ジンドグマ 対立する幹部達

 B26暗黒星雲から地球侵略を目的として、吸収合併したドグマを母体に悪魔元帥と四人の幹部に率いられた暗黒組織である。王国を名乗っていないところから(その割には憲法などを持っていたりもしたが)、悪魔元帥を首領とする組織の中で同格の幹部が醜くいがみ合う最初の組織でもあった(ブラックサタンのタイタンとシャドゥは直属と雇われもの、ドグマは将軍と親衛隊、デルザーはヒエラルキーそのものがない、といった意味で同格同士のいがみあいとは言い切れない)。
 怪人が登場するたびに四人の幹部の内の誰かの部下でその性能を他の三人が茶化すと言った小学生の仲の悪いグループ同士の罵り合いのようないがみあいが展開される。
 そこにはドグマが持っていた重厚感はかけらもなく、笑い取り的要素が強く、一部のライダーマニアから大変な酷評を買っている。只でさえ、サングラス・レッドランプ・梯子・南京錠・時計・消火器の改造人間達に怪奇性は乏しく、悪の組織としてのカラーがジンドグマには薄い。
 が、逆に実在するごく一般的な組織にも彼等と似たようないがみ合い、罵り合いをする幹部達は充分存在し得る。アホないがみあいをしている、と失笑する彼等と同じことをしていない、とあなたは断言できるかな?
 もう一つジンドグマの四人の幹部について言えることは組織の協力者に対して極めて慇懃であることが挙げられる。学者や資産家、政治家に一方的に命令書を送りつけて仲間入りを強要するジンドグマだが、仲間に入ったらそれはそれは礼儀正しく接する。
 仲間になった方もジンドグマへの協力をたてに尊大に振る舞っていた。それを示すのが悪魔元帥の仮装パーティーである。出席者への招待状を偶然手に入れた沖一也達はこれを利用して招待されたスポンサーに成り済ましてパーティーに潜入するが、本物が現れてややこしくなる。
 そのときスポンサーに成り済ましたスーパー1に幹部達は非常に慇懃で、招待状が何故来ない!と憤慨して乗り込んできた本物は、「ジンドグマに一番貢献している儂に招待状が来ないとは…」とVIP待遇を当たり前のものと思っていた。スポンサーに対する彼等の態度も現実社会にも見られるものとは言えないだろうか?

1.鬼火指令(河原崎洋夫)

 ジンドグマの四幹部の一人。四人の中でもっとも短気で血の気が多く(何せ脅迫電話をして拒否され、使用した電話ボックスに対し、「何もかも気に食わん、この電話ボックスも気にくわん!」と言って破壊するほどである)、知よりも武に物を言わせるタイプで、物言いも行動も破壊的である。他の3人からはその性急さで揚げ足を取られることが多い。
 当然そんな性格だから頻繁に現場に出て陣頭指揮を取り、スーパー1と干戈を交えた回数も最多である。幹部が4人もいるとタカ派とハト派が得てして現れやすく、彼はタカ派の典型である。
 実際の世界にあるようにプライドの高さが昂じて他者の意見に耳を貸さないこと、独断専行で突っ走るタイプも多い。武勇に加えて、敢えて一歩踏みとどまる勇気もまた彼から学びたいところである。
 彼は最後の出番でも指導者としての一端を見せている。悪魔元帥にスーパー1に自ら挑むことを宣言した彼はジンドグマ超A級怪人オニビビンバに変身し、彼が手塩にかけた暗殺部隊「夜光虫」を修業場であった泥の中から陽の当たる地上に召喚し、大鎌を振りかざして火炎との二段攻撃でスーパー1を一時的な失明状態に陥れた。
 しかし炎の化身である彼は冷気に弱く、スーパー1の冷凍ガスを浴び、痛み分けに終わる。その後サタンドールに変身した妖怪王女と共にスーパー1に挑み、優位に勝負を運ぶものの、寸でのところで視力を取り戻したスーパー1に油断を突かれ、スーパーライダー水平線旋風キックを食らい、「無念…!」の捨て台詞を残して妖怪王女と共に絶命した。
 鬼火指令に扮したのは大野剣友会のスーツアクター・河原崎洋夫氏で、、「仮面ライダー」のときからスーツアクターとして素顔を出すことなく様々な役所を演じていた。
 シルバータイタンの耳に狂いがなければ、彼は前組織であるドグマの親衛隊(恐らくは隊長)を演じており、「仮面ライダー(スカイライダー)」の最終回ではXライダーの中に入っていたと思われる(「Xライダー、エジプトから帰ったぞ!!」)、またがんがんじいのコミカルなスーツアクトも担当していた。
 「仮面ライダーストロンガー」ではジェネラル・シャドゥの中に入っていたのは彼である。大河ドラマにも出演していたとの情報があるが、シルバータイタンは未確認。鬼火指令のメイクはキツイので素顔がわかり辛い。いつかあの高いながらも迫力のある声を耳にしたいものである。

