これは講談社『オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー』に掲載された、村枝賢一氏の「怪人戯画」のパクリです。

続・菜根版怪人戯文(投稿編)

 前作・『菜根版怪人戯文』を見た当道場BBSを通じて交流を持つ拳螺閣下氏から先日、前作にて採用されなかった怪人達に二つ名を加えた感想文を頂きました。
 特撮房への日々の高覧のみならず、こう言った高論まで頂けたことを在り難く思うと同時に、拳螺閣下氏の同意を得て続編として新たにアップさせて頂きました。
 また、拳螺閣下氏の戯文はイラストともに書かれた物が『仮面ライダーSPIRITS』の「似顔絵大発表」にも選ばれて掲載されています。
 詳しい箇所はそれぞれの個所にて案内しています。『仮面ライダーSPIRITS』をお持ちの方は是非御確認下さい。
 シルバータイタンとは異なる視点と独自性を堪能し、今後の特撮考察への良き材料となればこれにすぐる喜びはありません。



12.ゲバコンドル精悍なる猛禽
登場:『仮面ライダー』第11話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第70位)
所属組織:ショッカー
任務:仮面ライダー抹殺並びに通り魔的テロリズム
改造ベース:コンドル
死因:サイクロンアタック
拳螺閣下氏かく語りき 牙に蝠蝙状の翼と一見鳥の要素はないながら、飛行と着地時に見せる鋭角さは粉う方なき鳥のそれです。
シルバータイタンかくレスポンス 『仮面ライダー』の第1話から第10話までのショッカー怪人の優れた部分のみを集めて改造されたゲバコンドルはその後2回甦った事や滝和也との因縁(嫁さん拉致未遂)からも知名度の高い怪人ですね。それゆえにともすればその背景やインパクトに目が奪われがちな中、本来のコンドルであるゆえの飛行能力に着眼した拳螺閣下氏の観察眼に脱帽です。


13.エイドクガー毒粉の刺客
登場:『仮面ライダー』第94、95話
所属組織:ゲルショッカー
任務:アンチショッカー同盟壊滅
改造ベース:エイ+毒蛾
死因:2号ライダーによるライダーきりもみシュート
拳螺閣下氏かく語りき エイヒレと翅の大胆な融合と、尾を右腕に持ってくるシルエットの微調整からある意味ゲルショッカー怪人の代表と云えるでしょう。
シルバータイタンかくレスポンス 今回の着眼点は2種類以上の生物との合成(大半は脊椎動物と無脊椎動物との合成)というゲルショッカー怪人の基本概念への物ですね。
 再生時にも2号ライダーとの因縁を見せたり、ヘリコプター内で滝=普通の人間に取り押さえられたかと思えば、それを利してアンチショッカー同盟員を殺害したり、とある意味つかみどころのなさも注目される怪人ですが、エイの武器である毒尾が利き腕に配備された大胆さが毒粉噴出程の威力を発揮しなかったのは惜しまれますね。
 ライダーきりもみシュートは海棲生物型の改造人間を葬る事が多かったのですが、エイがそこだけに関連したとすると立場がないですね(苦笑)。


14.ミミンガー密林の怪僧
登場:『仮面ライダー(スカイライダー)』第43話
所属組織:ネオショッカー
任務:大首領への貢納用千の耳の調達
改造ベース:象
死因:風神地獄落とし
拳螺閣下氏かく語りき 仕込み刀を忍ばす長い鼻に象牙の様な鍬形、邪なる眼光は死霊と異なる現世のものと分からしめます。
シルバータイタンかくレスポンス 吸血マンモスを除けば象の改造人間は意外に見当たりませんし、それゆえに怪談シリーズだからこそ意外性のある象が選ばれたのか?との類推も生まれてしまいます。
そういう意味ではミミンガーもまた数少ない象ベースである事や象特有の数々の武器がストーリーの前に隠れそうな哀れな存在と言えるでしょう。ちなみにこの時大首領への生贄に千の耳を集めた慣例が第52話でも出てきたのに爆笑したのは私だけでしょうか?(道場主「まだやっとったんかい!?」、シルバータイタン「しかし大首領の前で踊る官女役がアリコマンドじゃ慰めになりませんね。」)


