総括 SchülerからLehrerへ

 数多いウルトラ兄弟の中で、何故にウルトラセブン=モロボシ・ダンだけがこれほどまでに「教え子」を持つのだろうか?他のウルトラマン達とて、決して「師」としての資質や、それに類する活躍が無い訳ではないにも関わらず。

 例えば、ゾフィー、ウルトラマンは長兄、次兄然とした佇まいがあり、帰ってきたウルトラマン・郷秀樹には坂田次郎、ウルトラマンA・北斗星司(高峰圭二)には梅津ダン(梅津明典)、ウルトラマンタロウ・東光太郎(篠田三郎)には白鳥健一(斎藤信也)、ウルトラマンレオおヽとりゲンには梅田トオル(新井つねひろ)という弟分がいて、タロウは光の国で武闘教官を務め、レオセブンの息子・ウルトラマンゼロの師匠を務めている。  決してLehrerとしての資質を持つのはセブン一人ではないのである。だが、初登場時にいきなり配下を持っていたのはセブンだけである。

 色々考察してみたが、結論を書けば謎で終わった。説得力の弱い推論しか出なかった。人格的なものを考えればすべてのウルトラ兄弟に資格があるし、立場的なものを考えればウルトラマンやゾフィーにLehrerとしてのカラーが無いのが分からなくなる。トレーナーとしての資質を見ればレオに対する鬼コーチぶりは目を覆いたくなる(苦笑)。
 またカプセル怪獣達がM78星雲に属する星々の生まれであることを思えば、どのウルトラマンがカプセル怪獣を持ってもおかしくないのにセブンだけであるのも変な話である。
 結局、ウルトラセブン=モロボシ・ダンだけが強いLehrerカラーを持つことに、シルバータイタン的に「これだ!」と云い切れるだけの推論は得られなかった。
 ただ、はっきり云えるのは、ウルトラセブン=モロボシ・ダンがLehrerとして、早期に他の追随を許さないだけの名トレーナー振りを確立し、更にそれを系譜立てたことは「見事だ!」の一言である。
 総括として、名トレーナーにして、偉大なるLehrerとなったダンが後進に受け継がせた事柄に触れて締めとしたい。
地球という星を巡るモロボシ・ダンおヽとりゲンの特殊な関係 「特殊な関係」と書いているからと云って、おかしな関係を想像しないで頂きたい(苦笑)。下手な兄弟以上の強い絆を築いたことを述べているのであり、そこには「地球」という一つの星が大きく関与している。

 ウルトラファミリーの面々はほぼ全員が地球に好意的で、常駐したものはまずそこそこの愛着を地球に対して持っているが、セブンレオは理由こそ違えど愛着に関しては他の兄弟を遥かに凌駕しているといっても過言ではない。

 セブンは、本来は守護者ではなく、恒点観測員としての来星だったにも関わらず、薩摩次郎(森次浩司)という一人の地球人の気高さに心打たれ、彼の姿と精神をモデルとした地球人・モロボシ・ダンとなって、謎のセブン上司の指示も受けずに地球を守るために常駐した。『ウルトラセブン』の第48話でも、最終回でも上司セブンの「変身してはならない。」という指示に従わず、地球のために満身創痍の体で戦った。
 『ウルトラマンレオ』にて再び地球を防衛する任務に就いたが、地球に二度も常駐したウルトラマンは他に例がなく、パラレル・ワールドとはいえ、平成ビデオシリーズでは「地球人を愛してしまった」がゆえに、地球人が、本来の地球原人であるノンマルトを侵略した種族であったことが判明したにもかからずこれに味方し、M78星雲からも罪人とされて尚、地球人の見方であり続けた。

 そしてレオは故郷L77星が宇宙の塵と化して、帰るべき故郷を喪失した故に地球を「第二の故郷」とし、のちには「唯一の故郷」とした。『ウルトラマンレオ』の終盤でウルトラ兄弟に加えられ、『ウルトラマンメビウス』の時代には任務で地球を離れていてもその想いは些かも変わらず、リフレクト星人に敗れたメビウスに対し、「タロウ兄さんは許したらしいが、俺は許さん!」と一喝して、ただ一つの故郷を託す対象が如何に大切な存在であるかを述べていた。

 そんな二人だったから、『ウルトラマンレオ』本編の時代からダンゲンは自分達を「この地球を守るたった2人の宇宙人」と自認し、第39話で、「一緒に光の国に帰らないか?」との誘いを「地球が滅びるときは一緒に死ぬ。」と云って断ったダンに、ウルトラマンキングは「セブン……いや、ダンおゝとり君を頼んだぞ。」と二人を地球人としての名で呼んでその想いを尊重した。
 何より圧巻だったのは、第22話の、「私はMACの隊長としてはウルトラマンレオになど頼りたくない………だが同じ宇宙人としてはゲン、お前だけを信頼しているんだ!」という台詞だろう。
 時にはひどいシゴキ(苦笑)も受けたゲンだったが、この台詞に何も感じなかったとしたら、人の血が通っていないと云われても文句が云えないだろう。
 辛いことの多すぎるシリーズだったが、それを乗り越える原動力となったのは、2人の宇宙人の地球に対する想いで、その想いが尊く、強いものだったから、Lehrerの薫陶を受けたSchülerは、次なるLehrerとして立派に成長したといえよう(実際、真夏氏には主人公だった時代には感じられなかった「貫禄」や「威厳」が備わっている)。


ウルトラセブンから、ウルトラマンレオ、そしてウルトラマンゼロへ ほとんど「Schüler Zahl vier」のウルトラマンレオの項目で書いてしまっているが、ウルトラセブンの教えを受けたレオは、セブンの息子で、強さに思い上がり、強さを求めるあまりウルトラマンとしての道を踏み外しかけてM78星雲光の国を追放されたウルトラマンゼロの身柄を預かり、K76星にてアストラとともに彼の心身をスパルタ教育で鍛え上げた(少し野暮を書くと、アストラもゼロの師匠なのだが、その影が極端に薄いのは、アストラがセブンや地球との関連がレオほどには濃くないからだろう)。
 そのゼロは地球にて、一時的だがウルトラマンギンガとウルトラマンビクトリーの指導も務めた。

 これからも様々なウルトラマンが新たなウルトラマンに対して武術、技術、人格、知識などの様々な面で共同するシーンが描かれるであろう。だがその中でセブンレオゼロと受け継がれた奇跡が燦然と輝くのは間違いないだろう。
 カプセル怪獣達にしても、その敗戦歴が酷評されても、愛されてきたのはそれがモロボシ・ダンによって率いられた存在であったことと無関係ではあるまい。彼の名トレーナー振りは、教え子の単純な勝敗に左右されないの域にまで達しているゆえにこれからも光り輝き続けるだろうし、それを期待している。


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令和三(2021)年六月一一日 最終更新