初めに これは宝島社の「怪獣VOW」をパクって刑事ドラマ版にアレンジしたものです

菜根版 刑事VOW

怖い刑事達
 警察とは善良なる一般市民を犯罪から守り、万一の被害を受けた際に、その被害の元となったもの(者・物)を処理し、解決に尽力し、然る後に法の裁きに委ねる国家組織である。
 当然、犯罪者とは意図はともかく、法を犯す者達で、法を犯す以上、ありとあらゆる禁忌に触れる事が想定される。そんな手段を選ばず善良なる市民を守るために様々な権力や武装を与えられている。
 警察が時として嫌味で「国家最大の暴力機関」と云われる所以である。勿論今まさに幼子が暴漢に突きつけられた猟銃で撃たれようとしている時等は現場にいる警察官が拳銃を抜いて、暴漢の銃なり腕なりを撃つ事でその殺害を阻止する事は妥当とされるだろうし、狙いが外れて暴漢を射殺してしまった場合もさほど非難はされまい。
 だが、この発砲の判断が銃を持つ警察官に委ねられる以上、警官次第では拳銃は凶器となり、拳銃以外の国家公認権力にも同様のことが云える。故に警察は頼られもし、恐れられもする。
 このコーナーでは刑事ドラマでの「怖い刑事」に注目したい。

それはアンタだ
特捜最前線第148話「警視庁番外刑事!」
概略担当:リトルボギー
 この話から新メンバーの刑事(夏夕介)がレギュラーに加わったんだが、この刑事ドラマで桜井さん(藤岡弘)、吉野(誠直也)と並んで武闘派のはかつての親友に狙撃騒ぎを起こされ、その犯人を追って特命課の面々と邂逅を果たした。
 が二件続けて第一発見者として110番通報している事が発覚して(櫻木健一)がの経歴を調べたら出るわ出るわの暴走履歴。
 交番を襲撃してに取り押さえられて「俺の親父は区会議員だぞー!!」と逆切れした暴走族や、集団万引き事件を起こした女子高生の示談を申し出た際に「君はワシが誰だか知らんと見えるな、あぁ!?この私が一言声をかければ刑事の首の一つや二つ、簡単に飛ぶんだぞ!!」と恫喝した親父は、更に逆切れしたに殴られ、蹴られ、肋骨を折られ、二ヶ月から三ヶ月の入院。それに対して吉野が何て云ったと思う?

「丸で、ヤクザじゃねぇか、ってのは。」

 だぜ?思わずブラウン管の前でタイトルにあるように「それはアンタだ。」って云っちまったぜ。
 なんせ吉野の奴は「秘密戦隊ゴレンジャー」で主役の赤レンジャー・海城剛役を演じたときも五分刈りだったんだぜ…。
見解担当:三白眼
 俺も道場主からこの話しを聞いたときは大笑いしたな、「お前が云うな!」ってね。
 吉野は五分刈りもそうだけど、オープニングの映像も丸で浮浪者で、下の名前が「竜次」って云うのも「いかにも」だよな(日本全国の「竜次」さん、ごめんなさい。by道場主&非常任師範代)。
 だが俺はの報告にあった、暴走族と親父の「肋骨を折られ、二ヶ月から三ヶ月の入院」の方が問題だと思うぞ、特に親父。これって立派な傷害罪じゃ……!?


ヤクザ以上にヤクザみたいな奴
特捜最前線第194話「判事,ラブホテル密会事件!」
概略担当:三白眼
 この話では桜井さんの長兄にして裁判所判事の桜井秀一郎(福田豊士)が登場。公判中に女性被告人(左時枝)とラブホテルに入ったところをフォーカスされた兄が如何なる意図があってそんな行為に及んだのか?また兄は被告人を抱いたのか?
 兄を信じたい気持ちと刑事として真実を追究せんとして桜井さんが苦悩するところに、何としても兄を救わんとして弁護を申し出た次兄・桜井道夫弁護士(岸田森)が絡んで最後には女性被告の過去に隠された小さな幸せを守って一致協力する話だ。
 当然桜井さんは徹底した調査を行うのだが、その調査の中で保釈中の女性被告人を尾行する男に気がついた。
 当然桜井さんがその男を追えば、男は逃げるし、それを逃がす桜井さんでもなかった。
 桜井さんが、
「なぜ逃げる?」
と問えば男は
「そりゃヤクザみたいなのに追っかけられたら誰だって逃げますよぉ〜…。」
と弱々しく云った。ところが特命課に連行して前科(まえ)を調べたら、この男こそがヤクザである事が判明
 男の所属する天神会は桜井判事の判決を前にして青色吐息状態で、弱みを握っている女性被告人を利用して判事のスキャンダルを捏造し、判事から無罪判決を引き出そうとしていたんだ。
 それにしても本物のヤクザに「ヤクザみたいなの」って云われる桜井さんて、一体…
見解担当:リトルボギー
 概してドラマにも現実の刑事にもヤクザみたいな奴は多い。
 道場主の父親から聞いた話によると、日本の警察はヤクザの構成や組織体制はほぼ完全に把握していて、犯罪捜査のために対立する組織から情報を得たりするために表面上は仲良くするためにヤクザみたいな格好をする奴が多いらしい。
 ん?俺もその口かって?!やかましい!!道場主はちょくちょく職質(職務質問)に会う人相の悪さを気にしてるんだぞー!!


