恋唄綴り

作詞 荒木とよひさ 作曲 堀内孝雄 編曲 川村栄二

解説 べーやんの25thシングル曲にして平成2(1990)年『はぐれ刑事純情派』Part3の主題歌。道場主がかつてある番組でこの曲を美川憲一さんが歌ったのを見て、『はぐれ刑事純情派』の再放送を見るまで美川さんの持ち歌と思い込んでいたのは秘密である(苦笑)。

 所謂、「逢いたい人」を回顧し、雨降りの酔いどれの中で懐かしむのが歌詞の流れなのだが、単調な淋しい響きの曲に聞こえてなかなか一筋縄で行かないほどこの曲の歌詞は深い。
 「あんた どこにいるの あんた 逢いたいよ」「枕ぬらして かぞえ唄」の歌詞からてっきり別れた恋人が「あんた」とダンエモンは長年思い込んでいたのだが、実はこの「あんた」が母親である事が『はぐれ刑事純情派』の桜のママ・片桐由美(真野あずさ)の台詞から判明したのである。

 誤解を恐れず書けば、べーやんの歌の歌詞には「母」という歌詞が多く、女性の立場から書かれた歌詞に出て来るものはともかく、「さよならだけの人生に」「遠き日の少年」といった曲ではマザコンの気すら感じる。
 この曲の「あんた」が母である事が語られた回の『はぐれ刑事純情派』では銀行のキャッシュカードを盗んで現金を引き出した空き巣の正体が実はこの家の主人で、母の入院費を捻出するのに家族に相談出来ずにやってしまった狂言だった為、女房が主人に「マザコン」と罵ったのだが、やっさんこと安浦刑事(藤田まこと)は自分だってマザコンであると語り、川辺課長(島田順司)がグッドタイミングで身内がやった事なので事件にならないと話して上手くお騒がせ夫婦を引き取らせた。
 そして最後にさくらでに酔ったやっさんがカラオケでこの歌を歌うのを見ていたママが「あんた」が母であることを説明し、男にとっての母の偉大さとそれに妻や恋人が及べない面がある事を淋しそうにしていた。
 恐らく「恋唄綴り」の主人公=マザコン説にべーやんも反対しないだろう。勿論ダンエモンもマザコンが恥じる事とは思っていない(母の庇護から出られず、何事も自らの力で決断出来ない様な奴は別)。

 「あんた」「母」と想定して解説すると「それとも幼い あの頃の 母に抱かれた 子守唄」の歌詞は大いに納得でき、「あんた 抱かれたいよ あんた 逢いたいよ」の歌詞から女性の立場で歌われていたとの推測は瓦解するのだが、ここで一つの謎が浮かぶ。「あんた どこにいるの あんた 逢いたいよ」の歌詞である。
 特別な事情でもない限り、普通息子が母の所在を把握していないとは考え難い。「どこにいるの」とは甚だ疑問なのだが、推測するに「母」である「あんた」は恐らく故人なのだろう。故に「逢いたいよ」の願いに叶わぬ物があり、それを理解しているから「飲めば 飲むほど 淋しいくせに」「泣けば 泣くほど 悲しいくせに」という歌詞が連なるのだろう。

 令和五(2023)年九月一五日現在、ダンエモンの父親は既に故人で、母親は健在だが、所帯も持たず(持てず)、転職を繰り返し、役職も高給も無縁な親不孝の日々を少しは反省しなくては、と解説を綴りながら思い知らされた次第である(でも見合いはしない)。



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令和五(2023)年九月一五日 最終更新