ボスガンDataBase | |
肩書き | 怪魔獣人大隊隊長にしてクライシス帝国地球攻略兵団海兵隊長 |
スーツアクター | 藤木義勝(ジャパンアクションクラブ所属) |
キャラクターボイス | 飯塚昭三 |
主君 | クライシス皇帝 |
上司 | ジャーク将軍 |
配下 | 怪魔獣人 |
武器 | 長剣(怪魔稲妻剣・電磁波剣)、短剣(左肩に常備) |
怪魔獣人大隊隊長兼海兵隊長ボスガンは四大隊長の中でマリバロンと並ぶ純粋なクライシス人であり、同時にナイトの称号を持つ。
その称号がどれほどの重みを持つかの詳細は不明だが、最終回でクライシス皇帝が南光太郎懐柔の為に光太郎に「サー(Sir)」の称号を授与しようとし、それにマリバロンが猛反対した事や、他の隊長達にこれといった称号が見られないところから、かなりの名誉を伴なう様である。
それ故にボスガンのプライドは高く、自らを「ジャーク将軍の後釜=次期将軍」と自認し、自負していたのが顕著である(第25話)。
そこでジャーク将軍指揮下にあったボスガンはその対人関係を観点に3つの立場に立っていた事が、時間の推移の中に見られる。
■ 有能幹部期(第1話〜第24話)
■ 野心陰謀期(第25話〜第26話)
■ 懐刀随身期(第27話〜第44話)
1. 有能幹部期……上司命令で作戦に邁進するボスガン
風の騎士・ガイナギスカンを皮切りにジャーク将軍の命令に従って数々の怪魔獣人戦士を地球攻略作戦及び仮面ライダーBlackRX抹殺の為に送り込む。
部下である怪魔獣人達がRXに敗れるのは仕方ないにしても、一番手のガイナギスカンにボスガンの様なプライドの高さが窺えた他は個性に乏しい怪魔獣人が多く、ボスガン自身他の隊長達と積極的に関わるでもなく、比較的強敵である怪魔ロボットを作り出すガテゾーン、奇怪なアクションと部下を繰り出すゲドリアン、紅一点であるマリバロンに比べると目立たない存在でもあった。
勿論大将であるジャーク将軍を悪の側のエースと見るなら彼以外に目立つ存在は余程上手い構成をしないと番組並びに悪の組織のアイデンティティを荒唐無稽なものにしかねない。
そう云った意味ではボスガンのジャーク将軍に対する在り様は平均的な軍属の上下関係を示すことで、組織としてのクライシス帝国の在り様を描くのに一因を為していると云える。
2. 野心陰謀期……ただ一度の独断専行。策謀家としてのボスガンと戦士としてのボスガン
海兵隊長にして怪魔獣人大隊隊長ボスガン最大の見せ場にして、最後のクライマックスを別にすれば唯一クライシス帝国内部が暗に対立した二部作である。
概要はクライシス皇帝より半年以内に地球攻略を完遂しないと処刑、との怪魔通信を受けたジャーク将軍の背後で密かにジャーク失脚後の将軍位奪取を企むボスガンが、将軍位に見合う功績として仮面ライダーBlackRXの暗殺を密かに進める訳だが、この二部作ではボスガンは純粋にクライシス帝国内で皇帝に次ぐ地位のみを考えており、ジャーク将軍に対するボスガンの好悪については触れられていない。
つまりボスガンにとってネックなのは自らの野心を悟られないことと、その為にもジャーク将軍から与えられた命令をこなしつつ、仮面ライダーBlackRX暗殺をやってのけると云う超難題に挑むことである。
この時のボスガンはRX暗殺を強く要望しながらもジャーク将軍よりクライシス皇帝への生贄とする蠍座生まれの花嫁五人の誘拐を命じられ、代わってRX抹殺を命ぜられたガテゾーン・ゲドリアンの嘲笑にも面で悔しがり、腹で嘲笑し返すという老獪さを発揮していた。
勿論この2話におけるクライシス帝国側の主役はボスガンなので、彼は多彩な顔を見せる。
前述した策謀家としての老獪な面もそれなら、蠍座の花嫁五人をクライシス皇帝の生贄に捧げ、皇帝の忠実な臣としての面を見せながら、その妨害にやって来る仮面ライダーBlackRXを迎撃する際にもガイナカマキルやチャップ達の助太刀を禁じる所には演出家であり、一見無茶に見える二大計画を一度に実行せんとする無謀でも(事の善悪は別にして)志高き大望家としての面も見える。
