剣聖ビルゲニア 早過ぎた世紀王候補
担当俳優 吉田淳 出番 「仮面ライダーBlack」第18話〜第35話 所属組織 ゴルゴム 主君 創世王 肩書き 世紀王(候補) 改造素材 不明 武器 妖剣ビルセイバー(他に各種幻術・魔術・催眠術。一時は創世王専用武器サタンサーベルも使用) 乗り物 バトルホッパー&ヘルシューター 敵 仮面ライダーBlack 組織内の敵 三大神官(ダロム&バラオム&ビシュム) 部下 クロネコ怪人、オニザル怪人、ツルギバチ怪人、アンモナイト怪人、カマキリ怪人、コガネムシ怪人、キノコ怪人(但し、全員作戦遂行上の臨時的な関係で直属はなし) 死因 シャドームーンからのサタンサーベル一閃による斬撃 遺言 「俺は利用されたに過ぎなかったのか?!創世王様!!」 悲惨さ 利用され振り 9 死の悲惨度 6 同情度 5
謎多き前半生 剣聖ビルゲニアは三万年前の日食の日に生を受けた世紀王(次期創世王候補)である。ゴルゴムの創世王は太陽の黒点消滅時にその寿命を終え、次の創世王が生まれる。そのタイムスパンは約五万年と見られている。
勿論創世王は自らの寿命の終焉を予め予測し、生前に次期創世王候補を世紀王として任ずる、ビルゲニアもその一人である。
そもそも創世王も三人の大神官も怪人達もン万年単位の寿命と履歴を持ち、創世王が全宇宙の支配者を自認(実態の程は不明)し、人類の歴史が数百万年である事を考えると大神官やビルゲニアは人類がようやく火を使う事を覚え出した頃に既に存在していた事からも地球人とは考え難く、通常の時間感覚では捉え難い存在である。
ともあれ、人類史上においては古代とも云える三万年前の日食の日にこの世に生を受けたビルゲニア (世紀王は日食の日に生まれた者が選ばれる)は何処で生まれたか、どんな育ち方をしたかも一切不明だが、創世王の寿命はまだ半ばを過ぎてもおらず、その誕生が時期尚早と見なされ、次期創世王の証であるキングストーンが与えられなかった事だけは間違いない。
詳しくは後述するが、ゴルゴム創世王は極めて傲慢且つ部下に腹の内を見せない人物(?)である。後に創世王専用マシン・バトルホッパー、創世王専用武器・サタンサーベルを嫌なタイミングで世紀王達に授けたり、取り上げたりしているのだが、キングストーンを与えなかったことは相当ビルゲニアの心に影を落としたらしい。
キングストーン無き世紀王・ビルゲニアは明らかに他の世紀王よりも格下扱いを受け、それをしてビルゲニアを「剣聖」たらしめたのかも知れない。
やがて剣聖に相応しい剣技を物にしたビルゲニアは膂力で三神官をひれ伏させ、力で次期創世王の座を掴まんとしたが、それが創世王の逆鱗に触れ、鎖で雁字搦めにした棺に幽閉され、三万年の永きに渡って身体の自由を奪われた。
棺から解放されたビルゲニアは棺の中にて三神官達の会話を聞いていた、というのだから、剣聖は三万年間推移する状況を知りながら何も出来ない状況の置かれていたのだった。
以上が番組登場以前のビルゲニアについてはっきりしている事だが、これで精神が破綻しなければかえって異常と云えるだろう。
創世王の糸引き 悪の組織並びのその首領は色々あれど、シルバータイタンは個人的にゴルゴム創世王ほどついて行けないと感じる奴を知らない。
ショッカーからバダンまでを裏で糸引いた大首領・帝王・元帥・総統も、クライシス皇帝もそれなりに多少は部下を思う気持ちがあり、意見の交換もあったが、創世王は一方的に命令を伝えるだけで、真意も意図も丸で明かさず、従わざるを得ない力は感じても、従おうと云う気持ちは丸で湧かない。
そんな創世王の勝手な思惑で時に後継候補に祭り上げられ、時に必要物を与えられず、時に危険分子として監禁され、時に御都合的に解放され、時にライバルを倒す武器を与えられられた剣聖ビルゲニアの最後の言葉が「俺は利用されたに過ぎなかったのか!?」である事に「何を今更?」と思ってしまいつつも、直後に「創世王様!」と尊称付きで主君の名を絶叫して果てた剣聖に憐れみを覚えてしまうのもまた事実である。
傲慢で尊大な創世王の次期候補に祭り上げれれば、自らもそうなる事を当然と考える、と見るのは穿った物の見方だろうか?
