忘れ去られた設定達

忘れ去られた設定達

 シルバータイタンは特撮を愛する。それは現実の世界、自分達の夢見てきた過程の叶わなかった夢を次世代を担う子供達に見せるべく夢と理想を託した物だからである。それゆえにいい加減な設定には腹が立つ。
 否、正確にはいい加減な設定というより、いい加減に扱われた設定、と言えるだろう。生まれ出でたはいいがうやむやの内に忘れられたり、後から出てきた相反する矛盾した設定が何の説明もなく扱われることである。
 その最大の原因はクールの変わり目ごとの梃入れにある。視聴率命のTV放送では新クールを迎えるに当たって視聴率アップの為に必要なものは加え、不必要なものは切り捨てられる。その姿勢を非難する気はさらさらないが、その為に捨てっ放しにされる設定や、以前の設定に矛盾する設定がなされるのは如何なものかと思われる。
 新たな良き設定が加わるのはいいことである。そこでこのコーナーではいい加減に扱われた設定、そしてそれをきっかけに生まれたのかを見ていきたいと思う。



ライダーガールズ
仮面ライダーを彩る存在である。見せるものである以上子供番組でも色気は欠かせない(笑)。真樹千恵子、島田陽子(現揚子)、山本リンダ、中田喜子、小野ひずる、松岡まり子、岡田京子、田中由美子、田口あゆみ、井上明美、高野槇じゅん、上野恵(現深山凛)…。時に放しに彩りを持たせ、時にライダー達とロマンスを咲かせ、時に人質要員であり(笑)、稀に頼もしい戦力である…と、そのレゾンデートル(存在意義)は枚挙に暇がない。何といっても男臭いだけの世界は余程限られたジャンルでのみ成立するわけで、人数・年齢はともかく女性の存在は重要である。
 それゆえに理由なき退場には我慢できないものがある。「仮面ライダー」では第1クールに緑川ルリ子(真樹千恵子)、野原ひろみ(島田陽子)の2名だったのが、第2クールに入るとルリ子はショッカーの別計画を負って欧州に飛んだ本郷猛(藤岡弘)の後を追って、自らも欧州へ飛び、立花藤兵衛(小林昭二)が経営する喫茶アミーゴは立花レーシングクラブとなり、ひろみの紹介でユリ(沖わかこ)、ミチ(中島カツミ)、マリ(山本リンダ)がクラブのメンバーとして加わり、これが「ライダーガールズ」の言葉が生まれる元となると同時に、準レギュラーのいい加減な扱いの魁ともなった。

 まず仮面ライダー産みの親の娘であり、本郷とロマンスをさかそうとしていたルリ子なのに渡欧以降が語られることはなかった(中経出版 「超科学分析 仮面ライダーが面白いほど分る本」にはルリ子はウィーンに留まったこととその理由が記載されている)。またライダーガールズではないもののバーテンの史郎(本田じょう)も第2クール開始2週で理由もなく姿を消す。
 これを皮切りに理由なき入れ替わり立ち代りがライダーガールズ及び子役で連発する。第40話でスイスで本郷の助手をしていたエミ(高見エミリー)、ミカ(杉林陽子)が加わり、第53話の本郷の復帰後最初の事件をきっかけとしたトッコ(中島真智子)の加入、第70話より少年ライダー隊の成立に先駆けてヨッコ(中田喜子)、チョコ(ミミー萩原)の参加、という風に参加にはそれなりのきっかけがある。この中で一番息が長かったのはユリで、彼女と最後の加わったメンバーであるヨッコ、チョコの3名が最終回まで登場していた。そしてルリ子同様にひろみ、マリ(第39話で退場)、ミチ(第25話で退場)、ミカ(第52話で退場)、エミ・トッコ(第68で退場)達の退場理由と後日譚が語られることはない。

 後番組を見ると、「仮面ライダーV3」では珠純子(小野ひずる)が、「仮面ライダーアマゾン」では岡村りつ子(松岡まり子)が、「仮面ライダースーパー1」では草波ハルミ(田中由美子)がヒロインの地位を独占したので順当に扱われていた。「仮面ライダーX」、「仮面ライダーBlack」、「仮面ライダーアギト」では女性の登場が少ないこともあり、順当だったし、「仮面ライダーストロンガー」の岬ユリ子(故岡田京子)は説明不要だろう。「仮面ライダーBlackRX」、「仮面ライダークウガ」、「仮面ライダー龍騎」は全てのレギュラーが個々人の配役に相応しい扱いを受けている。ただ、その中にあって、唯一小首を傾げてしまうのが「仮面ライダー(スカイライダー)」である。

 「仮面ライダー(スカイライダー)」にもライダーガールズの交代があった。初期メンバー叶ミドリ(田中功子)、ミチ(伏見尚子)、ユミ(巽かおり)の内まず、第16話でミチが理由なき退場をし、続く第17話でミドリとユミがゼネラル・モンスター(堀田真三)の爆撃を受けて全治6ヶ月の入院を余儀なくされ、翌18話より小沢アキ(江口よう子)、伊東ナオコ(鈴木美江)の二人の新メンバーが加わる。勿論子の退場には理由があり、新たな女性が加わって話が華やぐのは結構なのだが、問題はその後の二人である。
 二人の内、ユミは第33話で退院して復帰する。だが、ミドリは全く無視される。ミドリは第1話から登場した(ミチは第2話、ユミは第3話から)ライダーガールズの最古参でライダー産みの親・志度博士(田畑孝)の助手であり、最後まで登場した叶茂(白鳥常視)の姉であり、ライダーガールズ中最も重要な女性キャラと取れなくもないのに、このいい加減さはどうしたことだろう?どうしても田中氏が復帰できない事情があったのなら、私が制作陣なら「怪我が回復したので、日本は新メンバーに任せ、自らは師事していた志度博士を手伝いに海外に飛んだ。」ということにするのだが、如何だろうか?
 ともかく、レギュラーを粗略に扱わないで欲しい。もし「水戸黄門」で疾風のお娟(由美かおる)が理由なき退場をしたら、TBSにどれだけ抗議の電話がくるか、ということを制作陣には想像していただきたい(笑)。


