環境破壊により、死の星となりつつある地球を救うことを大義名分に、世界人口を三分の一に減らし、優れた人間のみのための世界を創る為、殺人を繰り返す秘密結社で、ショッカーの名を冠し、その形態はかなり酷似している。
組織内部も大首領を筆頭に、大幹部、改造人間、アリコマンドの縦の繋がりから、改造人間でも、将軍の地位を持つ者(黄金ジャガー)もいれば、魔人提督とため口を聞いても咎められない奴(グランバザーミー)、丁寧語で接するものの、完全に指揮系統の外にいる奴(アブンガー)等々多彩で、アリコマンドも普通の者から科学者グループ、ドクロ暗殺隊などの特殊任務従事者がいて興味深い。
縦横が豊富なのはストーリーのあちこちに見受けられるが、そのランク付けがよくわからない。基本的に改造人間同士はタメ口である。
例を挙げると、サハラ支部から召還された黄金ジャガーは将軍で、同時にモンゴル平原から召還されたトリカブトロンはこれと言った地位らしきものはなかった。そのトリカブトロンはスカイライダーを倒したと(思い込んで)魔神提督に報告したトリカブトロンは魔神提督に五階級特進で将軍に任ずると言われ、黄金ジャガーに同じ地位になったことを鼻に掛けていたが、と言うことはトリカブトロンは五つも階級が上の人物にタメ口を聞いていたことになる。
悪の組織を政治や企業と一緒にできないが、少なくとも五つも階級が上の人間にタメで接することができる組織はシルバータイタンは聞いた事がない。警察の世界で言えば巡査部長が警視長にタメ口をきく行為に等しいのである。
更にライダーを倒したのが誤報だったと知ったとき、怒り心頭の魔神提督はトリカブトロンを殴り付けてその場で五階級を格下げした。ネオショッカーの提督位がどれほど権威ある地位かは不明だが、階級をその場で上げ下げできるには動かし得る階級とその地位には更に何階級かの差があると見るべきだろう。
本当にネオショッカーには難階級あるのだろうか?階級間の関係も含めて謎は深まるばかりである。更に魔神提督に将軍位を自由に与奪できるのならゼネラル・モンスターの立場は?
1.ゼネラル・モンスター(堀田真三)
スカイライダーは1号ライダーへの回帰として生まれたライダーである。悪の組織がネオショッカー(新しいショッカー)であることや、喫茶店に仲間が集まる姿も、「仮面ライダー」の世界に回帰している。
そしてそのような作風の中でナチの軍服に隻眼のゼネラル・モンスターは嫌でもゾル大佐を彷彿とさせる。
設定によると、左目はFBIとの戦いで銃弾を受けたことにより失ったらしい(滝和也の仕業か?(笑))。鞭を振るうのをもゾル大佐と同じだが、左手が鉤爪になっているところ等の細々とした武装はさすがに異なる。
そしてリーダーとしての相違だが、ゾル大佐が高潔な軍人然りとして軍律と気構えで部下を統率するのに対して、ゼネラル・モンスターは権威でもって部下を威圧し、逆らうものは一切許さない(これは地位を持つネオショッカーの軍属全てに共通する)。また悪役に有り勝ちな卑怯な手段も辞さない男である。
部下への礼儀にもうるさい(強力な感染力を持つ青黴の改造人間であるアオカビジンは改造グループが感染防止の為にカプセルに入って面会させたところ、「無礼だぞ!」と一喝された)。
もう一つ付け加えるなら彼に与えら得ている権利は大きいようで、第1話で重傷を負った筑波洋(村上弘明)を助ける為に志度博士(田畑孝)が彼の改造手術を申し出たとき、ガメレオジンが「俺の一存では何とも言えん。」と言ったのに対し、その場で「許可しよう。」と言って初めて現れたのがゼネラル・モンスターである。
この判断がネオショッカー最大の敵を生んだのだから、皮肉である。やはり大きな権力を誰に与えるかは組織の運営において大切なことである。
残忍で、権威を振りかざす嫌な面が目立つが、一面合理主義者でもあり、第2話では自ら筑波洋と交渉し、ネオショッカーの理想を説明することで彼を仲間に引き入れようとした(勿論交渉は決裂)。
またスカイライダーとの最終決戦に当たってはお抱えのプロフェッサー・ドクと共にかなり緻密な計算をしていた(スピードを計算に入れ忘れる、という大ポカがあったが)。その決戦に当たって彼は谷源次郎(塚本信夫)を始めとする洋の仲間達を人質に取り(お約束)、彼等の釈放と自らの拘束を交換条件とした洋に対し、「いいだろう、約束を破る男ではないだろうからな。」と言っていた。敵を認めると言うのはなかなか他の悪人にには見られない傾向であり、彼の性格の一端として興味深い。
