懲りずに菜根版 怪獣VOW


何でも有りBEST10


 「何でも有り」……フィクションであるテレビ番組は「何でも有り」である。空を飛び、死人が生き返り、訳の分からんガス、光線、炎などを体から発し、時には過去未来まで行き来する。
 がしかし、それも限界がある。「何でも有り」「荒唐無稽」は違うのである。両者の一線を画するのは、設定、ストーリーの流れ、等がそうである。それゆえ、ヒーロー番組では万能アイテムや偶にしか登場しない実力者等にその「何でも有り」が託される。
 このコーナーでは、「何でも有り」の特徴を持つ、人・物を検証し、ランキングしてみた。当然、順位が高いほど、「何でも有り」の凶悪さが目立つ。
順位何でも有りの人・物番組登場頻度主な能力凶悪度
10カラータイマーウルトラシリーズ全般毎回(特殊能力は稀)光線を放つ。パワーアップ。生命力の転送。20
9ウルトラマント『ウルトラマンレオ』後半そこそこ光線を防ぐ。目くらまし。傘になる。20
8光線技ウルトラシリーズ全般極めて頻繁爆殺、凍結、惨殺、金縛り、etc、何でも有りの雨霰。70
7万能杖『ウルトラマンレオ』頻繁。後半、控え目打撃武器にして、飛び道具。とても歩行補助具ではない。40
6バイオライダー『仮面ライダーBLACK RX』後半頻繁液化した体は炎以外の物理攻撃を受け付けない。形状変化自由自在。80
5ウルトラマンキング『ウルトラマンレオ』計3回伝説の長老であることを良いことに特殊能力のオンパレード。90
4ギギの腕輪『仮面ライダーアマゾン』そこそこ体を赤熱させる。超エネルギーを生む。失明を治す。80
3ウルトラ念力『ウルトラマンレオ』計8回催眠術、不快感を与える。特殊能力を封じる。物を壊す。50
2ウルトラブレスレット『帰ってきたウルトラマン』後半ほぼ毎回様々な武器になり、盾にもなる。バラバラになった体を復元もする。75
1ゴレンジャーハリケーン『秘密戦隊ゴレンジャー』毎回相手の怪人に合わせて千変万化。何にでも変形し、コミカルな止めを刺す。100

 独断と偏見でランキングしたので人それぞれ異論も有るだろうけど御容赦願いたい。

 さて解説だが、第10位の「カラータイマー」は「何でも有り」より「弱点」としての印象の方が強い。残り体力が少なくなるとわざわざ敵にピンチを知らせたり、ゼットンに破壊されて初代ウルトラマンが戦死したり、帰ってきたウルトラマンもドロボンにカラータイマーを奪われ、体がぺしゃんこの仮死状態に陥ったことがあったりしたため、「万能」どころか「邪魔物」とさえ見勝ちである。
 しかし、ウルトラ一族の命の源であるカラータイマーは肝心なところで様々な能力を示す。
 タイマーから一直線に光線が伸びて敵を打つ、ウルトラマンAやレオのタイマーショットは命を削っている分他の光線技より破壊力が大きいとの設定になっている。弱点と同時に武器なのである。
 また、『ウルトラマンA』では一度、地獄星人ヒッポリトの前に、ゾフィーから、Aまでのウルトラ5兄弟が全滅し、ウルトラの父が初登場して星人と戦ったが、不利を悟った父はカラータイマーをAに与え、蘇生させた。
 自らは倒れたが、その後、Aが星人を倒した。勝利したものの、ゾフィーから新マンまでの4兄弟は死んだままで、美川のり子隊員(西恵子)が「可哀相…。」と呟いたが、Aはカラータイマーを外すや、4人の兄にもエネルギーを与え、一気に蘇生させてしまった
 これは凶悪であると同時に、何故ウルトラの父は初めから5人蘇らせて、勝負を有利にしなかったのか?と云う謎が残る。まあ、とにかくカラータイマーは弱点的側面も強いので10位止まりになった。

