最終頁 今尚強烈な存在感

 くどいが、結託部族の出番は3部族合わせても半年に満たず、キバ一族ツバサ一族に至っては一ヶ月チョットの出番でしかなかった。
 しかも構成メンバーの少なさを考えると、これで「目指すは世界征服」と云うのは実にリアリティーが無い。シルバータイタンの推測に過ぎないが、デストロンという組織において結託部族には課せられたのは日本制服か、日本主要都市制圧程度ではなかったのかとすら考える(ドクトルGの時代に、ショッカーゲルショッカーの四大幹部と合わせて初めて「日本全滅」に着手していたことにご注目頂きたい)。

 つまるところ、結託部族の持っていたスケールは決して大きくない(立場で云えば、ブラックサタンの雇われ者だったジェネラル・シャドゥに近いか?)。酷評すればすべてが矮小と云ってもおかしくない。だが結託部族シリーズが面白くないか?と云われれば決してそんなことはない、と多くの人々が答えるだろう。そしてそれは『仮面ライダーV3』の放映から40年以上を経ても全く色褪せていない。

 結託部族を検証した本作の締めくくりとして、今尚色褪せない存在感の強さについて解説したい。


個々に上手く課せられた役割
 前頁で触れた「見せ場」に準拠する。

 風見志郎は第1話にて両親と妹をハサミジャガーに惨殺され、デストロンへの復讐の為に自らを改造人間にして欲しいとWライダーに懇願した。勿論改造人間の悲しみを知るWライダーはこれを拒絶したが、皮肉にも自分達を救おうとして重傷を負った風見の命を救う為とはいえ、彼を仮面ライダーV3に改造することとなった。
 改造手術は成功したが、次の第2話にてWライダーは東京を原子爆弾から守る為にカメバズーカとともに太平洋上に姿を消した。それゆえ、V3は改造人間としての自らの能力を何も知らないまま、デストロンとの戦いに身を投じることとなった。

 手探り状態でデストロンと戦う中、徐々に26の秘密に気付いたV3は戦闘能力を次々と開花させ、デストロンの計画並びに機械合成改造人間達を次々と粉砕した。それゆえデストロン首領は業を煮やし、ドクトルGを日本に派遣した。
 これにより、V3の戦いは「仮面ライダー3号VSデストロン怪人」から「正義VS悪の組織」にシフトしたと云えよう(原作でV3ドクトルGに、自分が強くなれたのはデストロン(との戦闘)のおかげ、と皮肉っていた)。

 やがてドクトルGショッカーゲルショッカーの四大幹部を失い、自らが心血を注いで改造したカメラモスキートも敗れ(その最中にインターポールのデストロン・ハンターたちによって改造人間工場も破壊された)、自ら出陣したドクトルGが戦死したことでデストロンの第一次攻勢は終わり、第二次攻勢として結託部族による日本侵略にシフトした。

 結託部族の一番手であるキバ一族シリーズが担ったのはWライダーの帰還」である。
 既に劇場版や第21話で生存が確認されていたWライダーだったが、第33話でユキオオカミに捕らえられた志郎、立花藤兵衛、珠純子(小野ひずる)、珠茂(川口英樹)、寒川博士父娘(三上耕・早川絵美)を救うべく、本郷猛と一文字隼人が素顔で復帰し、第2話で言及されていた、「3人の仮面ライダーが揃って戦う日」が実現し、物語は最高にヒートアップした。
 実際、これに続く第34話では最高視聴率をマークした。勿論トリプルライダーを一度に相手にした原始タイガーデストロンで一、二を争うと云っても差し支えない程の剛の者に仕上がった。
 視聴率だけで語れば物語の面白みはWライダーの存在に依存することになるだろ。しかし、「恐るべき魔法使い・キバ男爵」、「科学+呪術」、「太古から甦ったキバ一族の母なる魔女・スミロドーン」といった存在がトリプルライダーの花舞台に相応しい好敵手を演じたからこそキバ一族シリーズはライダー史に名高い痕跡を残したと云えよう。

 キバ一族シリーズに続いたツバサ一族シリーズはある意味、「象徴的能力でV3を苦戦させた正統派」と云えるかも知れない。
 勿論キバ一族ヨロイ一族も名前の由来となった身体能力を活かしてV3を苦戦させたが、ツバサ一族の身体能力活用振りは両者を一枚も二枚も上回っていたV3は短期間の間に二度も必死の特訓を余儀なくされ、その能力はバダンも大いに参考としたのは特筆に値する。何せ悪の組織は一度失敗した作戦は全く見向きもしなくなるから(苦笑)。
 惜しむらくは、佐久間健(川島健)の理由なき退場と、ツバサ大僧正最後の出番となった第40話が『仮面ライダー』第31話のリメイクとしか思えない作品になっていることだろう。リメイクが悪いとは云わんが、何も大幹部の最期の話にもって来なくてもいいだろうに、とは思ってしまう。