再生怪人1−不自然な再登場
再生怪人の悲劇についての詳細は同房の「菜根版戦闘員VOW」を参考にして頂きたいのだが、再生怪人がいい加減に扱われていることに就いて、ここでは戦闘力ではなく、そのメンバー構成に見てみたい。
 一口に怪人といっても千差万別である。ライダーの顔見世的に呆気なく敗れる奴、第1話などで主人公達の身内や恩人を抹殺する役、組織内のホープとしてライダーを苦しめる猛者、ととても一口では語れない。

 そこで問題として提起したいのが、幾度も再生されて然るべき者(例:ショッカーのゲバコンドル)もいれば、その存在・死に重大な意見合いを持つゆえにあっさり甦って欲しくないものもいる。
 例えば劇場版「仮面ライダー隊ショッカー」の再生怪人軍団の中に蜘蛛男がいる。蜘蛛男についてはこのコーナーを読むほどの人には説明は不要だろう。彼はこの劇場版に先だって、第13話でも復活している。だが、安直に過ぎないだろうか?
 蜘蛛男は本郷猛にとって恩師緑川弘博士(野々村潔)を惨殺した怨敵であり、本郷を手術室へ拉致した憎んで余りある相手である。シルバータイタンが本郷の立場なら他の改造人間を無視してライダーキックを放ちに走りかねない。復活するのはいいが、その扱いには留意して欲しい。
 同様に見ていくと、ゾル大佐(故宮口二郎)の正体である狼男、「仮面ライダーV3」の第2話でWライダーと供に洋上に消えたカメバズーカ水城姉妹(美山尚子)を殺した鉄腕アトラス、アポロガイストに殺されて深い恨みを持つであろうアキレス(さすがにこの場合はアキレスが途中で裏切ったが)、途中で人の心を取り戻し、ゼネラル=モンスターを倒さんとして返り討ちに会った悲劇の女性が正体のサソランジン、そのゼネラル=モンスターの正体・ヤモリジン等が劇場版や再生怪人による大攻勢の際に、他の有象無象の再生怪人と同じ没個性的な存在に成り下がっているのは、個々の怪人を重視してきた視聴者に失礼というものである。

 再生怪人がいい加減に扱われていることに関しては他の観点でも論述したいが、ここではまず、「そのメンバー構成に少しは気を遣ってくれ。」と言って締めくくりたい。


V3逆ダブルタイフーン
 仮面ライダーV3には「26の秘密」と並んで「4つの死の弱点」が存在する。その4つの内唯一明らかになっているのが逆ダブルタイフーンである。
  V3の変身ベルトはWタイフーンと呼ばれている。それは取りも直さず彼の産みの親である仮面ライダー1号の「技」と2号の「力」を生む二つの「タイフーン」が内蔵されている為である。いわばV3の能力の源であり、この二つのタイフーンを逆回転させる事でV3の持つ全エネルギーを放出し、巨大な竜巻を発生させ、それにより膨大な砂煙をあげたり、岩石を砕いて洞窟をふっ飛ばしたり、多勢の敵を粉微塵にするなど、V3の全エネルギーに恥じないパワーを見せた。
 勿論それほどのパワー−何と言ってもV3の全エネルギーを使い果たすわけだからV3はその後3時間の変身不能を余儀なくされる。当然不用意に逆Wタイフーンを用いれば、そしてその後のV3の状態が敵に悟られれば、風見志郎は只の人間として改造人間と遣り合わなければならないことも充分に考えられる。率直にいって話を盛り上げる素晴らしい設定である!この逆Wタイフーンの存在は絶賛したい。
 そしてそれゆえに、だからこそこの設定がいい加減に扱われるのは我慢ならない。第37話、第46話でV3は危地から脱出する為に逆ダブルタイフーンを発動させるのだが、何事もなかったかのようにV3として戦い続けるのである
 また最終回では特殊金属の粉末に閉じ込められた時は逆Wタイフーンではなかったものの、Wタイフーンをフル回転させ、「V3の全エネルギーを放出させて脱出だ。」と逆Wタイフーンの発動に等しいことを言っていた。一応、「逆Wタイフーン」の呼称がなかったので、V3の変身体を保っているのはいいのだが、全エネルギーを放出したにしてはぴんぴんした状態で最終決戦に挑んでいたことには疑問が残る。

 一応最後にフォローを入れておこう。第15話の最後でナレーション(中江真司)はV3に「いつの日かその弱点も克服するのだ。」と呼びかけていた。人間誰しも弱点なんて持ちたくない。WライダーがV3に4つの弱点を教えたのも、用心を促すと同時にその克服を命じることもあっただろう。V3=風見志郎が自らを鍛えることでその弱点を克服していた、と考えてやることができなくもない。


佐久間ケン
 川島健演ずるこのキャラクターはインターポールのデストロンハンター5号で、1号から6号までのメンバー(全員日本人)と供に本部パリからやってきて「仮面ライダーV3」の第29話で初登場し、第30話ではデストロンの改造人間製造工場の爆破に成功した。そして佐久間は風見を「先輩」と呼んで慕い、第36話まで登場するのだが、その扱いは佐久間を含めて不遇である。

 先のデストロン改造人間製造工場の爆破を巡って、暗号解読を巡って4号、6号の二人がカメラモスキートに殺され、爆破成功直後に駆け付けたドクトルG(仙波丈太郎)のために1号から3号の3名が殺され、ケンは形見の時計を持って一人残された身で悲嘆に暮れていた。
 ケンはその後も風見と共闘するも、そのカッコ良さ、格闘能力、胆力のいずれにおいても先の「仮面ライダー」におけるFBIの特命捜査官・滝和也(千葉治郎)程のステータスを得ることができず、ライダー1号、2号が帰国した第33話・第34話の不登場にも、第37話以降の退場にも一切の説明はなかった。

 順当に考えるならインターポールの命令でパリに帰還した、と見られるが、説明がないことには結局推測の域を出ることはできず、納得の行かない思いを引き摺らなければならない。何とかしてくれ制作陣!!


