これは講談社「オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー」に掲載された、村枝賢一氏の「怪人戯画」のパクリです。

菜根版怪人戯文

 『仮面ライダー』から『仮面ライダーZX』までのライダーシリーズが「昭和ライダー」と呼ばれ、良くも悪くも昭和と平成を跨いだ『仮面ライダーBLACK RX』、劇場版に終始した『仮面ライダー真』『仮面ライダーZO』『仮面ライダーJ』、2000年の『仮面ライダークウガ』に始まり、元号をまたいで放映し続ける平成・令和シリーズとは一線を画し、『仮面ライダーSPIRITS』や「講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー」といった作品にその根強い人気を見せています。
 殊に『講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー』では漫画家・村枝賢一氏がリアリティーある独特のタッチで描く「鳥獣戯画」ならぬ「怪人戯画」が一つの目玉として、氏の命名による異名とコメントが多くのファンを喜ばせていました。
 シルバータイタンには村枝氏のような画力はありませんが、村枝氏が、1号につき一体という限界の為にエントリーされなかった注目すべき怪人達をシルバータイタンが独断と偏見で取り上げてみました。
 たまたまエントリーされた改造人間への一つの物の味方として楽しんで頂ければ幸いです。


0.死神カメレオン変幻の探索者
登場:『仮面ライダー』第6、7話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第40位)
所属組織:ショッカー
任務:財宝奪取
改造ベース:カメレオン
死因:ライダーチョップ
シルバータイタンかく語りき 一怪人として、は決して強くありません。カメレオン特有の保護色も然程1号を苦しめていませんが、ライダーチョップを受けての今際の際にライダーにナチスの秘宝実在の有無を尋ね、自らに課せられた任務への謎に見せた執着が個性的で、私は好きでした。


1.ムカデタイガー毒炎の猛虎
登場:『仮面ライダー』第93話
所属組織:ゲルショッカー
任務:少年ライダー隊員の略取・洗脳
改造ベース:百足+虎
死因:崖下への転落
シルバータイタンかく語りき 丹沢地区の少年仮面ライダー隊員を拉致して、ゲルショッカーの手下として洗脳する、というダークな任務に従事しながら火炎を操り、ライダーハンマーキックにも平然とし、いざとなれば、人質へ自害命令を下すという毒手も辞さない、ある意味オールマイティな悪の改造人間。
 ゲルショッカー首領最後の盾として、現れた時にも再生怪人特有の雑魚色も薄く、1号と2号のツープラトン攻撃を加えられるまで善戦していたのも高ポイント。最後の一人になっていたのも妙に納得です。


2.黄金ジャガー一徹の勇将
登場:『仮面ライダー(スカイライダー)』第31、32話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第82位)
所属組織:ネオショッカーサハラ支部
任務:仮面ライダー抹殺・大神殿建立
改造ベース:ジャガー
死因:スカイキック
シルバータイタンかく語りき 漫画『CITY HUNNTER』の海坊主の声優・玄田哲章氏がCVを務めた事でも異色な黄金ジャガーは生粋の戦士然とした勇士振りは人気が高いですね。
 同時にスカイライダー&Xライダーと戦ったトリカブトロンが卑怯者を絵に画いたような奴だったこともあり、一騎撃ちにこだわる勇猛振り、卑怯な手段や人質にされた女子供の無意味な犠牲を嫌う性格はとても悪の組織の改造人間とは思えません。
 五人の少年に大首領を祭る大神殿の礎石を運ばせ、1位になった者のみを助命するレースで、一人の少年が崖から転落しかけたのを助けた黄金ジャガーの第一声が「怪我はなかったか?」ともSehr Gut!(Very Good)
 この時、アリコマンドに変装して随行していた筑波洋は崖に落ちかけた少年を助けようとして、黄金ジャガーに「どけっ!」と押しのけられていたのですが、結局一緒に引っ張り挙げていたのも微笑ましかったです。