それって脅迫…
特捜最前線第492話「天使を乗せた紙ヒコーキ!」
概略担当:リトルボギー
 桜井さんの怖さとやさしさがこれでもかってぐらい爆発する名作がこの話だ。
 ヤクザの会長の孫である大学生が肩のぶつかったサラリーマンに殴る蹴るの暴行を加え殺してしまったのを一人の男・岸本(中山仁)が目撃していて、証言台に立つ決意をするが、当然ヤクザはそれを阻止せんとする。
 お決まりの脅迫電話(「女房をレイプする」、「息子を誘拐する」等)で岸本を脅し、怯えた岸本夫妻が届け出ても実害が無いので警察は重い腰を上げず、とうとう岸本は妻子を置いて失踪してしまった。
 当然警察は困ったが、岸本の妻は夫なりの妻子を守るための行為、として暗に警察を非難し、悲嘆にくれていたが、まだ小学生の息子は強い子だった。
 父親譲りの良く飛ぶ紙ヒコーキに父への激励を書いて託された桜井さんは、子供を抱き上げ、眩しいばかりの優しい笑顔を浮かべてそれを快諾すると岸本家を張っていたチンピラに、
「軽犯罪法違反で来て貰うぞ。」
と厳として云い放った。
チンピラが、
「なんだこらぁ!!」
と云って逆切れしそうになるといきなり蹴りを入れてパトカーに押し込んで連行するハッスル振り、素敵過ぎです、桜井さん(笑)
   神代課長(二谷英明)は岸本の捜索と、妨害に出るであろうヤクザへの厳戒を指示。桜井さんは刑事(阿部裕司)を伴い、殆ど殴りこみ同然に組事務所にいた面々を締め上げるが、ヤクザ達は痛みに呻きつつも「知らない。」の一点張り。
 どうやら本当に何も知らない、と見た桜井さんは駄目押しに山崎と云う若頭の胸倉を掴んで云った。
「会長に伝えておけ。馬鹿な孫可愛さに馬鹿な事をして岸本さんの身に万一の事があったら、確実に寿命を縮める事になるとな!!」
 桜井さん、それって脅迫じゃあ……。
見解担当:三白眼
 ヤンキーの世界では決まり文句の様に出てくる台詞、「殺すぞ」ってのは明らかに脅迫罪に該当するNGワード。
 「死ね」、「××してやる覚悟しろ」等も同様、それゆえに現実にはあからさまな脅迫は避けて、「夜道の出歩き気ぃつけや」「東京湾の水は冷たいでぇ」といった遠回しな脅迫が使われる。
 掲示板で「殺す」と書くだけで捕まる世の中なので、ある意味怖いものもあるが、何故にこれらの言葉がNGワードなのか?安寧な生活を壊すものである事を考え、それらを避けるならさほど怖くは無い筈だな。
 後、ヤクザが刺青見せて脅すのも立派な脅迫。勿論紙に書いて脅して「暴言も脅かしていない」という云い訳も通じない。桜井さんも婉曲表現にしてももう少し柔らかくして、「組としての寿命を縮める」と云った方が良かったようだな。
 ところで非常任師範代がかつてある山小屋でそこの大将に飯を食った直後に「可哀想にそのうち幻覚が表れるで。」と云われた事があるが(実話)、これも脅しになるのかなぁ……?何も要求はされなかったが。


