7.それぞれに帰ってきたウルトラメン・帰りゆくウルトラメン
最終回の背景 『ウルトラマンメビウス』は第48話から、最終回である第50話が最終三部作として放映された。第一部である第48話「最終三部作T 皇帝の降臨」では暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人の尖兵として13体の無双鉄神インペライザーが地球に降り立ち、一体倒しても即座に空間転移で別の一体が表れるという連続攻撃で力を誇示したエンペラー星人はウルトラマンメビウスの引き渡しを条件とした降伏を地球人に迫った。
登場ウルトラマン ウルトラの父・ゾフィー・ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンエース・ウルトラマンタロウ・ウルトラマンレオ・アストラ・ウルトラマン80・ウルトラマンヒカリ 地球人名 ハヤタ 出演 黒部進・森次晃嗣・団時朗・高峰圭二 客演日 2007年3月31日 客演時サブタイトル 最終回「最終三部作 心からの言葉」 現れた場所 太陽周辺・フェニックスネスト前 使用した技 M87光線・スペシウム光線・ワイドショット・メタリウム光線・ストリウム光線・ウルトラダブルフラッシャー 来星目的 太陽で異常増殖した黒点除去並びにエンペラ星人打倒 変身シーン 無 戦った相手 暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人 スタイル ハヤタ=空港長、モロボシ・ダン=牧場主、郷秀樹=レーシング教官、北斗星司=ホテルレストランオーナー兼シェフ(※全て映画番に準じる) テレパシーを送った相手 ウルトラの父=エンペラ星人、ゾフィー=サコミズ・シンゴ隊長、ハヤタ=クゼ・テッペイ、モロボシ・ダン=アマガイ・コノミ、郷秀樹=イカルガ・ジョージ、北斗星司=カザマ・マリナ 顔を合わせたGUYSメンバー 無
折悪しくヒビノ・ミライがウルトラマンメビウスであることを知ったゴシップ記者ヒルカワ(加藤厚成)によってその正体がマスコミに暴露された直後で、世論は揺れ動き、政府からはメビウス引き渡しを求めてシキ査察官(斉藤洋介)がやって来る始末だったが、トリヤマ補佐官(石井愃一)がいつもの事勿れ主義者のイメージを払拭するような毅然とした態度で部下であるヒビノ・ミライへの信頼を述べて彼の引き渡しを拒否し、それを追認する様にサコミズ隊長が現れ、シキ査察官の台詞により、サコミズこそがGUYSジャパン総監その人であることが明かされた。
サコミズは「総監としての最後の仕事」と称してテレビ放送で大衆にウルトラマンメビウスはGUYSクルーの一員・ヒビノ・ミライであることを告げ、自らが亜高速航行中に出会ったウルトラマンの一人(ゾフィーのことである)から告げられた地球人への想いを語り、エンペラ星人に対する要求への応か否かの決断を促した。
地球人達の意思は圧倒的大多数でウルトラマンメビウスの引渡しを拒否(電話・メール・FAXなど、ありとあらゆるメディアを通じて寄せられた)し、エンペラ星人に膝を屈しないことを決め、その熱意は政府をも動かし、シキ査察官の元に「如何なる事があってもメビウスは引き渡さない。」という政府の新たな決定がもたらされた。
返答を迫った時間になっても地球人がメビウスを引き渡さないことに降伏の意思無しと見たエンペラ星人は13体のインペライザーに破壊活動開始を命じ、そのインペライザーに決意を新たにしたサコミズ総監の号令を受け、GUYSクルー及び世界各地のGUYSは迎撃に出た。
最終三部作の第二部である第49話「最終三部作U 絶望の暗雲」では前話より倒しても倒しても空間転移で次々に現れるインペライザーとの死闘の連続で満身創痍のメビウスはミライの姿に戻り、自らを必要とし、その健闘を応援してくれる地球人に微笑みかけるも、リュウ達によって休息を命じられた。
GUYS基地でインペライザーを迎え撃つGUYSクルー。戦車隊・シンクロトロン砲・シルバーシャークGといった火砲・火器の総動員で一体はインペライザーの破壊に成功するも、予測通り空間転移で現れたインペライザーにそれらの武器も破壊され、フェニックスネストにも大穴を空けられ、為す術はないかのように思われた。
