メガール将軍 幻の惑星開発改造人間第1号
担当俳優 三木敏彦 出番 「仮面ライダースーパー1」第1話〜第22話 所属組織 ドグマ王国 主君 テラーマクロ 肩書き 将軍 改造素材 牛 武器 長剣(変身後は大鉄球) 乗り物 白馬 敵 仮面ライダースーパー1 組織内の敵 テラーマクロ親衛隊 部下 ファイアコング、エレキバス、カマキリガン、カメレキング、スパイダーババン、アリギサンダー、スネークコブラン、カニガンニー、バクロンガー、ジョーズワニ、ライギョン、ギョストマ、ムカデリヤ、ライオンサンダー、オニメンゴ、ロンリーウルフ、ヤッタラダマス、カセットゴウモル、ツタデンワ、バチンガル 死因 スーパーライダー旋風キック 遺言 「ドグマよ、永遠なれー!!」 悲惨さ 利用され振り 10 死の悲惨度 8 同情度 8
青年科学者 ドグマ王国将軍メガールはその昔夢と理想に燃え、その為に自らの肉体を危険に晒す事も厭わぬ熱血漢だった。
メガール将軍の真の名は奥沢真人 (おくざわまさと)。池上妙子(松香ふたみ)という婚約者もいて、その前途は洋々たるものだったが、城南大学から国際宇宙開発研究所へ派遣されてから受けたある手術が全てをフイにした。
その手術とは惑星開発用改造人間手術。
そう、後に「仮面ライダースーパー1」の主人公沖一也(高杉俊价)が受けた手術である。手術は技術の未発達により失敗に終った。失敗の詳細は不明だが、第22話を参考にしたところ、以下の無惨な結果が推測される。
悪果 備考 元戻り不能 完全な人間体に戻れないのは後々のスーパー1の例を見るまでもないのだが、メガール将軍の場合、奥沢真人の姿にも戻れなかった模様(婚約者池上妙子を前にしてもメガールの姿のままだった)。 醜い姿態 基準は不明だが、メガール将軍は改造手術に成功した沖一也の変身体を美しいと捉え、相当な劣等感を抱いていた。 術中の苦痛 沖一也が手術中に差ほど苦痛を感じていた様子はなかったが、回想シーンによる奥沢真人は相当な苦痛を感じていた。
だが手術に失敗した奥沢には更なる悲劇が待っていた。
隠蔽と絶望 夢と理想に燃える青年科学者・奥沢真人を襲ったのは改造手術の失敗に留まらなかった。
国際宇宙開発研究所は手術の失敗の隠蔽を図り、そこには元の肉体を失った奥沢に対する罪悪感はあっても、配慮は殆ど見られない。婚約者の池上妙子の要請を受けた沖一也がジャパン宇宙開発研究所を尋ねた(訪ねた)時、所長はこの一件を「研究所のタブー」として詳細を明かそうとしないままドグマファイターに殺された。
奥沢は絶望ゆえか、研究所に対する不信ゆえか、手術の翌日に失踪した(この事から手術の失敗は彼の命に別状を及ぼすものではなかった事がうかがえる)。婚約者の妙子への一報もなく……。
ドグマの帝王テラーマクロ(汐路章)に忠誠を問われたメガール将軍はドグマ入りの前の自分を「死にたいとさえ思っていた。」と述懐しているが、恐らくはこの時の絶望を指しているのだろう。
絶望という意味において似た過去を持つライダーマン・結城丈二(山口豪久)にも云える事だが、人は絶望に弱く、それ以上に絶望に突け込んだ救いを装った魔手に弱い。
手術失敗の絶望をテラーマクロに突け込まれてドグマ入りしたのは奥沢の心の弱さによる自己責任も大きいが、手術の失敗を最後まで隠蔽しようとした研究所の対応による無責任も決して小さくない。
絶望に打ちひしがれた奥沢に正義の道にもちゃんと救いが残されていた事に奥沢が気付き得なかった事と、奥沢が「救い」と信じて出会ったものがドグマ王国であった事が結果としてメガール将軍と云う一人の悪魔を生んだ事は万人の悲劇としか云い様がない。
せめて現実の行政や企業や研究期間にも有り勝ちな隠蔽体質が奥沢に絶望を与えなければ、と「ウルトラマン」のジャミラのエピソードも併せて現実の社会にも警鐘を鳴らしたい。