独断と偏見で選んだ無茶をする刑事Best10

 法を無視する者、ありとあらゆる汚い手段も辞さない者達を相手に市民を守って戦わなければならない刑事達は機に臨んで変に応じてその場その時なりの無茶も時には要求される。
 だが同時に警察は法の遵法者であり、一般市民の良き手本でなくてはならない責務もある。
 そこで事の是非とは別に、「無茶をしている」という観点で刑事ドラマの刑事たちをエントリーしてみた。


第十位
横溝重忠(はぐれ刑事純情派)
演:梅宮辰夫
所属:山手中央署署長
階級:警視
 はぐれ刑事である安浦刑事(藤田まこと)がはぐれていられるのもこの署長が上に対しては筋を通し、部下に対しては鶴の一声でやっさんを支持していればこそ。
 結局やっさんが事件を解決に導いているから結果オーライだが、組織としての在り様や容疑者への拘束・釈放の判断はいつも署長に宥められて苦虫を噛み潰している川辺課長(島田順司)の方が定石を踏んでいるので、やっさんの操作が重大な過失を招いた際の署長の責任の大きさを考えると、結構この署長も縦横の組織関係に無茶をやっている。
 ま、それがあの長寿ドラマの魅力ではあるのだが。


第九位
神代恭介(特捜最前線)
演:二谷英明
所属:特命捜査課課長→特命捜査部部長
階級:警視正
 濃過ぎる面子を率いて普段は課長らしく指揮官に徹しているが、何と云ってもリーダー、やるときはやる!
 横須賀では米兵相手に大立ち回りを演じ、最終回では警察幹部と政治家の癒着を暴くために多くの政治結社・警察署員・ヤクザをボコボコにして、最後には黒幕を誘き出す為に自らが殺されるシーンをビデオに収める事で証拠にしようとした。
 津上(荒木茂)や吉野が自らの信念に身を賭した末に殉職した責任は神代課長には無いが、類が友を呼んだ感が無くも無い。
 もっとも時には部下以上の無茶を辞さない人物でもなければあれほどの面子が集まる集団のボスにはなりえないだろうが。

第八位
吉野竜次(特捜最前線)
演:誠直也
所属:特命捜査課
階級:不明→巡査部長(昇進)→警部(殉職)
 特命で暴れる刑事の二大双璧(勿論もう一人は桜井さん)。メンバーの中で比較的若手でもあることから感情に走る行為も少なくない。
 最後の殉職は偶然が呼んだ不運としか云い様が無かったが、数発の銃創を受け、全身血まみれになる過程には何度も自分の体をかばって離脱するきっかけはあった。
 逃走車両にタイヤを撃ち抜いての強制停止を提言する事も多かった。勿論大立ち回りでも先陣切ること多し。勇猛な兵ほど討ち死にも早いという事か…。


第七位
津上明(特捜最前線)
演:荒木茂
所属:特命捜査課
階級:巡査長→警部補(殉職)
 利発なイメージがあり、優しい男のイメージに隠れがちだが、吉野以上の熱血漢で、その優しさゆえに自らの身を犠牲にすることも辞さず、最後には多くの人々を最近爆弾(ボツリヌス菌)から守って殆ど焼身自殺に近い殉職を遂げる。
 番組初期では神代課長と取っ組み合いをしたり、ある事件に絡んでいると思われる人物(女性・未成年!)を独身の身でありながら自室に泊まらせたり、殉職直前には連行前に非道の罪人を課長達の了承を得て袋叩きにしたりもしている(勿論違法)。
人は見かけによらない好例。


第六位
蒲生大介(特捜最前線)
演:長門裕之
所属:警視庁遺失物係
階級:警視→警視長(殉職)
 「窓際警視」の通称でちょくちょく客演したこの刑事は神代課長の同輩にして悪友で、かつては「カミソリの神代、稲妻の蒲生」と並び称されたつわもの。
 見た目にははみ出し者ゆえに窓際に追いやられた閑職の親父だが、部外者の立場を逆用して特命課に協力することしばし。
 ぶっきらぼうな態度の裏で虐げられている存在に心底味方するため本来警察の武器である階級や公的権力に殆ど頼らないので少ない出番にもかかわらず、チンピラに袋叩きにあったり、刺されたり、と殉難が絶えず、最後には殉職。
 隠し子までいたのは特捜の長い歴史でもこの蒲生さんだけ。警視らしからぬ足を棒にする奮闘と無茶の並存は必見。