3.ガマボイラー捨命の噴撃
登場:『仮面ライダーV3』第14話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第74位)
所属組織:デストロン機械合成改造人間軍団
任務:仮面ライダーV3のエネルギー奪取及びV3死の弱点探索
改造ベース:蝦蟇+ボイラー
死因:特殊粘液放出によるエネルギー源の枯渇
シルバータイタンかく語りき 見てくれはカッコ良さが微塵もなかったのですが、V3抹殺の捨石となることに微塵も迷いを見せず、日本支部着任直後のドクトルGに初っ端からその決意を露わにしていた。
 ほぼ最初の宣言通りの行動に終始したガマボイラーの注目したいワンシーンは人質を取った際の風見志郎への台詞。「変身して俺と戦え!」だから恐れ入る。
 ガマボイラーと戦う事自体が罠とは知らない風見は「ほう、珍しい条件だな。」と不適に笑うし、結果(ガマボイラーが命懸けで吐く粘液はV3のエネルギーを奪ってしまう)を知る私達はガマボイラーがそんな要求をしたことに然程不思議を感じませんが、人質を取った側が正々堂々の一騎撃ちを要求した事は極めて異例です。
 デストロンの作戦上、惜しむらくはガマボイラーの粘液の効果持続時間が短かった事ですが、これは効果の短い物を造ったデストロン科学陣(←もしかして結城?)及び効果持続中にV3を追い詰められなかったバーナーコウモリ達の落ち度でしょう。


4.オオサンショウウオ獣人変身と不変心
登場:『仮面ライダーアマゾン』第23話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート、変身体の「にせアマゾンライダー」が第63位)
所属組織:ガランダー帝国
任務:仮面ライダーアマゾン抹殺
改造ベース:オオサンショウウオ
死因:ゼロ大帝による処刑(ランスビームによる射殺)
シルバータイタンかく語りき ガランダ-帝国最後の刺客。見てくれはただの巨大化したオオサンショウウオだが、保護色で自然環境に擬態する力を増大させた変身能力、別名ハンザキ(半分に裂いても生きているの意)と呼ばれるほどの生命力からくる再生力、相手の体を鱗で被ってしまう毒液、と技は多彩です。
 とはいうもののオオサンショウウオ獣人もまた、アマゾンに化けた能力こそは面白かったものの、アマゾンライダーの敵ではありませんでした。しかしこれはギギの腕輪を持つアマゾンが総じて獣人達より強過ぎた事にあり、オオサンショウウオ獣人自体は弱くもなければ、何よりその潔さが注目されます。
 アマゾンに敗れたオオサンショウウオ獣人は「おめおめ逃げ帰ってきたのか?」と冷たく言い放つゼロ大帝に「ただご報告をと…。」と伝え、言い訳無しに処刑された姿は他の獣人達には見られない姿で、こういう獣人が一体でもいた事を思えば、この後の「よくもわしの可愛い獣人達を次々と殺してくれおったな。」という自分の事を思いっきり棚に上げたゼロ大帝の台詞(笑)にも幾ばくかの誠意が感じられます。


5.死神バッファロー純粋の狂牛
登場:『仮面ライダースーパー1』第22話
所属組織:ドグマ王国
任務:仮面ライダースーパー1抹殺
改造ベース:奥沢雅人+バッファロー
死因:スーパーライダー閃光キック
シルバータイタンかく語りき 悲劇の将軍・メガール将軍の正体にして、デルザーの鋼鉄参謀の如く大鉄球を駆使して仮面ライダースーパー1に挑んだ屈強の怪人。
 勝負そのものは婚約者をも殺してしまった死神バッファローに対する激しい怒りが戦意を盛りたてたか、スーパー1はほぼ危なげなく勝利を収めましたが、何と言ってもこの死神バッファローは正体であるメガール将軍、引いては奥沢真人との関連から目が離せません。
 本来なら惑星開発用改造人間の栄えある第1号として、人類の夢を背負う筈が、技術の未熟故の失敗がきっかけで悪に走ったメガールが、奥沢を愛し続けた池上妙子の想いと改造技術の進歩からやり直しが効く事を訴えるスーパー1と谷源次郎の説得に耳を傾けたのも束の間、服従カプセルによる遠隔操作から死神バッファローに変じ、言葉もなく婚約者まで死に至らしめた迷いのなさと、断末魔の王国賛美……それでありながら思い出の品を放していなかった一片の愛と両親……許されるならメガール将軍を主人公にした小説を書きたいものです。