そしてそう思わせる程、ビルゲニアの後半生は創世王の勝手な思惑に縛られている(もっとも、それは三神官もシャドームーンも仮面ライダーBlackとなったブラックサンも同様なのだが)。
突然の蘇生 ブラックサン抹殺並びにシャドームーン蘇生を初め、人類を屈服させる為の諸計画が遅々として進まない事に業を煮やした創世王は三神官に剣聖ビルゲニアの棺からの解放を命じた。
「それだけはご容赦を!」と三神官がストーリー上初めて見せる周章狼狽混じりの嘆願に創世王が耳を貸すような人物(?)でない事は前述した通りである。
渋々封印の札と戒めの鎖を解き放った三神官にビルゲニアは不敵に剣を振るい、自らの剣と剣術に錆付きがないことを誇示しつつ全てのやり取りを棺中にて聞いていた事を告げた。
かつてはその剣の腕でビルゲニアが三神官をひれ伏させた事実を考慮すれば三神官にとって暴君とも云える男が上辺だけの敬意を払う姿は無気味なものがあっただろうし、ビルゲニアにしても棺に閉じ込められて解放された全ての経緯と創世王の命による背景から、膂力で自分に劣り、部下になる予定の三神官達に敬意を払わなければ成らないのは憤懣やる方なく、そこには侮蔑と皮肉混じりの追従になるのは必然とも云えた。
自分達の主君は創世王、未来の主君はゴルゴムに染まったシャドームーン(場合によってはブラックサン)と考える三神官達はビルゲニアに命令などしなかった。
真面目に従うとはとても思えないし、恨みを買ったり、陰謀に利用されてはたまった物ではない。
故にビルゲニアの方から三神官達に怪人を借り受けたり、作戦遂行の助力や、ライダー打倒の新策を提言し、裁可を得る立場に回る事となり、そこには本来主従の立場が逆転した事を嫌と云うほど知り尽くし、互いが憎み合う薄ら寒い空気が充満するのである。
創世王よ、貴様本気で組織を引っ張っていく気はあるのか?
とシルバータイタンは問いたくなる。
面従腹背の日々と犠牲 剣聖ビルゲニアは直に三神官から指令を受ける事がないため、意に添わぬ命に服さなければならない事はないものの、何も変化がない状況では部下である筈の(と少なくともビルゲニアは思っている)三神官に敬意を払わなければならない日々が続く事になる。
勿論それはビルゲニアにとって屈辱で、耐え難い。創世王の覚えが目出度くなる手柄の為にも彼は三神官達の数々の作戦に意見する事になる。勿論ただ意見をするだけでは却下される可能性が高い(実際バラオムは殆ど耳を貸そうとしなかった)。故にビルゲニアは剣だけでなく知略・謀略を尽くした。それは基本として他者を使う事である。
配下の怪人達を褒め、煽て、作戦成功率をダロム辺りに仄めかしての指揮権を移譲、処刑される筈の黒松教授(黒部進)の処刑を兼ねた利用、ロードセクターを造った大門博士の愛弟子・江上博士を拉致して対抗マシン・ヘルシューターを造る計画、同胞ハチ怪人の仇討ちを希うツルギバチ怪人を利用する為の哀訴、etc………だが、全ては己の為、他の世紀王(対象は主にライダー)を抹殺し、創世王の覚えを目出度くする成果を挙げる為である。
故に黒松・クロネコ怪人を平気で犠牲にし、怪人達に辛勝して疲労しているライダーに対する攻撃、子供心の犠牲も厭わないという無慈悲且つ陰湿な作戦も多い。そしてその卑劣さや無慈悲を詰る南光太郎(倉田てつを)や三神官達の対し、自分が云われる時は何処吹く風である(自分が姑息な事をされた時は思いっ切り怒る)。それは丸で自らが受けてきた不遇をぶつけんとしている様にも見える。
