1.ブラック将軍…………指揮能力と配下の敬意

キャラクター名ブラック将軍
登場作品『仮面ライダー』
演者丹羽又三郎
所属組織ゲルダム・ショッカー
怪人体ヒルカメレオン
地位日本支部大幹部
指揮能力☆☆☆☆☆☆☆☆★★
武勇☆☆☆☆☆☆★★★★
部下の敬意☆☆☆☆☆☆☆★★★
備考平成に入って、劇場版『オーズ・電王・オールライダー レッツゴー仮面ライダー』では福本清三氏が、『スーパーヒーロー大戦GP 仮面ライダー3号』では高田延彦氏が演じた。尚、元祖である丹羽又三郎氏は健在(令和3(2021)年3月10日現在)。
概要 『仮面ライダー』にて、ショッカーを見限った首領(声:納谷悟朗)がアフリカの秘密結社ゲルダム団と結託して再編成されたゲルダム・ショッカー、通称ゲルショッカー。その初代にして唯一の幹部がブラック将軍(丹羽又三郎)である。

 旧ロシア帝国の軍人家系に生まれ、一族から代々将軍職を輩出する中、彼自身も将軍に就任した過去を持つ。人間であった時から戦場にて残虐行為を楽しんだとされ、ロシア革命によって帝政ロシアが滅びるとアフリカに亡命してゲルダム団に入団した。
 ゲルダム団にて頭角を現した彼はショッカー首領の信任を受け、ゲルショッカーの大幹部となり、ショッカー壊滅の主因となった仮面ライダーのいる日本支部大幹部として着任し、猿島にて結成式を挙行した。

 2種類の動物を用いた合成改造人間、三位一体攻撃を得意とする戦闘員達を率いて日本制服計画を進めるが、ゲルショッカーの強弱は集団戦法の効率に左右された。
 戦闘員にしてから、三位一体のリーダー格が倒されると戦意喪失に等しい弱体化を示し、合成改造人間も単体としては仮面ライダーに手も足も出ない個体も少なくなかったが、集団戦法を活かしていた戦闘員には滝和也(千葉治郎)もショッカーの戦闘員と比べ物にならない戦闘力に舌を巻き、合成改造人間同士も幾つかの作戦を成功させた。

 シルバータイタンは過去作において、ゲルショッカーの脅威はブラック将軍の指揮能力(詳細後述)に依存しているとの見解を何度か示している。
 一つの作戦が破れても、本郷猛(藤岡弘)や少年仮面ライダー隊が安堵する暇もなく次の恐るべき計画が展開され、悪の組織の宿命で完全達成には至らずとも、旧ショッカーの残滓の大半を隠滅したり、要人を暗殺したりした。中でもアンチショッカー同盟を、石神千恵(小野恵子)一人を除いて全滅させたのは大きな戦果と云えよう。作中、その大きさが描かれはしなかったが、敵対する世界組織を壊滅させたのだから、仮面ライダー打倒は成らずとも、副次的には申し分ない戦果と云っても間違いは有るまい。

 だが、数々の作戦も完全成功に至らず、その都度合成改造人間を失ったゲルショッカーは最後の大攻勢に出るべく、ブラック将軍ヒルカメレオンとして怪人復活と、それに伴う少年ライダー隊の壊滅・日本侵攻に尽力したが、本郷猛を変身不能に陥れるも、何の脈絡もなくいきなり登場した仮面ライダー2号によって阻止され、Wライダーによるダブルチョップの前にヒルカメレオンも致命傷を負った。

 自らの最期を悟り、元の姿に戻ったブラック将軍は自らの行動がWライダーを引き付ける為の陽動であったことを述べ、首領賛美の言葉を残して絶命。その死は敵も味方も称賛するものだった。

 後年、『仮面ライダーV3』にて他のショッカー幹部共々甦るが、これと云って目立った言動は無かった。平成の世に入って、別俳優の演じるブラック将軍が登場しているが、これは本編とはパラレルワールド的存在と見るべきだろう。


組織における将軍位 地位こそ「将軍」だが、現実の軍隊に即するならその役割は大元帥や提督に匹敵する。と云うのも、ブラック将軍が前組織ショッカーの3幹部と比しても、首領の信任が厚く、首領に異を唱えることも度々あったから、その権威は「将軍」の域を越えていたと云っても過言ではあるまい(地獄大使(潮健児)は納得いかないことに質問しただけで逆ギレされていた)。

 まあ、ゲルショッカーの活動自体が日本国内のそれしか描かれず、ブラック将軍に匹敵するかそれ以上の権威・権力を持つ存在が登場しなかったので、「将軍」の位が如何程のものかは何とも云えない。
 『仮面ライダーV3』に登場した際のブラック将軍がゾル大佐(宮口二朗)、死神博士(天本英世)、地獄大使、ドクトルG(仙波丈太郎)と同格だったのを見ると、「将軍」の地位自体には大きな意味はなく、軍人としての彼の在り様に注目した故の称号かも知れない。


