File1.幽霊宇宙人ゴース星人………「地底」への善意者、「地底」に滅ぶ

侵略者名 幽霊宇宙人ゴース星人
登場作品 『ウルトラセブン』
登場話 第48話「史上最大の侵略(前編)」、第49話「史上最大の侵略(後編)」
侵略目的 地球の完全占領及び移住
侵略手段 地底ミサイル及び双頭怪獣パンドンを駆使しての地球人屈服
地球人への処置 火星地下都市への強制移住


侵略者概要 幽霊宇宙人ゴース星人は、『ウルトラセブン』にて、ウルトラセブンとウルトラ警備隊が最後に戦った侵略的宇宙人で、極めて高度な文明を誇り、普通の方法では観測出来ない「幽霊惑星」ことゴース星から地球を侵略しに訪れた異星人である。
熊が岳の地底に侵略基地を建造し、双頭怪獣パンドンを操り、兵器としても人間一人を瞬時に捕獲するゴースバルーン、超強力な地底ミサイルを150発も擁していた。

 ウルトラシリーズに登場する侵略目的の宇宙人には何故か単体でやって来る奴が多いのだが(苦笑)、初期シリーズでは複数で来る者も多く(それ故、クール星人ポール星人ペダン星人シャドー星人等の様に巨大化しない者も多かった)、中でもこのゴース星人は一人の司令官と四人の側近が話し合っているシーンすらあり、侵略に対する本気を感じさせてくれた。

 生態や戦略眼にも興味深い点は多かった。
 先ず言語だが、地球人の言語は理解しているが、地球人に伝わる様に発する期間は持ち合わせていなかった様で、地球防衛軍に降伏勧告する際には拉致していたウルトラ警備隊のアマギ隊員(古谷敏)を操ってメッセンジャーとして使っていた。この時アマギに高笑いまでさせていたが、感情や表情まで操る例は稀有である。
 また、第48話でウルトラセブンによって倒されたパンドンを(短時間で)強化改造し、戦線復帰させていたのも注目される(もっとも、パンドン再登場時にはゴース星人は全滅していたのだが(苦笑))。

 何より圧巻なのは、地底ミサイルである。地球人が降伏しないとあれば、人類抹殺計画「30億皆殺し作戦」の発動も辞さない意志で、実際にニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワなどへ壊滅的な被害を与えており、実践能力は充分にあった。
 そしてその戦果は、「地球人の海や空の守りは堅いが、地底は全くの無防備」との鋭い視点に基づいたもので、「史上最大の侵略」と銘打たれたのも伊達ではなかった。

 降伏勧告の際には、滅亡か降伏かの二者択一を迫り、後者を選ぶなら火星の地下都市への移住を許可する、とした。
 だが、人類(というかウルトラ警備隊)は「地底でモグラの様になって暮らすぐらいなら死んだ方がマシ(フルハシ・シゲル(石井伊吉談))。」との決意の下、必死の捜索で突き止めたゴース星人の基地に自動操縦で送り込まれた時限爆弾搭載のマグマライザーに急襲されて全滅した。
 謂わば、ウルトラセブンの攻撃を待たずしてゴース星人は全滅(このとき、セブンは連戦の果てに満身創痍・疲労困憊の過労死寸前で、アマギを助け出すので精一杯だった)した。

 地底に建設基地を造り、世界の主要都市をいくつも壊滅させた地底ミサイルを多数持ち、火星の地下に人類が移住出来る都市を造り、「地球人は空と海の守りは堅いが、地底は全くの無防備」との地底襲撃戦略眼を持った地底のエキスパートだったが、その地底で自分達が攻められると実に呆気なかったものだった(笑)



人類への接触 宇宙ステーションV3の迎撃網を潜り抜け、地球の地下に潜り込んだゴース星人は、当初はパンドンに地上で暴れさせ、自分達は偵察活動に従事していた。
 前述の様に、会話能力はあっても、地球人に聞き取れる音質での発声は出来なかった様で、第48話のラストでアマギを捕らえたことで、その体を媒体として第49話中盤でウルトラ警備隊に対して降伏勧告を行った。

 降伏勧告は完全な示威で、一方的に自分達の意志を伝え、YesかNoかの二社択一を迫るものだった。従えば命を保証し、新たな居住地を提供するが、さもなくば皆殺しにすると云う脅迫以外の何物でもなかった。