GOD総司令
 数多くの組織の中にあってうやむやにされた首領として極めて稀有な存在である。ショッカーからデストロン、そしてブラックサタンからネオショッカーまでの首領、バダン総統、クライシス帝国皇帝と言った各組織の親玉の大半を納谷悟朗氏がその声を当てたわけだが、この「仮面ライダーX」のGOD(Government Of Darkness)の首領であるGOD総司令の声は阪脩氏が当てている。
 このGOD総司令は作中で判断する限り、その姿を見た者は秘密警察第一室長アポロガイスト(打田康比古)のみである。そしてそのアポロガイストの二度目の死を最後に、キングダーク偏に入るや総司令はその存在が見られなくなってしまう。
 巨大幹部キングダーク(声:和田文夫)が首領の如く振る舞い、そしてそのキングダーク体内でこれを操っていた呪博士(神敬介(速水亮)の父神敬太郎(田崎潤)の親友)の死で「仮面ライダーX」は完結している。

 呪博士が「わしがGOD」だと言っていたことから呪博士=GOD総司令と見る向きもあるが、多くのマニアがこれに異を唱えている。声優の違いもあるが、第34話でキングダークがRS装置を完成させたタイガーネロに「お前をGODの将軍に推薦しよう。」と言っていることから、キングダークの上の存在が暗示されている。
 そもそもGODは当初、従来の組織の様にマッドサイエンティストの集まりではなく、日本転覆を狙って東西両大国のリーダー同士(当時の世相から考えると米大統領とソ連書記長か?)が水面下で手を握って組織したものということになっている。
 となると最終的なGODの最高権力者は日本人では有り得ない。そしてその組織性を考えると本当の親玉を明らかにするのは下手すると国際問題になりかねない(笑)
 架空の世界の話でも実在する国の代表を巨悪にするのは相当な困難が伴う。そう考えるとGOD総司令の正体がうやむやにされ、後にデルザー軍団大首領にその黒幕役が託されたのもある意味必然だったかもしれない。だが「仮面ライダーX」だけを見れば到底納得はできない。一つの作品としての独特の価値観の為にも後番組で苦しい言い訳をしなければならない事態は避けて欲しいものである。
2004.9.14追記
 このサイトを見たHさんという方より指摘がありましたので、追記します。まずキングダークの声優の名に誤りがありました。失礼しました
 HさんはGOD総司令と呪博士を別人としています。Xライダーとの戦いの途中で指揮権を呪博士に譲渡し、自らは「全能の支配者」=ゼロ大帝となって、新組織・ガランダー帝国とその下部組織ゲドンの編成に勤しんだとの仮説です。
 GOD総司令と全能の支配者の声が同じ阪脩氏の物である事がHさんの根拠でシルバータイタンはこの仮設を支持します。そしてこれをベースにシルバータイタンも一つの仮説を立ててみました。
 それは「仮面ライダーストロンガー」の最終回での岩石大首領の台詞で、ショッカーからデルザーまで全ての組織を自分が裏で糸引いていた事へのカミングアウトにGOD総司令やゲドンの十面鬼が納谷悟朗氏の声でない事に対するマニアの突っ込みに関してですが、やはり同一人物で問題ない。というのがシルバータイタンの見解です。
 根拠は「仮面ライダーアマゾン」の最終回です。K○K団の様な格好で姿を表した全能の支配者のヴェールをアマゾンが剥ぎ取るとゼロ大帝(中田博久)が姿を現したわけですが、当然声も阪氏から中田氏に変わります。つまり大首領が幾つもの声を持っていてもおかしくないと言う事です。
 考えてみれば、一つ目、骨、変な博士、鬼、虫と言った影武者を幾つも用意したあの首領が声に関して一つで通したと考える方が不自然です。
 Xライダーとアマゾンライダーは「仮面ライダーストロンガー」の第36話で始めて顔をあわせていますが、Xライダーがアマゾンを一目見るなりその名を呼んだことからも互いにその存在は認識していたと見えます。となると1号〜V3当たりが仲介したと見られ、独自にデルザーなどの組織と戦ったり、他のライダー達と交流を持つ中で、自分達の戦った総司令や支配者が仮の姿で、その裏にいた何者かの声(納谷悟朗)を聞き、その声を「GOD」や「ゲドン」と認識し、最終回での彼らの台詞となったのではないか?と言う事です。勿論あくまで仮説ですが……。


モグラ獣人
 記念すべきライダーに味方した最初の怪人である。その味方になった過程、直接戦闘に関わらずともモグラとしての能力を活かした諜報係としての活躍、アマゾン(岡崎徹)では表現できないコメディー性、涙誘うその壮絶な最後、周囲の悲しみぶり……これでもう少し強くあってくれれば非の打ち所は全くない!そう、モグラ獣人の生前とその死については…。

 本来なら論述しなくても良かった、他の設定に比べればかなり活かされてもいるし、その死後まで触れるのは我ながらイチャモンをつけているようで心苦しいのだが、シルバータイタンはモグラ獣人とそれを巡るドラマが好きだったからこそ、敢えて苦言を呈したい。
 第24話でキノコ獣人の黴のために命を落としたモグラ獣人の墓の前で静かな怒りと悲しみを漲らせていたアマゾンは無言のままガランダ−帝国打倒をその霊前で誓っていたのだが、だからこそガランダ−帝国打倒後にモグラ獣人の墓前にその報告するシーンが描かれて欲しかった物である。同じことは「仮面ライダーストロンガー」の電波人間タックル・岬ユリ子の戦死についても言える。
 勿論上記のことはシルバータイタンの個人的願望である。だが、同じ願望を抱く人間は多いと思う。「仮面ライダーアマゾン」は俗に言う「TV局の腸捻転」と呼ばれる事情の前に急な終了を余儀なくされたわけで、その事情から終盤に詳細な結末を求めるのは酷なのも承知しているつもりである。
 だが、くどいが好きだからこそ敢えて、「描かれて欲しかった。」と申し上げたい。