2.妖怪王女(吉沢由起)

 ジンドグマの四幹部の一人。「王女」の尊称があるものの、地位は悪魔元帥より下で、他の3人幹部より偉いというわけでもない。むしろ若く見える彼女を侮る態度が目立つ。
 そんな妖怪王女のコスチュームはリアルタイムで見ていた幼い日「小学3年生」にはどうとも思わなかったが、大人となった現在、ピンクのレオタードにSMまがいのアイマスクは爆笑物である。
 そんな彼女と怪人達の絡みを見ると学校の先生と生徒か、一昔前の学園漫画に出てくるタカビーなお嬢様とその取り巻きである(笑)。とあるホームページでは「妖怪王女、あんたの声は悪役には向きません。可愛らしすぎます」と書かれていたように、少なくとも迫力や腕ずくで部下を従わせるものではなく、部下を引っ張るのにこれといった個性が見出せず、悪く言えば離という立場に胡座をかいているようにも見える(タカビーな態度は人の上に立った上で出てくるもので、その態度自体は人を引っ張りはしないだろう)。
 強いて挙げれば戦略で従わせることだろうか?一つ実例を挙げて、幹部としての彼女の優秀さを語るのに、見る目の確かさがある。
 爆薬を盗むのに、沖一也の弟分チョロ(佐藤輝昭)を誘拐し、洗脳するのだが、一見頼りなさそうな彼の洗脳に他の幹部は「エネルギーの無駄」と呆れたが、チョロは実は元日本一の大泥棒で、肩の関節を外すことで、頭の通るところならどんな狭いところにも潜り込む特技を持っていた。それを披露し、悪魔元帥にも誉められていた。
 作戦はスーパー1の妨害で失敗したが、チョロは爆薬を盗むところまでは成功しており、人選に間違いはなかった。
 上記の実例に見られるように、手段も鬼火指令とは対照的に智謀派だ。またちょくちょくスーパー1やジュニアライダー隊と対峙するが、屋外には余り出ない。また女性の立場からか、ヒロイン・草波ハルミ(田中由美子)に妙な敵意を剥き出しにしていた。
 とかく上司としてどうか?と言うより、人の上に立ったのをいいことにエラソーに振る舞う態度が目立った。ジンドグマ怪人は没個性的な怪人が多かったので、上司として部下にどう思われるかが掴みにくい(これは他の幹部達も同様)。せっかく四人も幹部がいるのだから部下から見た彼らについても触れて欲しかった。
 最期はフランス人形に化けてジュニアライダー隊の懐に入りこみ、彼らを人質にスーパー1を鬼火指令と共に倒そうと目論む。スーパー1を前にしてジンドグマ超A級怪人サタンドールに変身した彼女はテレキネシスっぽい超能力でスーパー1に自らの腕の動きをと同じ動きをするように操り、オニビビンバと共に失明状態にあったスーパー1を窮地に追い込んだが、油断したところを視力が回復したスーパー1のスーパーライダー水平線旋風キックを受け、「悪魔元帥、この恨みを晴らして…」という台詞を残して鬼火指令と共に絶命した。
 妖怪王女を演じたのは吉沢由起女史。残念ながら「噂の刑事トミーとマツ」にに出たことがあると聞いただけで、詳細は不明。何度か「仮面ライダースーパー1」で素顔を現したのを見る限りでは善玉も悪玉も普通の役もそつなくこなしそうである。もっとも残忍な役や強面役は困難な様だが。

3.幽霊博士(鈴木和夫)

