スカイライダーの必殺技
指定必殺技:スカイキック
スカイライダーとスカイキック
今更いうまでもないことだが、『仮面ライダー(スカイライダー)』は『仮面ライダーストロンガー』が終了し、第一期仮面ライダーシリーズが終了後、三年七ヶ月の時を経て、始まったもので、「帰ってきた仮面ライダー」のイメージが強く、同番組を語るとき、今でも「原点回帰」と言う言葉が頻出する。
実際、スカイライダーは客演ライダーが登場しない状態では単に「仮面ライダー」と呼称される事が多く、その姿は1号ライダーと似ていて、敵組織ネオショッカーは嫌でもショッカーを思い出させ、大幹部ゼネラル・モンスター(堀田真三)の装いはショッカーのゾル大佐(宮口二郎)を意識していない、と言えば制作陣には大嘘つきの烙印が押されるだろう(笑)。
勿論、『仮面ライダー(スカイライダー)』にレギュラー出演された方々及び制作陣の名誉の為に言及するが、『仮面ライダー(スカイライダー)』は原点回帰の役割こそ持てど、決して『仮面ライダー』のリメイクなどではなく、スカイライダーにも、ネオショッカーにも、番組にも個性はちゃんとある。
そんなスカイライダーの必殺技はスカイキックで、アクションそのものは空高く跳躍したスカイライダーが空中でトンボを切り、キックを繰り出す、というオーソドックスな物だが、そのアクション、ステータスにはスカイライダーの個性を盛り込まんとの創意工夫が随所に見られる。
第1話でガメレオジンに放たれた時は大空から急降下する右足を見る視点で炸裂させるまでが映され、サブタイトルの「改造人間 大空を翔ぶ」に象徴されるセイリングジャンプより先に披露され、「スカイ」の名が叫ばれた最初を担った。
また歴代ライダー同様、様々なバリエーションのキック技が作中を通じて登場するのは『仮面ライダー(スカイライダー)』も同様だが、大回転スカイキック、大反転スカイキック、スカイスクリューキック、スカイ大旋回キック、スカイダブルキック等の技名からも明らかなように、スカイライダーのキック技は「○○スカイキック」か「スカイ□□キック」のパターンで名付けられ、セイリングジャンプのシーンが描かれていない時も大空を飛ぶ唯一のライダーであることにこだわったキックが放たれ続けた。
とにもかくにも『仮面ライダー(スカイライダー)』は原点回帰や客演ライダーと共におりなされたストーリー展開に目が行きがちだが、スカイキックの戦績とバリエーションとこだわりを凝視するとき、スカイキックを放つスカイライダーにも、スカイキックと戦ったネオショッカーにも、スカイキックを支援して共に戦った歴代ライダーにも、また一つの楽しい見方が出てくるのである。
考察1 スカイキックの戦績
仮面ライダーの名を聴けば即座にライダーキックを連想する人が多いように、一部例外を除いて多くのライダーは個々のキック技を持ち、勝負の多くも基本となるキック技が決めることが多い。スカイライダーのスカイキックはその典型である。
例によって、戦いの大半を―特に初期は―スカイキックが決め、『仮面ライダー(スカイライダー)』をリアルタイムで見ていた幼き日の道場主は幼馴染達と、「いつも決着はスカイキックで面白くないな。」、「たまにはスカイキックを破る敵が現れるか、スカイキック以外の技で勝負を決めて欲しいよ。」と囁きまくったものである。
そんな幼き日の道場主のイメージとスカイライダー戦績の実態に関して下表を参考にして欲しい