エレクトロファイア
 仮面ライダーストロンガーは改造電気人間である。メイン必殺技であるストロンガー電キックを初め、電パンチ、電チョップ、電タッチと言った体術に関連する技、そして電気の特質を活かした電ショック、電磁バリア、エレクトロウォーターフォール、エレクトロサンダー、電気ストリームの様に感電や雷撃・磁力を武器としたものである。
 技が豊富=一度きりの登場に終わる技が多いのはある意味必然のことだが、頻出しながらいい加減に扱われた技がストロンガーにある。それが表題のエレクトロファイアである。
 エレクトロファイアは別称「電火走り」とも呼ばれている。ストロンガーが左腕を斜め上に挙げ、左手首に右手を交差させて電気エネルギーをチャージさせ、その右拳が足下の地面を打てば一直線に電気が地面を走り、線上及びその近辺にいる奇械人や戦闘員に電撃を与える、という技である。
 技としての威力をそれほど強くなく、戦闘員を蹴散らしたり、奇械人の戦意を殺いだりするのに使われることが多い。それゆえにこの技がとどめとなることはなく、怯んだところにストロンガー電キックなどをうち込んで決着となるのが一般的である(例外的にオプション技とも言える「水中エレクトロファイア」が荒ワシ師団長を倒している)。
 ボクシングで言えばジャブとも言えるこの技はそれゆえにジャブの如く頻発し、戦闘員の撃破の見映えや、強敵に通じないことでその強敵の存在感を強めるのにも役立ってきたし、歴代ライダーが全員集合した時にも電気人間であるストロンガーのアイデンティティを高めたことも見逃せない。

 さて、これほどストロンガーに貢献したエレクトロファイアであるが、ストロンガー放映中はともかく、「スカイライダー」を初めとする後番組では何故か「電ショック」と呼ばれてきたし、特番の「仮面ライダーZX」では4tトラックを丸ごと破壊したり、カマキロイドを一撃で倒したりしていて、明らかにいい加減に扱われている。特に特番ではその破壊力までもが無意味の増大している。

 エレクトロファイアこそはライダーマンにとってのロープアーム、Xライダーにとってのライドル、アマゾンにとっての大切断とも言える「ストロンガーここにあり」的な技である。制作陣もその重要性を理解してるなら技の呼称ぐらいちゃんとして欲しいものである。


超電子ドリルキック
 改造電気人間ストロンガーはその能力では強力なデルザーの改造魔人に抗し得ない、と考え、正木洋一郎博士(小笠原弘)の申し出を受け、超電子ダイナモを内蔵する際改造手術を受け、1分間だけ改造超電子人間になるチャージアップを可能とした。
 チャージアップしたストロンガーは額の前立ての色が銀色になり、胸部プロテクターの中央部にも銀ラインが横に入り、外観的に明らかな変化が生じる。
 そして改造超電子人間と化したストロンガーが繰り出す技が、超電子ドリルキック、超電三段キック、超電稲妻キック、超電急降下パンチ、超電ジェット投げ、超電逆落としなどである。
 その中にあって、超電子ドリルキックこそは改造超電子人間の最初の技であり、ドクロ少佐、岩石男爵の頭をすっ飛ばし、ジェネラル=シャドゥをグロッキーにし、ネオショッカー怪人クラゲロンを倒した。数多くのバリエーションの一つとして消え易いキック技の数々の中にあって、たいした存在感であり、それゆえ改造超電子人間を代表する技と言える。
 それゆえにこの技がいい加減に扱われたことに対するファンの怒りは大きい。初めはオオカミ長官に放たれた際に技の呼称が「超電スクリューキック」とされたことである。まあ、これは別にドリルキックの別称と考えれば目くじらを立てるほどの事はない。が、「仮面ライダー(スカイライダー)」の第21話に客演した際にストロンガーはこの技をチャージアップせずに放ったのである。
ドリルキックはその名の通り、体を錐揉み回転させながら放たれる。第21話で放たれた際のストロンガーの錐揉みの映像は過去のものと全く同じアングルであったものの体色はチャージアップ前のものであり、明らかに過去の流用ではない。
 また、ストロンガーはマシーン大元帥の罠に落ちたライダー1号、2号を救出する際に敵アジトの扉をドリルキックで破っているが、この時はチャージアップしておらず、呼称も単純に「ドリルキック」である。
 だからスカイの第21話でもちゃんとチャージアップをさせるか、技の呼称を「ストロンガー電ドリルキック」程度(?)に留めておけば、多くのファンの非難を浴びることはなかったのである。
超電子ドリルキックの再登場に喜んだファンは多い。多くの超電子技の名かでこのドリルキックが選ばれたのも制作陣がストロンガーの技としてのこの技の存在感を認めたからこそであろう。なればこそいい加減に扱って欲しくなかったのものである。
2004.9.14追記
 このサイトを見たHさんという方より指摘がありましたので、追記します。
 早い話、間違いの指摘です。既に修正済みですが、チャージアップ後のストロンガーの超電子技はその呼称の大半が「超電」と冠する物で、幾つかの技について「超電子」と表記するなど、正確さに欠けていました。
 また「超電スクリューキック」と称して放った相手を当初はジェネラル・シャドゥとしていましたが、修正してあるようにオオカミ長官の誤りです。
 深くお詫びすると共に、特撮を愛好する人がこのサイトを見てくださっている証を示して後々への戒めとしたく存じます。