 第9位は「ウルトラマント」である。これは伝説の長老ウルトラマンキングが着用していたものを、故郷を失い、地球で孤軍奮闘するレオに感心して、授けた物で、キングが初登場時にまとっていたのをブレスレット状にしてレオに装着させた。
 必要時にマントになるのである。まあ、元がマントなので、敵の攻撃を防いだり、覆い被せて相手の視界を遮ったり、動きを止めたりするのが主な用途で、現実の世界でも軍用マントは似たような使い方をされる。
 ミサイルを防ぐのは無理でも、防弾チョッキに匹敵する防御性を持つマントは実在し、防火に使用するのは古くは平賀源内が火事場での人命救助に使用している所にも見られる。
 用途の7割はオーソドックスなのだが、時に傘になって、相手を刺殺したり(!) 、ひどい時にはマントの形態のまま相手を貫いていた。ウルトラマントに関しては「何でも有り」性より、「どんな攻撃でも有り」性が凶悪なのだ。
 アトランタ星人は大気圏外でレオに上半身をマントで絡め取られ、そのままの状態で頭から地上に追突されたのである。これははっきり行って怖い。しかもその後彼を待っていたのはレオとアストラによる袋叩きであった。既に星人は戦意を喪失していた。

 第8位は「光線技」である。これは主にウルトラ一族が放つ様々な光線全般のことを云う。
 スペシウム、エメリウム、メタリウム、ストリウム、サクシウム等のメジャーな各光線は目的が破壊で、御都合主義以外にこれと云った非はないのだが、光線はこれだけに止まらず、後番組ほど、種類が豊富になり、同時に「何でも有り」性が高くなる。特にAとレオはひどい。
 Aは前述のタイマーショットにバーチカルギロチンに4兄弟のエネルギーを貰って放つスペースQ等、種類が豊富な上に、同じ破壊でも爆発だけじゃなく、斬る、貫く、消し去ると云った効果を及ぼす。おかげでメタリウム光線の存在感が薄く、戦闘の個性を奪ってしまっていた。
 限られた技を要所要所に用いるから戦闘は面白いのであり、そういう意味ではエースの豊富すぎる光線技は視聴者じゃなく、番組にとって凶悪な技である。

 一方、レオは初め、光線技を全く使用せず、肉弾戦のオンパレードだったのが逆に仇になってその後の光線技を凶悪化させている。メインとなる光線技が存在しない為、その場その場の行き当たりバッタリの光線が乱舞し、名のない光線が多過ぎる。
 主なところでは、ギロ星獣を蘇生させたリライブ光線、何体かの怪獣を葬ったエネルギー光球、最終回で悪魔の星ブラックスターを破壊したレオシューティングビーム、アストラと共同で放つ最大の必殺技・ダブルフラッシャービーム、壊れたウルトラキーを復元した名もない光線、とこれまた「何でも有り」である。
 まあ、レオは当時不評でも現在、光線技よりアクション技が多かったことが評価されていて、そちらの方が技としてメジャーなのでこの順位に止まっている。アクションをこなすには技の習得過程が必要となるが、光線技はそんなことお構いなしに新しい技が出る。凶悪である。

 そこへ行くと第7位の「万能杖」の方が「何でも有り」度が低く見える。確かに光線技ほど万能ではないのだが、「杖」と云う前提を余りにも超え過ぎていた
 まず、この万能杖がどういう物かを解説しなければなるまい。『ウルトラマンレオ』の第1話でサーベル暴君マグマ星人率いる双子怪獣と戦って負傷したウルトラセブンはモロボシ・ダンからセブンへの変身能力を失い、右足も不具となった。つまり、ダンの持つ万能杖は通常は歩行補助具なのだが、その存在感は隊員より強い

 先ず一番の使い道は武器としてである。しかし、まあ、人間いざとなれば手にしている物は何でも武器である。MACの隊長としての職を持つダンが、常に携帯している杖に武器としての機能を持たせたとしても何の不思議もない。
 『レオ』には等身大の星人との格闘も多い。杖で護身を図るのは当然である。そこで問題になるのは万能杖が武器として、どれだけ「何でも有り」かだ。
 殴る、突くによりダメージを与えるのが杖による攻撃の基本であるが、その矛先は時にゲンにも向けられ、ゲンはこの杖で何度も殴られ、足を払われ、投げ付けられ、時には首を絞められまでした。
 等身大の星人との格闘に際しては、自動車のドアをも真っ二つにするツルク星人の手刀でも斬れず、ドギューは顎をしたたかに叩かれ、ケットル星人は空転して着地するところで足を払われ、フリップ星人は杖に内蔵された弾丸を撃ち込まれ、アンタレスに至っては、巨大化している時に、マッキー3号から飛び出したダンに杖を投げ付けられ、レオに止めを刺し損なっている。
 また、錐揉みキックの訓練をしていたゲンは一度岩を割るのに成功するが、ダンは「今のは欠けたのであって、割ったのではない。」と云って、傍らの岩を杖で真っ二つに叩き割り、「杖でさえ割ることが出来る。」と云ってゲンに更なる特訓を課していたが、宇宙人であるダンの腕力が尋常でない、と仮定してもこの万能杖は凶悪な武器である。
 巨大化したツルク星人に追いつめられたダンは「来るなら来い。」と云って、杖一本で立ち向かおうとしている。用途が武器のみとはいえ、充分に「何でも有り」の武器と云えるだろう。