15.スプレーネズミ械腕の毒源
登場:『仮面ライダーV3』第17、18話
所属組織:デストロン
任務:細菌テロによる大量殺戮
改造ベース:鼠+スプレー
死因:V3キック
拳螺閣下氏かく語りき 安易な取合わせと思いきや、十徳ナイフの様な多機能な右腕とさりげない体表のメカが悪魔とハイテクの合の子という深みを感じさせます。
シルバータイタンかくレスポンス 思えば、利き手・利き腕って言うのは人間の体の中で一番能動的に使う部位ですからライダーマン以外にも多機能を持たせる改造を腕に施した存在(奇械人メカゴリラ・デッドライオン等)が多く、殊にメカニズムにこだわったデストロンの機械合成改造人間やブラックサタンの奇械人ではある意味必然で、結城がその道のオーソリティだったのも拳螺閣下氏の論述を見て、改めて納得させられました。
細菌テロを自らの信条とするドクトルGの基本路線と、肉体と機械の合成を武器とする初期のデストロンを代表するのはこのスプレーネズミかも知れません。


16.獣人カタツムリ渦中の策士
登場:『仮面ライダーアマゾン』第11話
所属組織:ゲドン
任務:アマゾンライダー抹殺並びに十面鬼飲料用血液搾取
改造ベース:カタツムリ
死因:アマゾンキック
拳螺閣下氏かく語りき 喋らないが作戦行動が可能、全身が収まる殻を攻防に使い分ける点も獣人の代表です。
シルバータイタンかくレスポンス 首領がアホなせいか(笑)、ゲドン獣人は喋らない者、頭を使わない者も多く、更には凡そ聡明をイメージさせないカタツムリの獣人を「策士」と注目したのは見事です。
 カタツムリの改造人間もまた意外に少ないのですが、それだけに個性である殻を巧みに利用した戦い振りもうれしい所です。言葉を覚える直前だったアマゾンライダーが拳や投擲を初めて利用した普段と違う戦い振りをしたのも相手に合わせてのことであるのをもっと一般に注目されて欲しいですね。


17.コマサンダー打ち据える旋刃
登場:『仮面ライダースーパー1』第37話
所属組織:ジンドグマ
任務:東京湾入港石油タンカー襲撃並びに東京湾炎上
改造ベース:独楽
死因:スーパーライダー月面キック
拳螺閣下氏かく語りき 右腕のハンマーに釘抜きまで備えた屈強な雄姿。普段の前腕との使い分けもそこに一役買っています。
シルバータイタンかくレスポンス ロボットスーパー1との模擬戦から本物との決戦を通じてファイブハンドに動じなかったのは拍手喝采ものですね。大幹部達が変身した超A級怪人達でさえ虚像を攻撃させたゴールドゴーストを除けばなにがしかの影響を受けたのですから。
 惜しむらくは二度に渡るスーパー1との対決が前後でかなりの落差があった事でしょうか?
第五回「仮面ライダーSPIRITS」似顔絵大発表にて選出・掲載(『仮面ライダーSPIRITS』第8巻205頁上から7番目、左から5番目)
シルバータイタン再度感想 縮小されて掲載されているのが誠に残念!多くがライダーや有名怪人・ショッカー怪人の中でロボットスーパー1を粉砕したハンマーが前面に押し出された姿は当然と云えば当然なのですが、実際に戯文をバックに迫る姿が描かれた事に嬉しさを覚えるばかりです。