人質交換により開放された谷達だったが、別働隊により再度捕えられ、バイクで引き摺りまわした洋の前に引き出した。「貴様恥ずかしくはないのか?」という洋に彼が発した台詞は「これが作戦だ。」である。う〜ん悪党だ(笑)。
ヤモリジンに変身して洋を殺そうとしたが、鞭を逆用されて戒めを切られる。洋はスカイライダーに変身し、まとめて縛られた三人の人質を助けようとしたところに爆弾を投げ込んでまとめて爆殺に成功したかのように見えた(この時谷は死刑宣告するヤモリジンに「勝手にしろ!この先生きていたってどうせろくなことはないさっ!」と自暴自棄になっていた)が、先のプロフェッサードクの計算ミス(笑)でライダー達は生きていた。
スカイキックを食らって瀕死の重傷を負ったヤモリジンはゼネラル・モンスターの姿に戻ると「俺の体は爆薬でいっぱいだ」と言ってライダーを道連れに爆死しようとしたが、突如飛んできた怪光線のためにライダーに組み付く前に爆死した。
怪光線を放ったのは魔神提督である。どうせ死ぬのが避けられないのなら駄目元でスカイライダーの道連れを実行させてもよさそうなものだが、それさえさせてもらえなかったとはある意味悲惨である。
ゼネラル・モンスターを演じたのは悪役俳優・堀田真三氏。独特のだみ声と厳つい顔で刑事ドラマ・時代劇等の様々なドラマで悪役をやっている。用心棒やヤクザの若頭的役が多い。
また「はぐれ刑事純情派V」では麻薬の密売人を手掛ける喫茶店のマスター役をやっていたが、あの厳つい顔(堀田さん許して…)で喫茶のマスターとしてうまく愛想を振る舞っていたのは彼の役者としての技量を示すものと見える。
是非善玉役をやる堀田氏を見たいものである。このときの舞台は京都で関西弁も自然に話していた。熊本出身の彼だが大阪市立大学卒なので、このとき関西弁をマスターしたのだろう(笑)。余談だが、シルバータイタンはかつて同大学の受験に失敗しており、チョットやきもち(苦笑)。
「仮面ライダー」では旧1号最後の敵トカゲロンに改造されたサッカー選手野本健を演じ、改造後の声も当てた。また「仮面ライダーストロンガー」の劇場版では悪の親玉である暗黒大将軍(世界中の子供達を誘拐し、その身代金を軍資金に世界を征服しようとした物凄い発想の持ち主)を演じていた。
2.魔神提督(中庸助)
ネオショッカー二代目日本支部大幹部。角兜と鎧に身を固め、マントを羽織り、帯剣する彼はその立ち居振舞い・作戦共に派手で、ゼネラル・モンスターと対照的である一方で、残忍さや権威主義的なところでゼネラル・モンスターと共通するところも多い。
またその性格は残忍で陰険で卑怯もクソもなく、目的の為には良く悪くも手段を選ばない。更に無能者が嫌いで、容赦しない一方で、長所は多いに認める。
彼の性格を示す好例が二つ。一つは代替わり直後のプロフェッサー・ドクの裁判である。ゼネラル・モンスターとの共闘に失敗した彼の判決を五人の裁判官に問うたところ、最初の二人は即座に「死刑」と即答した。三人目が迷いを見せると提督は即座にその裁判官を切り殺し、刃を4人目に付きつけた。
残る二人は大慌てで「死刑」と宣した。裁判やる意味あるのか?と言いたくなる裁判である(笑)。裁かれる側は初めから魔神提督の一存にその運命は決しており、裁く側も只の提督の意志代弁マシーンに過ぎず、意に添わなければ死が待っているのだ。双方ともたまったものではない。
自分の死刑の理由を問うドクに魔神提督は「儂は無能が嫌いだ。ネオショッカーに生きる価値はない。」と言ってシビレイジンにドクの処刑を命じた。ここに魔神提督の二つの性格を見ることができる。
もう一つの例はアブンガーとの絡みである。スエズ運河の使者アブンガーは魔神提督の督促にもかかわらず、なかなか重い腰を挙げなかった。
そんなアブンガーを臆病者と彼は罵った(罵るだけで処刑に及ばなかったところに彼の権力の限界も見えて興味深い)が、アブンガーが徹底した調査の末、スカイライダーが必殺のスカイキックを放ち、エネルギーを使い果たした直後の0.5秒間の弱点を見つけ、それに掟破りのアブンガースカイキックを決めて多くの同胞の恨みに報いんとした意見を出したときには「恐ろしい男よ・・。」と言ってその認識を改めた。