改造人間ならずとも報復の手段などいくらでもあるのだから。失う者をなくした自暴自棄な存在がいつ暴発するかもわからない事であるからして。
「知らぬが仏」という言葉があるが、メガール将軍・奥沢真人には知らなかったが故の悲劇が多い。
以下に奥沢が知っていれば悪に走らずに済んだかも知れない要素について列記したい。
事実 備考 技術の発達 スーパー1が自らの肉体を指して「あなたの変身メカは直る!」と力説された時、メガールの顔色は明らかに変わっていた。五年前の時点では技術が完成し、自らの肉体が当初の目的通りに再改造し得る事に気付くのは難しかっただろうけれど……。 妙子の愛 草波ハルミ(田中由美子)の「妙子さんの直向きな愛を分かって!」の叫びは当時小学生の道場主には照れ臭くて理解し辛い物があったが、心の奥底で妙子を愛し続けていた奥沢 (スーパー1談)が妙子がそれ以上に愛し続けてくれていた事を知っていれば悪に走るまで絶望する事もなかっただろう。 ドグマの悪 帝王テラーマクロはメガールの恩に厚い性格を知っていたとはいえ、結局は服従カプセルを埋め込み、親衛隊の面々は露骨に不信の念を示していた。
メガール将軍は「真に優れた者は生き延びるべき」との信念を持っていた(ヘンリー博士を手荒に拉致したファイアコングを殴り付けていたのはその一例)。一人の女性である妙子を前にしてドグマのメガール将軍から一個人・奥沢真人への転身を仄めかしていた。本来は曲がった事の嫌いな男だったと見えなくもない
メガール将軍にとってのドグマはともかく、奥沢真人にとってのドグマは一人の女性への愛より重くなかったのだから人間に対する絶望や不信がなければドグマは奥沢にとっての理想郷となり得なかったと思われる。
多くのドグマファイターやドグマ怪人に傅かれながらも彼は何人もの影武者を必要としていたのだから。
将軍位 如何なる手練手管を用いられたか、詳細は不明だが、奥沢真人はテラーマクロを自らの絶望から救い、新たな道を示してくれた恩人と仰ぎ、彼は奥沢からドグマのメガール将軍となった。
だがそれは(死神バッファローとしての戦死という)結果論を待つまでもなく彼の幸福には程遠いと云わざるを得ない。
ドグマ怪人はメガール将軍の細かい指示(死体の確認・拉致時の丁重な対応・ファイブハンド全ての奪取)を励行せず、復活させた協力者(ゾルゲベール博士)は彼を暗殺してその地位を乗っ取ろうとし、組織上での格が上である事をいい事に親衛隊は無理難題を突き付け、些細な失敗を詰り、尊大に振る舞う・・・・・・。
その上、メガール将軍がドグマに共鳴して彼なりに抱いた−来る人口爆発を防ぐべく、本当に優れた人間のみを残し、理想世界を作り上げる−との理想に共鳴者がいた気配は作中にはついぞ見られなかった(当然と云えば当然かもしれないが、ジンドグマにはそういう協力者もいた事が確認できる)。
横暴な主君・信頼できない同僚・無能な部下・あいも変わらず世に理解されず闇の王国に身を潜める日々・相次ぐスーパー1との連戦連敗……所詮悪の組織に栄光の日々など期待するのもおこがましいと断じたい所ではあるが、何もかもを失った(と思い込んでいた)青年が最後の理想と賭けた場にも幸福が待っていなかったのは間違いなく一個人として最大級の悲劇である。
最悪の悲劇と最後の良心 如何な理由があろうと悪に走った責任は小さくない。一番悪いのがドグマで、次に悪いのが国際宇宙開発研究所の隠蔽体質だとしても。
そして宿敵・仮面ライダースーパー1を前にして死神バッファローに変身して挑むメガール将軍には最悪の悲劇が待っていた。あろうことか池上妙子をハリケーンミキサー(←「キン肉マン」を知っている人は笑って下さい)で撥ね殺してしまったのである…。