登場怪人 死因 ガメレオジン スカイキック クモンジン スカイキック コウモルジン スカイキック サソランジン Gモンスターに倒される ドクバチジン スカイキック キノコジン スカイキック カマギリジン スカイキック ムカデンジン スカイキック コブランジン スカイキック カニンガージン スカイキック サンショウウオジン スカイキック ナメクジン スカイキック アリジゴクジン スカイキック ハエジゴクジン スカイキック アオカビジン スカイキック ゴキブリジン スカイキック ヤモリジン 魔神提督に倒される ジビレイジン スカイキック オオカミジン スカイキック サイダンプ 大回転スカイキック クラゲロン ストロンガーに倒される コゴエンスキー スカイキック ムササベーダ(兄) ダブルライダーキック ムササベーダ(弟) スカイキック マダラカジン スカイキック ゾウガメロン スカイキック ドクガンバ スカイキック ヒルビラン 大回転スカイキック グランバザーミ 三点ドロップ ヒカラビーノ スカイスクリューキック オオバクロン 必殺空中稲妻落とし 黄金ジャガー スカイキック トリカブトロン Xライダーに倒される ドブネズゴン ライダームーンサルト マントコング V3に倒される タコギャング スカイキック キギンガー スカイキック ドラゴンキング ダブルライダーキック ガマギラス スカイアームドロップ ウニデーモン 2号に倒される オカッパ法師 スカイキック クチユウレイ 竹とんぼシュート ゾンビーダ スカイフライングソーサー ミミンガー 風塵地獄落とし ドロニャンゴー スカイキック ヘビンガー スカイキック カガミトカゲ スカイ大旋回キック アブンガー スカイダブルキック ドロリンゴ スカイキック ザンヨウジュー スカイキック タガメラス スカイフライングソーサー リングベア スカイキック 隊長蛇塚 ストロンガーに倒される 魔神提督 トリプルライダーキック ネオショッカー大首領 自爆 スカイライダーとの戦闘率 100.00% 決着率 87.27% スカイキックによる必殺率 75.00%
実際、第19話までは仲間に殺された等の例外を除けばすべての勝負はスカイキックが着けている。第17話でもゼネラル・モンスター (堀田真三)にとどめを刺したのは魔神提督(中庸助)が放った怪光線だったが、ゼネラル・モンスターに「自爆による相討ちへの決意」=「死が避けられない」との認識を与えたのは間違いなくスカイキックだったし、第16話でゴキブリジンのマントの前に完全防御されたシーンもあったが、結局はマントを捲り上げた状態で、マントに守られていないボディにスカイキックを炸裂させたことで勝利を収めており、スカイキックは無敵且つ、勝利を決める唯一の技だった。
これに土を着けたのは第20話・第21話に登場したサイダンプである。
臀部から出た尻尾状の三段式つっかえ棒で体を支えて上空から繰り出されたスカイキックを弾き返したスタイルは見てくれこそ些かカッコ悪いものの、純粋に自らの能力でスカイキックを完全に破っており、スカイライダーもサイダンプを倒す為に特訓を積むことで大回転スカイキックを編み出すことを必要とした。そう、スカイキックそのものは結局サイダンプを倒せず、同じ話でクラゲロンにも受け流されている(原理は不明)。
だが、スカイキックはその後もスカイライダーの代表的必殺技としてのステータスを崩さず、第20話こそサイダンプ・クラゲロンという二大怪人の強さを引き立てる立場に甘んじたが、以後も独占には至らずとも、数多くのネオショッカー怪人を倒し続け、黄金ジャガーやキギンガーと言った強敵も倒している。
また、他のライダーとの合体技ではあるものの、ドラゴンキング(←ネオショッカー怪人の中で三本の指に入るほど強いとシルバータイタンは見ている)を仮面ライダー2号とのダブルライダーキックで、魔神提督を仮面ライダー2号・仮面ライダーストロンガーとのトリプルライダーキックで倒しており、スカイライダー自身はあくまでスカイキックとして放っており、上表では合体技故に戦績としなかったが、スカイキックが単独以外でも大きな役割を占めていることが分かる。
