Act9.第38話 来たれ城茂!月給百万円のアリコマンド養成所




注目登場人物:祐一郎



客演ライダー:仮面ライダーストロンガー・城茂(荒木茂)



ストーリー概要:月給百万円という高額の給与を餌に若い男を集めるネオショッカーの目的はアリコマンドの補充とその改造段階における脳外科手術力のアップである。
 行方不明の息子の身を案じる母に頼まれて怪しい面接に潜入する洋に、同様の事件を追って帰国した城茂がその後を追う。


役割祐一郎の役割は一言で云うなら「手がかり」並びに残虐性表現。脳改造を受けながらも辛うじて自我を僅かに残している事から同様に攫われて来た若者達、そこに混じってネオショッカーの悪巧みを叩き潰さんとする筑波洋に、そして視聴者にネオショッカーの非道と残虐を見せつける。
 それは仮面ライダーシリーズの回帰性の再確認をも担う。



注目点:歴代仮面ライダーが続々と素顔で帰国して客演するのもこの第38話で連続する事8週目で、些か注目が歴代ライダーに偏りつつある中で、久々にマスカーワールドの持つ怪奇性を祐一郎達が見事に見せてくれる。

 この回の作戦でネオショッカーは月給百万円という待遇を餌に事業内容もはっきりさせずに求人を行うわけだから、誤解を恐れずに書けば大金に目がくらんで胡散臭さも軽く考えてしまう若者達の集まりが描かれるわけで、役所が与えられた祐一郎と僅かな例外を除けば後の若者は先に脳改造を行われてしまった半分ゾンビのような没個性連中である

 その応募先発組の一人であり、ひょんな事から筑波洋がその行方を探して潜入する要員ともなった祐一郎は如何なる理由によるものか唯一自我を僅かに残し、後からやってきた応募組に訳も分からず襲いかかろうとする他の犠牲者達を押し留め、洋達にネオショッカーが自分達に何をしたかを教える役をも務めた。
 たどたどしい口調で、額に手術根をつけた蒼白の無表情で、しかし確かな語調で「もう名前も、自分が何者なのかもわからない。ただ、日を追うごとに自分が何か得体の知れないバケモノに変わっていくのだけが、ハッキリとわかる」と語る祐一郎の台詞に当時小学生だった道場主ははっきり戦慄したのを覚えている。
 ガキの頃、人間を凌駕するパワーを得るだけで改造人間に憧れた記憶が、道場主にもその周囲の友達にもあったのだが、人間であって人間でない存在にされる改造人間が本来如何に悲しい存在であるかを再認識させてくれる所も見逃せない。

 半分脳フェチと化していたドクター・メデオは仮面ライダーストロンガーによって感電死させられたが、残酷な改造の数々を考えればメデオの呆気ない死は些か物足りなくすらある。否、残虐非道な相手と同じにならないためにもあれぐらいの呆気なさで丁度良かったと見るべきか?(鍵をこじ開けようとしてガマギラーに殺された一人を除けば全員が助かっている)

 ともあれ祐一郎の怪演は僅かに自我が残された人間、というきわめて限定されたシチュエーションを演じるものでもあり、悪の組織が行うマインドコントロールが為す精神の束縛が体の束縛以上に残酷である事をも演じた好例として現実の精神的束縛を許さない意味からも折りに触れてあげてみたい話である。
 道場主はかつて某宗教集団による毒ガステロ直後に自らの潔白を訴える信者達を生で見たことがあるが、青白い痩せぎすに死んだ眼で周囲を睥睨しながら準備を進める信者達の姿はとても自らの意志で動いているとは思えず、彼等を直接的・間接的に凶行に駆り立てた教祖と幹部達に激しい怒りを覚えた事を昨日のことの様に覚えている。



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令和三(2021)年五月一二日 最終更新