だが次の瞬間、そのインペライザーは突然一刀両断にされた。剣撃の主は宇宙剣豪ザムシャーで、口調こそ自らが獲物と定めたメビウスの首を他者に取られるのを嫌った為との事だったが、戦った者同士にしか分かり得ない友情による物である事は後々の行動から明らかだった。
直後にインペライザーの残骸が空中に舞い上がりだし、上空で圧縮されて潰されていったが、これは念動宇宙人サイコキノ星人カコ(高宗歩未)と健啖宇宙人ファントン星人によるもので、両者とも過去のミライ並びにGUYSとの交流に答えた物だった。真に「まさかの時の友が真の友」といえよう。
だがついに正体を現した暗黒宇宙大皇帝エンペラ星人の前にはザムシャーの剣技もカコの念動力も抗し得ず、ウルトラマンヒカリの加勢さえもが一蹴され、ザムシャーはエンペラ星人の攻撃からフェニックスネストを庇い、「守る」ということの意味を悟って光の粒子となって消えた。
ザムシャーの形見・星切丸で辛うじて一撃を与えることに成功したヒカリだったが、ヒカリの救出の為に飛び立ったリュウまでもが戦闘機諸共炎の中に消えた……。
ウルトラメンの言動 アイハラ・リュウは戦死したかと思われたが、ヒカリよりナイトブレスとメビウスを託され、ウルトラマンヒカリとして自らの生存をミライに告げた。だがヒカリの危機は解消されず、ミライは「もう変身する力なんか残っていない筈」(カコ談)の体でメビウスに変身して飛び出すも、エンペラ星人の一撃を受けて姿を消した。
トリヤマ補佐官の指示でミライとリュウの救出に出たジョージとマリナ、次いで負傷の身を押して基地の守護を申し出るマル補佐官秘書(まいど豊)とミサキ総監代行の指示でやはり救出に出たコノミとテッペイは自らの力が及ばない事に打ちひしがれるリュウを発見するもミライは見つからず、黒点に覆い尽くされた太陽の光の届かない闇の中、一同は絶望しかけていた。
が、そこに前日までの努力を思い出して戦えとの励ましを送るようにウルトラ兄弟のテレパシーがGUYSクルーの面々に届いた。
ウルトラマンエース=北斗星司はマリナに勝利を信じて戦う仲間の意志を感じ戦うことを呼び掛けた。それは北斗がヤプールとの戦いに挫けかけるメビウスに月で戦う仲間と距離的に離れてもミライを信じて闘っていることを教え、諭して励ました時の台詞でもあった。
ウルトラマンジャック=郷秀樹はジョージに地球の未来がメビウスとGUYSの面々にかかっていることを告げた。そしてそれはミライが地球人に不信を抱きかけた時に郷秀樹の姿で教え諭した時に最後に云った言葉でもあった。
ウルトラセブン=モロボシ・ダンはコノミに仲間がいるからウルトラメンは戦える事を再度教え諭した。それは以前にコノミと面と向かっていった言葉の繰り返しだったが、場合が場合ゆえにその言葉はコノミに更なる勇気を与えた。
ウルトラマン=ハヤタはテッペイに彼等なら如何なる侵略者とも戦える事を保証し、自分達の弟を託した。それはかつてテッペイが聞こえたか聞こえなかったかのように呟かれた言葉だったが、今回ははっきりと告げられた。
GUYSクルーの面々にメビウスに語ったのと同じ言葉を託し、四兄弟はエースのメタリウム光線を皮切りに、セブンのワイドショット、ウルトラマンとジャックのダブルスペシウム光線で太陽を覆う黒点を消去させ出した。
そして徐々に復活する太陽光のように徐々に希望を取り戻したクルーの面々は一人項垂れるリュウにも励ましの声を掛け、そこにミライの声が聞こえ、リュウは己の左腕に輝くナイトブレスとそこから続けて聞こえるミライの声に再び希望を取り戻した。
最後まで諦めない事を誓って共闘し直そうとして手を取り合う5人の手に光の前進を包ませたミライが合流し、サコミズ隊長の号令の元、6人は文字通り一心同体となってウルトラマンメビウス・フェニックスブレイブとなってその雄姿をエンペラ星人の前に現した。
「僕はもう一人じゃない!」と一喝するミライ=メビウスはエンペラ星人のレゾリューム光線をも一蹴し、メビウスブレスとナイトブレスの合体技とも云えるメビュームナイトシュートを放ち、そこにサコミズ隊長の命で発動した最後のメテオール=スペシウム・リダブライザーがその光線を増幅し、かつてない強烈な光線がエンペラ星人に襲いかかった。
地上で反撃に転ずるメビウスに呼応する様に宇宙空間ではウルトラマンレオ・アストラの兄弟が1974年12月13日放映の『ウルトラマンレオ』の第36話「飛べ!レオ兄弟 宇宙基地を救え!」以来32年3ヶ月2週間ぶりにレオ兄弟最強技・ウルトラダブルフラッシャーでもって黒点消去に加勢した。
