根っからの悪党ども

 原作『仮面ライダー』の第2話のラストで蝙蝠男を倒した仮面ライダー1号は改造人間にされ、戦いに果てた蝙蝠男に対して、「この男もショッカーの犠牲者」としながら、「犠牲者をなくすためにショッカーを根絶やしにしなくてはならない。」というジレンマに苦悩していた。

 昭和シリーズにて仮面ライダー達の前に立ちはだかった改造人間達は、悪の組織に忠誠を誓うべく脳改造を施されるケースが多かった。それにより自我を奪われ、組織の意のままに動かされる殺人兵器とされることの悲惨さは多くの視聴者が重く受け止めた。
 殊に、『仮面ライダーBLACK』では南光太郎(倉田てつを)が、兄弟同然に育ち、自分と共にゴルゴムに改造され、脳改造を逃れられなかった親友・秋月信彦(堀内孝人)のことを「心まで改造された。」としていたので、正義の心を捻じ曲げる人体改造に怒りを新たにした視聴者も多かっただろうし、歴代仮面ライダーの中には下手をすれば自我を破壊され、悪の手先になっていたかも知れなかったことに恐怖を感じた視聴者も多かったと思われる。

 謂わば、自らの意に反して悪の構成員にされてしまった者が数多く存在した訳だが、一方で悪の組織の構成員の中には、組織の目的に共鳴して嬉々として加わった者も数多く存在した。まあ、「嬉々として」は少々語弊があるが、要は自らの意志で悪の組織に加入した者も存在すると云う話である。

 ある者は、マッドサイエンティストとして組織に忠誠を誓った。
 またある者は、自らの研究への資金や組織力を得る代償に組織への技術提供を行った。
 ある者は、社会における挫折から世を恨んで悪に身を投じた。

 これらの面々には、組織幹部、科学者、外郭協力者が多かったが、悪の組織の改造人間にされた者をある日シルバータイタンはふと思った。

 「改造手術を受けた奴には、元々悪い奴も結構いるな………。」

 と。
 この「元々悪い奴」だが、悪の組織に唆されたり、挫折に付け込まれたりしたものを指すのではない。悪の組織サイドで「脳改造しなくても充分構成員たり得る。」と見込まれるような手合いである。

 身も蓋もない云い方だが、現実の世界に改造人間はいない。だが、反社会的組織やテロ集団に属して世に悪事を為す者は残念ながら存在し、犯罪という形で罪のない人々を巻き込みかねない恐るべき存在である。
 そこで本作では、悪の組織の改造手術を受けるまでもなく根っからの悪党だった者を考察し、現実の悪を考察する一助としたい次第である。
 勿論何を以て「悪」とするかは万人に対する統一見解を持ち得ない故にシルバータイタンの独断と偏見による。また、善人だからと云って悪事を為さない訳では無いし、悪行にも規模の大小や悪質度の濃淡も千差万別である。
 強いて人選に関して云えば、悪行の大小よりも質に注目し、下記の二点を重視している。

〇罪悪感という概念が見られない。
〇改造前から性格の悪さが明らか。

 とはいえ、フィクションとはいえ一人の人間を捕まえて「完全な悪人」と痛罵するのには些か心の痛みが伴う。彼等にも純粋無垢な赤ん坊の頃があり、環境・挫折によって悪の心を抱いた者もいれば、自らが悪であることに気付いていない者もいる。矯正可能な者もいれば、自分の気づかないどこかで良心の呵責に苦しんでいる者もいるかも知れない(作中に現れないだけで)。
 だが、これは現実の世界にも云えることだが、矯正不可能な悪人、不可逆的で償い様の無い悪事を仕出かしてしまった者は確かに存在する。そしてそれ故、現実にも通じる問題と見て、フィクションの登場人物ながら、作品登場以前から悪人としか思えないものを検証し、現実世界における悪行への道を阻止する一助になり得れば、と思う次第である。
File1.野本健 改造後も傲慢なサッカー選手
File2.無期懲役囚13号 反省ゼロの尊大男
File3.加納修 人死にを意に介さない冷血漢
File4.黒木 詐欺師改めテロリスト
File5.死刑囚 逆怨みの塊
File6.村田源次 死刑にならなきゃ何だってするぜ
File.7ドクターメデオ MAD SCIENTIST OF MAD SCIENTISTS
File.8「最凶」にして「最狂」の存在―人間


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令和六(2024)年一〇月一七日 最終更新