もっと使えよ!!−もったいな過ぎる秘密兵器

仮面ライダーシリーズの場合

 ショッカーに始まる昭和仮面ライダーシリーズの悪の組織はスケールや手段の違いこそあれど、ほぼ例外なく世界征服を目指す悪の秘密結社である。
 つまり、(少なくとも)目的達成の目途が立つまでは一般社会に対してその存在さえ秘密にする訳だから、兵器・科学技術・作戦・人材・所在地に対する機密は(一応は)厳重で、その保持の為には目撃者・脱走者の命を奪うことも辞さない。


 まあ、だからといって一度敗れた作戦を二度は採用しなかったり、せっかく開発した兵器を次回から見向きもしなかったり(細菌テロ・毒ガスにその傾向が強い)、で余りにもそれまでに消費したであろう時間・労力・資材・費用の無駄ではあるまいか?現実の世界の兵器や毒ガスの様に対抗策が取られたにしても何度も使える物もある事を思えば実に勿体ない。
 勿論改造人間手術に関する技術や、テロリズム上の基本方針(例:デストロンドクトルG (千波丈太郎)の細菌テロに対する心情)等、組織を通じて受け継がれたものもある。そこで一度きりにされた兵器・科学技術・作戦・etcの存在をピックアップするとともにその便利さ、再利用されなかった理由の推定等を組織ごとに綴ってみたい。


1.ショッカー(仮面ライダー)

1−1.デンジャーライト
登場話
第12話「殺人ヤモゲラス」


有効性
 白川保博士(吉田輝雄)開発の、名前の通り、危険な光線。結論から先に云えばこのデンジャーライトはそれを狙ったヤモゲラスを葬るのに貢献した。おかげでヤモゲラスはシリーズ初のライダー以外に倒された怪人第1号になってしまった(まあ、肉弾戦でボクサーに負けそうになるような奴だったが……)。

 ヤモゲラスに照射されたデンジャーライトは狙い過たず、ヤモゲラスを白骨化させた。この2週間後に仮面ライダー2号が登場していることを考えれば、仮面ライダー1号ヤモゲラスの改造技術に3ヶ月間で大差があったとは思えない。 ということは、デンジャーライト仮面ライダーを打倒する手段としては極めて有効な武器だったのである。


何故再利用されなかったか?
 いきなり話の腰を折るが、ショッカーはこのデンジャーライトを我が物としてはいない。つまり再利用もへったくれもないのだが、ヤモゲラスの前後を挟んだ改造人間がそれまでのショッカー怪人の長所の集大成であるゲバコンドルと、再生改造人間指揮官第1号であるトカゲロンであることを思えば、強力な武器の奪取をよりによってこんな弱い奴に命じたショッカー首領(納谷悟朗)の人選には強い疑問を覚えるのである。



1−2.バーリヤ破壊ボール
登場話
第13話「トカゲロンと怪人大軍団」


有効性
 原水爆による襲撃にも耐え得る東洋原子力発電所のバーリヤを破壊する能力を持つ。  実際、このバーリヤは再生サソリ男と再生蝙蝠男の体当たりを防ぐ力があり、そのバーリヤを破るのは並大抵ではない。
 ショッカーの科学陣はバーリヤ破壊ボールが充分な力を発揮する為には5kgの重量があるこのボールを20mの距離をもって投じなければならない、と首領に説明し、それだけの力でバーリヤ破壊ボールをバーリヤに投げ込む為に、ショッカーは強烈なシュート力を持つサッカー選手・野本健(堀田真三)をチョイスし、彼がトカゲロンとなったのは周知の事実である。

 皮肉にも、このバーリヤ破壊ボールトカゲロンの殺人シュートにて打ち出されたのを、仮面ライダーシリーズ初の特訓技・電光ライダーキックで打ち返され、トカゲロンを直撃し、11人の怪人をまとめて爆殺した。
 破壊力は申し分ないだろう。


何故再利用されなかったか?
 一言で云うなら使い勝手の悪さと云える。
 5kgの重量を持つ爆弾を20m飛ばす、なんて然程凄い事とは思われないかも知れないが、「仮面ライダー」第3話の段階でライダー1号のジャンプ力は15メートルに過ぎず、「ウルトラマン」での初代ウルトラマンのウェイトリフティングは10万tタンカーを持ち上げる力とされ、20万トンのスカイドン相手にはふらついていた(100kgのバーベルを何とか持ち上げる人が200kgバーベルに挑んだと思って下さい)。
 最初の作の第1クールでは5kgを20mの投擲力を求めるレベルでも相当なものだったのだろう。わざわざ名キッカーを改造人間の素体に選んでいるぐらいだし、自らが吐く毒に耐える素体探しに苦労したピラザウルスの例(巨象を10秒で眠らせる麻酔弾に1分間耐えられたプロレスラーを探さなければならなかった)からも、使い手探しに厄介な武器と見られたのだろう。
 穿った物の見方をすると『仮面ライダーSPIRITS』第8巻で東京に現れたショッカー軍団の一員として登場したトカゲロンバーリヤ破壊ボールを得物としていたから、ショッカーにとって武器としては捨て難く、使い手を選び難い複雑な心境の遺物だったのだろう(笑)

 そこで締め括りに道場主の親友M氏の一言を紹介したい。
 発射装置ぐらい造れよ!ショッカー科学陣!!



ショッカーへの雑感
 シルバータイタンの勝手な推測ですが、ショッカー首領は自らが組織・編成したショッカーの科学力、人選観察力に絶大な自信を持ち、その後何度も組織作りをすることを予測してなかったのだろう(笑)。
 故に優れた科学力と選ばれた栄光の人間が改造人間となり、その改造人間を統べる自らが全てを支配する思想に沿って行動し、「優れた武器」「優れた人物」の組み合わせにこだわり、特定の武器を別の人材が使用することを考えなかったのだろう。
 初期ショッカーが改造人間一人を改造するにも本郷猛 (藤岡弘)・仮面ライダー1号一文字隼人 (佐々木剛)・仮面ライダー2号、早瀬五郎(渚健二)・さそり男、野本健・トカゲロン、草鹿昇(穂高正伸)・ピラザウルス、と云った人材を、コンピューターを駆使してまで捜し求めたが、ゾル大佐 (宮口二郎)等幹部が着任すると人材にはこだわらなくなった風がある。
 「人材+特定武器」の組み合わせから、「大幹部の指揮能力+改造技術」に路線変更した時点で、ショッカー首領ゲルダム団との融合=ゲルショッカーの結成を考えていたのかも知れない。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新