウルトラ兄弟編」ではレオキックをメインとしつつ、ストーリー上他の兄弟との合体技がメインとなり、第40話から最終回までの「恐怖の円盤生物シリーズ」では主に光線技がメインとされた。

 しかしながら、この『ウルトラマン80』ではそんな偏りが見られない。「少年ゲスト頻出編」のみが、怪獣が素体となった存在に戻ったりして決着がつかないことが多かったが、サクシウム光線も、その他の技もシリーズにおいて極端に目立つこともない。
 ここから来る結論は『ウルトラマン80』が戦いよりもストーリー性を重んじられた作品である問うことであり、その詳細は次の「考察3」に譲りたい。


考察3 技より、勝負より重んぜられたもの
 物心がつき、アニメ・特撮・バラエティー・ニュース・その他すべてのジャンルについて記憶力が最も強く働いた年頃に、ビデオデッキもレンタルビデオもない故に1話1話を真剣に観た筈の『ウルトラマン80』が、殊に戦闘に関しては殆どシルバータイタンの記憶に残っていないのだ。
 但し、その原因ははっきりしている。

 一つには再放送の関係である。
 実際、幼き日の道場主が特撮番組を最もよく見たのは1970年代後半から1980年代前半にかけての小学生時代で、当時は平日の夕方に『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』の再放送が頻繁に行われていた。それに比して『ウルトラマンタロウ』『ウルトラマンレオ』の再放送は本当に僅かで、『ザ・ウルトラマン』以降は有線放送やレンタルビデオの発達もあってか、再放送の存在さえ確認したことが無い。
 『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰ってきたウルトラマン』『ウルトラマンA』も再放送の度に全部を観られた訳じゃなかった。それゆえに再放送の度に「次はあの回は見逃さない!」と息巻いて観続けた。  そんな日々の中、再放送が無く、読本・特番で取り上げられることも少ないウルトラマン80の存在は記憶の中から薄れていった。

 もう一つは年齢的な世間体から特撮と遠ざかったことにある。
 小学生も高学年にもなると、実際、両親も友達も世間も特撮番組に熱中することに対して「幼稚」とのレッテルを貼ることは現代よりも厳しいものがあった。
 実際、道場主が特撮熱中するにはそれから約10年の時間的空白を要した。
 そして、そんな時間を経たからこそ、「第3期ウルトラシリーズ」と称され、『ウルトラマンティガ』が放映されるまで16年の空白期を待つ間から見て最後の作品となっていた『ウルトラマン80』の番組としての在り様への興味は尽きない。

 ほぼ同時期に放映されていた『仮面ライダースーパー1』が当時のカンフーブームに着目したのに対して、『ウルトラマン80』は『3年B組金八先生』や『熱中時代』に代表される教師もの、学園ものが意識された。ちなみに一時の道場主も女教師もののいかがわしいビデオにハマっ……ぐえええええぇえぇぇぇぇぇええええ〜!!(←道場主のシュミット式バックブリーカーを喰らって悶絶しているらしい)。
 イテテテテテテテ…同番組の第1話のサブタイトルが「ウルトラマン先生」であるように、ウルトラマン80の人間体である矢的猛(長谷川初範) UGM隊員でありながら、中学校の教師でもあった設定は30年の時を経て些かもそのインパクトの強さを失っていない。
 しかも、地球人に扮した姿としては中学校教師の方が早く、オオヤマキャップ(中山仁)からUGM隊員にスカウトされたのはその話の最後であった。

 悲しみ・憎しみ・妬みといった人間の負の感情であるマイナスエネルギーが怪獣を生み出す原因となっている事を調査に来たウルトラマン80は、発育途上で精神的に不安定になりやすいと見た思春期の少年少女に注目し、中学教師・矢的猛として桜ヶ丘中学校に赴任したのは今さら言うまでも無い。
 しかしながら斬新だったこの設定も、30分枠(実質25分枠)に収めることは難しく、それでも第12話までは1話1話が学園ドラマと言っても申し分無い程に懸命の構成がなされ、第13話より教師としての矢的猛は描かれなくなった。
 だが、だからと言って『ウルトラマン80』の人間ドラマ性が失われた訳ではなく、第13話〜第30話での「UGM隊員専業編」では新任のイトウチーフ(大門正明)の活躍を交え、第27話での一部隊員入れ替えを行い、UGMとしての在り様がこだわられ、第31話〜第42話までの「少年ゲスト頻出編」では毎回のように少年ゲストが現れては教師とはまた違った形で子供達と触れ合う矢的猛が描かれ、、第43話〜最終回までの「ユリアン共闘編」では初の本格的女性ウルトラ戦士の登場、ただ一人の女性隊員の殉職が展開し、番組としての資質は強化こそされど、衰えることは無かった。
 そしてそれを証明するように最終回ではオオヤマキャップウルトラマン80ユリアンの正体を知っている事を、そして半ば冷たいとも取れる態度で怪獣退治は断固として地球人の手で行うことが告げられ、冷凍怪獣マーゴドンは転任先から駆けつけたハラダ隊員(無双大介)・タジマ隊員(新田修平)の加勢とともに倒され、人間番組としての在り様がトコトンこだわられた。

 ここまで書けばもう明らかだろう。『ウルトラマン80』における番組としての重要要素=見せ場は戦闘よりも、人間ドラマにあり、設定豊かな数々の技も、凶悪な怪獣達も、UGMの装備もよく出来たものではあったが、人と人の物語の前ではその陰を薄めざるを得なかったと言えよう。
 作中、一度も敗れることなく、「無敗のウルトラマン」の名声を長年保ち続けたウルトラマン80の戦績を思えば些か寂しくはあるが(注:惜しくも、『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』にてウルトラマンベリアルの前に初敗北を喫している)。


総論 『ウルトラマン80』は後発番組にして、ウルトラシリーズが16年間休眠する直前の作品であった為に、そんな立場に立たされた番組、とシルバータイタンは見ている。
 実際、レンタルビデオ店を回っても、『ウルトラマン80』を置いてある店は極端に少なく、特撮マニアの中にも、『ウルトラマンレオ』で思い出が止まっている人も少なくない(少し前までシルバータイタンも人のことは言えなかった)。

 『101回目のプロポース』というドラマによって長谷川初範氏を知る人は多いが、氏が『ウルトラマン80』矢的猛を演じていた、と聞くと驚く人も少なくない。
 しかしながら、『ウルトラマン80』は初期の教師編が未消化に終わった部分こそあれど、一つ一つの話は秀逸で(その証拠に単発のストーリーにおけるエピソードが『ウルトラマンメビウス』においても全く色褪せていなかった)、教師編以降の話も人間性が如何に重んじられたかはくどいぐらいに触れてきた通りである。
 また、オオヤマキャップイトウチーフ城野博士(佐原健二)・城野エミ隊員(石田えり)・セラ広報官(杉崎昭彦)・ナンゴウ長官(北原義郎)といった、個性的且つ魅力的なキャストも粒揃いで、マイナスエネルギーと言った独特の設定に基づいた怪獣達、メイン必殺技であるサクシウム光線と役割が巧みに分担された数々の技も決して歴代作品に劣るものではなかった。

 時間的なもの、順番的なもの、巧み過ぎる故にその陰に隠れた設定の数々を思えば、『ウルトラマン80』はもっともっと注目され、語られ、称えられてしかるべき作品で、勿論それを語るにはシルバータイタンの考察はまだまだ不足しているが、折に触れてサクシウム光線及びUGM・登場怪獣について論述し続けて行きたいものである。


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平成二二(2010)年五月二日 最終更新