18.オニヒトデ変幻自在なる殺戮者
登場:『仮面ライダーV3』第48話
所属組織:デストロンヨロイ一族
任務:デストロン前衛基地としての病院ジャック
改造ベース:オニヒトデ
死因:ネットアームに絡め取られた所へのV3三段キック
拳螺閣下氏かく語りき 体型に劣らぬ奇異な戦術は、同族の括りによる没個性化の中精彩を放っています。
シルバータイタンかくレスポンス 失敗したとはいえ、本物のヒトデよろしく体内の口腔を露出させてV3を飲み込まんとしたり、分裂と再生を駆使する様も本物のヒトデに通じる一方で他のデストロン怪人に見られない特殊戦法ですね。
 「同族の括り」とは後期の結託部族シリーズに見られる没個性化の欠点を上手く捉えたものです。逆を言えばそれだけに拳螺閣下氏の個性への注目は嬉しい物があります。


19.プラノドン武装の翼竜
登場:『仮面ライダー』第43話
所属組織:ショッカー
任務:受信装置を埋め込んだ遠隔人間誘導による要人暗殺
改造ベース:プテラノドン
死因:ライダーキック
拳螺閣下氏かく語りき 鶏冠に替わるアンテナのハイセンスに尖鋭的な悪魔的威容には渋さが、単に子供への迎合といわせぬ火器を備えた翼竜のモチーフの玄妙なアレンジは興味深いものがあります。
シルバータイタンかくレスポンス 旧2号ライダー編の短所に「子供への迎合」が挙げられます(語弊がありますが・・・)。キノコモルグやピラザウルスやトリカブトに出てきた再生怪人達にはコミカルを通り越して奇行愚行じみたものがあるのですが、そこへ来て古代生物を甦らせ、当代化学の最先端と融合させた改造人間本来の魅力は語り尽くせませんね。
第六回「仮面ライダーSPIRITS」似顔絵大発表にて掲載(『仮面ライダーSPIRITS』第9巻202頁上から5番目、左から1番目)
シルバータイタン再度感想 トレードマークにして最大の武器である翼を広げた姿は横書き掲載ならではの存在感を醸し出しています。シンプル・イズ・ベストとも言えるタッチは否が応でもプテラノドンが翼竜の改造人間であり、ライダーとは異なった能力を持つ改造人間であることを再認識させてくれます。


20.バラロイド睥睨の単眼
登場:『仮面ライダーZX』(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第88位)
所属組織:バダン帝国
任務:スペインでの銀の髑髏を使った人心撹乱
改造ベース:バラ
死因:銀の髑髏へのXキック
拳螺閣下氏かく語りき バダン怪人共通の質感の懲り具合に加え、花びらの隙間から覗く眼のアクセントはZX物語の各々の脳内補完の一助となったことでしょう。
シルバータイタンかくレスポンス 『仮面ライダーSPIRITS』では女性的な面が強調され、本来の姿とのかけ離れが注目されているバラロイドは特番に目を転じれば阿修羅谷での最終決戦での戦死第1号(1号ライダーのライダーキックが死因)でもあります。
 思えば、ゲルショッカーにデルザーの大首領から、ゾル大佐・タイタン・ゼネラルモンスターと、悪の組織には案外単眼の存在が多いです。様々な容姿・背景・個性があるからこそ一点凝視的に光る単眼は得も言えぬ不気味さと鋭さを持ちますね。


21.アトラス轟腕なる巨壁
登場:『仮面ライダーX』第8話
所属組織:GOD
任務:資源調査隊迎撃抹殺
改造ベース:大巨人アトラス
死因:弱点である左肩へのXキック
拳螺閣下氏かく語りき 体色と相まった佇まいがあればこそ、メルカトルがアトラスは地を支えると勘違いし、地図帳の語源となったことを踏まえた大地球の衒学味も嫌味になりません。
シルバータイタンかくレスポンス ギリシャ神話ではオリンポスの神々に敗れた巨人族の残党として天を支えると言う任務を課せられていたのですが、有名なヘラクレスに最後の偉業において百目龍アルゴスから林檎を持ち帰る任務を依頼され、天を支える任務を臨時交代した時に「林檎を代わりに神々に届けてやる。」と偽りの申し出で逃げようとしたのを、偽りに気付いたヘラクレスに「これ以上は肩当てが必要だから、それを作る間だけ任務に戻ってくれ。」と言われて、代わった隙にヘラクレスに逃げられたと言う神話の伝説がGODのアトラスの弱点に反映されているとしたら興味深いです。
 神話を踏まえるとかなり悲惨な境遇にあるアトラスだからこそ、水城姉妹が相次いで死亡する回に出番を与えられ、神話を彷彿とさせる地球の重さをもものとしない腕力に、弱点を突かれない限りXライダーにもひけを取らなかった膂力を見れば、拳螺閣下氏の述べる「地図帳の語源となったことを踏まえた大地球の衒学味も嫌味になりません。」にも納得です。