注目点 ブラック将軍の注目点は3つある。
 一つは指揮能力である。
 過去作でも触れたが、シルバータイタンはゲルショッカー怪人を概して強力な奴とは見ていない。勿論単純な戦闘能力で云えば前身であるショッカーの怪人より強力に改造されていると見られる(実際、ガニコウモルやムカデタイガーはかなり強い部類に入るだろう)が、油断を突かれたり、人間(滝和也(千葉治郎))相手に取り押さえられたり、優位に立ったことで有頂天になったり、負傷や武器喪失でぐらいでとっとと撤収してきたり、とその精神面では疑問の残る奴が多い。
 そんな難の有る改造人間達を指揮し、時にライダーの迎撃がありながら要人暗殺を成功させたり、時にアンチショッカー同盟を壊滅に追いやったり、といった成果を上げている。これ等の成果を上げ得た要因はブラック将軍が改造人間を派したタイミングによるところが大きい。
 このタイミングは物凄く重要である。有能な軍師でも、タイミングが狂うことで主君に取り上げて貰えなかったり、部下が上手く動いてくれなかったり、酷い場合には相手の方が一枚上手で不首尾に終わることは往々にしてあり得る。つまり機を見るに敏なところはブラック将軍の指揮官として最も優れた資質と云える。

 もう一つは首領に反論出来たことである。
 まあ、正確には「反論」と云うよりは「執り成し」に近い。よくあるケースと云えば、仮面ライダーに敗退して戻ってきた改造人間を首領が「処刑してしまえ!」と激昂したのに対して、それを制止し、再改造後の出撃を行わせたものである。
 首領が十面鬼ゴルゴスやブラックサタン大首領の様に狭量な奴だと執り成しは端から無理だが、同時に大幹部に首領からの信頼がないと執り成しは上手くいきっこない。
 ブラック将軍は決して首領に逆らうのではなく、切り捨てる前に別の用い様があることを述べて敗れた改造人間の処刑を免れさせていたのだから、大幹部として首領とも良好な主従関係を構築していたことが分かる。

 最後の一つは彼への敬意である。
 それは最終回に色濃く表れている。最終回にてブラック将軍ヒルカメレオンとして自分が蘇らせたゲルショッカー怪人達による大攻勢を期して、Wライダーの目を自身に引き付けさせて対峙し、奮闘の果てに敗れ去った。
 この間(正確には直後だが)再生怪人達は滝や少年ライダー隊の面々を捕らえることに成功しており、自らは死したりとはいえ、ブラック将軍の狙いは図に当たり、「最後に笑うのはゲルショッカーだ!」として首領を賛美して散った。
 このブラック将軍の最後に対して、仮面ライダー1号は「勇敢だった。」としていた。この賛辞はブラック将軍を含む歴代幹部に向けたものだったが、口にしたのはこの時が最初だった。
 また再生改造人間軍団は滝を取り押さえた際に、自らの死を覚悟で最後の罠を張ったブラック将軍を我が事のように誇っていた。長いライダーシリーズの歴史に在って、敵味方からある種の敬意を抱かれた悪の大幹部は他にも散見されるが、表立って賞賛されたのはこのブラック将軍が最初であるのは見逃せないだろう。


今後への期待 シルバータイタンがブラック将軍の今後に期待するのは丹羽又三郎氏による再演である。
 今年(2021年)は『仮面ライダー』にとって50周年となる。半世紀の歴史の中で出演した俳優諸氏の中には残念ながら鬼籍に入られた方々も少なくなく、ゾル大佐、死神博士、地獄大使、キバ男爵、ツバサ大僧正、ヨロイ元帥を元の俳優が演じられることはない。
 またドクトルG・アポロガイストの様に、俳優の高齢や引退によるものか、他の俳優が演じているケースもある。

 そんな中、ブラック将軍を演じた丹羽又三郎氏は1970年代後半に俳優を廃業し、渡米後ブティック経営をされていたこともあって、長年に渡ってその消息が不明だった。だが、2013年に公の場に健在な姿を見せ、翌2014年からは芸能活動を再開した。
 更に翌年の2015年に『新仮面ライダーSPIRITS』の巻末インタビューにて、「もしまた丹羽又三郎演じるブラック将軍が求められるような機会があるのなら、今度こそ全身全霊を懸けてみなさんに喜んでもらえる演技をしたいと思います。」と述べられている。
 かかる御言葉が出ると云う事は、当時のブラック将軍において演じ切れていないものを感じていらっしゃるのかも知れないが、何とか実現して欲しいものである。
 平成時代の映画作品においては「5万回斬られた男」として名高い福本清三氏や、元格闘家の高田延彦氏がブラック将軍を演じていたので、少し神経質そうな元祖と古武士の風格を匂わせたブラック将軍を是非もう一度見たいものである。こんな書き方はしたくないが、2021年3月現在、御年86歳の丹羽氏に残された時間は決して長いとは云えないので(福本氏は2021年元旦に惜しくもこの世を去られました)。


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令和三(2021)年三月一五日 最終更新