 第6位の「バイオライダー」は仮面ライダーBLACK RXの変態した姿である。RXは怒りと悲しみの感情の力を彼の命の源であるキングストーンに反映させることで、ロボライダー、バイオライダーと云う二つのタイプの改造人間になることを可能とした。
 怒りをきっかけとして、目覚めたバイオライダーの最大の武器は体を液化させることである。物理攻撃は効かないわ、体の形、大きさは自由自在に変えられるわで、液体に関することなら正しく「何でも有り」である。
 敵の死角に回り込んでの「バイオアタック」、敵の攻撃を受ける直前にバイオライダーになって、攻撃を無効化させ、即行で元に戻って、敵に攻撃が効いたと思わせて死んだフリをして、後で不意打ちをする卑怯な戦法。ミクロ化して、敵の体内から攻撃する、爆死したフリをして、粉末になって姿を隠し、やはり不意打ちする闘法。生身の人間の細胞と一体化して、その人を超人化させ、敵を打つ、等々、卑怯のオンパレードであった(もっとも、細胞との一体化の非はRXも認めていて、「本来なら許されないこと。」と明言していた)。
 頑丈さとパワーのロボライダーより「何でも有り」で凶悪だが、液体特有の火に弱いとの弱点が有り、何分液体の特徴に限られているので、まだこの順位に止まる。

 第5位の「ウルトラマンキング」ともなると半端じゃない。「ウルトラマンレオ」にたった三回出てきただけだが、何分、「伝説の長老」であることから特殊能力のオンパレードである。
 初登場は「宇宙一の魔法使い」の異名を取るプレッシャー星人からレオを救うシーンだが、「宇宙一」である筈のプレッシャーの魔法を物ともしないところからして、「何でもありです。」と公言しているような物である。
 先に出た「何でも有り」第9位のウルトラマントをレオに授け、2度目の登場では星をも一撃で粉々にするウルトラキーを光線一発で叩き折り、実の兄であるレオに見抜けなかったアストラに変身したババルウ星人をあっさり見破り、訳の分からん光線で変身を解除したりもした。
 3度目の登場では全身をバラバラにされたレオを蘇生させている。蘇生の専門家であるウルトラの母でさえ、設備が整ったメディカルセンターで時間をかけて蘇生させていたことを考えるとその即効性は凄まじい
 能力の有無で「何でも有り」性を判断するならこの老人を1位にしたいところだが、限界を感じられる面が二点有る。
 1つはキングのじーさんが叩き折ったウルトラキーである。「キーなど問題ではない。」と云ってウルトラ兄弟にキーをなくしてコントロールを失ったウルトラの星のコントロールを命じたが、結局キーなしではどうにもならず(←「大問題」やんけ)、キーはレオ兄弟が修復させている。
 キングはウルトラ兄弟が殺されるのを防いだり、レオ兄弟の濡れ衣をはらすのには大いに貢献したが、ウルトラの星のコントロールに関しては何一つ役に立っていないどころか、事態をややこしくしてまでいたのである。
 もう1点はレオの弟アストラに関連している。
 L77星滅亡の際、アストラはマグマ星人に捕らえられていたのだが、このアストラを救出したのはキングである。しかし、捕虜だったアストラの足にはめられていた足枷と、それを繋ぐ鎖−マグマチックチェーン−はキングの力をもってしても外れなかったと云う。キングにも出来ないことがあるのを感じさせるエピソードだが、それぐらいの方が番組としては面白い

