File1.野本健 改造後も傲慢なサッカー選手

名前野本健(演:堀田真三)
登場作品『仮面ライダー』第13話
改造体トカゲロン
職業プロサッカー選手
前科無し
悪性分傲慢・尊大
本人紹介 『仮面ライダー』放映当時、現実の世界ではまだ存在していなかったプロサッカーの選手。
 「殺人シュート」と称するほどの、爆発的なキック力から放たれるシュート力はショッカーに見込まれる程で、そのシュート力を武器にチームを牽引していたと見られる。
 実際、自他共に認めるシュート力がチームを強力なものにしており、野本自身、自分がいてこそ成り立っているチームと自認し、チームメイトに尊大且つ傍若無人に振舞い、サインを求めるファンの子供達に対してにべもなく追い返す程粗暴な人物だった。

 そのキック力を見込まれてショッカー怪人(蜘蛛男&死神カメレオン)に拉致され、ショッカー怪人トカゲロンとなって10体の再生改造人間を率いての東洋原子力発電所の破壊に従事。
 改造後も傲慢不遜な性格は変わらず、一度仮面ライダー敗れた経験を持つ再生改造人間達を「負け犬」と見下し、作戦実行に際しても特に指示を出すでもなく、自らの蛮行に追随させるだけだった。恐らくはサッカーチームにあっても同様だったと思われる。



組織への勧誘 ショッカーを初めとする悪の組織が改造人間とする素体を人選する際に、主に二つの着眼点がある。一つは能力で、もう一つは人格である。
 野本健の場合、前者―特にプロサッカー選手としてのキック力に注目されてのことだった。

 第13話冒頭にて、ショッカーは東洋原子力発電所へのテロ攻撃にコウモリ男とさそり男(両者共に再生怪人)を派遣したが、両者は発電所に施されたバーリヤを破れず、尻尾巻いて戻って来た。
 両名の体たらくに呆れつつ、首領(声:納谷悟朗)はバーリヤを破る為にショッカー科学陣が開発したバーリヤ破壊ボールの使用を命じた。だが、このバーリヤ破壊ボール、科学陣によると20mの距離から放り込まねば効果を発揮しないとのことで、しかも5kgの重量からショッカー怪人の中にもこれを駆使出来る者がいない、正に宝の持ち腐れ状態だった。
 そこで首領及びショッカーはバーリヤ破壊ボールを駆使出来る人材として、凄まじいキック力を持つ野本健に白羽の矢を立てたのだった。



悪質性
 かくしてショッカーに見込まれ、その一員であるトカゲロンとなった野本健だったが、謂わば、純粋に能力を見込まれての人選で、人格面でショッカーと相通ずると見られていた訳では無かった。
 ただ、その性格ははっきり云って、「そのまま悪の組織の一員」と云ってもおかしくない程悪かった。
 一言で云うなら、「我以外眼中に人無し」で、チームメイトに対しては「このチームは、オレがいなけりゃ三流のオンボロチームじゃねえか、ええ?」」と云い放つ等、完全に見下し、ロッカールームで飲酒する際に、「この野本健様の健康を祝って。」と云いながら酒を勧める傍若無人振りだった。上述した様に、サッカー選手としての自分の能力を慕ってサインを求める子供達を邪険に追い払う有様だった。

 そんな野本の傲岸不遜な性格に対して周囲が採っていた対応は「敬遠」である。
 恐らく、野本が云っていたように、チームは野本がいるからこそ試合に勝てる、野本で持っている野本のワンマンチームだったのあろう。野本の言動に眉を顰めつつも、選手としての野本の能力と、チームへの貢献度から反論の一つも出来ず、飲んだくれる野本を置いてそそくさとロッカールームから出るしかなかったのだろう。

 ただ、性格・素行に相当問題のある野本だが、恐らく能力に自惚れて傲岸不遜になっているものの、所謂、犯罪は行っていなかったと思われる。いくらチームに欠かせない故に素行の悪さに目を瞑らざるを得ない人材でも、窃盗・傷害・殺人・不同意成功等の犯罪に手を染めていれば、それが表沙汰になっていればプロサッカー選手として活躍し続けることは不可能で、それ以前に逮捕される。
 実際、登場時に描かれていた、サッカー選手としてシュートを決めたシーンの野本は本当にサッカーが楽しそうで、チームメイト達も純粋に野本のファインプレーを賞賛していた。思うに、野本健という人物、実力第一主義者にして、不幸にも自分に比肩し得るサッカー選手と巡り会えてなかったのではなかろうか?

 上述した様に、ショッカーに改造され、トカゲロンとなってからも再生怪人達を「負け犬」と見下し、彼等に何かを期待して指示する場面は皆無だった。
 もし、何処かで自分を上回るサッカー選手と遭遇し、何処かで完膚なきまでの敗北を喫し、上級者に対するリスペクトと、謙虚さを身に着けていればかかる性格に陥らなかった可能性は充分考えられる。
 ただ、自分を慕う子供達への邪険な対応を見ると、「元々ああいう性格なのかな?」とも取れる。ある分野で無敵の才能を持ちつつも、チームメイトや対戦相手へのリスペクトを忘れない一流アスリートはごまんと存在する。こうなると、本来ショッカーに目をつけられて、意に沿わない改造を施された野本(←襲撃される直前、自分は誰の命令にも従わない人間と云い放っていた)は一面において「同情すべきショッカーの被害者」でもあるのだが、そんな悲劇を軽減する為に、同情に値しない傲岸不遜な悪の組織の一員に相応しい性格に設定されたように思われてならない。



最期 その強力なシュート力で巨岩をも蹴り飛ばし、一度は仮面ライダーをノックアウトさせたトカゲロン。だが、何故かとどめを刺さず、特訓を積んで戻って来たライダーのリベンジ戦に敗れた。

 ライダーが立花藤兵衛(小林昭二)と共に積んだ特訓は、野本健改めトカゲロンのキック力に抗し得るキック力をつけるもので、最終的にトカゲロンはライダーを倒さんとして必殺シュートで蹴り込んだバーリヤ破壊ボールを電光ライダーキックで蹴り返され、それを胸に向けて再生怪人共々爆死した。
 直後、重要な勝利を収めたライダーを藤兵衛、滝和也(千葉治郎)、緑川るり子(真樹千恵子)が見送って第13話は終結し、本来なら三面記事を飾ってもおかしくないプロサッカー選手の失踪や死について触れられることは無かった。


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令和六(2024)年八月九日 最終更新