2.ゲルショッカー(仮面ライダー)

2−1.酸欠ガス
登場話
第81話「仮面ライダーは二度死ぬ!」


有効性
 酸欠ガスゲルショッカー最初の殺人兵器にして、東京都民皆殺しを目的に開発された恐るべき毒ガスである。
実の所、サソリトカゲスによって噴出される筈だったこのガスの使用は仮面ライダー1号によって阻止された。だが、酸欠ガスは実際に人を殺めており、その威力は口頭にて説明されていた。
ブラック将軍がこのガスの威力を元ショッカーの科学者・峰信太郎博士(佐々木功)に語らせたところによると、「50kgあれば東京都民1000万人を皆殺しにできる」というのである。
単純計算で、1kg辺り20万人の殺傷能力で、1人を殺す致死量はたったの5mgなのである。体重60kgの人に対するサリンの致死量が1680mgであることと比較すれば336倍の殺傷能力なのだ。しかも東京都内に拡散して尚、殺傷能力を持つのだから。


何故再利用されなかったか? 当初不可解に思ったが、冷静に考えればこれはすぐに得心がいった。要は峰信太郎が生き残ったことにある。
 ブラック将軍酸欠ガスの実験をバスの中で行った。ゲルショッカーの秘密を知る科学者達に「釈放する。」と偽って送迎のバスに乗せ、そこで酸欠ガスの実験と科学者の処刑を同時に行う一石二鳥を狙っていた訳だが、「釈放」の知らせを受けた際に峰は、ショッカーの秘密を知る自分達が簡単に釈放される訳はない、と考え、万一に備えて用意しておいたガスマスクで難を逃れていた。

 後に峰がサソリトカゲスと戦う仮面ライダー1号に弱点を助言していたように、酸欠ガスのことを知っていたのも明らかである(前述したようにブラック将軍はこの兵器のことを峰に語らせている)。だから峰はタイミング良くガスマスクを用意していたのだろう。
 となると、ゲルショッカーが後々酸欠ガスを兵器として用いても峰の手でガスマスクが量産されたり、解毒剤が開発されたりして、無用の長物と化していた可能性はかなり高い。悪くすると酸欠ガスによるテロを生き延びた人々によるゲルショッカー探索の手が厳しくなる可能性すらある。

 ウム、冷静に考察すると当たり前の結論になってしまったな(苦笑)。

 それにしても、用意してあった酸欠ガスだったからマスク一つで生き残れたが、もし、ブラック将軍の胸先三寸でクラゲウルフの放電実験が行われていたらどうやって生き延びるつもりだったんだい?峰君?


2−2.絵画テレポート装置(仮称)
登場話
第88話「怪奇 血を呼ぶ黒猫の絵″」


有効性
 ゲルショッカー怪人ネコヤモリが利用した移動手段で、一対の黒猫の絵を用い、片方の絵からもう片方の絵へ瞬時に移動することを可能としたものである。
 チョット考えただけでこれは極めて恐ろしいブツであることが類推出来る。たまたま黒猫の絵というバレバレの内容だからすぐに怪しむことが出来るが、絵と絵でネコヤモリだけがテレポート出来るこのシステムを応用すれば、別に猫の絵である必要はないのだ。単純な風景画で、背景の月でも利用されたら防ぎようがない。誠に恐ろしい装置である。

   実際、この絵画テレポート装置ネコヤモリの移動手段と知って尚、仮面ライダー1号とその仲間達は対応に苦慮した。
 仮面ライダー1号を引き寄せつつ、一方で絵画テレポート装置を利用して世界平和会議の場に飛び、世界の要人を害さんとするネコヤモリの策そのものにライダーは為す術がなく、「すぐに(黒猫の絵を)壊せ!」というライダーからの無線を受けた警備中の滝も、指示内容を理解出来ずにいる内にまんまとネコヤモリは会議の場に侵入したのである。
 ネコヤモリ自身はサイクロンを駆使して駆けつけたライダー1号と乱入した滝の前に敗れたが、この絵画テレポート装置自体は全く妨害されなかったのである。
 あからさまな黒猫の絵を使ったのであれば、怪しさ120%で絵が排除されておしまいだが、ゲルショッカーは以後の有効活用についてもうチョット考えてみようとは思わなかったのだろうか?


何故再利用されなかったか? 正直、ゲルショッカー並びにブラック将軍がこの恐ろしき装置を再利用しなかった理由が思い浮かばない。ドラ○もんのど●でもドア並みに便利なのだから。しかも絵が残されながら仮面ライダー陣営はそれを追うことが出来ない。この便利さは他の様々な作戦に転用可能だろう。『ドラ○もん』を見ていてもどこでもドアがあれば事足りる話は多い。単純に考えれば凶悪なまでに便利過ぎて番組を壊しかねないから、といったところだろうけれど他に原因は考えられないものだろうか?

 無理矢理考えられる理由は3つである。
 一つは機密保持だろう。ど●でもドア並みに便利なシステムなら正義の組織だって咽喉から手が出るほど欲しいに違いないし、シルバータイタンだって、入手できるものなら会社と全都道府県の知り合い、可能なら海外にまで黒猫の絵を送りたい(笑)。だが、勿論このシステムが自分に外囲を持つものに悪用されたら大変なことになる。
つまりライダー達に脅威をもたらした絵画テレポート装置は、その機密が漏れればその便利さはそっくりそのまま自分たちへの脅威となる。後述する二番目の理由との関連も遭って、ゲルショッカーでは技術向上の日まで再利用を見送り、便利なシステムの機密が漏れることを防がんとしたのではあるまいか?