 ジンドグマの四人の幹部の一人で自称・頭脳派。一言で言って細かい男である。概算で喋るのが嫌いなのか、悪魔元帥が現れず食事を待たされるときの愚痴に「もう一時間と、15分と、30秒じゃ!」と秒単位まで、ある兵器の破壊力テストで試作品タイプでテストを行い、「実際の物は、これの1333倍の破壊力じゃ!」と、明らかにぎりぎりまで計算した数値、またジュニアライダー隊を騙す際に、知事に成り済まして説明したときは「このユートピアでは、勉強はテレビの前に座っているだけでいい。それも一日に、たった5分と30秒じゃ」とこれまた秒単位である。
 そんな細かい性格の為、他の幹部の失策に対する皮肉や嫌味も多く、それは彼自身にも帰ってきている。「この私の素晴らしい頭脳を以て・・・」などと言い出すと他の幹部達がゲラゲラ笑い出して「幽霊博士の素晴らしい頭脳!? それは楽しみだ」と魔女参謀に言われる始末である。
 細かい計算と冷酷な性格で怪人を操り、作戦を展開する幽霊博士は肉体派では決してない。爺さん然とした白髪・白髭・灰色顔で白衣に身を包んだ幽霊博士はその名の如く生気を感じさせない(物言いははきはきしているのだが)。ジュニアライダー隊にスーパーボールをぶつけられて怯むなど、チョット情けない一面も目立つ。
 そんな人物に有り勝ちなように彼は本音を出す方ではなく、敵には陰険である。そんな彼の本性が目立つのはやはり彼の最期である。
 鬼火指令と妖怪王女がスーパー1に倒されるや、普段散々罵り合っていた彼らの死を悼み、スーパー1への復讐を誓っていた姿は意外だった。彼は即座にジンドグマ超A級怪人ゴールドゴーストに変身し、蜃気楼を利用してスーパー1の攻撃を虚像に受けさせて、不死身を演じ、スーパー1を宇宙黴でもって黄金病に感染させた。
 そのとき彼は苦しむスーパー1に「お前は、お前が命を賭けて守った人間達になぶり殺しにされるのだ!」と宣告するや、今度は黄金病を町中に撒き、一也を感染の張本人である、と感染者を煽動し、捕えさせた一也を上半身裸にして市中引き回しにしたのだから凝っている。
 だが、一也は谷源次郎やチョロ達に救出され、ゴールドゴーストの不死身のからくりも蜃気楼を利用したものであることを見破られ、黄金病の正体もチェックマシーンの前に露見し、スーパー1は治療薬をエレキハンドに組み込んで人々の病気を治した。
 こうなるともう一方的で、実体にレーダーハンドのロケット弾を受けるやグロッキーとなり、スーパーライダー閃空連続キックでキックの四連打を受け、幽霊博士の姿に戻り、 「幽霊博士は死なず、只消え去るのみ」と、どこかで聞いたような台詞を残してこの世を去った。
 不気味な幽霊博士を演じたのは鈴木和夫氏。残念ながらシルバータイタンはこの幽霊博士を除いて氏の活躍を知らない。またメイクがきついため実年齢も不明で、ご存命かどうかも不明である。

4.魔女参謀(藤堂陽子)

 ジンドグマ4人幹部の一人で、悪の女性幹部に相応しいだみ声が魅力的である(←誉めているのだ)。
 タカ派の鬼火指令、ハト派の妖怪王女、幽霊博士の間にあって彼女はどちらとも言えないが、行動派であるのは間違いなく、怪我人に変装して助けようとした沖一也を攻撃したり、防衛庁長官を拉致するのに、看護婦に化けて彼の子供が交通事故にあった、と偽っていた。また新聞記者にも変装している。魔女参謀の姿で戦ったのは皆無で、全て怪人やジンファイターに迎撃を命じていた。
 ストレートのロングヘアーに口元のみを覆うマスク(常時着けているわけではない)、襟付きのマントを羽織り、レオタードでキセルをふかす魔女参謀は、なかなか巧妙に魔女の雰囲気を醸し出している。
 盛んに陣頭指揮を取る際にも悪女の冷酷さで配下を従わせている姿を見せていた。その冷酷さは人質を取って相手を脅迫する時に、人質に危害を加えることを辞さないのを示すのにジンファイターを崖から人食い鮫が犇めく海に突き落としていた。むごい女である。
 コミカル要素が強く、悪の色を希薄にしか感じさせないジンドグマにあってその色を最も感じさせてくれるのは意外にも彼女である。
 最終回において悪魔元帥と共に富士の裾野の宇宙開発センターを襲撃した魔女参謀はジンドグマ超A級怪人マジョリンガに化けて大暴れした。
 スーパー1との戦いでは念力で動かす岩石を武器に戦い、悪魔元帥の守り刀・稲妻電光剣を授けられて戦ったが、怪光線で痛めつけた筈のスーパー1が実は刀の力を吸収しており、逆に刀を奪われ、右肩に刀の一撃を受け、元の魔女参謀の姿に戻り、左手を挙げて、「ジンドグマに栄光あれ!!」と叫んで死亡した。
 魔女参謀を演じたのは藤堂陽子女史。シルバータイタンはこの「仮面ライダースーパー1」以外に女史の活躍を見たことはない。声も雰囲気も様々な変装も悪役の素養充分なので過去のフィルムでもいいので彼女の活躍をもっと見たいものである。