 第4位以降はインパクトよりも文字通り「何でも有り」で、ここぞと云うところで「御都合」という物を発揮してくれる。第4位の「ギギの腕輪」は仮面ライダーアマゾンの命である。と、同時に古代インカの超科学の集大成物であり、この設定が「何でも有り」の根幹を成している。
 そもそも『仮面ライダーアマゾン』の始まりは古代インカの超科学を有する一族の一人、ゴルゴスが、「ギギの腕輪」と対を成す超エネルギーを生むユニットの一つ、「ガガの腕輪」を我が物とし、自らを「十面鬼」と称し、「ゲドン」と云う悪の組織を率いて、長老バゴー(明石潮)に反旗を翻したことに始まる。
 「ギギの腕輪」を奪われまいとしたバゴーは1人の日本人野生児・山本大介(岡崎徹)に腕輪の移植手術を施し、日本に行けとの暗示を残して息絶えた。云うまでもなくその野生児が仮面ライダーアマゾンである。
 当然、十面鬼の矛先はアマゾンライダーに向いた。ゲドンはアマゾンのギギの腕輪を狙い、ゲドンの後に出現したガランダー帝国も、十面鬼のガガの腕輪を手に入れ、アマゾンのギギの腕輪を狙った。
 長い前置きだったが、そこまで2つの組織が入手に躍起になったギギの腕輪の「何でも有り」性を見てみよう。
 ゲドンとの戦いではただ狙われるのみで、ギギの腕輪は武器どころか、「なくせば死ぬ。」と云う弱点とさえ云えた。しかし、ガランダー帝国戦になると回数は少ないものの、凶悪さを発揮する。
 先ずハンミョウ獣人によって、地下1000メートルの地底で瓦礫の山に埋められた時は、アマゾンの体を1000度を超える光熱の塊とし、地上に脱出させることに成功する。空とぶライダーースカイライダーが登場するまで、アマゾンライダーのジャンプ力は歴代ライダーの中で一番だったが、それでも40メートルである。これは凶悪だ。
 更にフクロウ獣人によって失明させられた時は「ギギの腕輪の力」と云う解説だけで、失明があっさり治っている。何者にも化けられるオオサンショウウオ獣人はアマゾンライダーに化けたが、この時、本物と偽者を見分けるキーになったのはギギの腕輪であり、そのステータスの高さを物語っている。断じて手袋とマフラーの色ではない(笑)

 最終回でアマゾンはゼロ大帝に捕らえられたが、ここでもギギの腕輪は「何でも有り」性を発揮していた。アマゾンのギギの腕輪を外して、古代インカの超エネルギーを得ようとしたゼロ大帝は先に腕輪を外しゃあいいものを、ガガの腕輪を部下に持ってこさせる。すると突然と云おうか、必然と云おうか、ガガの腕輪はゼロ大帝の手を離れ、アマゾンのギギの腕輪と合体し、古代インカの超エネルギーはあっさりアマゾンの物となった
 こうなったらアマゾンライダーの暴走を誰も止められない。体を縛っていた鎖をこれまたあっさり引き千切り、一度はアマゾンを無力化させたゼロ大帝のランスビームも通じず、最後にはスーパー大切断(大切断との区別は不明)でゼロ大帝の首を刎ね飛ばした。これらは全て、「古代インカの超エネルギー」の一言で片付けられたのである。

 いよいよBEST(WORST?)3である。ここから先の「何でも有り」は4位以下と少しニュアンスが異なる。と云うのも、これまでランクインしてきた人・物は予め、用途も不確定で、登場回数も少なく、「何でも有り」の土壌が弱かったが、ここから登場する物は登場回数も多く、用途もはっきりしているくせにいざとなると、「何でも有り」の困った連中である。

 では残る3位を発表しよう。第3位は「ウルトラ念力」である。第7位の「万能杖」同様、ウルトラセブンへの変身能力を失ったモロボシ=ダンの専売特許がここで再登場する。
 「ウルトラ念力」が具体的にどういう効果を生むものかは解説されたことがない。従って、画面から絞殺……もとい、考察するしかないが、ダンが何をしたがっているかはすぐ分かる。
 最も多いのは「敵に不快感を与える。」「敵の特殊能力を封じる。」「敵のやる気を削ぐ。」の三点で、これらの併用が最も多い。どうも強力な催眠術のようだ。
 マグマ星人、ブラックギラス、レッドギラスは居眠りしかけ、ツルク星人も放心状態になって去っていった。アトラー星人は白蝋化光線を出せず、ガロン、リットル兄弟は七転八倒して、地中に逃げた。偽アストラ(ババルウ星人)も悶え苦しませた。
 と、ここで終われば、「ウルトラ念力」はただの催眠術で、さほど「何でも有り」ではないのだが、当然これではすまないから凶悪だ。
 「ウルトラ念力」は徐々に精神的効果だけでなく、物理的効果も上げ出すのだ。ウルトラ警備隊時代の同僚・友里アンヌ(菱見百合子)隊員そっくりの女性が育てる宇宙人の捨て子・ウリーと念力合戦をやった時はウリーが念動力で動かしたり破壊したりしたものを元の位置に戻したり、修復したりしている。これはもう「ウリーの念力を封じただけ」と云う精神的なものではなく、明らかに物理的影響を及ぼしている。
 また、MACの高倉長官(神田隆)の娘の婚約者・内田隊員に化けたアトランタ星人の陰謀を防ぐ為、「ウルトラ念力」で娘を「原因不明の病気で危篤状態」にしたりしている(勿論一時的なものである)。
 凶悪二面怪人アシュランが、帰ってきたウルトラマン=郷秀樹(団次郎)にダンとの意思疎通を妨害する為に填められたマスクを粉々にしたことである。これはどう云い訳しても物理的影響だ。

