1.コウモリ男………凄惨な死の裏に

登場『仮面ライダー』第2話
所属組織ショッカー
人間体昼間の活動時に使用。サングラスを掛け、大きなマスクで口元を覆い、帽子を目深に被ってコートを着ている。
死因羽根を千切られ、地面に叩き付けられての戦死。
注目点原作にて「この男もショッカーの犠牲者」とされている。
概要 『仮面ライダー』の第2話に登場した、ショッカー怪人の第2号である。
多くのコウモリ型改造人間の例に漏れず、吸血蝙蝠の改造人間で、牙による吸血、皮膜による飛行、超音波による操作を攻撃手段としていたが、何よりも恐るべきは、牙に知能を持ったヴィールス(詳細後述)を忍ばせていたことである。

 とある団地をショッカーの人体実験場に定め、そこの住人であるモデルの山野美穂をヴィールスに感染させて操り、本郷猛(藤岡弘)を襲わせるも失敗(美穂は死亡)。
 だがヴィールス自体は効果的に伝染し、団地の住人全員に感染した。

 美穂の死に不審を抱き団地を調査しにやって来た本郷に襲い掛かるも、仮面ライダーに変身されると明らかに戦闘能力では劣り、不利を悟ると自己催眠で眠りに付くことで一時的にライダーの攻撃・追及を凌いだ。

 本郷がその場を立花藤兵衛(小林昭二)に任せて離れた隙に、この時点で本郷を父の仇と誤解していた緑川ルリ子(真樹千恵子)を言葉巧みに騙し、自分を拘束する縄を解かせ、逆にルリ子をヴィールスに感染させ、手先兼人質とした。
 本郷が戻って来ると、ルリ子を盾に脅迫。改めてショッカーによる脳改造手術を受けることを呑ませたが、その駆け引き途中で自らの羽根に血清が在ることを教えてしまったことで本郷の反撃を受けた。
 最期はライダー投げで両翼をもがれて、そのまま高所から地面に叩き付けられるというえげつない攻撃の前に絶命した。



コウモリらしさ 初期のショッカー怪人は、正直子供の目にはかなり怖い。『仮面ライダー』自体、初期はホラー色が強く、それゆえ視聴率もさほどではなかった。
 そんな中、初出の蜘蛛男が目を出していなかった(クモにはごく小さな単眼しかない)のに対し、コウモリ男ははっきり、人間の目が見えていることが牙と並んで「怖さ」を醸し出していた。

 また、蜘蛛男が蜘蛛糸による標的の捕獲のみが蜘蛛らしさだったのに対し、コウモリ男は飛行・超音波・吸血といった能力がコウモリらしさを前面に押し出しまくっていた。
 殊に、牙による吸血攻撃は、1時間おきに感染者が5倍に増えるという恐るべき感染力のヴィールスをばら撒くもので、単純計算では倍々ゲームの効果で、僅か11時間で日本人全員の感染が可能という恐ろしいもので、超有名コウモリ型モンスター・ヴァンパイアもびっくりの恐るべき存在である。

 そう考えると、コウモリ男に限らず、コウモリ型改造人間は、ヴァンパイアに準拠することで容易に怪奇性や恐ろしさを醸し出し易い存在と云える。
 少し話を現実に戻すが、ヴァンパイアのモデルとなったチスイコウモリ(南米原産)は実際に恐ろしい動物である。チスイコウモリに血を吸われたからと云って失血死することはない(チスイコウモリの体躯は小さく、そんなに膨大な血を飲めない)し、痛みすらないが、狂犬病を媒介すると云う恐るべき一面がある。感染するかどうかは運不運だが、発病したら一巻の終わりである(←助かったらギネスブックに載る程なのだ!)。
 はっきり云ってヴィールスに操られても助かる可能性のあるコウモリ男よりもチスイコウモリの方が怖いとすら云える。

 話をコウモリ男に戻すが、コウモリ男は吸血以外にも、超音波を使いこなす能力も凄い。
 現実のコウモリが持つ、暗闇の中で障害物や標的の位置を察知する能力もそうだが、ヴィールスに感染した相手を操り(←この辺り、ヴァンパイアに準拠している)、自身に危険が及ぶと自己催眠で深い眠りにつき、その身を守るのと同時に情報漏洩を防ぐのも役立てていた。

注目点 コウモリとヴァンパイアと生物兵器としての特性を持つコウモリ男。或る意味、初期ショッカー怪人としての印象を最初に示した存在と云っても過言ではなかろう。
 勿論ショッカー最初の改造人間は蜘蛛男で、本郷猛の拉致、緑川博士(野々村潔)の殺害という物語の端緒となる重要な悪事をなしているのだが、第1話ゆえにその暗躍・恐ろしさは蜘蛛男本人よりも主人公の境遇の方に注目がシフトしてしまう。
 故に、シルバータイタンには、「ショッカーらしさの印象付け」はコウモリ男に委ねられた様に見えてしまうのである。

 そんなショッカーの原点を担った存在である故、シルバータイタンが特に取り上げたいのは、原作におけるコウモリ男である。
 コウモリの特性を持ち、知能を持ったヴィールスを駆使していたのはTV版と同じなのだが、そのヴィールスの前にルリ子の親友・野原ひろみは無惨な死を遂げている(勿論、TV版では島田陽子さんの演じた野原ひろみは初期からライダーガールズ誕生の過渡期を彩るという重要な役割を担った)。
 そして仮面ライダーは墓地にてコウモリ男との最終決戦を展開し、丸で「ヴァンパイアには十字架」の定石(?)に従ったかのように、十字架型の墓標を心臓に突き刺すという残酷な方法でコウモリ男を仕留めた。
 そんな残酷なとどめを刺した一方で、ライダーは同じ改造人間である我が身をコウモリ男の無惨な死体に投影し、「この男もショッカーの犠牲者。」とし、同じような犠牲者を出さない為に「ショッカーを根絶やしにするしかない。」と云う、何とも(現実として正しいのだが)遣り切れない台詞を吐露していた。

 コウモリ男とは、そんな「作品としてのライダーらしさ」を具現化した重要な存在と云える。
 惜しむらくは、第13話にて再生改造人間として再登場した際に、原子力発電所のバーリヤを突破出来ず、首領の前で弱音を吐く雑魚になり下がっていたことだろう。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新