「風見さん」
 ライダーマン結城丈二は初めデストロンの大幹部候補だった。ヨロイ元帥の為にデストロンを脱走した彼だったが、偽りのものとはいえデストロン首領の恩義までは簡単に捨て切れず、ヨロイ元帥に復讐は誓ったものの、デストロンと言う組織及び首領までは簡単に敵視できずにいた。
 そんな背景があった結城が脱走当初に風見志郎と共闘するわけがなかった。結城は当初風見をヨロイ元帥打倒の邪魔者としか見ず、はっきりと彼との共闘を拒否し、敵対行動も取った。言わば相手は敵なのだから結城が風見を呼ぶときは「風見。」と呼び捨てである。
 幾つかの戦いとなし崩し的な共闘、婦女子の救出を経て、ようやく結城もデストロンの悪を知り、風見志郎との共闘を約束した。
 相変わらず長い前置きで恐縮だが、そんな経緯がある結城が風見を呼ぶときは前述通り、「風見」と姓の呼び捨てである。
 ところが、「仮面ライダーストロンガー」第38話でV3の第51話で消息を絶っていた結城が再登場を果たし、富士川ダムに風見志郎と供に久々のタッグで調査に向かった折に結城は風見に敬語を使い、敬称をつけて「風見さん」と呼んでいた。
 これにはV3に親しんだ多くの視聴者が面食らった。いくら和解したとはいえ、風見は結城に対して優位に立ったわけでもない。ましてライダーに変身するやV3とは完全なタメ口で、その後の番組でも後輩ライダー達に対しても偉そうだった(もっともライダー体時には互いにタメ口のことが多いが)。
 一応考えられることとして、根が上品な結城丈二が風見志郎が先輩であることを知って、敬意を払う様に努めている事ぐらいだが、風見(昭和25年5月5日生まれ)と結城(昭和25年11月3日生まれ)は学年的にもタメで、V3がライダーマンに対してライダーとして先輩であることを考慮しても1号と2号の関係を見てもこれは説得力に欠けると思う。
 シルバータイタンもタメ口を聞いていた人に敬語を使うようになった例がないわけではないが、概して相手が自分よりかなり年配であることを知った場合か、組織内で相手が自分の上に就いたためにその立場を尊重して、組織内で敬意を払うようにしている場合に限られる。対人関係が変化に伴う接見態度の変化に反対はしないが、納得の行く説明は欲しいものである。
2004.9.14追記
 このサイトを見たHさんという方より指摘がありましたので、追記します。
 HさんはZX特番での勇気の風見に対する態度が元のタメ口に戻っていた事を指摘して下さいました。
 そこからシルバータイタンは類推したのですが、間接的にデストロンの悪事に助力していた事から罪に意識に苦しみつつ、仮面ライダー4号として立つことを決意した結城が、その証に名付け親である風見に師事する意味で、礼儀を尽くしていたのが、あの気さくな風見が時間の流れとともに元の二人の関係に戻る事を要請して、特番時にはタメに戻ったと見るのはいかがでしょうか?


再生怪人2−姿と名前
 再生怪人とは悲しい存在である。大半が生前の特殊能力を失い、元の強弱に関係なく、戦闘員並の戦力にしか扱われない。だが、彼等とて一度はライダーを苦戦させ、人類に恐怖を与えた存在が少なくないのだ。能力は仕方ないにしても容姿や名前に相違が生まれるのはライダーの物語を盛り上げてくれた怪人達に失礼ではないか?と考えるのは私だけだろうか?
 その顕著な例が「仮面ライダーストロンガー」の最終回である。デルザー軍団大首領の復活宣言の下、サメ奇械人、奇械人アリジゴク、奇械人メカゴリラ、カニ奇械人、ブブンガー奇械人、荒ワシ師団長が復活し、ヨロイ騎士、磁石団長と供に6人ライダーとの最終決戦に挑んだが、こいつ等が極めていい加減に扱われていた。
 アリジゴク奇械人と奇械人メカゴリラはフルネームでは鳴く、「奇械人」が略されて、荒ワシ師団長は得物であるトマホークを持たせてもらっていなかったが、それよりひどいのがカニ奇械人とブブンガー奇械人だった。
 そもそもカニをモチーフとしたブラックサタンの奇械人は「奇械人ハサミガニ」である。「カニ奇械人」など存在しない
 名前が異なれば容姿も異なっていた。自称カニ奇械人の姿は奇械人ハサミガニの物ではなく、「仮面ライダーアマゾン」に登場したカニ獣人のボディーに右バサミがカマキリ奇械人の鎌、左バサミがハチ獣人の針になったものだった。名前も姿も異なるとはひどい話である。
 上記のカニ獣人よりほんの少しマシなのが、奇械人ブブンガーである。ブブンガーの首から下は奇械人ドクガランのものだった……
 はっきり言って子供及び視聴者をなめている。しかもこの最終回では最後の最後で歴代ライダー達のコマ送り回想シーンが出てくるのだが、アマゾンの回想にカニ獣人が、ストロンガーの回想に奇械人ブブンガーがしっかりと出てくるのである。
 観察力の鋭い人間が見ればこの最終回しか見なかったとしても間違いに気づき得る間違いである。アイデンティティーは大切にして欲しい。


志度博士
 この人も途中で姿を消し、そのまま忘れられた人である。とは言っても彼はましな方である。何といってもスカイライダーの生みの親であり、第一の協力者だったのだから、何の説明もなく姿を消した、というわけではない。
 ストーリー上、志度敬太郎博士は海外の「ネオショッカー対策会議」なるものに出席し、帰国時期不明、という理由で姿を消し、入れ替わり故塚本信夫氏演ずる第2のおやっさん・谷源次郎の活躍が始まったのだが、志度博士は結局帰ってこなかった…。勿論何の説明もなく消えたライダーガールズや多くの準レギュラーに比べればましなのではあるが、卑しくもライダーの生みの親である。
 ところが、この田畑孝氏の演じる志度博士は初めから途中降板が決まっていたのである。そもそも「仮面ライダー(スカイライダー)」でも故小林昭二氏演ずる立花藤兵衛の出演が企画された。しかし小林氏は事情によりこれを断り、代わりに後輩である塚本氏を推挙した。谷源次郎としての出演を了承した塚本氏だったが、当時出演していた他の番組との関係から第1話からの出演は不可能、とされ、その穴埋めとして、志度博士が存在したと言われている。
 がしかし、初めから決まっていたのなら志度博士の退場とその後日譚に少しは気を使えなかったのだろうか?忌むべき悪役キャラの方が海外に行っても帰国してライダーに倒されることを考えると何とも皮肉である。