二つ目は使い勝手の悪さだろう。絵画テレポート装置が単純な物質転移装置なら戦闘員やブラック将軍もテレポートに加わってもいい筈であるが、装置の使用者はあくまでネコヤモリのみである。ライダー達に後を終われないこともあったが、毎週必ず新しい作戦を考えざるを得ないゲルショッカーのこと絵画テレポート装置にはネコヤモリしか転送出来ない理由が有り、それが量産化を妨げたのかもしれない。

3つめは逆用を恐れた、との見解である。電話同様絵画テレポート装置は2対で用を為す。絵画テレポート装置そのものが破壊されたり、とんでもない場所に放り込まれたりしたらテレポートした瞬間ネコヤモリには地獄が待っていることになる。
ともあれ、ゲルショッカー科学陣は猫の絵という分かり易い形状でテレポート装置などを作らず、もっとカモフラージュし易いもので作り、インパクトより機密性を重視すべきだった、ということだ(笑)。


2−3.変身ベルト凍結装置(仮称)
登場話
第97話「本郷猛変身不可能」・最終話「ゲルショッカー全滅!首領の最期!!」


有効性  ブラック将軍の正体であるヒルカメレオンが、自ら蘇生させたガニコウモルと仮面ライダー1号の戦いの映像をD博士に分析させ、本郷猛が仮面ライダー1号に変身する瞬間、約0.5秒間、本郷猛でもない、仮面ライダーでもない無防備な時間があることを発見した。 その死角とも弱点ともいえる時間を利用し、本郷を無力化させる為に(短時間で)開発されたのが変身ベルト凍結装置(仮称)である。 ゲルショッカーの基地内の電話ボックス程の空間に本郷を誘導したヒルカメレオンは事前に拉致していた少年ライダー対の仲間の生き血で怪人達を甦らせることを宣言し、慌てて変身せんとした。その刹那、狙い過たず変身ベルト凍結装置が作動され、変身ベルトは凍りつき、本郷は変身ポーズを取った中途の体勢で変身どころか、行動不能に陥れられた。

そう、変身ベルト凍結装置は完全のその性能を発揮し、ヒルカメレオンとD博士の目論見は成功したのである。しかし、翌週の最終回で何の脈絡もなく基地内に乱入してきた仮面ライダー2号によって、変身ベルト凍結装置はチョップ一発で粉砕され、その短くも華々しい役割を終えたのであった。


何故再利用されなかったか?
 ゲルショッカーが滅びたからである(笑)。組織が滅んでは再利用も何もあるまい……といっては身も蓋もない(苦笑)ので、真面目に検証するが、ゲルショッカー全滅後にデストロンを新編成した首領が以後ライダーベルト凍結を持ち越さなかった理由を検証してみよう。

 これも3つ考えられる。
 一つは機密喪失である。
 変身ベルト凍結装置を駆使したヒルカメレオンこそはゲルショッカー最高幹部ブラック将軍その人が正体で、ブラック将軍の使う物ともなれば機密保持には細心の注意が払われる筈で、そうなると2号ライダーによって装置が破壊された段階でその技術が喪失された可能性が高い。また、ゲルショッカー編成時にショッカーの人材と科学を不要とした首領が、デストロンにおいてゲルショッカーの技術を不要として破棄した可能性も否めない。

 もう一つには二度目は効かない奇襲策であることが挙げられる。
 変身ベルト凍結装置は電話ボックス並みに狭い空間で変身ベルトに向けて照射したからこそその効力を発揮した。このような方法は同じ相手に何度も通用するものではない。
既にその洗礼を受けた仮面ライダー1号が狭い空間を避けたり、変身ベルトを凍結させないシステムを組み込んだりしていれば変身ベルト凍結装置は無用の長物と化す。

 最後に科学技術向上による不要論である。
 後番組『仮面ライダーV3』の第3話においてデストロン怪人イカファイアがイカ墨の様な粉塵らしき物を仮面ライダーV3の変身ベルトであるダブルタイフーンに発し、その機能を停止させる、というシーンがある。その動きは変身ベルト凍結装置に類似しつつ、狭い空間や大掛かりな装置を必要とせず、恐らくは高温に晒されてもその効果が失われることはなかったと思われる。
 両者を比較すれば、成程、わざわざ変身ベルト凍結装置デストロンにて使う必要はなかった訳だ。否、変身ベルト凍結装置があったから、イカファイアの武器は開発されたのかな?


ゲルショッカーへの雑感
 簡単に云えばブラック将軍が唯一の大幹部だったことにあるのではないでしょうか?かつて、拙作『悪の組織の大幹部に学ぶリーダーシップ』でも触れましたが、シルバータイタンは、ショッカー怪人の3倍の能力を持っている筈のゲルショッカー怪人を大した連中とは思っておらず、ゲルショッカー怪人がライダー達の脅威となり得たのは偏にブラック将軍の名采配あったればこそ、と思っています(詳細は前述の拙作を参照)。
 それゆえにブラック将軍ゲルショッカー怪人→特殊機器のラインが確立されていない状態での各種特殊兵器の再利用は見送られたのではないか?との推測です。
 兵器や道具は便利であればある程悪用されたり、敵方に洩れたりした時に自らに還ってくる害を考えると、場合によっては新兵器を使い捨てにする勇気も組織としては必要だったのかも知れません。ゲルショッカーブラック将軍と肩を並べる大幹部がもう一人二人いるか、個々のゲルショッカー怪人がもう少し優れているか(笑)すれば、ゲルショッカーの恐るべき新兵器に再利用の道が開かれていたのではないかと思われる。



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令和三(2021)年六月一一日 最終更新