一見するだけでは見ていて気持ちいい物ではないのだが、この剣聖ビルゲニアの存在をクローズアップさせる事でゴルゴムが如何なる組織であるか?創世王が如何に傲慢か?そんな尊大で強欲な征服欲がどんな破壊を生むかが良く分かり、同時にそれと戦う仮面ライダーBLACKと云うヒーローの魅力が良く分かることを見逃してはならないとシルバータイタンは考える。一例を下記の表に記しておきたい。
参照 第28話「地獄へ誘う黄金虫」 作戦 黄金の巣を作るオオガネムシを人間社会に蔓延させ、人々の勤労意欲を損なわせ、人間社会の崩壊を促す。 ビルゲニアの悪意 欲に目が眩み、倫理観も真面目さも失った人類に守る価値を見出せなくなったライダーを嘲笑う。 光太郎の負けじ魂 一人の少年サトルは目が眩むこともなく、欲に正気を失った両親を光太郎と供に必死に説得する。
異常自体にゴルゴムの陰謀を嗅ぎ取った光太郎は絶望したと見せかけてビルゲニアとコガネムシ怪人を誘き出し、「おれは絶望なんかしない!サトル君のような純粋な心をもつ少年がいるかぎり、絶対にするものか!!」と云い放つ。
三つ巴の世紀王達 剣聖ビルゲニアが暗躍する一方で三神官たちはシャドームーン覚醒に奔走し、シャドームーンの素体となった秋月信彦(堀内孝人)の妹秋月杏子(井上明美)を拉致してその生体エネルギーをシャドームーンに注ぎこんで覚醒させる為の二度目の試みに出た。
焦るビルゲニアは自らの解放命令を出した創世王に「もう私は用無しと云うのですか?!」と詰問するも、返って来たのは回答ではなく、創世王の専用武器であるサタンサーベルに通じる通路への誘いだった。
地獄の業火と亡霊−恐らくはサーベル奪取に失敗したかつての世紀王達のなれの果てなのだろう−の魔手が襲いかかる道だったが、手傷を負いながらもビルゲニアはサタンサーベルを奪取し、自らの妖剣ビルセイバー供に振るって杏子を横取りして、シャドームーン覚醒儀式を中断に追いやった。
余勢をかってライダー抹殺に走ったビルゲニアとは裏腹に唖然呆然とする三神官に彼等の生命の源である天の石(ダロム所有)・海の石(バラオム所有)・地の石(ビシュム所有)をシャドームーン復活に捧げろと命令する。
万一、石の力を使い果たしたらどうなるかどうなるか?一体創世王は何を考えているのか?との疑念に狼狽せずにはいられないバラオムとビシュムだったが、ダロムはシャドームーンとビルゲニアを両天秤に掛けているとの推測を話し、「やるしかない!いずれにしてもビルゲニアの天下になれば我等は終わりだ!」と云って残る二人の決意を促した。
ここまで嫌われるビルゲニアって一体……??と思ってしまうが、創世王の傲慢振りを見ると、そうなろうとして(なる筈だと思っていて)過去の振る舞いに及んだであろうビルゲニアの嫌われ振りも無理がないと同時にそれを覆された無念にも幾ばくかの同情が湧く。
やがて三神官の執念は身を結び、シャドームーンが覚醒したが、この時点での創世王の真意はシャドームーンにブラックサンのキングストーンを奪わせ、次期創世王とすることだろう。
ダロムの手術が精神にまで及んでいた信彦は完全にゴルゴムに染まり、五万年の寿命を持つ創世王にしてみればつい最近次期創世王にしようと思っていた二人の内一人が、彼の思惑通りに改造され、覚醒したのである。