2004.8.14追記
 志渡敬太郎博士を演じた田畑孝氏は「仮面ライダー(スカイライダー)」の放映中に鬼籍にはいられていた事をシルバータイタンはつい最近知りました。事情を知らずに田畑氏の再登場のなかった事に文句を言っていた事は反省しています。
 但し、それならそれで故人への敬意からも志渡博士に対する言及だけでも欲しかったものではありますが。


筑波ファミリー
 概してライダー及びその周辺の登場人物は家庭的に不遇である。家族仲はいたって良く、そんな温かい家庭と死に別れているのが大半である。
 登場時に両親が既に死亡していた例としては、本郷猛・一文字隼人(佐々木剛)・結城丈二・アマゾン・城茂(荒木茂)・沖一也(高杉俊介)・村雨良・南光太郎・五代雄介(オダギリ・ジョー)・津上翔一(賀集俊樹)・葦原涼(友井雄亮)・城戸真司、片親が神敬介・不明が氷川誠(要潤)・乾巧(半田健人)である。
 連載開始時に両親が健在だった唯一の例が風見志郎で、彼の両親と妹が第1話でデストロンに惨殺されたのはこのコーナーを読む人にとっては常識だろう。
 さて、ここで話題になる筑波洋の家族だが、かなり特殊である。第1話にて彼の家族は3年前に事故死したことになっていた。ところが最終回3部作で弘の両親はネオショッカーに車ごと爆殺されたことになっており、しかも実際には事故はネオショッカーによる偽装で両親は拉致され、父はネオショッカーへの協力を断固として拒否したために見せしめとして氷漬けにされて殺されており、母は大首領の召使にされていて、スカイライダー、2号、ストロンガーによって救出されたものの大首領の放ったドクロ暗殺隊によって射殺されてしまった。
 「事故死」が何の説明もないまま「ネオショッカーに殺された」ことになり、墓参りしていた洋にも驚かされたが、これはまだいい。
 ネオショッカーは筑波夫妻の車に爆弾を仕掛けて爆殺したことになっており、車両事故が後々の調査で他殺であったことが判明した、という展開があったとしても然程不思議ではない。

 だが、聞き捨てならない台詞が第1話にある。第1話でネオショッカーに追われていたところを洋に助けられた志度博士は洋を巻き込みたくない一心から自分に関わることを戒めた。
 「君の家族まで危険に巻き込むことになる。」という志度博士に洋は自分が天涯孤独の身でその気遣いが無用であることを述べたのだが、その時に洋は「ご安心を。3年前に事故で両親と妹を一度に失って、家族はいません。」と言っていた。
 妹は何者だったのだろうか?最終三部作で両親の爆殺されるシーンが出てくるのだが、車に乗りこんで、ネオショッカーの仲間入りを強要され、拒否して、爆弾を仕掛けられ、爆発する一連の流れに筑波夫婦以外の同乗者はついぞ見られなかった。さすがにこればかりはシルバータイタンにもフォローのしようがない
2004.9.14追記
 このサイトを見たHさんという方より指摘がありましたので、追記します。
 Hさんの推測では「洋に妹はいた。」として、以下の様に推測されています。
 洋の父である筑波博士に対して、ネオショッカーに協力しないと家族に害が及ぶ事を示すために事故に見せ掛けて妹を殺し、父も事故ではなく、殺害ではないかと思ったのを洋に話そうとして口ごもったのが親子の最後の会話のシーンではないか?と言う指摘です。
 それを参考にシルバータイタンなりに考えました。Hさんの父の口ごもりに着目した推論は見事ですが、余りに妹が最終三部作で無視されているので、「妹はいた。」と仮定して考えたのは、筑波博士夫妻が養女を貰おうとしていたのではないか?という考えです。
 筑波博士の親友の長沼博士も拉致されていた様に、偽装事故当時はネオショッカーによる科学者の拉致が相次ぎ、その中には筑波博士と知己の科学者の娘もいて、生存が望めない状態で残された娘を哀れんだ筑波博士が、その娘を養女=洋の義理の妹として迎えようとしていたのではないか?と考えてみました。
 周知の通り、筑波博士も偽装事故を仕組まれ、拉致されました。当然養女縁組は立ち消えとなり、洋は「事故」で両親と「妹」になる筈だった女性との縁を失うことで「両親と妹を一片に失った」という台詞を生んだのではないか?と言う事です
 些か強引ですが、どうでしょう?