5.悪魔元帥(加地健太郎)

 ジンドグマの首領。ドグマの帝王テラーマクロにカラスを送り、死のきっかけを作り、四人の幹部を率いて闇の王国の建設を画策した。
 基本的に彼は「君臨すれども統治せず」である。世界征服の為のテロ活動の立案も実行も他の四人の幹部が担い、悪魔元帥本人は許可を与えている様子もなければ、褒賞・懲戒を行っていた気配もない。もっとも本当に何もしなかったわけではない。
 報告は細かく行われていた様で、新兵器の披露には彼が立会い、妖怪王女が作戦実行員としてチョロを洗脳した時は他の三幹部が呆れるのを悪魔元帥の前でその能力を証明し、承認を得ていたことから、小事は幹部に任せて重要時の決断や承認に悪魔元帥が携わっていたと見られる。
 初めは作戦の失敗に対して特に何も言わなかった彼が終盤に談笑している三人の幹部を一喝したところにもその姿勢が見られる。好意的な見方をすれば彼は組織のトップとして、必要以上に口を出さず、本当に重要なことだけに締めるべきところを締めるという理想的な采配を取っているとも見れる。(人選はミスっているとしか言いようがないが(笑))。本当に有能はトップは目立たないものである。
 最期はサタンスネークに変身して宇宙開発センターを襲ったり、スーパー1を罠に嵌めて谷源次郎達も捕らえてジンドグマ逆転勝利か?に見えたが、真空の部屋に閉じ込めたスーパー一の死んだふりにあっさり騙される
 彼は空気のないところで生物が生きられないという生態学の基本セオリーに極めてオーソドックスに従ったつもりなのだろうけれど、仮面ライダースーパー1が宇宙開発用の空気のないところで働く為に改造された人間であることを少しは考えていなかったのだろうか?結局それがために好機を逸し、最終決戦に挑むが、魔女参謀に授け、彼女が倒されて奪われた自身の守り刀・稲妻電光剣に蛇の頭を全て切り落とされ、スーパー1もろとも自爆せんとする(お約束)が、どてっ腹を串刺しにされ、大爆発するもその爆発はスーパー1を道連れにするには至らなかった(お約束2)。
 悪魔元帥の死にジンドグマ基地も爆発し(お約束3)、ジンドグマは完全に崩壊し、以後三年間日本では悪の組織は暗躍しなかった。
 悪魔元帥を演じたのは加地健太郎氏。悪役のみならず、普通の役も手広く出演。大河ドラマや時代劇にも登場。仮面ライダーシリーズではジンドグマ編の直前に劇場版で憲法の隠れ里の村長・香坂健太郎役でドグマの地獄谷五人衆と憲法を駆使して戦っていた(戦死)。
 また「仮面ライダーBlack」では田中美奈子女史演じるハワイの日系人ルナ・カウアイの祖父タロウ・カウアイ役としてバラオムに攫われようとした孫を助けようとするがあっさり殺されていた。
 そして21世紀に入り、彼は「仮面ライダーアギト」で警視庁の幹部としてアンノウンに対抗する氷川誠(要潤)・小沢澄子(藤田瞳子)・北条透(山崎潤)達に指令を与えていた。結局、作品を通じて名前は出なかったが、正義と悪の両方の幹部としての在り様を見せてくれるか?とのシルバータイタンの期待は満たされず終いだったのが残念だった。

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