初めて劣勢に立たされたエンペラ星人は3万年間抱き続けてきた想い(闇への賛辞)を呪いを吐くが如くウルトラの父に対して呟くが、ウルトラの父は光の国にあって、光と闇が表裏一体であり、片方のみを見て力に頼るエンペラ星人に勝利がないことを告げた。
そして自分の部下達6人が一体となったメビウスの活躍を見守るサコミズ隊長に、一体となって戦おうと呼び掛ける声があった。それに応じたサコミズの体が光に包まれるや、サコミズと一体化したゾフィーがM87光線を放ちながらその雄姿を現し、メビウスはゾフィーと顔を合わせるやメビウスの中でマリナ・ジョージ・テッペイ・コノミ・リュウが自分達が共闘し、信頼しあって来た日々を振り返り、それがあって未来への希望と勝利への確信があることをそれぞれに述べた(背景では邂逅の日々や、共に戦って来たGUYSオーシャン隊長・勇名洋(村上幸平)、フジサワ・アサミ博士、アライソ整備長の姿が回想シーンで流された)。
その頃の宇宙ではストリウム光線を放つウルトラマンタロウとサクシウム光線を放つウルトラマン80も駆け付けており、太陽の復活とウルトラ兄弟の勝利は不動の物となった。
光の国で全てを見守るウルトラの父、個々の光線技を総動員して太陽の黒点を全て消し去ったウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンエース・ウルトラマンタロウ・ウルトラマンレオ・アストラ・ウルトラマン80、GUYSの面々と一体化して合体光線で遂にエンペラ星人を打倒したウルトラマンメビウスとゾフィー、そして甦った青空とともに戦いの終焉を祝福するように地下に非難していた民衆達が地上に飛び出してきた。
ゾフィーとウルトラマンヒカリが見下ろす中、ウルトラの父に今の自分の心境語りかけるミライは、地球での一年に渡る幾多の死闘を経て、遂にルーキーからウルトラ兄弟の一員として正式に認められたことをサコミズ隊長に告げられた。
ミライはウルトラマンメビウスとして、戦いの中で自分だけが知り得たことを後輩のウルトラマン達に伝授することを新たな使命として見出したことをGUYSの面々に告げ、クルー達に今までの恩義への謝意を述べ、別れの挨拶をした。
リュウ・ジョージ・マリナ・テッペイ・コノミの涙と激励を受けてウルトラマンメビウスに変身し、先に飛び立ったゾフィーとヒカリの後を追うように地球を飛び去り、GUYSの面々は隊長に昇格したリュウを除き、個々の本職に復した(サコミズは総監職に、ジョージはサッカー選手、マリナはオートレーサー、テッペイは医師、コノミは保育士に)。
ここにウルトラシリーズ40周年記念作である『ウルトラマンメビウス』は大団円とともに終幕した。次にウルトラ兄弟の雄姿を(素顔つきで)観れるのはいつの日の事だろう(苦笑)。
注目点 上記にほぼ全てを記述したので敢えて書きません(苦笑)。
惜しむべき点 これが最終回である事によって、篠田三郎氏演ずる東光太郎=ウルトラマンタロウの活躍が観られず、アストラの単独活動もなく、ウルトラマンキングやウルトラの母に出番がなかった事が惜しまれますが、基本的にウルトラ兄弟全員集合をただの顔見世にしない為には下手に全員に中途半端な見せ場を作るより、タロウ・レオ兄弟・80は敢えてあれぐらいの合力に留めて正解だった気もします。ともあれこれ以上の野暮は控えます(苦笑)。
統括の統括 数々の積年の謎を一部明かし、一部に新たな謎を孕んで『ウルトラマンメビウス』は終結した。以前拙サイトBBSで少し触れたが、歴代ウルトラマンが地球を去った時(下記の表参照)に比べ、仲間達の熱い視線と涙と笑顔でに見送られて万感の想いを胸に地球を去るウルトラマンメビウス=ヒビノ・ミライの別れは恵まれている。