6.サイタンク鉄壁の獣王
登場:『仮面ライダーV3』第45、46話
所属組織:デストロン軍団ヨロイ一族
任務:デストロン幹部候補生略取
改造ベース:サイ
死因:V3きりもみキック
シルバータイタンかく語りき ヨロイ一族では間違いなく最強。デストロン全体で見ても原始タイガー以外に匹敵する奴が見当たらないその猛者振りは結城丈二に「例え貴様がライダーマンに変身したところで俺とでは勝負にもならん!」と啖呵切った姿はライダーマンの弱さを考慮しなかったとしても説得力があります。
 勿論口だけではなく、二人のライダーとの戦いでもサイタンクは見せつけています。死人コウモリ(ツバサ大僧正)をも倒したV3マッハキックを受けとめ、ハリケーンラストダッシュも物ともしない怪力・勇壮振りはV3をして「これは大変な相手だ…。」と言わしめ、冷血漢・ヨロイ元帥さえもが賛辞の声を送っていました。
 その後もブルドーザーを押し動かしてV3を生き埋めにしたり、石灯籠を振りまわして風見を痛めつけるなど、まさに犀の怪人らしい怪力振りでV3・ライダーマンを苦しめたサイタンクでしたが、惜しむらくはV3キックで角をへし折られた後の呆気ないまでの弱体振りでしたね。


7.サボテグロン栄光の奸雄
登場:『仮面ライダー』第14、15話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第41位)
所属組織:ショッカーメキシコ支部
任務:爆弾を用いての破壊工作
改造ベース:サボテン
死因:自爆攻撃の失敗
シルバータイタンかく語りき 2号ライダー偏第一番手にして、メキシコ支部からやってきたと言う経歴が後々の大幹部着任を予感させた事が忘れられないプライド高い怪人。
 メキシコでパラスダムを破壊し、追跡してきたFBIの捜査官も密かに始末(後にバレたが)、という実績を持ち、一文字に捕えられた戦闘員を「間抜け!本来なら貴様を消す所だが、今回の作戦に一人でも重要だ。」と文句を言いながらも助けに立花レーシングクラブに潜んで来た点も重大な個性です。
 最後の最後で全身にサボテン爆弾を装着して、2号ライダーに道連れの突撃を敢行する為に「貴様の為に私のショッカーでの栄光も地に落ちた。この上は貴様を道連れに死ぬまでだ。」の台詞とそれに対する「悪のショッカーに名誉も栄光ないと知れ。」というライダーの台詞は勧善懲悪の絶対を宣言したものとして長く注目されるべきと考えます。


8.ヤマアラシロイド彷徨の愧針
登場:『仮面ライダーZX』特番
所属組織:バダン帝国?
任務:ZX抹殺
改造ベース:科学者ニードル+ヤマアラシ
死因:
シルバータイタンかく語りき ZXファン並びに『仮面ライダーSPIRITS』ファンには申し訳ないのですが、現段階ではコメントを保留します。
 正義(インターポール)から悪(BADAN)へ走った三影英介=タイガーロイド、悪(BADAN)から正義に目覚めた村雨良=仮面ライダーZX、そして悪にも正義にも属さず、「神の体」に執着して独行するニードル=ヤマアラシロイド。今後の『仮面ライダーSPIRITS』に期待したい所です。


9.ヘラクレス密命の巨人
登場:『仮面ライダーX』第3話
所属組織:GOD
任務:要人誘拐
改造ベース:ヘラクレス
死因:Xキック
シルバータイタンかく語りき 一つ目タイタンを理想の悪役として自らの名乗りの一部としているシルバータイタンとしては浜田晃氏が人間体を演じたヘラクレスは否が応でも注目します(笑)。
 ギリシャ神話でも特に有名なヘラクレスがモデルの怪人でありながら、ライドルスティックを折れなかった事から怪力のイメージが薄れているのは残念ですが、通用しなかったとはいえ目の錯覚を利用した攻撃を行ったり、キバラ特使に変装した神敬介に騙された振りをして別働隊をもって本物を誘拐するなどなかなかに頭も使っています。
 蛇足かもしれませんが、毒蜘蛛を武器としたヘラクレスの攻撃は、実際のギリシャ神話の英雄ヘラクレスが毒のために死に至らしめられた(正確には毒の苦しみを断ち切る為の焼身自殺)伝説を考えると興味深い設定です。