五年間、奥沢真人の消息を捜し続けた妙子は元国際宇宙開発研究所の研究員である沖一也なら奥沢の消息を掴めるかも知れないと考えて、谷オートモーターショップを訪ねた。一也は捜査の結果、眼前のメガール将軍が奥沢真人である事を確信し、最初は否定したメガール将軍も谷源次郎(塚本信夫)と草波ハルミに伴なわれて眼前に現れた妙子を前にして自らが奥沢真人本人である事をカミングアウトした。
変身機能が修復可能である事を訴えるスーパー1、まだ愛している事を訴える妙子、妙子の五年間続いた想いを力説するハルミ、人生のリスタートを説く谷、といった四人の説得に改造前の心を取り戻しかけたメガール将軍の姿に親衛隊は彼がドグマを裏切ったと思い込んで彼を討つ事を帝王に進言したが、テラーマクロは笑って鐘を鳴らした。
鐘の音にメガール将軍の脳に埋め込まれた服従カプセルが反響し、正気を狂わされたメガール将軍は狂牛・死神バッファローと化してライダーに突進せんとした。
一度は婚約者の変わり果てた姿に戦線を離脱していた妙子だったが、居ても立ってもおられず奥沢を止めんとしたが為に死神バッファローの体当たりをまともに食らって若い命を散らした。
怒り心頭のスーパー1はスーパーライダー閃光キックを炸裂させ、死神バッファローはメガール将軍ではなく、奥沢真人の姿と死神バッファローの姿とをだぶらせながら「ドグマよ、永遠なれー!!」と叫んで爆死した。
奥沢真人がメガール将軍となった後も所持し続け、妙子との再会の折に自らの正体を告白するのに示したロケット(フォスターの「夢路より」のオルゴール付き)を改めて調べたスーパー1は妙子の写真の裏にテラーマクロのアジトの地図を見つけ、奥沢がメガールとなって尚、善の心と愛とを失っていなかった事を覚った。
検証報告を受けた道場主より 何につけてもタイミングが悪過ぎますね、奥沢真人は。
「仮面ライダーSpirits」の第15話で第一次月面基地建設工事中にパワーハンドで貨物を支え、エレキハンドで充電装置と化していたスーパー1の姿を見た時、一見いい様に利用されている便利屋みたいな姿が実は奥沢も一也も本来望んでいた姿であった事を思い出し、改めてドグマ王国への怒りが込み上げました。
奥沢は(技術未発達の)悪い時に改造手術を受け、(研究所に助けられず絶望していた)悪い時にドグマの囁きを受けた訳ですが、改造手術が奥沢が望んで受けたものであることを忘れてはいけません。
ヘンリー博士(大月ウルフ)は手術前に一也に手術が後戻りの効かないものである事を告げ、一也も恩義ではなく、人類の夢の為に志願したものである事を明言していました。一也が奥沢と同じ悲劇に見舞われても彼は悪の組織に走ったりはしなかったでしょう。
奥沢が志願した目的は不明ですが、ドグマ入りして尚、妙子への想いとテラーマクロの居城を第三者に知らしめる準備があったのですから心の何処かに正義と愛を失っていなかった、寧ろそういうものをはなから忘れ去った冷血漢と化していれば私はメガール将軍にこうも注目する事はなかったでしょう。
奥沢真人がメガール将軍となったのは彼の心の弱さが一因である事は否定できません。しかしながらそれを止める筈だった研究所の怠慢、それに突け込んだテラーマクロの狡猾さ、加えて正義と愛を失っていなかったからこそメガール将軍は最も同情すべき悪の大幹部の一人となっていると私は考えます。
組織を束ねる人や、愛する人に無言で去られた人は少し視野を広げてみて下さい。前者は何かを隠蔽しようとしてその人に犠牲を強いなかったか?後者はその人が某かの絶望感に囚われていなかったか?
それが何とかできた時、愛する人、大切な人は帰ってくるかもしれません。改造人間になって服従カプセルを脳に埋め込まれてている訳ではないでしょうから。但し、人の絶望に突け込んで、脳ではなく心の改造を施して悪事に加担させる組織は実在する事を忘れないで下さい。
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特撮房へ戻る令和三(2021)年五月一九日 最終更新