竹とんぼ

作詞 荒木とよひさ 作曲 堀内孝雄 編曲 川村栄二

解説 べーやんの40thシングルにして、同名の23thアルバムである『竹とんぼ』の1曲目にも収録。平成一〇(1998)年「はぐれ刑事純情派」Part11の主題歌。翌年には続編曲とも云える「続・竹とんぼ−青春のしっぽ−」もリリースされている。

 苦しい現状にあって、大空に飛ばした「竹とんぼ」「夕やけ 裸足で 追いかけていた」いたような幼き日を懐かしみつつも、それを糧に頑張ろうと云う姿勢が厳しい現実や生活の為に我慢に我慢を重ねる社会人の労苦を偲ばせる。

 注目すべきは主人公が友と供に―スマートとは云い難いながらも―自らを癒す術を知っており、苦しくともそれに屈しない姿勢を―例えそれが虚勢であっても―見せつける事ができている事である。
 前者を示す歌詞は「酒でぬくもりを わかち合えばいい」「胸の痛みなら わかりあえたから」であり、後者を示す歌詞は「涙よ お前に 負けた訳じゃない 背中が少し 淋しいだけさ」「時代よ お前に 負けた訳じゃない 心が少し 切ないだけさ」であろう。

 余談だが、道場主の好きな漫画家・宮下あきら氏の「天より高く(そらよりたかく)」に登場した医師・トクガワ(同漫画の展開から徳川家康の先祖に当たる原始時代の人物らしい)が第19巻にて「人生は友と酒と音楽と…。 それに比べたら名誉も金もハナクソじゃ」と呟くシーンがあるが、ダンエモンの中で見事にマッチングしている。
 当該作品はこの「竹とんぼ」の二年後に描かれた物だが、この曲の酒と友を愛し、供に語り合う所に全ての逆境を越える要諦がある点において奇妙でありながら心地良いフラッシュバックを味わった。
 
 時の流れは決して止まらず、そして過ぎ去った時が戻って来る事も決してない。だが同時に良き思い出が消える事もまた決してない。時に幼き日に遊んだ玩具にその時の純なる想いを重ね、その心を忘れまいとする事も大切だろう。
 過去を忘れないことと過去に囚われる事は別なのである。



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令和三(2021)年五月二五日 最終更新