 そして最後のヨロイ一族だが、ライダーマンの誕生」と云えば、これだけで充分だろう。勿論デストロン最後の攻勢を担ったことや、残忍で悪辣なものが多い悪の組織の大幹部の中で群を抜くヨロイ元帥の存在も見逃せないが、すべての中心にライダーマンがいたと云っても過言ではない。
 V3ライダーマンと云う2人のライダーが併存し、そこにヨロイ元帥と首領が絡んだものだから、ヨロイ一族の構成員たちもストーリーからを反映させているところが面白い。残念ながらカタツブラーオニヒトデの様に存在感の薄い者も中に入るが、風見の親友が改造されたガルマジロン、未熟且つ不完全改造人間であったライダーマンに高圧的に振る舞ったカマクビガメサイタンク、偽のライダーマンを演じたシーラカンスキッド、狙撃や子供を操るという悪辣さがヨロイ元帥似の吸血カメレオン等は個々にその魅力・面白み・ストーリーとの絡みを今に伝えている。

 話数が少なくても、後世に残る名作は充分作れるという恒例と云えよう。


渋みと凄みのある俳優陣
 一流の俳優が演じれば稚拙なストーリーも何とかみられる作品になる。
 俳優が三流でもストーリーが素晴らしければ名作に仕上がることは充分可能である。
 勿論俳優・ストーリー共に一流であれば云う事は無い。結託部族が活躍した頃、その族長兼デストロン大幹部を演じた俳優を初め、数多くの名優が『仮面ライダーV3』に出演した。

 キバ男爵を演じた郷B治氏は強面な風貌・眼光と低めの声が為す立ち居振る舞いが時代劇を中心に理想的な悪役を演じたことで有名である。その演技力はキバ男爵の族長・魔法使い・戦士としてのカラーを巧みに見せた(オニビセイウチの最期を看取ったシーンなど、当時の悪の組織の大幹部としてはかなり稀有な例だろう)。
 惜しくも1992年9月11日に55歳の若さに倒れた郷氏の早世は細君であるちあきなおみさんを激しく悲しませ、四半世紀近い時を経て尚、ちあき氏が復帰する様子は見えず、郷氏の実兄・宍戸錠氏も「ちあきとは全く連絡が取れないんだ……。」と心配されていた(←宍戸氏から直接聞いた)。
 ちあきなおみさんがこのサイトを見ている可能性など億に一つもないと思うが(苦笑)、もしみていたら宍戸氏が心配しているので御一報をお願いしたい。

 ツバサ大僧正を演じた富士乃幸夫氏と、ヨロイ元帥を演じた中村文弥氏は大野剣友会の一員で、仮面ライダーシリーズへの貢献度は語り尽せない。当初、シルバータイタンは結託部族シリーズ個々の短さから、「一流の俳優を当てるのは失礼に当たるからスタントマンが大幹部役を担ったのでは?」と考えた程だった(苦笑)。
 ともあれ、体術にも、悪役としての立ち居振る舞いにも優れる両氏はV3の敵役として、悪の組織の残忍な幹部役として凄味と渋みを演じ切ったと断言出来る。殊にヨロイ元帥ライダーマンを棒殺せんとした悪辣さや、「結果がすべてだ!」と非常に振る舞いながら自らは無様に首領に命乞いをして殺された様が特撮史屈指の悪役としてその孝明を今に伝えている。
 勿論富士野氏の成功があってこそ、中村氏の起用があったことも見落とせない。ともあれ両名も既に故人であることは大いに惜しまれる。

 一方、1話限りの客演者も見逃せない。
 子役俳優として可憐で、どこかおマセな少女を何度も演じた斉藤浩子氏(第31話)、どこか陰のある博士、父親役の多い三島耕氏(第33話)、コミカルな立ち居振る舞いと強面の威圧感を演じ分ける佐藤京一氏(第36話)、面倒見のいい初老を数々演じて来た河合弦司氏(第36話)、強面役も正反対役も演じ分ける団巌氏(第37話)、丸で不自然さを感じさせない抜群の子役俳優・松田洋治氏(第39話)、どこかひねた役柄の中に純粋さを見せる演技の多い松坂雅治氏(第40話)、『帰ってきたウルトラマン』の上野一平隊員役で有名な三井恒氏(第41話)、後番組『仮面ライダーX』GOD秘密警察第一室長・アポロガイストを演じたことで名高い打田康比古氏(第51話)、と目白押しである。
 勿論、高名とは云い難い俳優諸氏の中にも好演された方々は多い。それらが結託部族シリーズを短いからこそ、濃密なものにしていると断言しても良いだろ。


「長きもがな」と思わせる設定・世界観
 特撮や仮面ライダーとは全然関係ないが、「長きもがな」とは、『小倉百人一首』の第50首目に収録されている、道場主が好きな「君がため 惜しからざりし 命さえ 長きもがなと 思いけるかな」という藤原義孝の和歌から取ったものである。
 この「長きもがな」というのが、シルバータイタンが結託部族シリーズに対して唯一付けたいクレームである。

 勿論、前述した考察から結託部族シリーズを長期化するのはそれこそ面白いストーリー作り以上に困難だったろうし、冗長的なものになっていれば濃密さを失い、後世に名高いシリーズになっていなかったかも知れないことは充分に分かっている。
 分かっている上で、結託部族シリーズが素晴らしいものだから、惜しむべき点として述べずにいられなく手の一言としての、「長きもがな」と思って頂きたい。


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令和三(2021)年六月一〇日 最終更新