22.オオカミ長官血統の矜貴
登場:『仮面ライダーストロンガー』第27、32、33話
所属組織:デルザー軍団
任務:仮面ライダーストロンガー抹殺
改造ベース:狼男の末裔
死因:超電子稲妻キック
拳螺閣下氏かく語りき 名にしおう怪物の子孫同士誇りを滲ませた対話は無論のこと、儀式の立ち振る舞いから棒捌きに至るまで誇りを漂わせ、改造魔人中通して見て最も面白いと考えます。 また思慮の浅い岩石男爵と隊長ブランクを話術に嵌めた荒ワシ師団長以下の卑劣漢振りも必見です。
シルバータイタンかくレスポンス 好きと嫌いが極端に別れる存在ですね。シルバータイタンは理想的な悪の役割を果たす存在として勿論好きです。
 プライド・謀略・統率・そして膂力。その超電子パワーをもよせつけない膂力もプラズマエネルギーという裏付けがあるところも見事です。
 デルザー軍団編は改造魔人同士の確執も面白いのですが、前後に拳螺閣下氏も指摘した様に「思慮の浅い」二人(笑)が配されたのもある意味必然ですね。オオカミ長官と荒ワシ師団長の陰謀合戦を見たい、と思うのは拳螺閣下氏とシルバータイタンだけではない事でしょう。勿論その場合は2、3週では終らなかったでしょうけれど(笑)。


23.原始タイガー魔性の嘶號
登場:『仮面ライダーV3』第34話(講談社オフィシャルファイルマガジン仮面ライダー第0号怪人人気アンケート第82位)
所属組織:デストロンキバ一族
任務:三人ライダー抹殺
改造ベース:サーベルタイガー(学名:スミロドーン)
死因:ライダートリプルパワー
拳螺閣下氏かく語りき 牙の屈曲加減と体毛の勇壮さとは裏腹な、呪い続ける様な眼差しに、その印象に拍車を掛ける鳴き声は背景設定の説得力十二分です。
シルバータイタンかくレスポンス まず、キバ一族はおろかデストロン最強の一人にも数えられかねない原始タイガーの姿を見て、女である事にピンとこない人も多いのではないでしょうか?
 キバ一族の母なる魔女・スミロドーンとしての人間体と、三人ライダーとも互角以上の肉弾戦を繰り広げる猛虎然とした猛者振りのギャップの最高視聴率獲得(34%)の一因に相応しい存在ですね。村枝氏が原始タイガーを『仮面ライダーSPIRITS』で描く際にはその二面性を最大限発揮される事を期待したいですね。それが書き手にとって凄まじく大変な事は理解していますが。


拳螺閣下氏の論を受けて
 最初に気付かされたのは私達は怪人を見る時に怪人その物よりも背景であるストーリー上の役割に余りにも目を奪われやすい、という事ですね。
 勿論ストーリーは怪人の個性や動きに関連する重大なものですので、それを通して怪人を見ることは悪くもなんともなく、むしろ大切なことなのですが、怪人の持つ能力・素体となる生物本来の特徴との関連を見ることの大切さを改めて思い知らされた気がします。
 興味深い視点からの高論とともに特撮を見る時の基本の大切さを教えてくれた拳螺閣下氏に改めて厚く御礼を述べるとともに今後への貴重な参考とさせて頂きたく存じます。

特撮房に戻る

令和三(2021)年四月九日現在 最終更新