確かに第21話での大回転スカイキックの開発、第28話での7人ライダーとの特訓で身に着けた99の技の修得によってスカイキックは唯一無二の技としてのステータスを無くしたし、数多くの技と比較すると技そのもののオーソドックスさもあって滅茶苦茶強い部類には入らなくなったが、後々の技もスカイキックから派生した技であったり、とどめをスカイキックに譲っていたりもするが、それは項目を変えて解説したい。
考察2 没個性ライダーにあらざる独特技
数多いる仮面ライダーの中でも、原点回帰ライダーとして仮面ライダー1号に似過ぎた為に見た目にも没個性的に見られるスカイライダーで、その代表的必殺技・スカイキックもまた極端に目立つ個性を持たない、と見られがちである。
実際、放映当時の幼き頃の道場主は番組前半、「どうせまた決着はスカイキックだろ。」という眼で同番組を視聴していた。
しかし、ストーリーを丹念に追えば制作陣のスカイキックへのこだわりは半端じゃなく、スカイキックはセイリングジャンプやライダーブレイクと並んで紛れもなくスカイライダーの個性を輝かせるべくストーリー上も重視されることの多い技で、その点においてはスカイライダー本人よりも宿敵・ネオショッカーの方がスカイキックと強く向かい合って来たと言っても過言ではない。
ネオショッカーは第16話では爆笑物の疑似スカイキック砲(拙作「もっと使えよ―もったいな過ぎる秘密兵器―」参照)を駆使してまでゴキブリジンにスカイキック対策に細心させ、スエズ運河の使者アブンガーは魔神提督の督戦を2週間無視してまでスカイライダーの偵察に徹し、特訓を積んだアリコマンドと自らがスカイキックをマスターしたことと緻密な作戦とで、掟破りのスカイキックでスカイライダーに倒された数多くの同胞の無念に報いんとした。
また、前述したサイダンプとクラゲロンの例からも、魔神提督が初めてコンビで改造人間を呼び寄せるに際して、如何にスカイキックを破るかに腐心していたかが分かる。実際、スカイキック破りに重点を置かないなら、サイダンプ&クラゲロンのコンビネーションは明らかに人選ミスである(笑)。
こうして見ると数々の同胞を倒したスカイキックはネオショッカーにとって「スカイライダー=スカイキック」の図式で済ませられる問題じゃなく、そのことがスカイキックをして、単なる「仮面ライダーが放つ跳び蹴り」を越えた存在たらしめている。そしてまた、スカイライダーもそんなネオショッカーとの戦いの中でオーソドックスな技であるスカイキックをステータスに留まらせず、7人ライダーとの特訓も加えて、大回転スカイキック・大反転スカイキック・スカイスクリューキック・スカイ大旋回キック・スカイダブルキックと言ったバリエーション技を繰り出し続けたのだった。
考察3 99の技にも色褪せず
第28話にて7人ライダーとの友情の大特訓を経て強化スカイライダーとなったスカイライダー(時系列的な区別で、存在としては以後も「スカイライダー」)は99の技と自称する数々の技を披露するようになった。
勿論「技の1号」と呼ばれた仮面ライダー1号の47の技や、仮面ライダーV3の「26の秘密」を大幅に上回る99もの技がすべて披露される訳がなく、それらの中にも一撃必倒の大技もあれば、牽制的な小技もあったが、実際に、ゾンビーダとタガメラスを倒したスカイフライングソーサー、カガミトカゲを倒したスカイ大旋回キック、キギンガーをグロッキーに追い込んだ風車三段投げ、クチユウレイを倒した竹トンボシュート、ガマギラスを倒したスカイアームドロップ、ドロニャンゴーに大ダメージを与えたスカイランニングストーム、ヘビンガーを追いこんだライダー卍固め、黄金ジャガーの 槍術を封じた槍渡り陽炎の術、と言った技が活躍した。