加えて、自らの剣がロボライダーの頑強な体質の前に折れてしまった事で二大作戦が頓挫するや即座にロボライダーの硬さを上回る怪魔稲妻剣を開発するという負けず嫌いにして開発者な面も見せ、更には南光太郎を孤立させる為、光太郎の周囲の人間を襲い、脅し、実際に多くの流血と不信を撒き散らした冷酷な面まで見せた。殊に光太郎を肉体的にも精神的にも追い詰めたこの作戦の悪辣さは「仮面ライダーBlackRX」において屈指で、悪の組織の構成員としてのボスガンの顔はこの2話に凝縮されていると云って良い。
突っ込まれる前に云っておくが、本作の主役は勿論ジャーク将軍である。くどくどとボスガンの様々な面に触れて来たのも全てはそこを包括した睨みを効かせていたジャーク将軍の器の大きさに触れるためでもある。
手練手管を尽くし、光太郎を孤立させ、ロボライダーのボディーをも切り裂ける怪魔稲妻剣でもって光太郎を半失明状態に、霞のジョーに瀕死の重傷を負わせたものの、RXの激し過ぎる怒りを買ってバイオライダーの物理攻撃無効能力に怪魔稲妻剣も役立てられなかったボスガンはガイナギンガムも倒され、無念の撤収と相成った。
そして事敗れたボスガンは作戦の失敗を報告するにジャーク将軍は怪魔稲妻剣を見せるように命じ、訝しがりながら剣を取り出したボスガンにジャーク将軍が杖を向けて気合いを一閃するや、杖からほとばしった光線は怪魔稲妻剣を粉々に粉砕した。
呆然自失のボスガンに全てを悟っていたかのような大笑いをするジャーク将軍はそれ以上ボスガンを咎めることも、罰することもなく、作戦の失敗に追い討ちをかけるように器の違いを見せつけられたボスガンは無言のまま野望が潰えた事を悟り、以後ジャーク将軍の懐刀に徹するのだった。
ボスガンの全てを見透かし、無言の圧力で一切の咎めを行わなかったジャーク将軍だったが、ボスガンの独断専行を本来なら罰するべき行為としてしっかりと睨みを利かせていたことはこの直後の第27話の些細なシーンに見られた。
任務を放棄した怪魔異生獣マッドポットとともにゲドリアンを嘲る三大隊長の中で、ゲドリアンを見下しながら怪魔獣人大隊の精鋭振りを鼻にかけるボスガンにジャーク将軍は「黙れボスガン!その精鋭とやらを率いてくだらぬ抜け駆けを企んだのが誰なのか、余は忘れてはおらんぞ!」と一喝して洞察と格の違いがボスガンの首根っこをしっかりと押さえていることを思い知らせていた。
この対人関係はドラマとしても興味深く、組織の上下を見るにも良き参考となり、その領域は決して子供番組のレベルに収まるものではないと断言する。
3. 懐刀随身期……任務と上司に見る誇り高きボスガンとプライドを捨てたボスガン
第26話で野望が潰え、第27話で利用するには手に余ったシャドームーンが倒れ、第28話で査察官ダスマダー大佐が現れ、地球攻略兵団内にはこれまでとは異なる対立が生じた。
クライシス皇帝の代理人として、皇帝の権威を振りかざして、ジャーク将軍並びに四大隊長達の粗探しをしては報告・処罰をちらつかせるダスマダーにボスガンを初めとする四大隊長は勿論、言葉にはしないもののジャーク将軍も面白い筈がなかった。
となると懐刀に徹するボスガンは他の三隊長よりもダスマダーに舐められまい、付け込まれまい、要らぬ口出しをさせまいとして、同僚達の悪口が減り、とことんジャーク将軍に徹し、皇帝の忠実な直臣として皇帝代理人に感情を露わにできないジャーク将軍の意を代弁するかの様にダスマダーに対し、喜怒哀楽様々な表情を見せるのだった。
攻略兵団内の作戦も、水の城建設・四国奪取・各種基地・空港建設、と怪魔界崩壊の接近とダスマダーの監視を意識したものとなっていき、作戦遂行前に兆発じみたダスマダーの台詞に、ボスガンは他の三大隊長とともに「査察官の分際で!」と、君側の奸に対するが如き反論を重ねていた。