組織の高い地位で絶大な権力を持つ人間は得てして傲慢に陥りやすい。彼も例外ではないのだが、それでもアブンガーに対する認識をあっさり改めたのは「無能が嫌い」という彼が「有能は好き」という自らのポリシーに忠実であることを示すものでもある。
一個人としての彼は概ね部下に恐れられていた。失敗を咎める彼にV3とも堂々と渡り合ったマントコングがみっともないほど狼狽してひれ伏していた。また誰もいない基地の一室で「クラゲロン、姿を現せ。貴様が来ていることを知らぬ儂ではない。」と言ってこっそりやってきたクラゲロンを見破っていたところからも、「無能嫌い」の彼は部下になめられないだけの力は十分に備えていたようである。
幹部が代わってネオショッカー全体も様変わりする面が多々あったが、これが魔神提督の行動力によるものかどうかは定かではない。
海外の支部から盛んに名高い改造人間たちを呼び寄せ、二面作戦でもってライダーの妨害を一方に引きつけて、もう片方を成功させようともした。
彼が幹部になってからは大首領も殆ど声をかけなくなった。これが魔神提督に対する信任の厚さからなのか、魔神提督が首領に相手にされていないだけなのかは意見が方々で別れているが、シルバータイタンは前者と見ている。
上司としての魔神提督の欠点は作戦の人選にある。。「サイダンプ&クラゲロン」、「マントコング&タコギャング」、「ヒルビラン&グランバザーミー」、「ウニデーモン&オカッパ法師」、「黄金ジャガー&トリカブトロン」と犬猿の仲の組合せが目立つ。
それが為にライダーを取り逃がしたり、作戦の進行が鈍化したことがあることからも彼の欠点と取れる(「ムササベーダ兄弟」や「ドラゴンキング&キギンダー」のような息の合った組合せもあることも念の為付記しておく)。
繰り広げる作戦を次々にライダーに打ち破られた魔神提督は大首領に最後通告を突き付けられ、筑波洋への恨みに燃える彼はただ彼を殺すだけでは気が済まないと考え、ネオショッカーに殺された筈の彼の父親が生きているとの情報を流し、その父が改造人間になっていると伝えて洋を苦悩の底に叩き落さんとした。
情報を求めてやってきた彼に対峙した魔神提督は指ミサイルや毒ガスでライダーを攻撃するが、改造人間用の猛毒を仕込んだ入れ歯を放ったところ弾き返されて自分が食らう(笑)。
退散した彼を見つけた洋は魔神提督がつけているプレートに自分の父の改造人間番号として教えられた番号が付いているのを見つけて激しく苦悩した。つまり魔神提督は洋の父に成り済ましていたのである。
魔神提督の体は心臓さえ無事なら大首領の力で再生が可能である。魔神提督を父と思う洋と共に父子の心中にかこつけて洋を殺そうとするが、真相を知ったストロンガーによって罠と知り、同時に駆け付けた2号ライダーを含めた3人ライダーとの決戦となる。
結局道連れにしようとしたライダー達にトリプルライダーキックを食らって一人で爆発する。残った心臓と首になって大首領の元に吹っ飛んでいった彼は「何卒もう一度私めを復元してください。」と懇願するが、「廃棄処分にしてくれる」の台詞の元、巨大な手に握りつぶされて塵と化した。
魔神提督を演じたのは中庸介氏。メイクがどぎついので素顔が判り辛く、「西遊記」やその多のドラマにも出ているし、「ドラえもん」のアテレコも行っているのだが、シルバータイタンはその具体的な活動を掴んでいない。誰か教えてくれません?(笑)
2005.5.7追記
来房者の方から魔人提督を演じた中庸介氏に関する情報を頂きました。
中氏は安部征司氏もプロデューサーを務めた縁でか「大戦隊ゴーグルファイブ」にデスマルク大元帥役で出演、あの高笑いと睥睨でここでは幹部の中にも部下がいることもあり尚のこと、威厳を出しました。
余談ながら阿倍氏が携わった「星雲仮面マシンマン」で天本英世氏がプロフェッサーKを、更に翌年は「兄弟拳バイクロッサー」で潮健児氏がドクターQを演じられ、中氏の起用が影響したのかと思うと感慨深いものがあります。
尚、中庸介氏自身はデスマルク大元帥について魔神提督と似たような役と感想を述べられています。
平成二一(2009)年一一月一六日 最終更新