 ただ、ゴース星人の立場に立った場合、媒体となる地球人無しに自分達の意を伝えることは出来なかったのだから、細かい交渉が出来なかった可能性は高かったことだろう。



垣間見せた善意? ウルトラシリーズにあって、一、二を争う程の惨禍を実際にもたらしている。
 「手始め」として、ニューヨーク、ロンドン、パリ、モスクワには地底ミサイルが放たれ、壊滅的な被害を被った様子を見れば、人的被害も相当なものだったと思われる。
 アメリカ人、ロシア人、イギリス人、フランス人にしてみれば、ゴース星人は不倶戴天の敵となっていただろうし、ここまでされてはフルハシならずとも、「降伏するぐらいなら死んだ方がマシ。」と考えてもおかしくなかっただろう。

 ただ、シルバータイタンは、「対案を提示した」ということに注目したい。
 ゴース星人は地球に何を求めたかは不詳だが、降伏すれば「火星の地下都市への移住を許可する。」と云っていたので、降伏の有無にかかわらず地球人を地球からいなくするのは当初からの決定事項だったのだろう。
 恐らくはそこに自分達が住む為に先住民である地球人を皆殺しにするか、火星に追放するかを考えていた思われるが、普通に考えるなら、地底ミサイルで殲滅した方が手間は省ける。ニューヨーク、モスクワ、ロンドン、パリの壊滅振りを見れば、地球人が為した建造物に興味はなかった可能性が高い。
 そんな地球と地球人に対して、大人しく降れば新たな居住地を提供するとしていたのは、逆らわないなら手間をかけてでも生活を保障する意思があったと見られる。勿論生まれ故郷どころか、生まれた星からの追放を強要されるのだから、普通に考えるならとても従えたものでは無い。ただ、侵略的宇宙人の中には自分達の侵略行動後の地球人の処遇について「知ったこっちゃない。」的な者が多かったことを考えれば、「服従する者は面倒を見る。」ぐらいの善意(?)は有ったと思われ、これは稀有である。

 「本当に降伏した場合、ゴース星人はそれを履行したのか?」との疑問は当然あるし、「火星移住後に地球人を奴隷の如くこき使うのが目的だったのでは?」との考察もあろう。
 ただ、そうだとしても、シルバータイタン的にはゴース星人が「命の保障」と云うことに関しては本気だったと見ている。
 地球人に提示したのが「火星の地下都市」と云うのも、普通に考えるなら地球人が生身のまま火星で生存するのは不可能で、火星を地球人が生存可能な環境に作り替えることを考えた場合、地表よりも閉ざされた空間である地底の方が環境づくりは容易である。まして全地球人30億人(放映当時)を移住させるのだから、地下都市と云ってもとんでもなく規模の大きなものになる。火星が地球の半分ほどの体積であることを思えば、地底の大部分を開拓しなければならなかった訳だから、大変な労力が想像される。

 そして普通、侵略者は被征服民の事をそこまで考えない
 現実の歴史における侵略者は、自分達が支配下に置いた被征服地を開発することで、「インフラを整備した!」、「現地人の為に尽くした!」、「感謝こそされど非難される謂われはない!」として侵略を否定または正当化する。一面は正しいが、それは「現地人のため」と云うよりは、「我が国に利益をもたらす為」が第一にあり、「新たな領土」となった「自国の開発」に他ならない。征服者が完全撤退すれば、残された開発物は確かに被征服民にとって便利なものになり得るだろう。だが、征服が続けば、単純に征服国の国土開発の一端でしかない。
 日本史で云えば、日韓併合時に置かれた朝鮮総督府は「日帝支配の出先機関」と目された訳だが、もし第二次世界大戦の敗北で北海道や沖縄を完全に失い、アイヌ民族や琉球民族が独立していれば、北海道・沖縄開発庁も同じ目で見られていたことだろう。

 ゴース星人は問答無用で地球人を全滅させて地球自体を収奪せんとした他の侵略的宇宙人に比べればまだマシな方だったかも知れない。
 また『宇宙戦艦ヤマト』にて地下都市がガミラスの遊星爆撃をある程度凌いだことを思えば、火星の地底都市は悪くない環境を影響するものだったかも知れない。
 ただ、それでも住居と誇りを収奪する侵略は許し難いものであることを教えてくれるのである。


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令和五(2023)年一月二七日 最終更新