 結局「ウルトラ念力」は偽アストラを苦しめたのが最後の出番になったが、その後もし出番が有ればどうとでもなったのである。
 3つの弱点がなければ正しく「何でも有り」の王者である。その一つは第4話でナレーションの云っていた、、「ウルトラ念力では怪獣を倒すことは出来ない。」と云う決定的な台詞だが、レオが主役である以上、これは止むを得ない。
 二つ目は、ガロン・リットル戦でダン自身の云っていた、「私の能力はもう彼らには通じない。」の台詞に表われているように、同じ相手には2度目は効かないことが挙げられる。
 そして最後に凄まじい精神力が要求される為、ダンの寿命を著しく縮める点である。確かに、念力を発動させた後のダンはひどく疲労する。ために、ダンは念力を乱用しない。それでもランクインされるのはそれほどまでに「何でも有り」なのだ。

 そのモロボシ=ダンことウルトラセブンが帰ってきたウルトラマンに手渡したのが、第2位にランクインした「ウルトラブレスレット 」である。「何でも有り」過ぎるのに、武器で止まらないから、戦闘の緊張感を随分削いでくれたものである。
 ウルトラブレスレットは本来の用途は前述通り武器である。
 スペシウム光線すら吸収してしまう宇宙怪獣ベムスターに対抗できなくなったウルトラマンにセブンからプレゼントされたものであり、初登場時にはウルトラマンの腕から放たれるや、光を帯びたブーメランとなって、ベムスターの首と両翼をぶった切った。
 その後、相手の怪獣に合わせてこの武器は様々な携帯に変化した。有名どころではロングスピア長槍(というよりジャベリン投擲槍)タイプだが、吸血怪獣ドラキュラスとの戦いで、十字架型の槍になったのは「如何にも」であり、武器としての既に「何でも有り」であることを感じさせる。
 武器以外の用途として圧巻なのはスノーゴンとの戦いである。名前の通り、雪を武器とするスノーゴンにウルトラマンは苦戦を強いられるが、ブレスレットのこの時の活躍は凶悪過ぎる。武器の筈なのに盾となって、吐息を防いだ。既に一つのアイテムとしては反則である。
 しかもこの後、ウルトラマンは氷漬けにされ、急激に冷やした薔薇の花よろしく、五体を粉々にされたのだが、ブレスレットの発する磁力パワーで元通りくっついたのである。ウルトラブレスレットの蘇生力はウルトラの母を凌駕するのだ。スノーゴンはきっと「反則だー!」と叫びたかったことだろう。

 それでもこの凶悪武器が第1位になり得なかった根拠は3つある。1つはこのブレスレットがウルトラマンに刃向かったことが有るのだ。囮怪獣プルーマを倒した後、このブレスレットはゼラン星人のコントロールを受け、ウルトラマンを襲ったのである。
 セブンのアイ・スラッガーがセブンの脳波でコントロールされることに比べれば、「思いのまま」と云う点で限界が見える。
 更にブレスレットが効かなかった怪獣もいる。用心棒怪獣ブラックキングはその代表だ。結局ウルトラマンはスライスハンドと呼ばれる手刀打ちでブラックキングの首をぶった切って勝っているので、素手の方が強い威力を持っていることになる。
 第3は最終回に見られる。触覚宇宙人バット星人と宇宙恐竜ゼットンのタッグと最後の戦いを繰り広げるウルトラマン。周知の通り、ゼットンは初代ウルトラマンを倒し、最強との認識は万人に根強く、柳田理科雄氏が科学的に算出してもいる。ウルトラマンはバット星人をブレスレットで倒し、ゼットンを抱え挙げると「ウルトラハリケーン」と云う大技でゼットンを倒した。
 プロレスで云うところのエアプレーン・スピンでゼットンを大空高く投擲し、スペシウム光線を浴びせたのである。最後の最後である見せ場を占めたのはブレスレットではなく、スペシウム光線だったのである。ブレスレットのステータスの限界とも云えよう。