対象者 別れの状況 幸or不幸 ウルトラマンの場合 ゼットンに敗れ、科学特捜隊のメンバーに見送られるものの、約10ヶ月間心身を共にしたハヤタには忘れられていた やや不幸 ウルトラセブンの場合 満身創痍でアンヌ(菱見百合子)のみ別れを告げ、隊員達には思い切り罪悪感を残す。 不幸 ウルトラマンジャックの場合 ゼットンとの戦いで戦死したと思われ、MAT隊員達とは出撃前の挨拶のみ。 不幸且つ悲哀 ウルトラマンエースの場合 ヤプールの罠に嵌ってTACの隊員達に別れを告げる暇もなく、ジャンボキングを倒した直後に地球を去る。 不幸且つ孤独 ウルトラマンタロウの場合 ZAT退職の形で仲間達に別れを告げて放浪の旅に出る。 まあまあ幸 ウルトラマンレオの場合 円盤生物シルバーブルーメの襲撃でMAC隊員全員と死に別れる。 不幸且つ唐突 ウルトラマン80の場合 マーゴドンを倒し、地球を自らの手で守り抜く事を誓ったUGMの面々に見送られ、ユリアンがもたらした使命の為に地球を去る。 かなり幸
上記の表を見ると、ウルトラ兄弟の大半が、自ら地球人としての姿で過ごした多くの時間を共にした仲間達とロクな挨拶もないままに地球を去らざるを得ない状況に追い込まれている。
もう一つ忘れてはならないのが、GUYSクルーの面々が今までのどのチームの隊員達よりもウルトラメンと近い距離にいた事がある。そもそもメビウスが最終回より遥か前に仲間にウルトラマンである事を告げて戦ったこと自体が異例である(科学特捜隊・MAT・ZAT・MACの面々は仲間の中にウルトラマンがいる事に気付かないままだった)。
40年前に邂逅したゾフィーとの思い出に「ウルトラマンと共に戦いたい。」との一念で総監としての身分を隠し、隊長としてメビウスと供にあり、最後にゾフィーと一体化してエンペラ星人にとどめを刺したサコミズ・シンゴ隊長。
尊敬する前隊長の体を奪ったハンターナイトツルギに真っ向から敵対し、心を取りも出した相手にウルトラマンヒカリの名を与え、ヒカリ・メビウスと二人のウルトラメンと一体化する贅沢な経験(笑)を遂げたアイハラ・リュウ。
ウルトラマンジャックが仲間を守ることに呼応する様に一般市民を守り、地球の未来が自分達にかかっているとの伝言に応えるようにメビウスと一体化したイカルガ・ジョージ。
月面に送られたウルトラマンエースの助言を殆ど独占し、自分を信じて戦う仲間を自らもまた信じよとの声に逸早く応えてメビウスと一体化したカザマ・マリナ。
最も卑劣な離間の策から逸早く抜け出し、仲間もその策から救い、その絆で地球での最後の戦いに挑む弟とをウルトラマンから託されてメビウスと一体化したクゼ・テッペイ。
共に助け合うウルトラ兄弟と地球人が一心同体で、互いを思いあってどんな強敵とも戦える真理を再度ウルトラセブンに説かれてメビウスと一体化したアマガイ・コノミ。
かつてこれほどウルトラ兄弟に近付き得た地球人の集団があっただろうか?否、ありはしない(反語)
『ウルトラマンメビウス』の世界は『ウルトラマン80』以来、四半世紀振りに怪獣・宇宙人・円盤生物の侵略を体験した世界だった。つまりそれまでのウルトラ作品はパラレルワールドの出来事となった。
『80』と『メビウス』の間に作られたウルトラ作品を貶す気は全くないが、シリーズ誕生40周年と云う記念すべき年に求められたウルトラマンのルーキーが求められたのはゾフィーからウルトラマン80までの歴史に連なるウルトラマンだったことがこの作品に多くのウルトラマン、複数形で云えばウルトラメンが地球に降り立った所以だろう。
シルバータイタンは単純に30年以上の時を経て当時のウルトラマンを演じた人々が、エピソードが、歴史が終結したことが嬉しかったし、この番組が終って尚、こんな風にウルトラメンが返ってくる日を心待ちにしている。
十人十色、千差万別で、同じ人間が一人として存在し得ないように、ウルトラメンにもそれぞれの個性があり、同じウルトラマンは存在しない。
そして全てのウルトラマンに自らが地球で尽力した歴史があり、それを弟・メビウスと地球人託す姿が過去・現在・未来を通してウルトラメンの活躍を尊ぶ私達に多大な喜びを与えてくれた。そんなウルトラメンが帰ってきたことに乾杯したい。
ありがとうゾフィー、ありがとう初代ウルトラマン、ありがとうウルトラセブン、ありがとうウルトラマンジャック、ありがとうウルトラマンエース、ありがとうウルトラマンタロウ、ありがとうウルトラマンレオ、ありがとうアストラ、ありがとうウルトラマン80、ありがとうウルトラマンメビウスそして改めて云おうありがとう全ての帰ってきたウルトラメン!
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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新