第五位
叶旬一(特捜最前線)
演:夏夕介
所属:特命捜査課→特命捜査部特命捜査二課
階級:警部補
 幼くし孤児となり、そのコンプレックスに負けまいとして必死に勉強し、努力した経緯と「今更同情的に見られたくない」との意地から、大立ち回り、単独行動も多い。
 孤独な身の上のものに同情する傾向にあり、その同情を踏みにじって高山刑事(森次晃嗣)を惨殺した殺人犯・小宮に対する怒りは凄まじかった。
 無茶・暴走が慣れているのか、案外怪我が少ない。一方で誤認逮捕も、銃撃の末の誤射もある。


第四位
安浦吉之助(はぐれ刑事純情派)
演:藤田まこと
所属:山手中央署刑事課
階級:巡査
 長年の人望と独自の操作方針が物云うストーリーなので、頻繁に川辺課長の指示を無視するが、現実にあれほど上司命令の無視が相次げば確実に職を失う。やっさんはいい上司(横溝署長)を持っている(笑)。
 また遅刻の常習犯、勤務中に酒を飲み、競馬新聞を開くのも本来は問題行動。新春二時間スペシャルでは上記の行為に「バーのママ(真野あずさ)とできている」というのも加えられて、不良刑事にされていた(笑)。
 刑事がバーのママと恋仲になってはいけない法など無いが、普段の行動に問題が多いとこんな事までネタにされて突っ込まれるという好例(笑)。
 やっさんは自分が平の巡査である事に誇りを持ち、周囲も娘達も理解しているが、通常は独断専行が多い故に昇進にまったが掛かる、と見られてしまうだろう。

第三位
西岡亮介(特捜最前線)
演:蟹江敬三
所属:警視庁第四課→警視庁四課特別室室長
階級:不明
 彼の妻・さくら(長野智子)の父は蒲生警視。ヤクザを泳がせるためとはいえ、警察内部の情報を独断で相手に漏らしたこともある。
 蒲生さんとの関係から神代課長と密に通じ、悪徳代議士と癒着の振りをして官界と警察の癒着の一網打尽の為に尽力していた事が最終回に分かったが、十数年に渡るその潜入には相当な危険が伴っていたことは想像に難くない。
 用心深い悪徳代議士を信用させる為には表面上違法もあっただろうし、中途にして潜入の目的が発覚していれば全ての罪を背負わされた上に消されていてもおかしくなかった。
 それを予見していたのか最終回にて死地に赴こうとした神代課長は直前で同行の約束をしていた西岡をすっぽかしている。


第二位
橘剛(特捜最前線)
演:本郷功次郎
所属:特命捜査課→特命捜査部特命捜査一課課長
階級:警部
 特命捜査課の中でかなり年配なのだが、その割には血の気も多く、ヤクザを信用させるためとはいえ桜井さんを狙撃までしている(勿論急所は外した)。
 故郷長崎に妻子を捨ててきたという、家庭的に不遇な面々の多い特命課の中でも異彩を放つ不幸を背負っている。
 刑務所に囚人に化けて潜入した際も部屋長を袋叩きにしたり、明らかに爆弾の在り処を知っていた容疑者には拷問にかけてまでいる(時限装置のタイムリミットの関係から緊急避難的措置として、リトルボギーは許容範囲内と見ている)。
 階級的に課内で神代課長に次ぐ地位にあるため、現場での陣頭指揮が多い事もさんが急な無茶を求められる一因になっていることも押さえて起きたい。


第一位
桜井哲夫(特捜最前線)
演:藤岡弘
所属:特命捜査課→特命捜査部特命捜査二課課長
階級:警部→警部補(降格)
 特命課内発砲率ナンバー1!
 唯一の降格経験者!
 帰国直後はさんを呼び捨てにし、独断専行多し!
 麻薬事件では鬼と化し、殴る・蹴る・撃つ!
 重要証言を得るためにシャブ中毒の女性を自分に惚れ込ませようとまでする!
……これ以上何を書けと?(笑) だがこれらの暴走の裏に弱き者を守る為の我が身を省みない行為であったことや、自らの無茶に協力してくれた女性のために刑事の職を捨てようとしたことも桜井さんにはあったこと忘れてはいけない。
 おやっさん、こと船村一平刑事(大滝秀治)はある事件で自らの疑惑に沈黙する桜井さんの事を紅林さん(横光克彦)以下の若手刑事達にこう云った事がある。
 「君たち、あの桜井君が云い訳するのを見たことがあるかい?信念から出た行動には云い訳なんてしないものなんだよ。」
と。桜井さんの無茶の裏には彼特有の信念と優しさがあるのだ。そう、この一位のランクインは褒めているのだ

ランキング担当:リトルボギー

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