10.ドクロ少佐究極の暗殺者
登場:『仮面ライダーストロンガー』第27、30、31話
所属組織:デルザー軍団
任務:仮面ライダーストロンガー抹殺
改造ベース:死神?
死因:超電子ドリルキック
シルバータイタンかく語りき ジェネラル・シャドゥが「デルザー軍団切っての殺し屋」と称した改造魔人。詳細は「悪の組織大幹部に学ぶリーダーシップ」を参考にして下さい。
 一度取り上げた改造魔人を再び独立した項目で取り上げるのもそれだけドクロ少佐がストーリー的にもデルザー軍団の設定的にもファクターをふんだんに含んだ存在だからでもあります。
 昨今の仮面ライダーシリーズはCG技術の向上から、スタントマンが体を張っての熱演を見せる事が少なく、殺陣の必死さが伝わってこないのが難なのですが、逆にこのドクロ少佐の様な存在では「ドクロ分体」を初めとする忍術や、火炎を駆使した攻撃の描写をリメイクされて欲しい気になります。


11.地獄谷五人衆獣拳の精鋭隊
登場:『仮面ライダースーパー1』特番
所属組織:ドグマ王国地獄谷
任務:古代中国の戦車「空飛ぶ火の車」奪取
改造ベース:鷹・虎・象・蛇・熊
死因:スーパーライダー月面キック・スーパーライダー閃光キック・投げ返し・諸手突き・赤心少林拳諸手打ち
シルバータイタンかく語りき 一度に大勢で登場しながら、個々に倒されたと言う意味で一人一人の個性が尊重された存在とも言えます。
 ドグマの精鋭である地獄谷五人衆は少林寺で有名な五獣拳のドグマ版とも言える形態で、サタンホーク=鷹爪火見子(たかづめひみこ)をリーダーにヘビンダー=蛇塚蛭夫(へびづかひるお)、ゾゾンガー=象丸一心斎(ぞうまるいっしんさい)、ストロングベア=熊嵐大五郎(くまあらしだいごろう)、クレージータイガー=大虎龍太郎(おおとらりゅうたろう)で構成されいるが、それぞれが名前に変身する対象の名前を冠している点は悪の組織版サンバルカンである(笑)。
 注目したいのは前述にもあったようにそれぞれが別の死因を遂げている点。特にストロングベアが生身の人間である玄海老師に素手で倒されている点は失笑したくなるが、これは老師が強過ぎると見るべきでしょう。


追記 このコーナーをアップした直後の2005年2月23日に発売された『仮面ライダーSPIRITS』第7巻の巻末に、講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号にて募集された怪人人気アンケート(1000通に達した所で締切)の結果が掲載されていました。
 村枝氏が「怪人戯画」に選んだ12体の怪人の内、8体が100位内にセレクトされたのに対し、シルバータイタンの独断と偏見によるセレクションは12体中、8体が逆に100位内から漏れる体たらく(苦笑)。
 サイタンクオオサンショウウオ獣人死神バッファローが選外だったのは意外でした。黄金ジャガーサボテグロン等のランク入りの様に順当と思える者もありますが、なかなか個人の主観と世間の人気は一致しそうで一致しません。
 とはいえ、自分が選んだ怪人に人気があって欲しいと思う一方で、なかなか見向きされない怪人の魅力を提起できる喜びもサイトを起てる楽しみの中には間違いなく存在し、何とも人気・不人気は複雑な心境です(苦笑)。
 余談ですが、シルバータイタンとしては、一つ目タイタンの第31位と百目タイタンの第74位はまずまずで、双方を合わせると第21位に相当する所に、「タイタン」として見て欲しかった、との思いを感じずに入られませんでした。


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最終更新 令和三(2021)年四月九日