そんなボスガンの最初の見所は第40話である。プライドの塊のような男・ボスガンがダスマダーに媚び、彼が立案した作戦に便乗したのである。それも独断と専行を詰るガテゾーン・ゲドリアンに今までの失敗を認めて引き下がる様諭し、「ジャーク将軍を裏切る気?」と問い詰めるマリバロンに「何とでも云え。私は私の能力を充分に発揮させてくれる方の元で働く。」とマリバロンの詰問を否定しなかった。
この時渋面でダスマダーとボスガンを見送ったジャーク将軍だったが、最高司令官である彼を無視した独断専行を詰りながら、「このままでいいのですか?」と問う三大隊長にジャーク将軍は、「ダスマダーはともかく、ボスガンは余を裏切ってはいない。」と宣した。
つまりはジャーク将軍とボスガンが共謀して、ダスマダーに出し抜かれ、媚びたボスガンが追随したと見せかけて、ダスマダーの作戦全貌を調べ、万が一にもジャーク将軍達を亡き者にせんとの企みがあればボスガンが自らの手でダスマダーを討つというものだった。
もっとも、ダスマダーの方でも自分のやっていることが地球攻略兵団の神経を逆撫でする物であることは承知しており、チャップの一人にジャーク将軍に化けさせ、ボスガンの本音を探らせていた。
チャップが化けているとも気付かず本音をペラペラ喋っていた姿は後から思えば些か間抜けだが、ボスガンが如何にジャークに徹する存在になっていたかは見事に現れていた。同時に自らの腹心であるガイナジャグラムがRX打倒を狙うダスマダーに捨石的に体よく利用された時に怒りを露わにしていた点も隊長としてのボスガンの姿を露わにした物として記憶に留めたい。
くどいぐらいにボスガンがジャーク将軍の懐刀に徹していることに触れているが、対ジャーク将軍面における心底が若干変わっただけで、本質的に怪魔獣人・ボスガンは変わっていないことを見落としてはいけない。
ボスガン最後の出番となった第44話に見られる。皇帝陛下の最終兵器である最強怪人グランザイラスの地球派遣が為され、リボルケインを初めて破った難敵に動揺するRXの首を取らんとして電磁波剣を振るったボスガンは仮面ライダー1号に阻止され、同時に駆け付けた九人ライダーの一人、仮面ライダースーパー1の冷熱ハンドにライダー達の退却を許してしまうが、「逃げられたか。」と呟くグランザイラスにボスガンは「無礼者!如何に皇帝の使者とはいえ多寡が怪人…。」とたいして邪魔をしたわけでもない(それどころかRXを追い詰めるのにかなり貢献した)のに怒鳴りつけていた。
怪魔獣人大隊隊長にして、海兵隊長にして、ナイトの地位を持つものにして、純粋なクライシス人としての鼻持ちならないプライドが服着たような男・ボスガン健在といったところだろうか。直後の最終決戦にてボスガンはグランザイラスの助勢を拒絶してRXに一騎打ちを挑んだのだが、グランザイラスの助勢を拒絶する一方でチャップを潜ませたりしてはいたのだから、ダスマダーを初め、君側で虎の威を借る(とボスガンが見なした)奴等が余程嫌いだったのだろう。
それを気付いてか気付かずか、ダスマダーもまたジャーク将軍達に促されてもグランザイラスを応援に遣らず、ボスガンを「愚か者」の一言で片付けた。
ここに上司−部下としてのジャーク将軍とボスガンの共闘は終りを告げる。現実の世には一度自らを出し抜こうとして独断専行に走った部下をそのまま使う上司は珍しいのだが、ボスガンの素の性格を矯正した訳でもないのに巧みにボスガンを懐刀に徹しさせたジャーク将軍の格の相違を見せることの絶妙さと、グッドタイミングでの睨みの利かせ方は特筆に価し、自らだけでなく、ボスガンのキャラクターまでをも番組中のロールプレイに貢献させたと云えるだろう。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年五月一九日 最終更新