また、「99の技」と呼称されなかっただけで、友情特訓後に披露された、スカイダブルキック(アブンガーを倒した)、水平回転チョップ(ドロリンゴが化けた偽スカイライダーに使用)、岩石落し(ザンヨウジューに大ダメージを与えた)、ライダータイフーン脳天落し(リングベアに大ダメージを与えた)、三点ドロップ(グランバサーミーを倒した)、必殺空中稲妻落し(オオバクロンを倒した)、ライダームーンサルト(ドブネズゴンを倒した)、スカイバックドロップ(オカッパ法師に大ダメージを与えた)。風神地獄落し(ミミンガーを倒した)等の技も実際には99の技の一つである可能性は高い。
実に多くの技の使い手となったスカイライダーだが、上記の技の戦績を見て頂くと、強化特訓後に披露された技の内、実に9の技が、ネオショッカー怪人をグロッキー・戦意喪失・反撃不能状態に追い込んだものの、最後のとどめはスカイキックに譲っている。ここからも技持ちになったり、攻撃バリエーションが増えたり、歴代ライダーとともに技を放つきっかけが増えたりしても、スカイキックがその立場を、ステータス・戦績ともに色褪せさせていないことが窺える。
正直、これはワンパターンを排しつつも、それまでスカイライダーの戦績を築いてきた代表的必殺技・スカイキックの面子も保った好例と言えよう。贅沢を言えば、強化特訓後、セイリングジャンプとライダーブレイクも同じぐらいその立場と個性を尊重して欲しかったが。
総論 返す返すも残念なのはセイリングジャンプとライダーブレイクが強化特訓後に影を潜め、「99の技」の存在が充分に活かし切れなかったことに尽きる。勿論、視聴するだけの身で好き勝手言えることに比べて簡単な問題じゃない事は百も承知の上で言っているのだが。
現在では消えてしまっているサイトだが、かつて特撮房制作の参考にしていたサイトの管理人さんは強化特訓後にセイリングジャンプとライダーブレイクが披露されなくなったのは、体色が変わったことで過去のフィルムの使い回しが出来ず、新たに撮影するには予算の問題があったのでは?と推測していた。数字的な話は業界人ならざるシルバータイタンにはよく分からないが、管理人氏の推測を含め、スカイライダーの技に対する重点が、99の技、並びに歴代ライダーとの連携技に置かれた為と見ている。
そしてその99の技だが、第28話で友情特訓を受け、第54話で最終回を迎えた27話間で99の技をすべて出すのが無理なのは火を見るより明らかだ。キン肉マンの48の殺人技や、52のサブミッションも6年の時間をかけても少ししか出せなかったし(笑)。
しかしながらその中でスカイフライングソーサーの様に二度の出番を持たせた技が存在したり、スカイキックをステータス的必殺技から落とさなかったりした構成は見事だと思っている。
そして忘れてはいけないのが最終回三部作。
第51話でネオショッカーから救出した長沼博士(西本裕行)の証言で死んだと思っていた父が生きているという(偽り)の情報を得て激情に駆られたスカイライダーは改造人間FX-777の姿を求めてネオショッカー基地を襲撃する際に久々のライダーブレイクを敢行。そして最終回本当の最後の戦いでは、急所にクロスボウの矢を受けて半死半生になったネオショッカー大首領が酸素破壊爆弾を炸裂させて地球を道連れにしようとするのに対して7人ライダーと共にセイリングジャンプにて大首領を大気圏外にて爆死させた。
勿論魔神提督並びに大首領にスカイキックを炸裂させるのも忘れてはいない。
数多くの必殺技を設定・披露し、多くの歴代ライダーを登場させつつも、スカイライダーならではの技のアイデンティティが織り成す見せ場とステータスを損なわなかった制作陣の配慮は長く讃えたい。
でもその配慮があるなら、仮面ライダーストロンガーの超電子ドリルキックはちゃんとチャージアップしてから炸裂させてね(苦笑)。
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平成二一(2010)年三月七日 最終更新