再生怪人3−別組織
 再生怪人がいい加減に扱われている例に別組織の怪人が平然と出てくることがある、というものがある。ZXの特番ではバダンの怪人軍団の中にデストロン、ゲドン、ネオショッカー、ドグマ怪人が出ていたが、これには一応雑誌掲載時に説明があり、バダンは時空をある程度操ることができ、過去の怪人を取り込むことを可能としていた。
 だが、何の説明もないこともある。最初の例が「仮面ライダーストロンガー」の一つ目タイタンの葬儀で、このとき喪服を着た再生奇械人が参列したのだが、何故かGODのアリカポネが参列していた。
 また最終回ではデルザーの最終軍団として復活した怪人6体の内5体までがブラックサタンの奇械人だった。
 まあ、もっともこの場合はデルザー軍団の大首領がブラックサタンの大首領でもあったことが同じ話の中でカミングアウトされているので、まだよしとできる。
 もう一つ例を挙げると「仮面ライダースーパー1」の劇場版に登場した「ドグマ復讐兵団」なる再生怪人の集団の中にネオショッカーのクラゲロンがいた。ドサクサ紛れにいい加減なことをするな、と言いたくなる例と言えよう。
 この項目については若干のフォローが可能である。一言で言うなら全ての悪の組織に関して裏で糸を引いていた共通する存在が考えられる、ということだろう。デルザー軍団大首領は自らがショッカーからブラックサタンまで率いていたことを告白しており、ネオショッカー、ドグマ、ジンドグマはB52暗黒星雲を共通の故郷としている、と言う設定がある。
 バダンは大幹部暗闇大使がショッカーの地獄大使の従兄弟であり、怪人軍団を前にショッカーからジンドグマまでの全ての組織の名前を読み上げていたし、漫画「仮面ライダーSpirits」によるとショッカーからジンドグマまでの全ての悪の組織とバダン相当は関連があったようである。だから別組織の怪人が出てくるのは問題はないのだが、一言の説明ぐらいあってもいいのではないだろうか?


ゴルゴムの崩壊前後
 「仮面ライダーBlack」は戦闘員を廃した最初のライダー番組であり、その意気込みが番組全体に反映されてか、数多くの登場人物を大切にした。
 インターポールのはみ出し捜査官・滝隆介(京本政樹)は2回、幼少の頃にゴルゴムに捕えられ、成長を止められ、ゴルゴムへの協力を強要されたものの正義の心を失わず、子供の体に大人の心で戦ったゴルゴム少年戦士は3度に渡って南光太郎と共闘した。一人一人にこれと言った名前が配されていない事を考えるとこれは特筆物である。
 ロードセクターを開発した大門博士に関連した話は2回あり、また悪の側でもゴルゴムメンバーの黒松、大宮、坂田等が度々登場しては話に特色を添えていた。同番組のこれらの姿勢は高く評価できる。怪人でも登場人物でもレギュラーを増やすのは簡単でもその全てを活用するのは多ければ多いほど困難である。準レギュラー未満の一回きり以上にする事で少ない出番が帰って生きた存在にしていることが見事である。

 それゆえに各登場人物の結末について大半が描かれていないことが残念である。レギュラーである紀田克美(田口あゆみ)、秋月恭子(井上明美)はライダーがシャドームーンに一度敗れて日本がゴルゴムの支配化に入った際に光太郎の言葉に従って米国サンフランシスコに渡ったのだが、ライダー生還の報に接しても自分達の存在が光太郎の決心を鈍らせることを恐れて帰国を断念したシーンのみが描かれた。
 ゴルゴム壊滅後は帰国しても良さそうのものだが、彼女達のその後は後番組「仮面ライダーBlackRX」においても語られなかった。光太郎の回想で懐かしまれていたのみである。
 前述の滝隆介やゴルゴム少年戦士もライダーがシャドームーンとの決戦に挑む前にその出番を終え、その後は語られていない。ゴルゴムメンバーも話の途中で黒松教授が剣聖ビルゲニアに殺された以外に坂田や大宮がどうなったかは語られていない。
 一度切りの登場の人物にも大きな意義を持たせていた番組だけに大きな話の流れの中で多くの人物の行く末にスポットが当たらなかった事は非難する気持ちがある一方でただただ残念であるとの念が絶えない。


バトルホッパーとロードセクター
 「仮面ライダーBlack」には2台のマシーンが登場した。バトルホッパーとロードセクターである。バトルホッパーはゴルゴム創世王のために製造された生体メカで、創世王の後継ぎである世紀王、ブラックサン(脱走して仮面ライダーBlack)・シャドームーン・剣聖ビルゲニア(吉田淳)が使用可能だった。自己修復機能と意思を持ち、最終回では喋りもした。
 一方のロードセクターはかつてゴルゴムメンバーであり、そこを脱走した大門陽一郎博士が設計し、その息子の元プロレーサー大門明が乗りこなせずに、その息子に乗りこなす訓練を課していたのを南光太郎(倉田てつを)が説得して譲り受けた者である。バトルホッパーよりスピードと破壊力に優れ、ハイテクコンピューターを搭載し、バトルホッパーに劣らぬ活躍を見せた。
 そんな2大マシンは最終回にもそれぞれの見せ場がある。バトルホッパーはシャドームーンに操られるもBlackの説得に自我を取り戻してシャドームーンを巻き込んで誇り高く散り、ライダーに礼を言って息を引き取った。
 ロードセクターは創世王を倒すのにライダーに呼び寄せられ、その突進は不首尾に終わったが、創世王の死と供に崩壊するアジトからの脱出に活躍した。
 納得いかない展開は後番組の「仮面ライダーBlackRX」に見られる。その第1話で南光太郎はクライシス帝国によって変身システムを破壊されて宇宙空間に放擲され、そこでキングストーンに太陽光線を浴び、仮面ライダーBlackから仮面ライダーBlackRXに生まれ変わった。この時にキングストーンから反射された光線は地上のバトルホッパーの残骸に降り注ぎ、そのエネルギー余波を浴びて、バトルホッパーはアクロバッターへと生まれ変わった。
 アクロバッターはバトルホッパー時代より喋る様になり、感情的にもなった。そしてRXがロボライダーになれば自らはロボイザーに、バイオライダーになればマックジャバーと変身し、光の車ライドロンと供に八面六臂の活躍をした。
 ここまで論述すればもう疑問は一目瞭然だろう。ロードセクターがどうなったのか一切触れられていないのである。ゴルゴム滅亡を機に親子孫の三代に渡ってロードセクターのために尽力していた大門親子に返還した可能性もあるが、前番組の最終回でバトルホッパーを失った南光太郎にとって残された足となったロードセクターを容易に手放すとは考え難い。アクロバッターが生まれ変わるまでは返還するとは思えないが、これまた推測の域は出得ない。
 ロードセクターの活躍に胸を躍らせたからこそ、その活躍が見られないことに某かの理由を明示して欲しかった。