 いよいよ第1位である。それは秘密戦隊ゴレンジャーの後半の必殺技「ゴレンジャーハリケーン」である(前半の必殺技はゴレンジャーストーム)。元々寄ってたかって一人を倒すゴレンジャーが持つ最大の必殺技で、当然使い道は敵を倒すことである。「ウルトラマンのスペシウム光線」、「仮面ライダーのライダーキック」、「宇宙刑事ギャバンのギャバンダイナミック」、と云って良い。
 しかも、ゴレンジャーハリケーンは前述の3ヒーローの技に比べて、必殺率が格段に高い。逆にゴレンジャーハリケーン(またはゴレンジャーストーム)以外の技で敵を倒したことはなく、通じなかったのも最終回の対黒十字総統の第一戦のみである(←さすが親玉)。それを証明するのが「真っ赤な特攻 キレンジャー夕陽に死す」の話であった。

 この話で二代目キレンジャー・熊野大五郎(だるま二郎)は自らの過ちを償う為、単身黒十字軍に特攻し、缶切り仮面の缶切りカッターを受け、壮絶な戦死を遂げた。戦友の仇討ちと意気込むヨンレンジャーだが、缶切り仮面は自信たっぷりに云った。
 「4人ではゴレンジャーハリケーンは使えまい。わしの勝ちじゃー。
 4人になった途端一人に勝てなくなるゴレンジャーって一体……。
 結局初代キレンジャー・大岩大太(畠山麦)のカレー好きが復帰し、ゴレンジャーハリケーン・缶詰で缶切り仮面を爆殺するのであった。話がいつものことながら大分逸れたが、これだけではゴレンジャーハリケーンは卑怯なワンパターンで、別に「何でもあり」ではない。ゴレンジャーハリケーンの凶悪さはこの技が、敵を仕留める段になって、文字通り、何にでも変身するのである。
 ゴレンジャーハリケーンは技を始める前は少し装飾されたラグビーボールである。モモレンジャー(小牧りさ)が蹴り上げ、キレンジャーがヘッディング(←ラグビーボールだっちゅうの)し、ミドレンジャー(伊藤幸雄)がそれを蹴り、アオレンジャー(宮内洋)がキャッチして地面に置き(←前3人の行動が意味無くなるやんけ)、「アカ、クラウディングトライだ」と云って、赤レンジャー(誠直也)が気合もろとも敵の怪人に向かって蹴りつける。
 ボールは敵前でその場に応じて何にでも変化し、コミカルに止めを刺すのである。技の全貌が分かったところで本来の目的である「何でも有り」性を見てみよう。

 風車仮面を倒す時には扇風機になって羽根を逆回転して爆殺した。テレビ仮面には大きな手となって飛んでいき、テレビ仮面のチャンネルをガチャガチャ回し、画面が「おわり」になって爆死した。二代目キレンジャーの仇・カンキリ仮面には缶詰になって飛んでいった。缶詰をあっさり受け止めたカンキリ仮面、おおっ、技は通じずか?と思いきや、「おおっ、缶詰、儂はこれを見るとどうしても開けたくなってなぁ…」それに対する赤レンジャーの台詞は、「馬鹿め、それは缶詰爆弾だ。」で、当然、缶切り仮面は爆死した。
 それまでがシリアスだったのにどうして最後でボケるのかねぇ、こんな奴に殺されたのでは熊野大五郎も浮かばれまい。技が「何でも有り」なら、その効果も「何でも有り」である。

 このコーナーの順位は御多分にもれず、シルバータイタンの独断と偏見でランキングが組まれたが、この1位のゴレンジャーハリケーンだけは誰にも異論を挟ませない自信が有る。よくもまあ、このようなノリで2年も連載し、戦隊物の先駆けを成したものである。良くも悪くも、俳優ならびにスタッフに敬礼!!



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新