File2.無期懲役囚13号 反省ゼロの尊大男
名前 本名不明(演:富士乃幸夫) 登場作品 『仮面ライダー』第24話 改造体 キノコモルグ 職業 無し 前科 強盗殺人 悪性分 強い暴力指向性・尊大・罪悪感皆無
本人紹介 本名不明。東京刑務所に服役していた無期懲役囚で、強盗殺人等の罪により収監されること5年を経ていたが、看守相手に悪態を日常的に突き続けており、自らが為した罪に対する悔悛の情は微塵も見られなかった。
そんな人格をショッカーに見込まれ、独房に侵入してきた戦闘員によって連れ去られた。詳細は後述するが、ショッカーアジトにあっても存在に振舞い、ショッカーの世界征服に共鳴したことで改造人間キノコモルグとなることを受け入れた。
組織への勧誘 独房に侵入したショッカー戦闘員が無期懲役囚13号に掛けたのは、「我々はお前のような凶悪無比な男を探していた。」という言葉だった。「悪人よ、来たれ、ショッカーへ。」と云っているに等しい(苦笑)。
とにかく、無期懲役囚13号は「悪人」であることを見込まれてショッカーに連れていかれ、その一員となったのである。そしてショッカーが世界征服を目論む悪の秘密結社であることを知った無期懲役囚13号が仲間入りに応じる際に発した台詞は、「なんだか面白そうだな。俺を仲間にするってんなら、なってもいいぜ。」と云う物だった。
少し私情を交えるが、シルバータイタンは個人的に「やってやっても良い」的な台詞が大嫌いである。詳細は書けないが、過去に勤めた企業での商談において、「無料(ただ)ならやってやってもいい。」という台詞を散々浴びせられたからである。
まあ、これには当時の業務における構造的欠陥も大きかった。実際商品は確実な効果が望めるとは云い難いもので、宣伝時に「商品代無料」を謳いながら実際には別名目で金を取るというやり方(苦笑)だったので、相手の気持ちも全く分からないでもないのだが、それでも実際に「やってやっても良い。」の台詞には高飛車なものを感じる。
話を戻すとこのときの無期懲役囚13号の台詞も尊大なものを感じるが、それでもまだショッカーに対して好意的だったとは思う。ショッカーが無期懲役囚13号を求めたように、無期懲役囚13号にとっても気脈の合うところが大きかったのだろう。
悪質性 端的に云って、性格も悪ければ、頭も悪そうだった。
何せ起床を促す看守に対し、憮然とした態度を取るだけなら「寝起きが悪いから。」と取れなくもないが、毎朝6時に起こされることに文句を垂れ、5年間ぶち込まれることに対して、「いつまで俺をこんなところに置いとく気なんだ?」と抜かしていたので、因果応報の「い」の字も知らないと見える。
現実の世界においても、殺人は刑法第199条に「人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役」と規定されているが、これが強盗殺人となると死刑か無期懲役しかない。
つまり、無期懲役で済んでいるのはまだ運の良い方で、しかも『仮面ライダー』放映時、無期懲役囚と云えども模範囚と認められれば服役10年で仮出所を認められる可能性があった(※刑法改正により、有期刑の最長が30年となったため、令和の世では収監から30年経ないと仮出所対象とならない)。
それが収監から5年の時点でかかる態度を取り、収監や服役生活に文句をぶー垂れている訳だから、無期懲役囚13号は自分の犯した罪への反省も無ければ、裁判を通して宣告された筈であろう自分の罪と刑罰との因果関係も全く把握していない。
正直、シルバータイタンがショッカーの首領なら、人格面はともかくかかる頭の悪い奴は組織構成員として不適格と判断する(苦笑)。
ただ、人格的な素質はショッカーにとって、何よりキノコモルグを生成において最適だったのだろう。