忘れられなかった設定達

 幾つかの忘れられた設定について触れて来た。文章的には綺麗とは言い難いが、これもそれぞれの設定を好ましく思っていればこそである。好きだからこそ贅沢になったと見て頂きたい。
 そこで非難してばかりでは片手落ちなので、一度きりに思われた存在が再び活かされた例を好例として紹介しておきたい。

 それは「仮面ライダーBlack」第48話に出てきて、「仮面ライダーBlackRX」第4話に再登場したクジラ怪人の海底洞窟である。
 「仮面ライダーBlack」第46話に登場したゴルゴムのクジラ怪人はゴルゴムが人類の文明を破壊した跡、その残骸を海に捨てるつもりだあることを知り、故郷を汚すゴルゴムを裏切る決意をし、大怪人バラオム(高橋利道)に殺されるところをライダーに救われ、海へと帰っていった。そのまま故郷で静かに余生を送るかと思われたクジラ怪人だったが、翌47話でシャドームーンに敗れて戦死したライダーの死体が海に流されると翌48話にクジラ怪人が再登場してその遺体を住処である海底洞窟に回収し、一族に伝わる命をエキスをライダーに投与した。
 その力を得て翌49話に復活したライダーはクジラ怪人の助けを借りて地上に復帰し、最後の大怪人だロムを倒すが、翌50話でシャドームーンの放ったトゲウオ怪人のために手負いのクジラ怪人は殺された。
 翌最終回でそのトゲウオ怪人はライダーに倒されるが、特にクジラ怪人の仇討ちを叫ぶでもなく(「仮面ライダーアマゾン」でモグラ獣人がキノコ獣人に殺された際にはアマゾンライダーはキノコ獣人に対してモグラの無念を晴らす意思を露わにしていた)、クジラ怪人の「ク」の字も出てこず、シルバータイタンは多くの忘れられた存在と同様で些か寂しい思いをしていた。
 ところが意外なことに「仮面ライダーBlackRX」で海底洞窟は再登場した。前第3話で怪魔界を彷徨した際に南光太郎は元クライシス大学教授ワールド博士から光の車ライドロンの設計図をフロッピーディスクで託された(直後にワールド博士戦死)。光太郎は仕事を休んでまでライドロンの製作に打ち込んだが、設計図通りに作り上げたにもかかわらず、ライドロンは動かなかった。
 一計を案じた光太郎はかつて自らを蘇生させてくれたクジラ怪人の海底洞窟ならライドロンに命を吹き込んでくれるのでは?と考えて、ライドロンを移送した。そこで光太郎は洞窟に大願成就の折には二度と頼らないことを誓って、ライドロンに命の伊吹を吹き込むことを懇願した。
 祈りは通じ、その後海底洞窟は自らの役割を終えたかのように崩壊した。自らの命の聴きを救ってくれた海底洞窟は光太郎にとっても大きな存在だったろう。それが「命」という大きな者が関わったときにフラッシュバックされるのは必然であり、何とも嬉しい物である。一度きりと思われた物が絶妙に再生された好例として長く記憶に留めたい。



偉大なる「仮面ライダーSpirits」

講談社「マガジンZ」誌上で村枝賢一氏の漫画でTV放送が行われなかった仮面ライダーZXのリメイクとも言える「仮面ライダーSpirits」が2001年1月号より連載されている。村枝氏の見事なタッチで描かれる仮面ライダー1号・本郷猛から仮面ライダーZX・村雨良(菅田俊)は実演した俳優そっくりで、準主役とも言える滝和也を初めとする歴代レギュラーが誌面にて復活したことが往年のライダーファンを喜ばせている。漫画ゆえに既に鬼籍に入られた山口義豪氏や小林昭二氏や塚本信夫氏の演じた結城丈二・立花藤兵衛・谷源次郎が再び見られるのも嬉しいことである。
 だが、本作の魅力はキャラクターの復活だけにあるのではない。自身熱烈なライダーマニアである村枝氏の視点は極めて鋭く、描かれた歴代ライダーはファンにとって思いで深い技や設定を披露し、本作による魅力ある新たな設定も生まれている。ライダー1号、2号、V3、スカイライダー、スーパー1が敗北の屈辱と猛特訓の中で編み出した電光ライダーキック、ライダー卍キック、大回転スカイキック、梅花の型を出せば、ライダーマンはロープアーム、パワーアーム、ドリルアーム、ネットアームに加えて幻のマシンガンアーム、とあらゆるアタッチメント駆使し、Xライダーはライドルのスティック・ホイップ・ロープ・ロングポールの機能を生かし、アマゾンライダーはゼロ大帝を倒した最大の技・スーパー大切断で巨大化したトカゲロイドを切り裂き、ストロンガーに至っては決して二度は眼にする事がないと思われた最強の自爆技・超電子ウルトラサイクロンを放ち、多くのファンを狂喜させた。
 だが、村枝氏が私達を喜ばせてくれているのは技だけではない。先にシルバータイタンが挙げた「忘れられた設定」の数々に納得のいく、嬉しくなる復活を見せてくれた。逆Wタイフーン発動後の変身不能に苦しむ風見志郎、インターポールで本部長に昇進して遠くパリから風見に謝意を示す佐久間ケン、ストロンガーは久々に「エレクトロファイア」の技名を呼称し、チャージアップ後に「超電子ドリルキック」を放ち、結城丈二は風見志郎を「風見。」と呼び捨てにしていた。シルバータイタンが忘れられた多くの設定にそれなりのフォローを考えられたのもこの作品の流れによるところが大きい。
 くどいがもう一度言おう、非難の声が出るのもそれが好きだからこそである!親が子を愛すればこそ厳しく接する様に。本作の益々の発展を祈念したいものである


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