かくしてビルゲニア最大にして最後の悲劇が訪れた。
シャドームーンが右手を挙げるや、掌より赤い光線が空間を超えてライダーと交戦中のビルゲニアに降り注ぎ、サタンサーベルは光の中に消失した。
その隙を突かれてライダーパンチとライダーキックを食らったビルゲニアは「おのれ、三神官どもの仕業か?!」と歯噛みしたが、シャドームーンの仕業であり、引いてはそうすればサタンサーベルがビルゲニアの手から失われるようにしていた創世王の陰謀だろう。
アジトに帰還したビルゲニアは三神官を探して、未だ虫の息である三神官に、次いで甦ったシャドームーン、そしてその手にサタンサーベルが握られている事に気付いた。
ビルゲニアはサーベルの返還を迫るが、シャドームーンは「力づくで奪え。」と挑発、必然二人の世紀王の一騎打ちとなるが、ビルゲニアのビルセイバーによる斬撃はあっさりとサタンサーベルに弾かれ、ビルセイバーはビルゲニアの手からも遠く離れた。
一瞬、ビルセイバーの行方に眼を奪われたビルゲニアにシャドームーンの斬撃が襲いかかり、その一撃はビルゲニアがとっさに防ごうとして面前に呈したビルテクター諸共ビルゲニアの体を斬り裂いた。
剣聖ビルゲニアは前述した様に「俺は利用されたに過ぎなかったのか!?創世王様!!」と絶叫して倒れ、その体は炎に包まれ、やがて消滅した。
そんなビルゲニアに対してシャドームーンは「所詮キングストーンを持たぬ者に次期創世王など叶わぬ事なのだ。」と云い放った。
シャドームーンの言葉通りならビルゲニアがサタンサーベルを所持できない事や次期創世王候補レースに敗れる事は初めから決まっていたことになり、三万年前にキングストーンを彼に与えなかった段階でビルゲニアの運命が決まっていた事になる。
草葉の陰で自らの最後の疑念がその通りである事を知ればビルゲニアは創世王に忠誠を抱き続けただろうか?
検証報告を受けた道場主より 創世王の腹の内を見せずに無茶な命令を繰り返し、そこに信義も情もない荒唐無稽振りには閉口しますね。
剣聖ビルゲニアは棺に閉じ込められる前の人生(?)に謎が多いのでもし性格の全てが創世王によって「御前は次期創世王だ。」と摺り込まれて形成された上で三神官達の尊大に振る舞い、キングストーンを与えないままに棺に閉じ込めて利用したいだけ利用したのだとしたら、自らの早計を棚上げしてキングストーンを与えずにビルゲニアの性格を破綻させた創世王の犠牲になった面は大きく、これほど悲惨な悪の大幹部は存在し得ないでしょう。
勿論、ビルゲニアが創世王より次期創世王たる確たる承認も受けないか、何某かの資質観察期間であるにもかかわらず剣技をかさに着て横暴を繰り返した果てに棺入りしたのだとしたら同情の余地は少ないでしょう。
しかし冷たい事を云うなら、キングストーンを与えられず、三万年も棺に幽閉されながら創世王に追従する道を―果たして選択の余地があったかどうかは不明だが―選んだ事に、「創世王の傲慢を見切って、ゴルゴムの宇宙支配を内部から崩壊させる道を選んで欲しかった」という思いから、結局はビルゲニアは次期創世王と云う大権力の座に目を眩ませ続けた自業自得の惨死との見かたも成り立ちます。
勿論、三万年と云う人間の常識では測れない時間が及ぼす影響を考慮し切れない事を忘れてはいけないのですが。
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