何せ、性格がかなり悪く、特に嗜虐性が強い。「俺は人間を痛めつけるのが大好き」と公言し、人質をたてに一文字隼人(佐々木剛)を捕えた際も、わざわざ地獄の苦しみを味わわせて処刑せんとして、隼人に「これからお前の体を真っ二つに切ってやる。それもゆっくりとな!」と云い放っていた(勿論、これが原因で隼人に逃げられる訳だが(笑))。
一応は、キノコモルグに改造された後の話だが、元の性格と見ても疑義を挟む人は少ないと思われる。
推測だが、キノコモルグ改造の人選に際して、無期懲役囚13号の人格が重視されたのも、キノコモルグ改造が一風変わっていたからだろう。
一般に改造人間生成と云えば、ショッカーの場合、本郷猛がそうされた様に、身体髪膚に生化学に基づく機械埋め込みをメインとした改造手術が施される。設定や作品によって相違があるが、『新仮面ライダーSPIRITS』では「元の体など1%も残っちゃいない。」とされていた。恐らく昭和ライダーに関してはこれと大同小異であろう。
そして全身を機械化された挙句に脳改造を施される訳だが、これに対してキノコモルグを手術する方法は、「毒キノコのエキスに1週間漬け込む」というものだった。つまり、手術台に据えて大掛かりな執刀で様々な機械部品を埋め込むのに比べてかなり簡易的な改造で、ショッカーへの絶対忠誠の基となる脳改造を伴わない分、万一ショッカーに反逆の意を内包する者にこれを施せば仮面ライダー宜しく、第三の敵を作る可能性が有ったと思われる。
実際のところ、毒キノコエキスが漬け込まれた人間の思想や性格にどう影響するかは不明だが、本郷猛や一文字隼人が脳改造を施すことでショッカーに忠誠を誓う者にされる筈だったことを思えば、無期懲役囚13号はショッカー氏における1、2を争うベスト人選だったのだろう。
最期 結論を先に書くと、解毒剤の液に投げ込まれ、苦悶しているところにライダーキックを食らい最期を遂げた。
勿論キノコモルグ戦死と共に素体である無期懲役囚13号も落命した。まあ、一度改造された人間は元に戻る術がない(そうでなければ歴代仮面ライダーはあれ程苦悩したりしない)。例外を出せば、改造人間が憑依した上で操られている者ぐらいである。
ただ、注目するのはキノコモルグがライダーキックを食らう前に解毒剤に放り込まれたことである。上述した様に、無期懲役囚13号をキノコモルグに改造した手段は毒エキスへの漬け込みである。となると、毒エキスを中和する解毒剤に漬け込まれれば、キノコモルグは無期懲役囚13号に戻れる可能性が有ったと云える。
だが、毒エキスに漬け込まれた際に1週間じっとしていたのに対し、解毒剤に放り込まれたキノコモルグは悶絶し、とても1週間絶えられたとは思えない。こうなるとも、毒から人間を助けてくれる解毒剤も、キノコモルグにとっては自らの存在と真逆である猛毒でしかなかったのだろう。
同時に、その解毒剤に苦悶するキノコモルグは完全な毒の塊で、無期懲役囚13号に戻る道は無かったと思われる。無期懲役囚13号が本郷や一文字の様に意に沿わぬ改造を強いられたショッカーの犠牲者なら解毒剤に漬け込まれるのは元の自分に戻る大切な機会だった筈である。だが、あれ程に苦しむ様を見れば、もはや無期懲役囚13号にキノコモルグ=ショッカーの一員以外に生きる道は残っていないと見られ、そのまま死なせた方が幸せだった様にすら映る。
個人的に「生まれついての悪」を認めたくはないが、「矯正不可能な悪」は残念ながら存在すると思っている(同時に「どうあっても生かしておけない悪」も)。無期懲役囚13号は、哀しい話だが、例えキノコモルグになっていなかったとしても、「矯正不可能な悪」の一人だったのだろう。
個人だけを見るなら、例え短期間でもショッカーの改造人間として悪事に従事出来た事を本人は幸せだったのかもしれない。そんな奴絶対身近にいて欲しくないが。
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令和六(2024)年八月一六日 最終更新